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FMナイトストリート 1990.8.28 XTC 3日目

 

はい、皆さんこんばんは。伊藤銀次です。今日は「伊藤銀次の夏合宿 ロック大図鑑 夏季集中講座」の3日目ですが、いよいよXTCの歴史の最終回です。4日目は、別枠になっていますから。「ビッグ・エクスプレス」「スカイラーキング」「オレンジズ&レモンズ」のヒストリーをずっと追っていきたいと思っていますので、よろしく。Beat Goes On!

♪XTC「Wake Up

彼らの7作目のアルバム「ザ・ビッグ・エクスプレス」のオープニングに入っている曲です。これは前回の「ママー」と比べると一転してハードな色彩というか、XTCらしさが戻ってきたような鋭さがあって、期待感がつのるアルバムでしたが、イギリスのチャートでは38位と、相変わらず振るいませんね。ここんとこ、非常に「ママー」あたりから、XTCの人気が落ちてきて、一時は「ニューウェイブ期待の星」みたいに言われた時期もあったんですが、それ以降どうもちょっと人気が低迷しているんですね。これは有名なコメントがあるんですが、売上がイマイチなのでそれに関してアンディ・パートリッジが、「ヴァージンの社内に僕たちのファンがたくさんいるんだ。だからこの会社にいられる」というふうな非常に特別視した扱いがありますけども、やっぱりXTCは初期の頃と比べてどんどん曲作りがうまくなってきているし、詩が最初の頃の、薄っぺらいというとおかしいけど、ロックロックしたものから、非常にコンセプチュアルになってきていることは確かであります。

この「ビッグ・エクスプレス」の発売当時は丸い変形ジャケット、ビッグ・ホイール、つまり車輪というか、機関車の部品というか、というふうなジャケットで、「ブラック・シー」のときは潜水夫の格好をしてましたけど、今回は機関士になって顔をススで黒く塗ったりしてます。それに合わせたような、内容もイギリスの小市民的な、まじめに生きてるけどどうもうだつが上がらない人たちにスポットが当てられたような内容の詩が多いです。この「Wake Up」という曲も、普通のサラリーマン的な人の歌ですがね。

さて、続いて2曲目に入っている曲’84年にシングルカットされまして55位までいっております。

♪XTC「All You Pretty Girl」

これもXTCらしいと言えばらしいですが、今までのアルバムに比べて、アレンジメントがすっきりしているにもかかわらず、非常に複雑に聞こえるんですよね。このビッグ・エクスプレスはどの曲も複雑に聞こえるというか、アバンギャルドな色彩がすごく強いんだよね。特にアンディ・パートリッジが全部で11曲くらい書いてるんですよね。コリンが3曲くらいですよね。だからアンディ・パートリッジ色が非常に強い、とんがったレコードですが、そのせいかアンディ・パートリッジがオレンジズ&レモンズを発表したときに「今度のアルバムは僕たちのアルバムではベスト3に入る」と言って他の2枚は「イングリッシュ・セトゥルメント」とこの「ビッグ・エクスプレス」だというふうに語っていましたけどね。ビッグ・エクスプレスのファンの人たちはいるでしょうか?僕は非常に姿勢は買うんですが、ベスト3には入ってません。でも過激性っていう意味では、非常に後期に向かう一つの勢いになってるのかもしれませんがね。

さっきの「Wake Up」もシングルカットされていますが、チャートインしていません。このあたり人気としてのXTCの低迷ぶりがうかがわれますよね。やっぱり彼ら自身が非常にレイ・デイビス的な諧謔(かいぎゃく)の世界に詩が入っているので、次から次へと出てくる若いジェネレーションの心をつかむような詩でなくなってきてるということは確かなのかなという気がしますけどね。でもやっぱり、こういうちょっと屈折した音楽が好きな人たちにとってはたまらない音楽ですよね。僕も非常にこの感慨越智的な詩が好きですけどね。

それでは続いてこれもシングルカットされていますが、チャートインしていません。

♪XTC 「This World Over」

さて続いていよいよ、トッド、ラングレンとのコラボレーションですね。「スカイラーキング」に入っていきたいと思いますが、これはなんと、ほぼ2年に近いブランクがあって発売されましたけどね。いよいよXTCのアメリカ進出ということが問題になっていたわけですよね。この間にポリスだとか、いろんなグループが順を追ってアメリカに進出していってみんな成功したんだけど、大物であるXTCは非常に二の足を踏んでいた。サウンド的に非常にアメリカ的でない。もっともこれほどイギリス的なグループはないですからね。イギリスの中でも偏屈な音作りのグループ、どうやってアメリカへ進出するかっていうのは非常に難しかったんじゃないかと思うんだよね。本人たちも、自分たちは絶対向こうでは無理なんじゃないかと、絶対に売れるわけがないと言ってたみたいなんですが、ヴァージンレコード側がXTCを説得して、アメリカ人のプロデューサーでやれば売れるんじゃないかと言う事でいろいろたくさんのプロデューサーの名前を挙げたそうですが、その中にアンディ・パートリッジが知ってた人が一人も居なくて、そこでコリンが推薦したのがトッド・ラングレンだったんです。これはコリンとかがトッド・ラングレンの大ファンで、なんと言ってもトッド・ラングレン自身がビートルズのファンで、「ストロベリーフィールズフォーエヴァー」のカバーを演ってたりするところが、非常に屈折したところで合ってるというかね。でもアンディは、あんまり興味を持っていなかったみたいですよね。そしてレコーディングが始まって出来た作品が「スカイラーキング」ですが、これは今までのXTCのサウンドプラス、なんというのかねー、イギリス的な暗さではなくてアメリカのフラワーサウンドの持つ華やかさが加わって、実に華のあるアルバムになったんですよね。

まずこの中からこの曲を聴いて頂きたいと思います。

♪XTC「Grass」

このサウンドは今までのXTCでは1回も聴いたことのない独自のサウンドですけど、生の弦もふんだんに使われていて、非常にその雰囲気が、サージェント・ペパーズを思わせたのが非常にウケた所ですね。確かにアメリカではこのアルバムは非常にウケました。カレッジチャートでも非常に人気があったようですがね。でも実際の作業ではトッド・ラングレンとアンディ・パートリッジが非常に衝突を繰り返したようで、トッド・ラングレンのことを好きなのは、デイヴ・グレゴリーとコリンなんですね。この二人はもう、大好きで、なんせトッドのスタジオへ行った時に、あまりの古臭いスタジオでXTCが驚いたんですが、コリンなんかは、「や〜、こんな古いスタジオで、あんな音が作れるんだから、やっぱトッドはすごいよなー」なんて驚いてたみたいですが、アンディは終始諧謔「んー、どうも、んー、いいのかなー」みたいな感じで結構衝突したみたいですね。しかもトッド・ラングレンは、ミキシングする時とかトラックダウンをする時はメンバーを入れずに自分独りでやるという人で、それも気にくわなかったみたいですがね。アンディがそのころのことをこういうふうに言ってますが、「トッド、ラングレンはお医者さんで、スカイラーキングという作品が赤ん坊だ」と。「それで私は赤ん坊の父親だ」と。「その赤ん坊の病気をめぐって医者と父親が口論した。」と言う感じがね。でもまあその甲斐があって非常に独特の緊張感のあるアルバムが生まれました。というのは、トッド、ラングレンもいろんな人をプロデュースしてますが、同時期に「ブルジョア・タッグ」というアルバムもありましたけど、「ブルジョア・タッグ」の場合ははっきり言ってトッド・ラングレンが、寄り切っている感じがするんだけど、このアルバムは、トッドとXTCがお互い譲ってないという所が非常にすばらしいアルバムを作ってまして、僕はこのアルバムは非常に評価しております。

それでは、この中からまたシングルカットされたナンバーですが、

♪XTC「The Meeting Place」

なんかスタジオにこもってずっと作り始めたXTCが、ようやくのことになんとなくスタジオ的な、完成度の高いアルバムをだんだん作れて来ているというわけで、ライブをやめた直後の「ビッグ・エクスプレス」というのは、どことなくこうしっくりこない固さがありましたけど、今回はいいプロデューサーに恵まれたという気がありますが、

さて、続いては2曲続けて、このアルバムから紹介したいと思います。とにかくこのアルバム何がいいって、明るいんですよねー。XTCのアルバム、イギリスとアメリカでずいぶん内容が違ったりするんですが、今回「スカイラーキング」の中では、アメリカのスカイラーキングの中には「Dear God」というシングルが、結構カレッジチャートですごく人気があったもんで、収められていますが、イギリス盤、そして日本盤の方にはこれが入ってなくて「マーメイド・スマイル」という曲が入ってるんですね。だからこれ、両方持ってないと、一つになんないっていう、まったくこの!他は全部重なっているというのに。だから今もう「Dear God」のシングルなんて、貴重版もいいとこですよねー。黒盤ですけど。そして、これもスマッシュヒットというか、なかなか僕、ポップなナンバーで好きですが、「That‘s Really Supergirl」2曲続けてどうぞ。

♪XTC「Dear God」

♪XTC「That‘s Really Super,Supergirl」

この「Super,Supergirl」なんかは、本当にXTCとトッド・ラングレンの接点で整理している音楽という感じですけどね。

さて、いよいよXTCのメインラインの中では最後、最新アルバムになってしまいますが、「オレンジズ&レモンズ」、いや〜、これほど売れた、日本でですよ。(笑)これほど売れたレコードはないでしょうねー。かの、六本木のウェーブなんかでは平積みしていました。この番組のリスナーである、Silverboy君がロンドンに行ったときには平積みもしていなかったという、日本で一番人気のあるXTCということで、実はヴァージンの裏から仕入れた話ですが、この、「オレンジズ&レモンズ」が売れなければ、ヴァージンとの契約も危なかったというXTC、起死回生!何とか世界で売れたようですね。ということで、こんなこと言って、XTCファンに水をかけたようですが、リアルにお届けしていますがね。それではこの中から、もうこの曲本当によく聴きましたけどね。もう一回また聴きたいと思います。

♪XTC「Mayor Of Sympleton」

今回は、前回のトッド・ラングレンのプロデュースしたアルバムと比べると、わりとバンドっぽくなったっていう感じがしますけれど、でもドラムは生ドラムじゃなかったりするわけで、この辺が面白いところですよね。この「オレンジズ&レモンズ」は生ドラムではなく、打ち込みなんですね。だけど、すごくバンドっぽいという。前回は非常に密室的な「サージェント・ペッパーズ」的なアルバムだったために、よりアクティブな、そしてポップなものを作らなきゃいけないっていう要求があったんだと思いますが。

そう、今回は、アメリカレコーディングなんですよ。前回と同じ。ロサンジェルスでレコーディングしてますが、この時の面白い話があって、ずっとアンディ・パートリッジは帽子をかぶって歩いていたそうですね。暑いので。太陽が嫌いなんですね。(笑)どうも太陽サンサンが嫌いで、5ヶ月居たけれど一度もスイミングプールに泳ぎに行かなかったという、雨とか霧とかそういうものが好きだというわけですがね。本当にアンディ・パートリッジは面白い人でね。’82年にステージをやめて以来、ずーっと、自分の故郷のスウィンドンという所にこもったきりで、自分の家でデモテープを作るような生活を続けてるわけですよね。ライブをやめたことに関しても全然後悔していないという、「お客さんとのコミュニケーションについてはどう思う」と言ったら「いや、ステージをやってる時からコミュニケーションなんかは全く無かった」と。「大体あんなステージと客席が離れてて、どうやってコミュニケーションを取るんだ」というね。要するに「コンサートはただの集団ヒステリーみたいなもんで、自分の見たいヒーローを実物で見れるということでお客が興奮しているだけだ。フットボールやボクシングの試合と同じものであって、コミュニケーションとは何も関わりの無いものだ」というふうに言ってるんですね。いやほんとに。ただ彼は、非常にレコードを通してのコミュニケーションというのはものすごく信じていて、「自分たちが作っているレコードというのは、作家にとっての本とか、絵描きにとっての絵と同じようなものである」ということで、「僕たちはそれを非常に大事にしている」と。「僕たちが朝、何を食べるとかどんな趣味だとかいうことは関係なくて、僕たちが作っている音楽を通してコミュニケーションを取っていきたい」という、この辺がXTCらしいという気がしますよね。自分のタイプについても、「僕はどっちかというとアクティブな人間ではなくて、図書館員とか、そういう思索家タイプの人間なんだ。見てて分かるだろう?」というふうに言ってるんですよね。だから僕これなんかすごく分かるんだよね。何もロックは、毛むくじゃらでゴリラみたいな人がやるのが必ずしもロックじゃないと。家で本を読んだり、ミステリーを楽しむような人のためのロックがあってもいいんじゃないかと。XTCこそ、本の好きな人のためのロックではないかという気がするんだよ。本当にこれは、心励まされる気がしますよね。僕も本当、そういうタイプの人間ですね。

それでは次の曲に行きたいと思います。これもシングル・カットされてますよね。変形シングルって言うのかな。これはファンの間では非常に話題を呼びましたね。

♪XTC 「King For Day」

ということでお届けしてきましたけど、XTCの、何と言うかイギリス独特の伝統を重んじた頑面さと、それとパンクバンドから出て来たという革新的な部分とのギャップで出来てる音楽が、僕は最もイギリス的で好きなんですよね。もうキンクスとか、あの辺からずっと伝統的ですけどね。パンク野郎がここまで音楽を作り上げることが出来たということで、なかなかのもんですが。それでは、もう一曲「オレンジズ&レモンズ」からいきたいと思いますが、あ、もうちょっと喋ってくれって言うことですね。はい、生番組は難しいですね。

アンディ・パートリッジは「自分が王様になったら、飛行機とか、そういうものはやめて、テレビも必需品とは思えない、やめたい。馬や牛を遣わして、飛行機よりは気球で旅したい」と、こういう人なんですよね。僕もすごくこれ共感を覚えますがね。「やっぱり若い頃は非常に腹立たしい音楽とか、パンキーなことをやっていたけど、だんだん今はそういう音楽をやりたいとは思わない。良い良いレコードを作っていきたい」という、そういう、自然に年を取ってきてるという感じがしますけど。

それでは、この中から

♪XTC「The Loving」

♪XTC「Chalkhills And Children」

はい、今バックには「オレンジズ&レモンズ」の一番最後に入っている曲が流れています。僕これ結構好きなんですよ。ビーチボーイズっぽいんですよねー。末期の頃のね。

さて、XTC最新情報としては、XTC「Exproad Together」という、以前の’78年から’80年までのダブ、エクスペリメンツを集めたCDが発売されたばかりです。そして、近々「ラグーン・ボーン・バフェット」という、B面とか、そういったものを集めたものが出るようですので、そちらのほうも楽しみなところですが、このあとは、アンディ・パートリッジのプロデュース作品なんかを紹介したいと思います。

さて、明日ですが、「伊藤銀次の夏合宿 ロック大図鑑 夏季集中講座」はいよいよ4日目に突入して、最終日になります。そして、XTCのメインラインのヒストリーはここまで来ましたが、「ザ・デュークス・オブ・ストラトスフェア」という、最大のプロジェクトが残っております。この裏XTCの全貌について、銀次が、メスをばっちり当てて解剖したいと思いますので、ぜひ、お楽しみに。大特集であります。


このXTC拾遺集っていうのは、XTCのメインラインから外れてはいますが、非常に大事な落とせない作品というのを、別枠で御紹介しています。

日本人をアンディ・パートリッジがプロデュースしてるっていうのは鈴木さえ子だけですよね。初めてXTCのメンバーが日本人をプロデュースしたわけですが、1987年、「スタジオ・ロマンチスト」というアルバムの中の作品を手がけています。今日お届けするこの曲は、サンダークラップニューマンの「Something In The Air」という曲なんですが、このプロデュースを頼むときに、鈴木さえ子が例の「スカイラーキング」のアルバムを聴いて、そのなかのストリングスが非常に気に入ってプロデュースを頼んだんです。デイヴ・グレゴリーのストリングスアレンジですがね。このアルバムではデイヴ・グレゴリーもストリングスを担当しています。そしてアンディ・パートリッジはギターを弾き、なおかつバッキングボーカル、ベースも弾き、パーカッションも弾いています。そして、鈴木さえ子と共にプロデュースをしているわけです。

♪鈴木さえ子「Something In The Air」

なかなかアバンギャルドな作品でしたね。途中でなんか「ストロベリーフィールズ」が聴こえたような気がしましたけど、著作権は一体どうなってるんでしょうか?ということで非常に弦の感じ、「スカイラーキング」の中の弦と非常に良く似ていましたよね。

さて続けて今度は鈴木さえ子の同じアルバムの中に収められていますが「Happy Families」。実はこれはアンディ・パートリッジがこの時書き下ろした曲なんですね。もちろん英語で書いた曲をピーター・バラカンさんが日本語に訳して、それを鈴木慶一と鈴木さえ子がよりこなれた日本語に、だからま、3人で共作したようなもんですかねー。日本詩を。日本語の詩は非常に不思議な、面白い詩ですが、これはのちに本人が気に入って、アンディ・パートリッジが、XTCとしても取り上げて彼らの「オレンジズ&レモンズ」の中からの2枚目のシングルカットナンバー「King For Day」の12インチの中に「Happy Families」のXTC版が入っていると。さらにこの「Happy Families」は「スリーメン・アンド・ベイビー」という映画のサントラの中にも使われたということでですね、チャンチャン!ということで、これは非常に珍しいことですよね。人に書き下ろした作品を、また自分でも取り上げているということで、非常にXTCのほうの「Happy Families」は入手が難しくなっていますがね。ということで、今日お届けするのは、鈴木さえ子の「Happy Families」

♪鈴木さえ子「Happy Families」

なかなかの作品でしたね。結構原詩に忠実な訳ですが、これは注釈がないとさっぱり分からないと思いますがね。歌詞カードになかなか面白い注釈があって、私は一人で楽しんでおりましたが。これドラムのサンプリングからほとんどの楽器全部彼らが手がけるという、なかなかリキの入った、よっぽど気に入ったんでしょうね。

さて続いては1990年、ライラック・タイムを手がけたものから聴いてみたいと思いますがね。ライラック・タイムのサードアルバム「And Love For All」というアルバムですが、これプロデューサーはジョン・レッキーとかステファン・ダフィ自身、アンディ・パートリッジ自身の一緒くたになっていますがね。やっぱり、アンディ・パートリッジが入ると、非常に音が特徴的なので分かりますよね。前のアルバムでは非常にネオアコっぽい、そして、ちょっとイギリスのトラッドっぽい暗さも交えた割とストレート線でしたが、んー、アンディ、パートリッジが入った瞬間にこんなふうになってしまうんですね。

♪ザ・ライラック・タイム「All For Love & Love For All」

この作品はアンディ、パートリッジがプロデュースをして、ミックスをジョン・レッキーがやっておりますがね。この辺はやっぱり、デュークスのコラボレーションチームだけあって、息が合ってますがね。途中なんかビートルズの「I Should Have known Better」のハーモニカが聞こえたような気がしたんですがね。私の空耳でしょうか?

さて、続いて、これはすごいんですよ。アルバムタイトルが「1967」ですがね。「Throgh The looking Grass」という、イマジナリー・レコーズという、インディーズから出ているんですが、これは1967年の数々のヒット曲をいろんなグループがコンピレーションで取り上げてるんですがね。例えばドアーズの「ブレイク・オン・スルー」とか、「20 センチュリー・フォックス」とか、トゥモローの「マイ・ホワイト・バイスクル」、ラブの「セブン&セブンニーズ」、それからジェームス&ボビー・ピュールファイの「アイム・ユア・パペット」それからビートルズの「ストロベリー・フィールズ」そしてクリームの「ストレンジ・ブルー」、「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」グレン・キャンベルの「ジェントル・オン・マイ・マインド」ナンシー・シナトラのこれは007の主題歌「ユー・オンリー・リブ・トワイス」ソニー&シェールの「ザ・ビート・ゴーズ・オン」とかね。全部で14曲入ってますが、これの中になんと、XTCのコリンの、バンドというよりもこれは一人でやっているんだと思います。なんせXTCのメンバー、特にコリンとデイヴは過去の60年代のヒット曲を、自分たちの家でデモテープを作るのが大好きで有名な話ですが、これはコリンが多分一人でずっとスタジオで作った音だと思いますが、これが良く出来ております。ひょっとしたら、トッド・ラングレンよりも良く出来ているかもしれません。ただし、コリンの歌はあまり耳慣れていませんよね。なんとなく、リンゴ・スターの歌う、ビートルズといった感じがありますけど、コリンズ・ハーミッツというグループ名になっております。

♪コリンズ・ハーミッツ「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」

んー、なかなかオタッキーな奴め。苦心してますよね、最後の所がね。いろんな解釈があると思いますがね。なかなか入手が難しいかもしれませんがね。

 


FMナイトストリート 1990.8.30 XTC 4日目

 

はい、皆さんこんばんは。伊藤銀次です。いよいよ、私の講義も今日が最終回でございましてですね。XTCの第四回目ですが、今日はXTCの隠れプロジェクトですね。デュークス・オブ・ストラトスフェアの周辺に迫って、これを初めて聴いた人は何のことかさっぱり分からないと思いますが、その辺については中に入っておいおいと語っていきたいと思います。2枚のアルバム、今は1枚でCD化されておりますが、全部で16曲、この16曲の影に、数々の60年代のイギリスとかアメリカのロックが隠れているという、これを暴いてみせようということで、よろしく、Beat Goes On!

はいそれでは曲を聴く前に、デュークス・オブ・ストラトスフェア、「成層圏の公爵たち」という、何のことかというと、公爵っていうのは男爵、伯爵のあの公爵ですよね。こういう意味のバンドで、これは実はXTCが1970年代にヘリウム・キッズというバンドから名前を変える時に、XTCと、もう一つのバンドの名前候補だったのが、このデュークス・オブ・ストラトスフェアだったわけです。その時はXTCという名前が選ばれて、デュークス・オブ・ストラトスフェアというアイデアは眠っていたんですが、1984年ですね、アンディ・パートリッジがミキサーのジョン・レッキーと「メアリー・マーガレット・オハラ」というカナダ人のシンガーのLPを手がけるんですが、3日でお払い箱になりまして、まるまる一ヶ月暇になったと。そこでちょうど、アンディがサイケデリック・プロジェクトのために温めていた3曲があって、その3曲をレコーディングしようかということになったんです。ジョン・レッキーと共にね。残ったXTCのメンバーと。それが「25 O’clock」の製作だったわけですがね。それがきっかけとなったわけで、発表された時は、デュークス・オブ・ストラトスフェアは、あくまでも変名、全員が名前を変えて、例えば、アンディ・パートリッジは「サー・ジョー・ジョーンズ」、ベースのコリンは「ザ・レッド・カーテン」、デイヴは「ロード・コーネリアス・プラン」という、非常に変わった名前でスタートしたわけです。最初、このアルバムの製作の時にはヴァージンは全然乗ってなかったんですが、1枚目が売れて、2枚目が結構また売れたので、ようやく認めてくれたということです。1984年に「25 O’clock」、1987年に「ソニック・サンスポット」と、この2枚しか発売されていませんが、この全部の16曲が、のちに「チップス・フロム・ザ・チョコレート・ファイヤーボール」という形でCD化されて、これが今僕たちの手に入るわけですがね。それでは、まず、この中からタイトル曲ですね。「25 O'clock」を聴いていただきましょう。

♪ザ・デュークス・オブ・ストラトスフェア「25 O’clock」

このアルバム、全体に、1960年代後半のサイケデリックとか、フラワーサウンドとか、いろんなグループのパロディーというか、非常にオリジナリティーにあふれたパロディーといった色彩を帯びているわけですが、どういう曲を元にしているかというのを、今日は暴いていきたいと思います。それによって、XTCの音楽的な造詣の深さと、構成力のすごさというのをじっくりと分かっていただきたいですが、まずこの「25 O’clock」の全体の曲調、これは多分これをもとにしているのではないかという曲があります。エレクトリック・プルーンズ「アイ・ハッド・トゥ・マッチ・トゥ・ドリーム・ラスト・ナイト」これはもう、クリソツという感じがありますけどね。でもよく聴くと、エレクトリック・プルーンズもローリング・ストーンズの「黒くぬれ」に似ている雰囲気がしますけどね。ということでこれをベーシックにして「25 O'clock」を作ったわけですが、まだこれだけではないんですよね。「25 O'clock」のオープニングの柱時計の音、これはどっかで聴いたことありませんかねー。あれですよ。あの、プログレの大グループ、ピンク、フロイド「狂気」のアルバムの中の時計の音をパクってるんですよね。この辺がなかなか分かりにくいですが、さて、それから「25 O’clock」の間奏なんですけど、これ非常にサイケですよねー。これ、最初にペラペラのオルガンが入ってきます。そして途中でバトンタッチして、ギターになるんだけど、このなんかラーガ奏法と言うかね、この辺の感じ、どっかで聴いたことあるんだよね。ドアーズ「ライト・マイ・ファイア」の間奏、最初にキーボードから始まって、そしてギターに渡していくという、ということで1曲目からこういうふうな具合になっているわけですが、どんどんいきたいと思います。

2曲目の「Bike Ride To The Moon」という曲は、ぱっと聴いた感じ、僕はザ・ムーヴの「ファイアーブリゲード」かなと思ったんですが、これちょっと確証がありません。

はい、飛ばしてですね。その次、「My Love Explodes」という曲ですけど、イントロがちょっとくせものなんですよ。これがどう聴いても、ヤードバーズにしか聴こえないんだ僕は。歌い方といい、イントロのフレーズといい、このイントロのフレーズ、非常にジェフ・ベックっぽいんですが、いったい何に似てるのかなと、いろいろ聴いてみたんですが、はっきり似てるものってないんだけど、なんとなくこの辺に似てるんだよね。ヤードバーズの「まぼろしの10年」のイントロ。フレーズは全く同じではありませんが、精神的には全く同じものですね。それにしてもやっぱりイギリス人てのはいいですよね。歌い方がまるっきり同じだという気がしますよね。これは、キース、レルフというヤードバーズのボーカルですが、もうアンディ・パートリッジと同じような歌い方をしてます。さて、もう一曲、ヤードバーズの「ハートフル・オブ・ソウル」という曲ですが、この2曲を足して割ったような雰囲気がデュークスの「マイ・ラヴ・エクスプローズ」のイントロという気がするんだけど、ね、なんかそういう感じがするでしょ。非常に2つの感じが合成されたような、この辺が手が込んでるんだよね。ま、全体的に、デュークスの16曲、どれがどれとも言えないところ、だから深いところで非常に音楽をつかんでて、雰囲気を、うまく合成した感じで出しているところがなかなかXTCはすごいなと思いますけどね。さてこのエンディングです。ピンク・フロイドの「狂気」のある部分を聴いてみましょう。狂気という曲は1曲目からずーっとつながってるんですが、途中で飛行機が墜落して爆発するようなシーンがあるんですね。これと同じようなエンディングなんだよね。ということで、けっこうピンク・フロイドってのはこのアルバムに非常に影を投げかけている感じがしますけどね。

次は「What In The World?」を聴いてみましょう。さて、この雰囲気の曲は、ビートルズにありましたね。ビートルズの「レイン」この、ポール・マッカートニーのベースランニング、この雰囲気、このオケ、というかリズム隊ね。このリズムに、同じビートルズの曲で、「トゥモロー・ネバー・ノウズ」という曲があるんですが、「レイン」と同じ頃ですよね。テープの逆回転とか、いろんな電子音を使ったということで、この当時は話題になりましたけど、これをさっきの「レイン」のベーシックに使うと非常に「ホワット・イン・ザ・ワールド」っぽくなるんです。もう一個エフェクト類としてはローリング・ストーンズの「2000光年の彼方に」という曲のエフェクトが近いんだよね。後ろのヒュ〜っていう、メロトロンだと思うんだけども、もうメロトロンっていう楽器は今は。全く使われておりません。禁止になっちゃったんだよ、メロトロンは。クラシックのほうから苦情がついてですね。ま、そんな話はどうでもいいんですが、というふうに、非常に何曲も合成してあるわけですが、このエフェクト非常に感じ近いよね。非常にサイケデリックっぽいというわけですがね。

さて続いて今度は5曲目の「Your Gold Dress」という曲ですがね。このイントロと全くと言っていいほど同じのがあるんだよね。キンクスの「キング・コング」ちょっとT−レックスっぽいですけど、こっちのほうが先ですね。非常にこの雰囲気しますよね。それと「ユア・ゴールド・ドレス」のピアノの部分が非常に、ローリング・ストーンズの「シーズ・ア・レインボー」に似てるんですが、これ、ニッキー・ホープキンスという人が弾いています。が、これが、「ユア・ゴールド・ドレス」の中に登場します。

さて、続いて今度は、「The Mole From The Ministry」という、6曲目ですが、ザ・モールっていうのはモグラですよね。ま、動物の名前が出てきてますけど、これに関係のある歌は、実はビートルズの歌の中にありますが、これも同じく動物が出てきます。これ結構2つの部分からなってますよね。後半のリズムが入ってきたところの部分ていうのはビートルズの「アイ・アム・ザ・ウォルラス」私はセイウチ)、さっきのデュークスのほうはモグラですよね。この辺なんかもちょっとこう、掛けてあるような気がするのですがね。さて、この「ザ・モール・フロム・ザ・ミニストリー」のエンディングでもさらにビートルズのトリックを使っております。それはですね。最初の逆回転になって戻ってくるのは「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」のエンディングですね。テープ逆回転とかいろんな音を入れて、しかも声をピッチ高く取って落として聞かせたりとかですね。デュークスの場合はそれにさらに、細かいこと言いますけど、ナポレオン14世のハハヒヒというものも加えているという、こんな細かいこともやってますけど。そして、1回なくなってから、しばらく沈黙があって出てくるやつは「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の一番最後の曲「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」のエンディングですよね。この2つを使ってるんですよね。これなかなかすごいですよね。これだけでもすごい時間かかったと思うけどね。この2つ再現するだけでもね。

はい、ここまでで、いちおうオリジナルで発売された6曲入りミニアルバム「25 O’clock」が終わったわけです。いや〜、なかなか要素濃かったですね。これが結構売れたんですよ。ヴァージンレコードの予想に反して。XTCのオリジナルアルバムよりも売れたという噂もありますけどね。

そして続けて今度は、3年後に発売された「ソニック・サンスポット」これにいきたいと思いますがね。

1曲目に入っていたのが、「Vanishing Girl」という、これ結構ポップな曲なんですよね。これは、彼ら自身のコメントがあるんです。「これは、ホリーズの線を狙った」と。僕は、何の曲かわかんなかったんだけど、いろいろ聴いてみたんですが、そういわれてみればこれかなと思う曲があったんですがね。じゃあまず、「バニシング・ガール」のイントロを聴いてみましょう。なかなかいい曲ですよね。非常にポップ、チューンですが、これにもいろんな要素が絡まってて、もちろんそっくり真似して作ろうという精神ではなくて、なんとなく精神的にホリーズ的だというところで作ったんだと思うんですけどね。一番近いかなと思ったのは「ルックス・ルーウェニー・ウインドウ」という曲なんですけどね。ギターのイントロで始まるところとか、この歌の感じは非常に近いですよね。ただ「バニシング・ガール」の場合ってのはなんとなく「ライオンが寝ている」に似ているんですが、これはまあ、偶然の一致だと思いますけどね。

さて、続いて今度は、「Have You Seen Jakie?」という曲ですが、これは実は貴重な彼らのコメントがあるんです。これは実はもともと「シドニーを見たかい?」というタイトルだったそうですね。「ハブ・ユー・シーン・シドニー」つまりこれはピンクフロイドのオリジナルメンバーのシド・バレットのことなんだそうです。で、ここにはいろんな曲が混じっているというふうなことが書いてあるけど、特に詩に関してはですね、キース・ウエストやらいろんなそういうものが混じっているそうですが、僕自身は聴いてみたんだけど、これは結構初期のころのピンク・フロイドの感じがするんだけど具体的にどれということは指摘できませんでした。

さて、続いて今度は「Little Lighthouse」という曲にいきたいんですが、これは笑えます。これはさっきの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」と「ストロベリー・フィールズ」と同じくらい細かいことをして喜んでおりますが、まず、「リトル・ライトハウス」のイントロを聴いてみましょう。「小さな灯台」というだけあって、港のボ〜ッというふうな汽笛の音が入ってますが、これ俺初めて聴いた時に、どっかで聴いたことあるなーこれと思って、いろいろレコード探してみたら、あったですよ。なんと1960年代の後半に出たスティーヴ・ミラーバンドの「セイラー」というアルバムのオープニング。こんなことやっても誰もわかんないと思いますがね。でもXTCはイギリスのグループなのに、イギリスでそんなに人気のなかったスティーヴ・ミラーバンドのレコードをコレクションしているというのは、これはすごいですよ。しかもこの、デュークスの2つのアルバムを1つにしたCDのジャケット、これに波目模様の、サイケ何ていうかな、サイケデザインみたいなのを使っているんですが、これは実はスティーヴ・ミラーバンドのファーストアルバム、これのサイケデザインと全く同じなんですね。こういう細かいことをやってるというのはなかなかファン泣かせでですね、ウルウルきちゃいますけどね。

さて、続いては「You’re A Good Man Albert Broun」アルバートブラウン、おまえさんはほんとにいい男だね、というタイトルです。これは割とキンクスとかが得意とするパブ・ナンバーというのかね、パブなんかで古ぼけたピアノでおじさんが歌ってみんなでワーッて歌うような曲ですがね。この曲が始まるまでに、短い、ストーリーみたいな、女の子がなんか喋ってるんですよ。女の子と、妖精くんかなんかの会話みたいになってるんですが、それをちょっと聴いてみましょう。なんとなく不思議の国のアリスみたいですよね。アリスと虫が話しているような感じがしましたが、さて、これのイントロで流れてた雰囲気の曲があるんですよ。実はトラフィックというグループがあったんですが、非常にサイケデリックとかに貢献しているグループ、ま、サイケというよりはウエストコーストの、フラワーっぽいんですよね。このトラフィックの「フォーリン・マイ・シュー」という曲があるんですが、これは同じように非常にきれいな、マシュマロっぽいようなお菓子のような世界というかね。エレファントが出て来たりとかするファンタジーな世界なのですが、これの間奏で、今と同じような少女のトーキングが入ってるんですよね。非常に不思議の国のアリス的光景ですけどね。このあたりからインスパイアされてるのではないかと思います。ま、「You’re A Good Man Albert Broun」自体はキンクスとかの曲じゃないかなと思うんだけど、僕はどれだかわかんなかったです。

さて、今度は11曲目ですね。「Collodeascope」この曲はモロですね。ザ・ムーヴの「ブラックベリー・ウェイ」これもいい曲ですけどね。本人たちのコメントでは、「これは、ムーヴみたいに聴こえるけど、実は(ビートルズをパクったムーヴ)という雰囲気でやった」というふうに言ってますけどね。これがなかなかひねくれてて面白いよね。

今度は続いて12曲目「You’re My Drug」なんかヤバそうなタイトルですけどね。これをちょっと聴いてみようかね。非常にラテンっぽいていうかね、これは最初聴いた時にすぐに分かりました。ザ・バーズの「So You Want Be A Rock’n Roll Star」ですね。これの感じですよね。イントロの12弦ギターのフレーズとか、これはモロ、XTCがバーズをやったという感じです。でもなんとなく、「You ’re My Drug」にはもうちょっとマイナーな雰囲気がしたよね。あのマイナーの感じは一体何なんでしょうね?実は、あるんですよ、これが。アニマルズというグループが、バーズをパクって作った、あ、こんなこと言っちゃいけない(笑)アニマルズ「モンタレー」という曲なんですよ。これは、エリック・バートン&アニマルズというグループのですね。この人たちは「観光ロックグループ」とも言われています。そんなことないか?こういうサンフランシスコとかモンタレーのことを歌で宣伝して回ったグループですけどね。モンタレー・ポップ・フェスティバルの非常にすごい光景を説明してるわけだよね。というふうにアニマルズのベースランを「You ’re My Drug」で使っていると。つまり、アニマルズは、なぜこのバーズの「So You Want Be A Rock’n Roll Star」を持ってきたかというと、この日、バーズが出てたわけだ、モンタレーにね。だからバーズのこの曲をベーシックに使いながら「モンタレー」を作ったわけですよ。その2つ、元祖と、そのあとの両方をこの「You ’re My Drug」に使うという、手の込んだことをしているわけです、XTCはね。これなかなか大滝さんが喜びそうな手口ですがね。大滝さんもそうです、いつも3,4曲混ぜるわけで、これはなかなか憎いところがありますが。

さて、続いては「Shinycage」という曲ですがね。この曲の雰囲気はビートルズ「I’m  Only Sleeping」でしょう。実はこのエンディングも特にすごいんですが、エンディングに、シタールのフレーズが出てくるんですよね。これが、「Shinycage」のエンディングで同じなんですよ。

♪伊藤銀次「ミスター・グレイマンの憂鬱」

ぜひ、これを機会に、教科書のほう、デューク・オブ・ストラトスフェア、こちらを購入していただいて、自分の耳で実際に確かめていただくと、このへんのXTCのすごさがさらに分かるんじゃないかと思います。今日のはあくまで皆さんの音楽的なガイドとして聴いていただければ、何しろ生放送でやるっていうのは本当大変なことでね、シッチャカメッチャカになってますけどね。何とかこの熱意が伝わっていただければ、向こうでスティーヴ(←ディレクター)も、平身低頭しておりますがね(笑)。ということで、このあと補習が待っておりますので、よろしく。


はい、これは14曲目になりますね。デュークスの「Braniac’s Daughter」ですね。これは、どう聴いてもビートルズの曲ですよね。特にポール・マッカートニーが作りそうな曲です。彼ら自身の、アンディとデイヴの曲目解説によると「イエロー・サブマリンや、サージェント・ペッパーズのころのポールマッカートニーが曲を書いているという感じ」だと、’67年か’68年くらい、「わざとマッカートニー的な要素をいっぱい盛り込んである」と。「ピアノの軽いタッチとか、コードがどんどん下りていく感じとかね、それからファルセットのボーカルが入ってたり、非常に意味のない、どうでもいいようなナンセンスな歌詞とか、そっくりだろう」と言って、だからまあ、具体的にどこかなってことないんだよね。僕も今このインタビューを読んで、サージェント・ペッパーズとか、イエローサブマリンとか聴いたんだけど、具体的にこれっぽい曲ていうのはない。強いて言うならば、「マーサ・マイ・ディア」とかね、このあたりが一番雰囲気が近いんだけど、まっ、でも何ていうのかな、ポール・マッカートニーにデュークスがなりきって新曲を作ったというところでは非常によく出来た曲ですね。これはね。イントロにもさっき聴いてた例の女の子のね、トーキングみたいなのがありましたね。これもまあ、「フォーリン・マイ・シュー」あたりと同じでしょうね。

さて、どんどんいきたいと思いますが、続いては15曲目、「The Affliated」という曲ですけどね。これはまあ、僕はどうってことないような曲だと思うんですが、2つの部分からなって、途中でテンポチェンジしてですね、間奏みたいなところでいきなりラテンっぽいのが出てきますが、それを聴いてみましょうかね。この途中からいきなりテンポ変わりましたよね。この途中から変わったところが、ユニット・フォー・プラス2の「コンクリート&クレー」というのに非常によく似ています。ギターのフレーズとか、よく似ているんですが、これはまあ意図的にやったというより、偶然そうなったんじゃないかなという気がしますけどね。この辺がなかなか面白いですよね。

さて、いよいよ最後の曲ですけどね。これが結構いい曲なんですよ。どういう意味でいい曲かというと、今から言っちゃいますけど、ビーチボーイズに対するオマージュなんですよね。ビーチボーイズを、これだけ好きだぞと、俺たちは。なぜかというと、ビーチボーイズっていうのは大体、普通一般的にはサーフィンのグループというふうに思われていますよね。夏になると出てくる男たちと思われています。ところが、本当にビーチボーイズを好きな人はそうじゃないんですよ。もっと違う曲が好きだったりするわけで、それは、ビーチボーイズが後半、結構実験を始めたりとかですね、特にブライアン・ウィルソンがステージをしなくなって、スタジオにこもっていろんな音楽的実験をやるようになったころの音楽っていうのは、非常にまあ、どっちかというとポップじゃない、あんまり売れ筋じゃないんだけど非常に面白いものがあったんですよね。その辺を、俺たちはよく聴いてるぞ、というのをこの1曲で表しているんですよね。じゃあ、デュークスの一番最後の「Pale And Precious」を聴いてみましょう。これは本当もう、ビーチボーイズがやってるんじゃないかと思うくらいいい曲ですよね。まっ、これと同じ曲っていうのはないんですが、彼らが素にした、つまりちょっと教会音楽みたいだったり、バッハみたいな雰囲気だったりとかするコード進行の曲は、「グッド・バイブレーション」の入っている「スマイリー・スマイル」という名盤があります。この中に入っている「ワンダフル」という曲が雰囲気近いので、聴いてくださいね。メロディーの感じは違いますけどこのオルガン、そしてちょっとけだるい、教会音楽的なコード進行と、この歌の感じは、非常にビーチボーイズの感じを「Pale And Precious」のほうは採ってますよね。

という感じで16曲お届けしてきましたけどね。いかがでしたでしょうかね。というふうにですね、デュークス・オブ・ストラトスフェアはXTCの分身であるわけですね。同じ人たちが、別プロジェクトでやっているわけですが、XTCの本チャンのほうよりも売れちゃったというのが、これが面白いですよね。自分たちでもびっくりしたと思うんですよ、きっと、XTCはね。たぶん本当に遊びの精神でやったことが、世界的に結構評価された。なんかこれってね、オリジナリティーって一体なんなんだろうということをすごく突いてるような気がするのね。だからよく一般にコピーだとかものまねだとかというふうに言われちゃうけど、その真似る行為自体が悪いのかいいのか、つまり必ずしもオリジナルでないような中途半端な曲をオリジナルとして作り続けることのほうがよっぽど馬鹿げてるんじゃないかということを僕たちに教えてくれるような気がしますね。それは形式をもってきても、例えばこの曲なんかそうだけど、ビーチボーイズみたいにやってみようと思って、でもビーチボーイズにも作れなかったような新しい曲が出来ちゃうようなね、そういうことをデュークス・オブ・ストラトスフェアのアルバムは、僕たちに教えてくれてですね、また創作意欲がわいてくるんだ、こういうのを聴いているとね。はい、お勉強シリーズでしたけどいかがでしたでしょうかね。


さて、ちょっと時間が押しましたがね、XTC拾遺集に入りたいと思います。今日はまずこの曲からです。ドクター・アンド・ザ・メディックス、覚えてますか?あのグループね、いたんですよ、まだね。これ新曲?’85年ですね。すみません、大ボケかましてしまいましたが。アンディ・パートリッジプロデュースです。それじゃあ、いってみましょう。

♪ドクター・アンド・ザ・メディックス「ザ・ミラクル・オブ・ラヴ」

いや〜、なんか俺、まだデュークスの特集やってるような気分になってきちゃったよ。もういいよ(笑)。しばらく夢見そうだ俺。ということでですね。メディックスも本当にプロデューサーが変わるともう全部音が変わりますよね。本当に主体性のないヤツらだと思いますが、アンディ・パートリッジのカラーぷんぷんでしたね。

さて、続いては、これすごく珍しいというか、僕このシングル買った時それほど珍しいとは思わなかったんですよ。のちのちこれが珍しくなってしまったのはですね、実は、日本とオーストラリアしか出てないんです、これは。XTCの貴重なライブですね。日本で発売された時は、「がんばれナイジェル」のB面に入ってたんですよ。これね俺、まだXTCのアルバム買うのどうしようかなと迷った時に、たまたまこのシングルがあったんで、パイロットとして聴いてみようと思ってこれ買って、あ、なかなかいいなっていうんで、あとでアルバムも買ったというやつで、とってあったんですが、非常に貴重なものです。

♪XTC「This Is Pop?〜Are You Receiving Me?」(メドレー)

私の保管状態が若干悪かったために、針パチがありましたね。ごめんなさいね。でも聴けただけでもよかったと思えよコノヤロ。(笑)

ということでですね、ずーっとお届けしてきましたけどもね、もうあと1曲でXTC拾遺集も終わりで、XTCの4回にわたる、大お勉強シリーズは終わりに近づいてきたわけですが、今回持ってたもの、それから無いものはですね、友人とかに電話をしたりしてかき集めましてですね、どうしても集まらなかったのが、「スリー・ワイズメン」という、これもXTCの別名義のバンドですが、これの「サンクス・フォー・ザ・クリスマス」という、これがかける事が出来ませんでした。それと、コリン・ムールディングとテリー・チェンバースの2人のグループ、名前が「ザ・コロネル」というんですが、これのシングルもかける事が出来ませんでした。残念で仕方がありませんがね、まっ、でも、みんなもこれをきっかけにに探してみてはいかがでしょうか。絶対手に入んないと思いますけどね。(笑)でも私は絶対探すぞ!(注・これは現在、「ラグーン・ボーン・バフェット」というCDに収められています。)

さてXTCこれだけいろんなね、XTCだけのアルバムとか、シングルとかあるにもかかわらず、それから別名義のものもありました。それからプロデュース作品もありました。それだけでは飽きたらずにですね、XTCのコレクターってのがいるわけですが、この人たちはデモテープをどっかから入手してきたという、これどこから漏れるんだろうね、デモテープなんかね。どうせだってこんなの、自宅でね、みんな保管しているわけだから出るわけがないんですが、まっ、僕たちなんかでもよくありますけど曲を人に渡して、そのデモテープをたいていみんな捨てちゃうわけですが、持ってたりするんですよね。僕も佐野元春の、ピアノとメトロノームのみで歌っている、「ハートビート」とか持ってますけどね。そういうのをどっかからワーッと門外不出のものが出てしまうわけですが、実はXTCのデモテープっていうのも結構出回っております。いくつか入手してきたので今日はその中から1つお届けしたいんですが、「メイヤー・オブ・シンプルトン」とカップリングになっていた曲なんですが、これのデモテープを聴いていただきたいと思います。

♪XTC「Living In A Haunted House」(デモテープ)

いかがでしたか、デュークス。これを機にデュークスのアルバムを買って、ぜひ聴いていただけたらうれしいなと思います。

あ〜、私も今日はよく眠れそうですね(笑)。ということでここまで聴いてくれてどうもありがとう。


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