第十章 〜始まりの始まり〜
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磯野さんの顔。
走馬灯って見たこと無いけど、それと似たような感覚だと思う。時間が止まったようで、今思い出してもスローモーションみたいに、鮮明に覚えてる。
磯野さんの顔。
僕の今までの人生で初めてだった。テレビでどんな歌手やアイドルを見ても思ったこと無かった。どんな雑誌にも載って無かった。眉毛だって、瞳だって、鼻だって、口だって、全部、僕らと同じ、同じ数、同じ物なのに・・・・初めて思った。
磯野さんの顔。
美術の教科書に載っている女神様とも違った。日本の古い掛け軸の女の人とも違った。アイドルでもなければ、高校生らしくも無かった。お母さんのような赤ちゃんみたいな、でも、
磯野さんの顔。