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artist : STEVIE WONDER
title : 『 INNERVISIONS 』
release : 1973年8月
label : MOTOWN RECORD
tracks ( cd ) : (1)TOO HIGH (2)VISIONS 【愛の国】 (3)LIVING FOR THE CITY 【汚れた街】 (4)GOLDEN LADY (5)HIGHER GROUND (6)JESUS CHILDREN OF AMERICA 【神の子供たち】 (7)ALL IN LOVE IS FAIR 【恋】 (8)DON'T YOU WORRY 'BOUT A THING 【くよくよするなよ】 (9)HE'S MISSTRA KNOW-IT-ALL 【いつわり】
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(4) / side B...(5)〜(9)
members : STEVIE WONDER,moog bass (4),acoustic piano (7),fender rhodes piano (4,7),drums (4,7),all other instruments (1,2,8,9),all instruments (3,5,6) ; ROBERT MARGOULEFF,programing of arp & moog synthesizers,engineering of electric music ; MALCOLM CECIL,programing of arp & moog synthesizers,engineering of electric music,bass (2) ; DAVID “T” WALKER,electric guitar (2) ; DEAN PARKS,acoustic guitar (2) ; RALPH HAMMER,acoustic guitar (4) ; CLARENCE BELL,organ (4) ; SCOTT EDWARDS,bass (7) ; WILLIE WEEKS,bass (9) ; LARRY “NASTYEE” LATIMER,congas (4) ; YUSUF ROAHMAN,shaker (8) ; SHEILA WILKERSON,bongos (8),latin gourd (8) ; LANI GROVES,background vocal (1) ; TASHA THOMAS,background vocal (1) ; JIM GILSTRAP,background vocal (1).
producer : STEVIE WONDER
arranger : STEVIE WONDER
associate production : ROBERT MARGOULEFF & MALCOLM CECIL
related website : 『 Stevie Wonder Web 』(公式サイト)




(1)TOO HIGH  ▲tracks
 文字通り“ブッ飛んで”いる(1)。しかし、ここでの“TOO HIGH”はあくまでネガティヴな意味合いで、ドラッグの危険性について歌っているのだけど、声高に反対宣言をするのではなく、シュールな光景を悲惨なストーリーに織り込んで、しかもそれを“ブッ飛んだ”曲に乗せて歌っているところがとても彼らしい。歌詞と音が分かち難く結び付いている。
 いきなりスタートするくすんだ色具合でウネるベースは、リズム自体はブラジル音楽からヒントを得ていると思われる。それをスウィング気味に粘っこくやるとこんな感じになる。そのベース・ラインとジャジーな感覚のドラミングを屋台骨にして、半音ずつ下降してくるコーラスや、全音ずつ下降していくリフレインが立て続けに登場。間奏では2本のハーモニカ・ソロ(2本なら“ソロ”じゃないか…)がフィーチャーされ、終盤はルート音が半音ずつ上昇・下降していく。曲が終わる時のコーラスの余韻がまたイイ。
 こんな実験的で摩訶不思議な曲を、ポップ・ミュージックの最前線にいる者が、1曲目でやってしまうとは!そしてそれを“難しい”と聴き手に意識させずに一気に聴かせてしまう。まったくもってスゴイとしか言い様がない。


(2)VISIONS 【愛の国】  ▲tracks
 ジャケットや内ジャケットのアート・ワークに表現されているような世界を想起させずには置かない、スピリチュアルな(2)。歌詞で「A VISION IN MY MIND」と言っているところを見ると、この曲がタイトル曲と見て間違いなさそうだ。
 アコースティック・ギターとエレクトリック・ピアノ、ウッド・ベースが作り出す模糊としていながらもなんとも不思議な切なさを感じさせるサウンドに、デイヴィッド・“T”・ウォーカーの何か神秘的な存在が蠢くような雰囲気のエレクトリック・ギターが絶妙に絡み合う。


(3)LIVING FOR THE CITY 【汚れた街】  ▲tracks
 前2曲からするととても現実的で今日的な(3)。貧しいながらも必死で生きている少年とその家族について歌った曲。
 平歌はボトムを効かせてズッシリとした R & B 〜 R & R という感じだが、「ダララーダ〜〜ラァァァダ〜〜〜」というスキャット部分からはスティーヴィー節全開で、ベースが下降していくのに高揚感は増していくという作り。途中、様々なS.E.と会話を盛り込んだ寸劇を挿入した後、スティーヴィーの声には怒りが込められ、物凄いダミ声で歌われている。因みに、この曲は全てスティーヴィーによって演奏されている。


(4)GOLDEN LADY  ▲tracks
 スティーヴィーと同様に盲目のシンガー〜ホセ・フェリシアーノがカヴァーしたことでも知られる(4)。目の見えない彼らの頭や心の中では“黄金”はどのように映っているのだろうか?
 バラッドっぽいピアノによる導入部に続いて、ユッタリとしたグルーヴが始まる。そしてサビ。ここでもベースが下降するモーション(クリシェ)が見られる。さらに、後半でサビが繰り返されるたびに半音ずつキーが上昇していく。このスタイルは 『 SONGS IN THE KEY OF LIFE 』 に収録の「SUMMER SOFT」でも登場する。


(5)HIGHER GROUND  ▲tracks
 シャッフルでブルーズっぽくもあるこの(5)も、(3)同様、全てスティーヴィーによる演奏。雰囲気からすると、アルバム・タイトルからズレているようにも感じられるが、非常に現実的なようでありながらも輪廻転生や神の話も出てくるので、必ずしもアルバム・タイトルから外れているとは言い難い。
 この曲はレッド・ホット・チリ・ペッパーズ等もカヴァーしている。そして、ソウル・フラワー・ユニオンがライヴ盤 『 HIGH TIDE & MOONLIGHT BASH 』 に収録の「闇夜の太陽」の中で、この(5)の一節を若干歌詞を変えて挿入している。


(6)JESUS CHILDREN OF AMERICA 【神の子供たち】  ▲tracks
 ヒッソリと息をひそめるように始まり、シャープなコーラスを伴って徐々に盛り上がりを見せる(6)。歌メロそのものはブルージーでブラックなフィーリングが豊か。なんとこの曲までもがコーラスを含め、スティーヴィー1人による演奏。驚きだ。
 この曲にも、“超自然的瞑想”という言葉が出てきたりして、アルバム・タイトルとの関連性を窺わせる。


(7)ALL IN LOVE IS FAIR 【恋】  ▲tracks
 美しく切ないバラード(7)。人によってはかなりメランコリックな印象が強いかもしれない。運命的で幾分シリアスな響きと、繊細で可憐な響きの両面を表現するピアノをメインの伴奏に据え、ところどころにポロリンと綺麗なエレクトリック・ピアノが入ってくる。この曲もしばらくベースが下降していくパターンを取る。
 僕はこの曲が大好きで、かなりの頻度で聴いている。他のレヴューを読んでいると、ソウルっぽくない曲調のせいか、この曲に触れているものをあまり見かけないのだが、多分みんな好きなはず(と勝手に信じている)。当サイトでは本作を、彼の出自上「BLACK MUSIC」に割り振っているのだが、彼が作り出すものは本来ならポップスとして扱うべき幅広い音楽性を持っているので、ソウルっぽくない曲だからといって彼の非ソウル的な部分を評価しないのは、まったくもって勿体ないことなのである。しかし、本作の場合ポップスの範疇でもさらに凝った部類なので、「POP FREAK」にも割り振っている。


(8)DON'T YOU WORRY 'BOUT A THING 【くよくよするなよ】  ▲tracks
 インコグニートがカヴァーしたことであまりにも有名な、サルサ調で軽快な(8)。今度はイントロから、またしても下降するクリシェが登場。そしてただただ唸らされてしまうのは、「アーアアーアーアーアーアーアー…」と下降してくる部分。F#sus4・F#・Fsus4・F・Esus4・E・D#sus4・D#・Dsus4・D・C#sus4・C#ときて再びF#へ戻る。よくもまぁこんなコード進行を思いついたものだ。キーボードだとかなり面倒臭そうさだが、ギターだとかなり簡単に演奏できてしまう。


(9)HE'S MISSTRA KNOW-IT-ALL 【いつわり】  ▲tracks
 この曲そのものが本作のエンディング・テーマであるかのように感じられる(9)。途中何度かBメロが挟まれるものの、基本的にはタイトル名を含んだAメロのリフレイン。その雰囲気が何となく“エンディング・テーマ”っぽいのだ。段々と手拍子等も加わって盛り上がり、フェイド・アウトして終わる。


 スティーヴィーが天才なのは間違いのないことだとは思うが、本作に出てくるクリシェや半音進行、そして上がり続ける音や下がり続ける音の数々は、彼の天賦の才のみならず、彼のあくなき実験精神の賜物なのだと思えてならない。そして、このサウンドを創り得た要因は、彼がボストン大学で作・編曲法を学んでいたということと無縁ではないだろう。

 本作の特異な独創性から、本作を彼の真の意味でのピークとする向きもあるようだが、彼は本作でこのような作風をある程度“やり尽くした”という感じなのではないだろうか。だからこの後の作品で、彼なりの“曲作りの妙”はそこかしこに見せながらも、ある程度耳馴染みのある作風に戻っているのは、創作意欲が低下したり、才能が枯渇したりしたのではなく、あくまで本作で“気が済んだ”と見るべきと思う。さすがに 『 SONGS IN THE KEY OF LIFE 』 より後はちょっとずつ作曲能力は落ちているのかもしれないが、パフォーマー/プレイヤーとしてはまだまだその才能は落ちそうにない。

 なお、本作でシンセサイザーのプログラミング等を担当しているロバート・マーゴレフとマルコム・セシルはイギリスのビーチ・ボーイズ・フリークなシンガー/ソングライター〜クリス・レインボウの1stアルバム 『 HOME OF THE BRAVE 』 にも参加し、ソフトなシンセ・サウンド作りに貢献している。


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