小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第十章 始まりの始まり

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第十章 〜始まりの始まり〜
P.5 

磯野さんの顔。

走馬灯って見たこと無いけど、それと似たような感覚だと思う。時間が止まったようで、今思い出してもスローモーションみたいに、鮮明に覚えてる。

磯野さんの顔。

僕の今までの人生で初めてだった。テレビでどんな歌手やアイドルを見ても思ったこと無かった。どんな雑誌にも載って無かった。眉毛だって、瞳だって、鼻だって、口だって、全部、僕らと同じ、同じ数、同じ物なのに・・・・初めて思った。

磯野さんの顔。

美術の教科書に載っている女神様とも違った。日本の古い掛け軸の女の人とも違った。アイドルでもなければ、高校生らしくも無かった。お母さんのような赤ちゃんみたいな、でも、

磯野さんの顔。

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