第十章 〜始まりの始まり〜
P.2
「なにかあったのか?本当にいつもに増して人見知り度がすごいぞ?」
「なんにもないよ。それに初めて会ったのにそんなに話しかけられる訳ないよ、僕はいつきと違って人見知りなんだ。自分で言ってたじゃんか。」
「はは、そうだそうだ!でもさ、嬉しいんだ。せいたろうもそうなんだけど、俺が工場長の息子だからって変に気にしてないっていうのが分かるんだ。顔は見えないけど分かる、せいたろうだって磯野さんの態度見てると、何となく分かるだろ?」
「うん・・・それは分かるような気がする。でもどうしようかなぁ、来週まで教科書来ないみたいなんだ。だから、机一緒にしてみせないといけないんだけど、そういうのしたこと無いから今日も緊張しちゃってさ。」
「そんなこと気にしてたのか?ただ、机一緒にして見せるだけじゃん!お前女子の抵抗力無さ過ぎだろ、ははは」
「そんなことないよ!彼女なんか僕には必要ないんだ。好きな人だっていないし。いつきだって彼女いないじゃないか、そういやいつきって好きな子いるの?」
「いる訳ないだろ、今はバンドのことしか考えてないんだ。それにこの学校で付き合うって言っても、皆見た顔だし、いまさらどう思うとか無いよ・・・でもさ、俺も思うよ。さっきせいたろうに言ったけど、俺もやっぱ気になるよ。」
「ん?なにが?」
「なにがって、磯野さんのことだよ。喋れないのも、あの髪の色もさ。磯野さんの髪の色っていったいどういう事なんだろうな。喋れないのも関係あんのかなぁ。」
「・・・うん。」
あの時の反応と何か関係あるんだろうかって考えていると職員室から磯野さんが出てきた。
「あっ、終わったみたいだぞ。じゃぁ帰ろうぜ。今日はもう遅くなったし、また明日色々話そう。」
「・・・うん。」