第五章 〜二つ目のパズル〜
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第五章 ~二つ目のパズル~
屋上で時々ぼーっと空を飛んでるトビを見ていると、いきなり山の林が、誰かものすごい大きなものに捕まれた様に揺れ始めて、畑の稲穂が形をユラユラさせて風がこっちにくるのが分かる。風に形があること、そして、この風が僕に当たったあと、どこまで行くんだろうって考える。そのあと、あんなに山を揺らすことが出来るのは山の神様なのか、本当に神様だ。じゃぁ、神様はいるんだろうかって考えることがある。風に形があるのを知っている人って、どのくらいいるんだろ?そんなことを風に当たりながら思ったことがある。君はどう?
「・・・アダム・・・」
言葉が出なかった。というより、しゃべれなかった。両肩を抑えられて、目の前には透き通るような、ブラックホールみたいなビー玉みたいな目をしたいつきが僕を見ている。
「ついに見つけた。君がアダムだ。そうだよ!せいたろうがアダムなんだよ!」
「・・・ったいなぁ!!離せ!!!!」
いつきの手を振り払う。たった一瞬なのに、制服がよれている、何だって?アダム?コイツ、ついにおかしくなったって思った。振り払われた手を見ながらいつきが言う。記憶を無くしていた人が、それまでの何十年間を思い出したみたいに、初めて人が考えることをした時みたいに。
「・・・そうか・・・俺が方舟・・・だから・・・」
体が全く動かないから息をしていないようだった。いつきがこっちに目をやる。