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artist : TODD RUNDGREN
title : 『 A CAPPELLA 』
release : 1985年
label : WARNER BROTHERS RECORDS
tracks ( cd ) : (1)BLUE ORPHEUS (2)JOHNEE JINGO (3)PRETENDING TO CARE (4)HODJA (5)LOST HORIZON 【失われた地平線】 (6)SOMETHING TO FALL BACK ON (7)MIRACLE IN THE BAZAAR 【バザールの奇蹟】 (8)LOCKJAW (9)HONEST WORK (10)MIGHTY LOVE
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(5) / side B...(6)〜(10)
musician : TODD RUNDGREN,all vocals.
producer : TODD RUNDGREN
engineer : TODD RUNDGREN
art direction : TODD RUNDGREN
related website : 『 TR-i.COM 』(公式サイト)




 一般的には、“異色アルバム”扱いの作品であるということは承知の上だが、雑多な要素を未整理なまま提示してしまう彼の音楽性を“ゴチャゴチャしてる”と思ってしまう人には、むしろ表現手法が統一されている分、スンナリ楽しめる作品ではないかと思う。

 一部では彼の最高傑作とも言われる本作、トッド自身はかなり売れるはずと見込んでいたのに、結果としては惨敗。でも、本作に因んだア・カペラ隊を引き連れてのライヴはかなりの高評価。

 では、何故本作が売れなかったのだろうか? その答えは、きっとトッド自身が手掛けたジャケットによるところが大きい、というか全てではないかと思う(笑)。特にアメリカでは。僕はこういうふざけたジャケ、結構好きなのだが。しかし、間違っても部屋に飾ろうとは思わない(笑)。


(1)BLUE ORPHEUS  ▲tracks
 インドネシアの音楽〜ガムラン、その中でも“声のガムラン”と言われるケチャを取り入れた(1)。曲が始まって暫くは、硬質で適度な速さのビートに浮遊感漂うメロディーが乗り、若干エキゾチックでミステリアスな“ア・カペラ・プログレ”といった展開を見せながら、徐々に掛け声が“チャ!”になってきて、3分辺りの間奏ではヒップ・ホップのスクラッチ的感覚も兼ね備えたかのような“ケチャ”が披露される。そして、その“ケチャ部”を「チャッ!チャッ!チャッ!」と抜けた後に張り上げられるトッドの声に鳥肌が立つ。
 '81年に発表されたYMOの 『 TECHNODELIC 』 収録の「NEUE TANZ 【新舞踊】」でもケチャがフィーチャーされているが、(8)のYMOっぽさも加味して考えると、「この曲のアイディアの発端として、多少なりともYMOの影響があるような気がしてくる。
 ところで、この曲は“ガムラン”を取り入れた曲だが、ひょっとするとジャケット写真の“学ラン(ガクラン)”は“ガムラン”と引っ掛けたシャレなのだろうか? また、お面の色が青なのはこの曲と何か関係があるのだろうか?
 補足として、タイトルにある“orpheus”というのはギリシャ神話に出てくる琴の名手で、あの映画 『 ORFEU NEGRO 【黒いオルフェ】』 はそのオルフェウスの物語のブラジル(キャストは黒人。琴はギター)・ヴァージョンというわけ。


(2)JOHNEE JINGO  ▲tracks
 労働歌的な感じのする(2)。“jingo”とは“jingoist=盲目的愛国主義者”のことで、そんな愛国心に溢れた少年兵ジョニーが歳をとり、「国とは…、愛国心とは…」と悟っていく様を歌ったトッドなりの反戦歌。
 「ドッド、チャ」というリズムに乗って歌が展開する様は、そのテンポも含めて何となくクイーンの「WE WILL ROCK YOU」(『 NEWS OF THE WORLD 【世界に捧ぐ】』 に収録)っぽい気もするが、クイーンのコーラスの手法を色々と試していたことがあるトッドのこと、クイーンの「WE WILL 〜」をある程度視野に置いていたのかもしれない。しかし、もしかすると白人文化の中にこういった簡素なリズムに合わせて歌う古い習慣でもあるのだろうか? 僕はこういうタイプの曲が結構好きなので、もしこういった感じの曲を集めたCDがあるのなら聴いてみたいものだ。


(3)PRETENDING TO CARE  ▲tracks
 神聖な雰囲気と不思議な雰囲気を併せ持った美しい曲(3)。バックは自身によるコーラスのみで、ビート感は一切ないのだが、そこでのトッドのひたむきな歌唱が胸を打つ。初めは控え目だったバックのコーラスも、曲が進むにつれて大きくなり、サウンド的にはシンプルながらも盛り上がってくる。


(4)HODJA  ▲tracks
 程よいテンポにハンド・クラップが加わった、モロにドゥー・ワップの(4)。踊りの上手な“ホジャ”に「どうやったらうまく踊れるんだい?」と主人公が問い掛ける曲。僕としては本作で一番よく聴いた曲で、本作のベスト・トラックと思う。
 彼と同じくドゥー・ワップに深い愛情を注ぐロック・ミュージシャンとして、10ccから独立したゴドリー&クリームがいるが、この曲には、本作発表前後の彼らの作品の雰囲気と非常に似たものを感じる。


(5)LOST HORIZON 【失われた地平線】  ▲tracks
 ベース・パートのラインに何となくアフリカ的な感触もある、メロウなソウル(5)。ユッタリとしたリズムに乗って、ファルセットを多用したスウィートな歌を展開する。「ウゥ〜ゥッ!」とガナる辺りに、マーヴィン・ゲイの顔がチラついたりもする。
 本作に伴うライヴでは、この曲からマーヴィン・ゲイ・メドレー「WHAT'S GOING ON〜MERCY MERCY ME〜I WANT YOU」に突入していた。その模様は、『 A CAPPELLA TOUR 』で確認できる。また、ボサ・ノヴァ・アレンジを施したセルフ・カヴァー集 『 WITH A TWIST 』 で、マーヴィンの「I WANT YOU」をカヴァーしているところから見ても、彼はフィリー・ソウル好き、ローラ・ニーロ・ファンなだけでなく、かなりのマーヴィン・ゲイ・ファンなのだなということが窺える。


(6)SOMETHING TO FALL BACK ON  ▲tracks
 他者に対して依存的な態度しか取れない主人公をテーマにした曲(6)。テーマとは裏腹に明るくポップで、特にサビの終わりで上下するベース・ラインにはワクワクさせられてしまう。そんな中、途中(1分過ぎ)から入るキーボードはとても高野寛的。というか、彼をプロデュースしたのはトッドなので、“元々トッド的な”と言った方がよいのだろうが(笑)。全体的には、ホール&オーツが歌ってもおかしくない曲調。つまり、フィリー・ソウルっぽいということでもある。


(7)MIRACLE IN THE BAZAAR 【バザールの奇蹟】  ▲tracks
 アラーを称える歌詞を象徴するかのように中近東的な(7)。ドローン(通奏低音)に乗せて、トッドがエキゾチックで宗教的な歌を聴かせる。全体的には声明のようでもある。彼にこういった音楽的興味があるのだったら、今は亡きパキスタンのカッワーリーの歌い手〜ヌスラット・ファテ・アリー・ハーンと彼とで、何かもの凄いモノを作れたんじゃないかなぁ、などということをふと思ったりしてしまう。
 といった具合に、古今東西の“東西”では“東”な雰囲気だが、“古今”で言えば、“今”、そしてそれを通り越して近未来的ですらある。イントロなどは特に“テクノ的”。であるが故に、と言うのも変だが、口ずさめるようなフレイズはなく、どちらかと言うと“SF映画のサウンドトラック”といった雰囲気。


(8)LOCKJAW  ▲tracks
 日本で言えば悪い子を襲いに来る“ナマハゲ”のような、嘘吐きな子供を襲いに来る怪物“LOCKJAW”をテーマにした(8)。そのくせ、最後は「今のは嘘だよ」というオチが付いている。ジャケットで使用されているインドネシアのこの種のお面はナマハゲに似ているという指摘もあるが、この曲のテーマや(1)でのケチャを加味すると、「彼はアジア周辺の文化的繋がりなんかも意識していたのかな?」などと思えてしまう。「ハイッ、ハイッ」と、日本的な掛け声があるのも気になるところ。
 サウンド的にはイントロ辺りはYMO的な感触もあるが、全体的には結構アグレッシヴ。しかし、途中でマヌケな声の語りが入り、ちょっと面白い。


(9)HONEST WORK  ▲tracks
 文字通りの“ア・カペラ”を体現したかの如き、聖歌的な曲(9)。メロディー以外の伴奏部を受け持つパートが一切なく、メロディーに沿ったハーモニーのみが付くという、本作中最もシンプルなアレンジ。そんな聖なる雰囲気とは裏腹に、歌詞は社会から落ちこぼれて惨めに生きる主人公が復活を胸に誓う話。歌詞を読みながら聴くと、むしろこのシンプルさこそが胸にグッとくる。


(10)MIGHTY LOVE  ▲tracks
 スピナーズのカヴァー(10)。(4)と並んでストレイト、かつポップな曲調で、トッドも嬉々としてシャウトをキメている。何と言っても感動するのが、前曲でシミジミした直後の「マイティ・ラ〜〜〜ヴ!」の力強いハーモニー。普通にこの曲のみ切り取って聴くよりも、この流れで聴いた方が感動が倍加する。


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