クラシック音楽館

ブラームス

(Johanes Brahms,1833〜1897)


データブック

系統
ドイツ系前期ロマン派
作風
複雑な奥深い曲が多いが,時にはやさしい曲や楽しい曲も。
作曲ジャンル
交響曲(4曲),協奏曲(4曲),序曲(2曲),ソナタ,ピアノ曲,声楽曲などで,劇場作品は作曲していない

作風

 ブラームスは,典型的なドイツロマン派の作曲家である。しかし,他のドイツ系ロマン派の作曲家に比べて際立っていることは,音楽が徹底して抽象的なことである。他の素材に題材を求めず,音楽でしか表現できないことを音楽にするという,絶対音楽と言われる類の曲が大多数を占めるのである。
 ブラームスは大器晩成型の作曲家といわれ,初めて書いた大規模作品がピアノ協奏曲第1番ニ短調(25歳の時に作曲)である。その次に管弦楽向けの大規模作品を作曲したのが,ハイドンの主題による変奏曲交響曲第1番ハ短調(40歳の時に作曲)であるから,モーツァルトやメンデルスゾーンはすでに死去している年齢である。
 ブラームスの曲というと,一般には子守歌やハンガリー舞曲が有名であるが,これらはブラームスは編曲したに過ぎないようである。ブラームス自身は旋律を作ることが苦手だったようで,他人から旋律を借りてきてはそれを見事に料理してしまうし,また細切れの動機を組み合わせて見事な音楽に仕上げてしまうことも多い。また,ベートーヴェンと並んで変奏曲作品の多い作曲家であることも,注目すべきかもしれない。


ブラームスの掲示板


ブラームスの交響曲

 ブラームスは全部で4曲の交響曲を作曲している。しかし,先にも書いたとおり,第1番の発表は40歳の時で,他の作曲家に比較すると,比較的年が行ってからの作品が多いことが分かる。
 ブラームスの交響曲のうち,第1番ハ短調と第2番ニ長調は,印象としては対照的ではあるが,ほぼ同時期に構想されたとみられる。第1番ハ短調は20年の作曲期間を経て作曲されたが,第2番ヘ長調はそれに続いて,約3ヶ月という短期間で作曲されているからである。
 いっぽう,第3番ヘ長調と第4番ホ短調は別々に作曲されている。第3番ヘ長調は,長調と短調を折り混ぜた複雑な色彩が目立つ一方,第4番ホ短調は各楽章ごとに強い個性が見られる。

交響曲第1番 ハ短調


ブラームスの協奏曲

 ブラームスは全部で4曲の協奏曲を作曲しているが,いずれも交響曲まがいの複雑で重厚なものになっている。しかも,独奏楽器が非常に演奏の難易度が高いにもかかわらず,あまり目立たないのが特徴である。
 前2作(ピアノ協奏曲第1番とヴァイオリン協奏曲)と後2作(ピアノ協奏曲第2番と二重協奏曲)とでは,第1楽章の造りが大きく異なる。
 前2作では,まず管弦楽が第一主題のみを提示し,第二主題を提示しないうちに提示部を閉じてしまう。そして,独奏楽器が加わって再び第一主題を提示し,独奏楽器のみが第二主題を提示するという方法を採っている。
 いっぽう後2作では,前奏で独奏楽器がカデンツを演奏し,それから管弦楽のみで第一主題と第二主題を提示,独奏楽器が加わってまた第一主題と第二主題を提示,という順番になっている(ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」と同じ構成)。
 作曲時期としては,ヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲第2番の間がもっとも接近しているのであるが,どうしてこういう構造になっているのかがなかなか興味深いところである。

ピアノ協奏曲第1番 ニ短調


ブラームスの変奏曲

 ブラームスは変奏曲を多く作曲しているが,有名になっている曲は少ないようである。しかし,交響曲第4番の終楽章を変奏曲で作曲した他,有名な変奏曲として「ハイドンの主題による変奏曲」がある。

ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調