クラシック音楽館

ドヴォルザーク

(Antonin Dvorak,1833〜1897)


データブック

系統 国民楽派
作風 旋律の名手。また,ドイツ系ロマン派,フランス系ロマン派の両方を受け継ぐ。
作曲ジャンル 交響曲(9曲),協奏曲(3曲),序曲(5曲),交響詩,ピアノ曲,声楽曲など。

作風

 チャイコフスキーと並ぶ国民楽派の作曲家である。チャイコフスキーがフランス系の標題音楽を志向していたのに対して,ドヴォルザークはドイツ系の絶対音楽を志向していた。それは,初期の作品を見ればよく分かるし,それが彼の出世を手助けしたブラームスの影響があることもよく考えられる。
 ブラームスとの最大の違いは,国民楽派であるだけあって故郷チェコの旋律を使用していたところ,そして,何よりもドヴォルザーク自身が旋律を開発する才能に恵まれていたことにある。それゆえに,曲の内容も美しい旋律にあふれている。


ドヴォルザークの掲示板


ドヴォルザークの交響曲

 ドヴォルザーク自身は,自分の作曲した交響曲は8曲だと思っていたし,出版社は第5番までしか番号をつけていない。しかし今世紀に入ってから,ドヴォルザーク自身が破棄したと思い込んでいた初期の1曲(第1番)が発見され,ドヴォルザークの交響曲は9曲であることが判明した。のちに,番号が付け直されて今のような1〜9番の交響曲となっている。

 ドヴォルザークの交響曲をたどって行くと興味深いのが,ドヴォルザークの作曲の腕の進歩が手に取るように分かるということである。
 交響曲第1「ズロニツェの鐘」,第2は,規模こそ大きいが構成力に欠け,主題同士の接続がぎこちなかったり,頻繁に不自然な転調が見られたりと,作曲技術が追いついていない面が見える。ただ,旋律を開発する才能がすでに開花していると言えるだろうし,早い時期から大規模な交響曲の作曲を志していたことが興味深い。
 第3で急に規模が縮小するが,その分構成は引き締まり不自然な転調も格段に減る。第4,第5(旧第3)ではそれがさらに洗練される。
 間を置かれて作曲された第6(旧第1)は少しスランプ気味なのか,楽章間の釣り合いが取れていないなど幾らか荒削りなところが見られる。これは同世代の作曲家であるチャイコフスキーの第3にもいえることで,転換期といえるのかもしれない。
 三大交響曲といわれる第7(旧第2),第8(旧第4),第9「新世界より」(旧第5)は,構成・旋律ともに大成しており今までの交響曲の総決算と呼ぶにふさわしいだろう。

 ドヴォルザークの交響曲,特に中期のものにはブラームスの影響が強く出ているとよく言われる。しかし,特に第4番などにはワーグナーあたりからの影響も見られる。同世代の作曲家であるチャイコフスキーがフランス系とドイツ系の様式を融合させて折衷派と呼ばれるのは有名であるが,ドヴォルザークも折衷派といえるのではないだろうか。もっとも,ドヴォルザークが真に目指していたのは,同様に歌曲の大作曲家であったシューベルトだったのかもしれない。