第十章 〜始まりの始まり〜
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第十章 〜始まりの始まり〜
そのあと、3人で学校中を回った。最初はその場所の説明をするんだけど、結局は、音楽の話をして時々、ノートに書いてそれを僕らが見る、を繰り返していた。
でも、磯野さんから僕らに話しかけることは無くて、僕も磯野さんへ話しかけることは出来なかった。
二人の様子を見ていると、もうずっと前からの友達みたいに見えた。片言だけの、メモだけの会話だけど、ずっと前からそうやってきたようで、僕がなぜいるのかって思うくらい、いつきは楽しそうだった。そうか、いつきだって、本音でなんのしがらみも無く話せるのは僕と磯野さんだけなんだ。
案内が終わって、職員室へ向かった。お爺ちゃんが磯野さんに何か話している間、僕らは廊下で待っていた。窓によりかかって外の様子を見ると、校庭の砂が渦を巻いて、サッカー部も野球部も陸上部もみんなやり辛そうにしている。