第五章 〜二つ目のパズル〜
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知らなかった。というより初めて考えた。方舟の工場長の息子ってことは知ってたけど、お母さんの存在を考えてことも無かった。お母さんがいない?
「そ、そうなんだ・・・知らなかったよ、ごめん」
「いいんだよ、別に。知らなかったんだから。だって、母さんと話しして開けてもらったんだろ?そんなのいいんだよ、俺はさ、せいたろうに、」
「ちょ、いま、なんて言った?お母さんと話した?話したってなんだよ!お母さん死んだんだろ?話したってなんだよ!さっきから何にもわからないよ!君の母さんと話してなんかいない!僕は誰とも話して無いんだ!さっきからなに・・・」
ゴーン、ゴーン・・・・
その時、チャイムが鳴った。心臓が飛び出るほど驚いた。猫のように大きく体が一度揺れた。そうだ、ここは学校だ。昼休みの途中だったんだ。屋上にいた生徒が次々に降りていく。
「くそ、もう休みが終わっちゃうよ。なぁ、帰り校門のところで待ってる。部活入ってないんだろ?終わったらゆっくり話そう。とりあえず、授業が先だ。体育着本当にありがとう、助かった。これはわかるだろ?本当に助かった。じゃぁ、放課後な!」