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artist : HARPERS BIZARRE
title : 『 THE SECRET LIFE OF HARPERS BIZARRE 』
release : 1968年
label : WARNER BROS.-SEVEN ARTS RECORDS
tracks ( cd ) : (1)LOOK TO THE RAINBOW 【虹を見てごらん(『 フィニアンの虹 』より)】 (2)BATTLE OF NEW ORLEANS (3)WHEN I WAS A COWBOY〜INTERLUDE 【間奏曲】 (4)SENTIMENTAL JOURNEY (5)LAS MANANITAS (6)Medley : BYE, BYE, BYE / VINE STREET (7)ME, JAPANESE BOY〜INTERLUDE 【間奏曲】 (8)I'LL BUILD A STAIRWAY TO PARADISE 【天国への階段】 (9)GREEN APPLE TREE (10)SIT DOWN, YOU'RE ROCKING THE BOAT〜INTERLUDE 【間奏曲】 (11)I LOVE YOU, MAMA (12)FUNNY HOW LOVE CAN BE (13)MAD (14)LOOK TO THE RAINBOW 【虹を見てごらん(『 フィニアンの虹 』より)】 (15)THE DRIFTER〜REPRISE
tracks ( analog ) : tracks ( analog ) : side A...(1)〜(7) / side B...(8)〜(15)
members : TED TEMPLEMAN,lead vocal,guitar,drums ; DICK SCOPPETTONE,lead vocal,guitar,bass ; EDDIE JAMES,lead guitar ; DICK YOUNT,bass,vocals ; JOHN PETERSON,drums,percussion,vocals.(本作のジャケットにはメンバーの担当楽器の明確な表記がないため、彼らの他の作品を参考にした。しかし、かなりの部分はスタジオ・ミュージシャンが演奏している模様。また、ヴォーカル・トラックはそのほとんどがテッド・テンプルマンとディック・スコパトーンによるもの)
guest members : GLORIA JONES,gospel choir ; CAROLYN WILLIS,gospel choir ; SHERLIE MATTHEWS,gospel choir.
producer : LENNY WARONKER
arranger : NICK DE CARO(7,15),PERRY BOTKIN ,Jr.(2,12),KIRBY JOHNSON(5,9,10),BOB THOMPSON(6,8),EDDIE KARAM(1,13,14),RON ELLIOTT(3,4,11).
vocal arrangements by TED TEMPLEMAN & DICK SCOPPETTONE.
related website : 『 Perry Botkin 』(ペリー・ボトキン, Jr. の公式サイト)




(1)、(14)LOOK TO THE RAINBOW 【虹を見てごらん(『 フィニアンの虹 』より)】  ▲tracks
 イントロダクションとヤマ場の直前に配置され、本作をコンセプト・アルバムたらしめている楽曲(1)と(14)。それぞれ約1分と約30秒という短さながらも、限りなく優しいストリングスと歌声で聴き手を 『 ハーパース・ビザールの秘められた生活 』 へと誘い、そして思い出させてくれる。ひょっとすると、途中のストリングスとベルリラのユニゾン部分は日本の夫婦デュオ〜ル・クプルの「ひだまりの詩」のメロディーに引用されたかもしれない(別に僕はル・クプルのファンではないが)。フレッド・アステアやペトゥラ・クラークが出演した映画 『 FINIAN'S RAINBOW 【フィニアンの虹】』('68年)の挿入歌。
 内ジャケットの前文や小西康陽氏のライナーに拠れば、本作は、ジェイムズ・サーバー原作の映画 『 THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY 【ウォルター・ミティーの秘められた生活〜虹を掴む男】』 にヒントを得たタイトル・内容なのだが、この(1)(14)はその“虹”に因んでいるのだろう。また、その前文には「位置に付いて、用意して、脱出口を開け、“夢を追いつづける仲間について行こう”」(“ ”部訳:小倉ゆう子)とあるのだが、その“ ”の部分はこの曲の歌詞でもあり、同時に 『 THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY 』 での、“平凡なサラリーマンの主人公〜ウォルターが眠りに落ち、その夢の中で大活躍する”というアイディアをモチーフとしていることのインフォメイションでもある。


(2)BATTLE OF NEW ORLEANS  ▲tracks
 前曲のドリーミーなサウンドから一転、2発の爆音で始まる(2)。曲調からして明らかに戦時もので、タイトル・歌詞からすると米英戦争(小西氏は“南北戦争”といっているが、明らかな誤り)についての曲なのだが、バンジョーやフルートなど加えて、ユーモラスでホノボノとしたアレンジが施されている。ソフト・ロックながら、時に荒っぽい歌い方をしてみせたりする場面もある。最後は突撃ラッパで終る。アレンジはペリー・ボトキン, Jr. 。
 歌詞に出てくる“ジャクソン大佐”とは、後に大統領になったアンドリュー・ジャクソンのことで、“Old Hickory”とは彼の愛称。彼はこの曲の舞台になっているニュー・オーリンズでの戦いで大きな功績をあげた。しかし、彼はネイティヴ・アメリカンを西部へと追放する“インディアン強制移住法”を作った白人至上主義者。
 『 レコード・コレクターズ 』 2005年12月号のインタヴューで、メンバーのディック・スコパトーンは「60年代のアーティストは、選曲に関してほとんど発言権がなかったんだ。僕らの場合はごくたまに自分たちのオリジナル曲を入れることができたけど。『 シークレット・ライフ… 』 はレニーのアイディアだ」と語っているが、プロデューサーのレニー・ワロンカーがこの曲を取り上げたのには、何か特別な意味がるのだろうか? それとも単なる“ディスカヴァー・アメリカ”的な観点で選曲したのだろうか?


(3)WHEN I WAS A COWBOY〜INTERLUDE 【間奏曲】  ▲tracks
 内ジャケットのメンバーの扮装にもあるように、今度の部隊は“開拓時代の西部”で、スピーカーの左右で拳銃のドン・パチする音が行き交う(3)。バスのハーモニカとブルージーなアコギ、軽快でファンキーなパーカッションで泥臭ささを演出している。このアコギのリフは、何となくドノヴァンの「THE LOVE SONG」(『 BARABAJAGAL 』 に収録)のギター・リフと雰囲気が似ているので、DJ的に繋ぐにはいいかもしれない。インタールードは、既に彼らの代名詞とも言えそうな「FEELIN' GROOVY」(『 FEELIN' GROOVY 』 に収録)。ボー・ブラメルズのロン・エリオットによるアレンジ。


(4)SENTIMENTAL JOURNEY  ▲tracks
 映画 『 SENTIMENTAL JOURNEY 』 の主題歌で、ジャズのスタンダードにもなっている(4)。メロディー、声、サウンド、全てが良い意味で眠気を誘う、文字通り“ドリーミー”な曲。“眠りに落ちたその夢の中での旅”といった趣き。歌詞に“放浪の旅”が出てくるところを見ると、同じく“放浪”をテーマとした(15)と呼応しさせてあるのだろう。アレンジを手掛けたのは前曲と同じくロン・エリオット。


(5)LAS MANANITAS  ▲tracks
 賛美歌のようでもあり、アメリカ民謡の「峠の我が家」のようでもある(5)。テッド・テンプルマンとディック・スコパトーンによるオリジナル曲。1分ほどで終ってしまうが、とても懐かしい気分にさせられてしまう。しかし、タイトルからも察することができるように、メキシコに因んだ歌で、弦楽器の使い方などにそんな雰囲気が漂っている。


(6)Medley : BYE, BYE, BYE / VINE STREET   ▲tracks
 彼らの前身バンド〜ティキス時代の曲(テッド・テンプルマンとディック・スコパトーンによるオリジナル)とランディー・ニューマンの曲のメドレーの(6)。ボブ・トンプソンによるアレンジ。
 「BYE, BYE, BYE」の方は軽めに悲しげな旋律やピアノが印象的。「VINE STREET」の方はグリコの「トロトロトロトロトロリ」のCMに使われたクラシックの曲っぽい旋律がハープシコードによって、ベートーヴェンの「第9」を一瞬だけ彷彿させるフレイズがヴァイオリンによって奏でられる。この「VINE 〜」は、作者のランディー・ニューマン他、ヴァン・ダイク・パークス、ニルソンといったバーバンク系人脈の作品の中でよく取り上げられる、何やらバーバンク・サウンドの合言葉めいた存在。


(7)ME, JAPANESE BOY〜INTERLUDE 【間奏曲】  ▲tracks
 “ジャパニーズ・ボーイ”の歌なのに、チャイニーズな雰囲気も漂う(7)。いわゆる“西洋から誤解された日本”のイメージ。内ジャケットではメンバーが侍の扮装に身を包んでいる。また、歌詞には“桜”も出てくるせいか、何となく春のイメージも感じられ、そのほの明るくたおやかなサウンドがとにかく心地良い。バート・バカラック&ハル・デイヴィッド作、ニック・デカロによるアレンジ。ピチカート・ファイヴがカヴァーしている。
 因みに、同じく日本をテーマにした曲と言えば、ウィーザーの「ACROSS THE SEA」(『 PINKERTON 』 に収録)なんかを思い出してしまう。


(8)I'LL BUILD A STAIRWAY TO PARADISE 【天国への階段】  ▲tracks
 ガーシュイン兄弟作の古い曲で、ユッタリとしたシャッフル・ビートが心地良い(8)。デッドな感じのギターと、空気中にたなびくようなエコーのかかったストリングスの対比が面白い。後半では主旋律をなぞる楽器(鉄琴類、「NHKのど自慢」で使われている鐘)が増えていく。アレンジはボブ・トンプソン。
 歌詞に宇宙人に話し掛ける場面があるせいか、内ジャケットにはメンバーが宇宙飛行士に扮した写真がある。装備的には“飛行機乗り”レベルの軽装だが、その背後にロケットがあるところを見ると、一応、宇宙服なのだろう。


(9)GREEN APPLE TREE  ▲tracks
 これで本作中3曲目となるオリジナル曲(テッド・テンプルマン&ディック・スコパトーン作)の(9)。前曲と同じくユッタリとしたシャッフルのリズム。カナカナとしたマンドリンのトレモロ奏法やマリンバのコロコロとした響き、そして“今、眠っている人を起こさないように静かに歌っているかのような歌声”など、それらの全てが耳に優しい。本当に“青リンゴの木”の下で心地良いひと時を過ごしているかのようなサウンド。


(10)SIT DOWN, YOU'RE ROCKING THE BOAT〜INTERLUDE 【間奏曲】  ▲tracks
 ミュージカル 『 GUYS and DOLLS 』 の曲で、天国行きのボートに乗る夢”を歌った(10)。この(10)、女声コーラスがフィーチャーされた出だしのヴァースが聴き所で、(9)まではどちらかというとサウンドの心地良さや、意匠の面白さ、選曲の妙で聴かせてきた感のある本作の中、このたった40秒ほどのヴァースがとにかく切ない。まぁ、これまでも切ない瞬間はあるにはあったが、ここまでメロウなのはちょっと無かった。そのヴァースが終ってしまうと、生き生きとしたビートに乗ってトランペットやスライド・ホイッスルが登場したりして、いつもの楽しげな雰囲気が戻ってくる。このアレンジを手掛けたのはカービー・ジョンソン。
 インタールードは、これも夢に因んだ曲「I'LL SEE YOU IN MY DREAMS」で、ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルド、ドミー・ドーシー、ベニー・グッドマン、ジャンゴ・ランハルト、チェット・アトキンス、レス・ポールほか、意外なところではダン・ヒックスや、なんと盲目の実験的ジャズ・ピアニスト〜レニー・トリスターノまでがカヴァーしている。


(11)I LOVE YOU, MAMA  ▲tracks
 これも眠たげなシャッフルの(11)。心地良い日差しの中でいつの間にかまどろみの世界へと落ちていきそうな曲。この曲はアレンジのみならず、作詞・作曲もロン・エリオット。


(12)FUNNY HOW LOVE CAN BE  ▲tracks
 ここにきて活きのいい曲が2連発。その1発目はアイヴィー・リーグのカヴァー曲(12)。期待感溢れる重厚なホーン・セクションのイントロから、縦に刻むビートで軽快に飛ばしていく。それにしても50秒を過ぎた辺りから急にヴォーカルの残響感が増すのはどうしてなのだろう?


(13)MAD  ▲tracks
 2発目は、エル・レーベルのキング・オヴ・ルクセンブルグが 『 ROYAL BASTARD 』 でカヴァーしたことでも有名な(13)。ハーブ・アルパートのお得意“擬似サンバ”ビートを格調高くしたような、“ゴージャスな A & M サウンド”で聴き手を魅了してくれる。アレンジはエディー・ケイラム。
 このサウンドと比べてしまうと、キング・オヴ・ルクセンブルグのヴァージョンはいかにも3流ミュージシャンによる演奏に聴こえてしまうが、そのヴァージョンが好きな人は正にその点が魅力なのだろう。
 この(13)、「SOMEONE TO LOVE」というオムニバス(僕は未聴)にティキス名義で収録されている(この曲以外にも5曲を収録)ところを見ると、どうやらずっと彼ら(テッド・テンプルマンとディック・スコパトーン)が温めてきた曲らしい。


(15)THE DRIFTER〜REPRISE  ▲tracks
 最後を飾るのは、今や“ソフト・ロックを代表する名曲”といった感もある、ロジャー・ニコルズ&スモール・サークル・オヴ・フレンヅのカヴァー曲(15)。ニック・デカロによるアレンジ。最近では、チルドレン・コーラスと口笛をフィーチャーしたパイザノ&ラフのカヴァー(『 UNDER THE BLANKET 』 に収録)もポピュラーになってきたのでは。因みに、高野寛も日本語でカヴァーしている(シングル「目覚めの三月」やベスト盤 『 TIMELESS PEACE 』 に収録。プロデュースはトッド・ラングレン!)。
 ほんの短い「DREAM」という曲を挟んで、再び「THE DRIFTER」が流れてくるのだが、この曲を聴くと、実人生の方でも色々な思いが去来してしまうのに、本作の中にあってはアルバム全体を切ない色合いで思い出させてくれる。


 紙ジャケット再発盤にはボーナス・トラックが収録されているけど、トータル・アルバムなので、割愛。


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