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artist : HIRTH MARTINEZ
title : 『 HIRTH FROM EARTH 』
release : 1975年1月
label : WARNER BROTHERS RECORDS
tracks ( cd ) : (1)ALTOGETHER ALONE (2)WINTER AGAIN (3)DJINJI (4)BE EVERYTHING (5)COMIN' ROUND THE MOON (6)IT (7)THAT'S THE WAY IT'S GOTTA GO 【ザッツ・ザ・ウェイ】 (8)SILENT MOVIES (9)PITY ON THE FOOL (10)I DON'T KNOW WHY THE HELL (11)SATURDAY NIGHT (12)COLD DARK MORNIN' (13)YOU ARE A STAR 【ビューティフル・スター】
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(6) / side B...(7)〜(13)
members : HIRTH MARTINEZ,vocals,rhythm guitar,solo guitar ; ROBBIE ROBERTSON,lead guitar ; BEN KEITH,pedal steel guitar ; GARTH HUDSON,electric piano,upright piano,lowry organ ; ROBERT MARGOULEFF,programming of arp and moog synthesizers ; MALCOLM CECIL,programming of arp and moog synthesizers ; LARRY FALLON,synthesizer ; STELLA CASTELLUCCE,harp ; LOU RADERMAN,violin ; CHUCK RAINEY,electric bass ; BOB BOUCHER,acoustic bass,electric bass ; SPIDER WEBB RICE,drums ; RUSS KUNKEL,drums ; SERGIO PASTORA,conga ; STEVE PAIETTA,concertina ; KEN WATSON,cymbalum ; MAUD KAGLE,background vocal.
horns : TEDDY BUCKNER,trumpet ; BILL LAMB,trumpet ; ROB HICKS,trumpet,flugelhorn ; YAN RASEY,flugelhorn ; PHIL STREAMLINE EWING ,trombone ; BOB PAYNE,trombone ; RED CALENDER,tuba ; DON WALDROP,tuba ; DAVE ROBERTS,tuba ; COTCHIE ROBERTS,clarinet ; PHIL AYLING,alto sax,flute,clarinet ; JERRY ORRICO,alto sax,alto flute,clarinet ; FRED JACKSON, JR. ,tenor sax ; JAY MIGLIORI,tenor sax,flute,bass clarinet ; TERRY HARRINGTON,tenor sax,english horn,clarinet ; JOHN MITCHELL,baritone sax,flute,bass clarinet ; MARK SATTERFIELD,baritone sax ; STEVE KRAVITZ,baritone sax,bassoon,flute,bass clarinet.
strings : SHARI ZIPPERT,violin ; LEONARD MALARSKY,violin ; JOSEPH LIJOTI,violin ; CARL LA MAGNA,violin ; BOBBY BRUSE,violin ; HENRY FERBER,violin ; WILLIAM HYMANSON,violin ; BARRY SOCHER,violin ; JACK SHOLMAN,violin ; RONALD FOLSOM,violin ; MYRON SANDLER,viola ; GARETH NUTTYCOMBE,viola ;
JAN KELLEY,cello ; RAY KELLEY,cello ; ARNI EGILSSON,string bass.
producer : ROBBIE ROBERTSON
arranger : ROBBIE ROBERTSON
strings and horn arrangement by LARRY FALLON.
related website : 『 Hirth Martinez 』(公式サイト?)




(1)ALTOGETHER ALONE  ▲tracks
 歌の主人公がUFOに遭遇するという設定の(1)。何となくデイヴィッド・ボウイの 『 THE RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDERS FROM MARS 』 ――いわゆる 『 ジギー・スターダスト 』 ――に収録されている「STARMAN」と似た設定。そんな遭遇の中で「誰か知っている者にまずは電話で連絡をとろうとする」という主人公の行為も共通している。
 それにしても、なぜ 『 ジギー・スターダスト 』 と簡単に言えば通じるのにあえて長々と原題を示したかというと、本作のタイトル 『 HIRTH FROM EARTH 』 が 『 〜SPIDERS FROM MARS 』 と韻を踏んだ関係にあり、上記のことも含めると「ハースは少なからず 『 ジギー・スターダスト 』 を意識していたのではないか?」という、僕の勝手な憶測、あるいは邪推を示したかったから。まぁ、 『 ジギー・スターダスト 』 のリリースは'72年、本作は'75年と結構な間があるので単なる偶然なのかもしれないが。
 しかし、映画 『 地球に落ちてきた男 』 でボウイ演ずる異星人が不時着したのが“メキシコの湖”であることと、本作のCDの内ジャケ(アナログ盤は内袋)に描かれてあるイラストの人物達の恰好が“メキシコ風”であることも考慮に入れると、単なる偶然とは思えないような気持ちが強まってくる。
 で、サウンドはというと、アコースティック・ギターの軽やかで優しげなコード・ストロークと、チャック・レイニーかと思われるよく動くベース・ラインがメインの、ライトなサンバ/ボッサ。何となくソウル風味もあったりする。そして、これまたソフトなシンセのオブリガードや、クワイエットでヒンヤリとしたストリングスが彩りを添える。
 この全体的に漂うムードをうまく吸収しているのがムーン・ライダーズの「週末の恋人」(『 ISTANBUL MAMBO 』 に収録)やキリンジの「まぶしがりや」(『 OMNIBUS 』 に収録)。特に「週末の恋人」は、キーボードの岡田徹がハースの歌唱法(ドクター・ジョンに似ている)を真似ているのでモロにそんな感じの曲に仕上がっている。
 また、プロデュースも務めるロビー・ロバートソンのガット・ギター・ソロがとてもキャッチーで、この曲を印象付けるのに一役も二役も買っている。このソロ、フリッパーズ・ギターの「COFFEE-MILK CRAZY」(『 海へいくつもりじゃなかった 【THREE CHEERS FOR OUR SIDE】』 に収録)のギター・ソロのヒントっぽいような気もするのだが、どうだろうか?
 そういえば、冒頭で鳴るシンセ音について、小倉エージ氏がライナーで「木枯しの音を模したような」と言っているが、あの音の“上昇と下降”の曲線からすると、僕は“UFOが飛ぶ音”だと思うのだが。


(2)WINTER AGAIN  ▲tracks
 カントリー・タッチなギターの伴奏ながらも、ノッソリとした2拍子のような、それでいてレゲエにしてもおかしくないようなユニークなリズム感覚の(2)。オブリガードのギターにははらはらと降る雪のような煌びやかな加工の施されている。しかし、ギターもベースもアコースティックなので、レゲエ側には傾かずに“アメリカン”な感覚に着地している。
 自身の人生の境遇を“冬”に例えた歌なのだけど、全く悲壮感はなく、むしろアッケラカンとしている。かといって妙にポジティヴでもない感覚がとても優しく暖かい。雪のことを「天国のかけら」とか「俺の肩に外套を着せてくれる」と例えるとは。サウンドだけでなく、その歌詞のセンスもユニーク。


(3)DJINJI  ▲tracks
 何となくキリンジの「牡牛座ラプソディ」(『 47'45" 』 に収録)の雛形的な感じのする(3)。アコギのカッティングやよく動くベース、パカポコとかわいいパーカッションの全てがフィーチャーされているようでいて、その全てが動き出すとそれぞれがうまく絡み合って独特なグルーヴ感を生み出す、ファンキーでユーモラスな雰囲気を持った曲。派手なホーン・セクションには特にその感じが濃厚で、なんだか自然と笑みがこぼれてしまう。しかし、かといってこの曲がゲラゲラと笑えるような代物でもないのだけれど。そんな中で、途中に出てくる口笛の飄々とした存在感がまたいい。


(4)BE EVERYTHING  ▲tracks
 アコギのアルペジオを中心にしながら、ラリー・ファロンのアレンジによる夢見心地なホーン・セクションとストリングス・セクションが堪能できる(4)。なんだか自然とまどろんでしまうような曲。
 意外なことに、このラリー・ファロンという人、ボブ・ディランやサイモン&ガーファンクルの一連の作品、そしてヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「SUNDAY MORNING 【日曜の朝】」(『 THE VELVET UNDERGROUND & NICO 』 に収録)や 『 WHITE LIGHT/WHITE HEAT 』 をプロデュースしたトム・ウィルソンと共に、ニコの 『 CHELSEA GIRL 』 やギル・スコット-へロン・アンド・ブライアン・ジャクソンの 『 BRIDGES 』 のアレンジやプロデュースもしている。その他、ヴァン・モリスンの 『 ASTRAL WEEKS 』 やローリング・ストーンズの 『 GIMME SHELTER 』 などのアレンジも手掛けている。


(5)COMIN' ROUND THE MOON  ▲tracks
 ハースのダミ声と、ちょっと戦慄を覚えるようなホーン・セクションが、ドッシリとしたリズムに乗ってダーティーな雰囲気を醸し出している(5)。曲の全般にわたってロビー・ロバートソンの“ペキペキ”としたソロ・ギターがフィーチャーされている。
 それにしても、こんな雰囲気の中「月の向こう側からやってくる彼女」とは一体誰なのだろうか? 何か元になっている物語でもあるのだろうか?


(6)IT  ▲tracks
 これまでのカッティングと同じリズムのファンキーな曲かと思っていると、実は8分の6拍子の曲という、イントロがちょっとしたリズム・トリックになっている(6)。ひょっとして、引っ掛かった気になっているのは僕なのだけかもしれない。今では完全に“こういうリズムだ”と分かりきって聴いているので、全く引っ掛からないのだが、買ったばかりの頃はよく引っ掛かっていた。でも、複合的なリズムばかり繰り出してくる彼のこと、おそらくトリックだと思う。


(7)THAT'S THE WAY IT'S GOTTA GO 【ザッツ・ザ・ウェイ】  ▲tracks
 (3)に似たファンキーなグルーヴ感を持つ(7)。でも、こちらはずぅ〜っとセッションし続けられそうな雰囲気の曲。リズムの裏へ裏へと回る感じのホーン&ストリングスや、“タチィッチィッ”と屈折したドラムがカッコいい。そんなサウンドの上で、コロコロと転がるように淀みないフレイズを繰り出すロビーのソロ・ギターの飄々とした佇まいもいい。


(8)SILENT MOVIES  ▲tracks
 スティール・ギターがユッタリとたゆたう様がとても印象的な(8)。(4)以上にトロ〜ンとまどろんでしまう曲。ギターのアルペジオが控えめなのもいい。最後に鳴るギターの「ドゥララ〜ン」というCメジャー・セヴンスの穏やかなでまろやかな寂寥感がたまらない。パイザノ&ラフの 『 UNDER THE BLANKET 』 の曲のどれかと続けて聴きたい。
 内省的でイメージ豊かな歌詞もいい。この歌詞のイメージを思い浮かべながらこのサウンドに浸っていると、そのまま周囲の空気に心が溶け出してしまうような感触がある。


(9)PITY ON THE FOOL  ▲tracks
 (5)にも似たダーティーさを醸し出している(9)。しかし、こちらの方が少々ストレイトな勢いを感じる。歌詞は“落ち目になったギャング(か何か)のボス”を徹底的にこき下ろしている。そんな“ボス”を嘲るかのような(?)ロビーの「ジュワワワ〜ン」なんていう幾分アヴァンギャルドなギター・プレイも一興だ。オルガンを弾いているのはロビーと同じくザ・バンドのガース・ハドソン。


(10)I DON'T KNOW WHY THE HELL  ▲tracks
 楽しげな雰囲気が溢れるデュエット曲の(10)。“こんなオイラのどこに惚れたって言うんだい”といった内容の曲。(1)をちょっと速くしたような軽サンバ/ボッサ・ソウル。相変わらずチャック・レイニー(のはず)が大活躍で、とってもポップでグルーヴィーな仕上がり。軽やかなエレピもいい。
 それにしても、ここでユーモラスにデュエットしている“MAUD KAGLE”という人(と思われる)、あまり聞いたことのない名前だ。


(11)SATURDAY NIGHT  ▲tracks
 アサイラム時代のトム・ウェイツがやっていてもおかしくないような、懐かしくてトラジコミックなジャズ・ナンバー。しかもタイトルが「土曜日の夜」ときたもんだ。ホンキー・トンクなピアノと、ユーモラスで哀愁を帯びたホーン・セクションが、瞬く間に“古き良きアメリカ”にタイム・スリップさせてくれる。


(12)COLD DARK MORNIN'  ▲tracks
 一転してスリリングなリズム・パターンで攻めてくる(12)。基本的にはブルーズなのだが、バス・ドラムの挿入の仕方次第でこんなにも違う雰囲気になるとは。まぁ、バス・ドラムだけでなく、ドラムス全体がスリリングといえばスリリングなのだけれど。そんなサウンドに、エフェクトがかかったロビーのギターが摩訶不思議なフレイズも交えながら応戦する。
 改めて思うに、このハース・マルティネスの天才は、様々なリズムの中に何か共通点を見出し、新たなリズム・アプローチを編み出すことにあると思う。


(13)YOU ARE A STAR 【ビューティフル・スター】  ▲tracks
 フォーク・タッチでありながら、アコーディオンや何となく地中海っぽい弦楽器も登場する(13)。懐かしくて思わずホッコリと和んでしまうような、それでいてちょっぴり切なくなってしまうような、とにかく心に優しい曲。特に、「Twinkle, twinkle, little star」という歌詞の後に出てくるコードの得も言われぬ色具合がたまらなくいい。この曲では彼のダーティーなダミ声は影を潜め儚げに歌う。


 なお、本作のいたる所で聴かれる僕好みのソフトなシンセ・サウンド。そのプログラミングを手掛けているのは誰あろう、クリス・レインボウの 『 HOME OF THE BRAVE 』 やスティーヴィー・ワンダーの 『 INNERVISIONS 』 のレヴューでも触れた、ロバート・マーゴレフとマルコム・セシルのふたり。

 それにしても裏ジャケのハース、実はサングラスを外したらコージー冨田だったりして。


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