第五章 〜二つ目のパズル〜
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「はめようとした事は謝るよ。本当にごめん。謝って済むことじゃないって分かってる。一生を棒にふるようなことになってたかも知れない。本当にごめん。でも初めてだ、あの方舟のパスワードが解かれたんだぞ!ただの平凡な人間に、解けると思うか?あの要塞のパスワードは何十年もやぶられたことが無いのに初めて破られた。せいたろうじゃなく、他の誰かだったらどうなってたかわかるか?もし、不良だったら?もし、泥棒だったら?もし、他の業者のスパイだったら?取り返しのつかないことになってた。でもせいたろうは、俺に体育着まで届けてくれた。そして、俺が何者かって教えてくれたんだ。だからわかった。ようやくわかった。なぁ・・・せいたろう、今確信した。俺がなんでベース始めたかってこと。一緒に・・・一緒にバンドやろう。一緒に世界を変えるんだ。一緒にこの町を出よう。」
「・・・バ、バンドだって?聞いてなかったのか?僕が知ってるのは、」
「違う!そんなんじゃない!確信したって言ったろ?俺もベースなんか弾いたこと無かったよ、毎日やってたら、なんとかベースだって弾けるようになってきたんだ!せいたろうが演歌が好きなら余計に面白いじゃん!パンクに演歌を合わせたら面白いし、音楽性なんか無いんだよ!それが世界を変えるのに重要なんだ!今からやってくれれば2年の文化祭、いや、3年の文化祭に間に合うって!それでさ、高校卒業したらこんな田舎出て都会でバンドやるんだよ、何のしがらみもないところでさ!世界を変えるんだ!俺たちなら出来る!確信出来たんだ!」
「こ、この町を出る!?だ、だって・・・・だって、お前、工場継ぐんだろ?出るなんて、」
「せいたろうもなのか?この町の人間は全員そうだ!方舟があるから将来のことなんか考えてもいない。あんな工場がなんなんだよ!あんな人が支配してる方舟なんか俺は絶対に継がない!卒業までに父さんにもはっきり言うんだ。だからさ、一緒に、」
「ちょ、ちょっと待ってよ!整理させてよ!僕が朝からどんな思いして今ここにいるかわかるか!あんな父さんって言うけど知らないよ!そんなの家族会議すればいいだろ?お父さんに伝える前にお母さんに手を回してもらったりいくらでも方法はあるんだから、僕とじゃなくてもいいじゃんか!」
「母さんはいないよ。俺が生まれる時に死んだ。」
「・・・・だからさ、そのお母さんに・・・えっ?」