第六章 〜noa's child〜
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立ち上がって、校門を見ると、いつきが一人で待ってた。帰る生徒が一人一人いつきに声をかけてるのが見える。でもアイツは待ってる。そうだ、僕を待ってるんだ。行かなきゃ。先生に見つからないように階段を下りる。こんなに隠れて行動するのは人生で初めてだ。しかも同じ日に。下駄箱で靴を履き替えて、校門に向かった。こんな時、友達が少なくてよかったと思う。だって、今日学校に行ってないことになっている人間が学校から出てきてるんだから。いつきが僕に気づいた。野球部と話していたけど、僕に気付くとすぐに話すのをやめた。
「遅かったから心配したよ。午後の授業出なかったのか?一度帰ったのかと思ってたけど、学校にいたんだな。とにかくよかった。」
「僕だって帰りたかったよ。結局僕は今日は休みってことになってるし、こんな訳の分からないことになって、最悪の一日だよ。」
「ははは、俺は人生で一番いい日かもしれない。だって本当の自分が見つかったんだしさ。しかもバンドメンバーも見つかった。こんな日になるなんて、体育着忘れて本当によかったよ。」
「・・・・もういい。とにかく聞きたいことだらけだよ。どっかで話そう。」
二人で校舎裏のゴミ焼却炉の前に座る。まだ、うっすらと煙が立っていて暖かい。チロチロと小さな赤い灯が黒いゴミの中から見える。まるで一番星を見つけた時みたいな気持ちになる。
「あのさ、今日あったことはいいんだ。君、いつき君がしてきたこと?そんなのどうでもいい。知りたいことはひとつだけなんだ。」
「・・・あぁ。」
「この町にある方舟の話ってなんなの?方舟は何者なの?なんでアダムとイブが乗り込んだんだよ、もう訳わからないよ・・・」