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交響曲第5番ヘ長調 作品76


概要

田園的交響曲の中の田園的交響曲

 ドヴォルザークの交響曲のほとんどは,どこか田園調ののどかさを持っている。しかし,その中でも特に田園的な印象が強いのがこの曲ではないだろうか。冒頭の第1楽章からのどかな主題が散りばめられている。第1楽章にはパストラーレ・オルゲルプンクトが散見される所から判断して,ドヴォルザーク自身もこの曲の中にそういったイメージを思い浮かべていたに違いない。

 しかし,実際によく聞いてみると,この曲は随分と念を入れて書かれていることに気がつく。ちょっと聞き流すと,当時影響を受けたブラームスの作品のようにいかにも古典的な感じもするが,第1楽章や第4楽章の2つの主題の調性関係,第4楽章に見られる長い短調の導入部など,目新しい点も数多くある。急緩や明暗の構成にも工夫の跡が見られる。流石にまだ不慣れなのか,たとえば主題の切り替わりや転調がやや不自然なところも散見されるが,当時ドヴォルザークが本格的な交響曲の作曲家を目指していた意気込みが感じられる。

 なお,この曲はドヴォルザークの生前に出版されたもっと古い交響曲である。ただし出版当時の番号は,第5番でも第1番でもなく第3番だった。現在の第6番が第1番として出版され,第7番が第2番として出版された後になってから,この曲が第3番として出版されているからである。

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