クラシック音楽館

チャイコフスキー

(Peter Iryich Tchaikovsky,1840〜1893)

データブック

系統 国民楽派
作風 チャイコフスキー節で知られる美しい旋律が特徴。しかし,決して構成面をおろそかにしていない。
作曲ジャンル 交響曲(7曲),協奏曲(4曲),序曲,ピアノ曲,声楽曲,バレエ音楽,劇場作品など,ほぼすべてのジャンルにわたる

作風

 チャイコフスキーについては,後世の人には同性愛者とかマザコンとか散々に言われているが,ここではこれらの話題については触れないことにする。
 作風は,特徴である美しい旋律に反して意外と保守的であり,たとえば7曲の交響曲中の5曲や4曲の協奏曲中の3曲は,古典的な構造から大きく足を踏み出していない。例外に該当するのが標題交響曲「マンフレッド」,交響曲第6番「悲愴」,ピアノ協奏曲第3番変ホ長調などであるが,これらも楽式をおろそかにしていないのが特徴になる。
 また,チャイコフスキーはドイツ系ロマン派,フランス系ロマン派,そしてロシアの音楽からそれぞれ影響を受けており,特にブラームスの時代まで相容れなかった二つのロマン派を融合させたような作風は,当のドイツやフランスの作曲家には見られないものである。


チャイコフスキーの掲示板


チャイコフスキーの交響曲

 チャイコフスキーの交響曲は全7曲で,うち1曲は番号なしの標題交響曲となっている。また,第5番と第6番の間に破棄した1曲(変ホ長調)があり,第1楽章のみがピアノ協奏曲第3番として改作されたが,これが現在では第7番として復元されている。曲のスタイルは次々と変化している。第1番「冬の日の幻想」はドイツ系,第2番「ウクライナ」はロシア音楽,第3番「ポーランド」,第4番,標題交響曲「マンフレッド」はフランス系,第5番ではまたドイツ系(但し国民楽派系)に戻ったが,第6番「悲愴」では全く独自の境地を切り開いている。


チャイコフスキーの序曲

 チャイコフスキーは,多くの序曲を作曲しているが,その中でオペラ・バレエ用の序曲は多くはない。チャイコフスキーの序曲作品の多くは,独立した「演奏会用序曲」である。数多くの作品を作曲しているが,文学が彼の趣味であったことから,文学作品にモチーフをおいた序曲(「ロメオとジュリエット」「ハムレット」など)が多い。
 文学作品をモチーフにしている作品が多いこと,全体に写実的な曲が多いという面ではベルリオーズからの影響が考えられるが,一方ですべての序曲がソナタ形式を採用しており,このあたりはベートーヴェンからの影響も考えられる。