楽式という概念は,他のジャンルの音楽ではあまり重視されない,クラシック音楽独特の概念といえます。
ソナタ形式や三部形式などという言葉を聞いたことがあると思いますが,このように音楽の内容をマクロの視線で捉えるのが楽式です。
楽式によって,クラシック音楽は長大になっても,ある程度のまとまりを保つことができるようになっています。
このページでは,クラシック音楽で使用される代表的な楽式(形式)を解説します。
クラシック音楽は,以下のような進行をしている曲がほとんどです。
提示→変化→再現
以下に解説する音楽の形式も,多くはこのような進行をします。
この原則を理解しておくと,楽式に対する理解がしやすくなると思います。
最初に主題を提示し,その後で旋律・和音・調などを変化させる曲である。交響曲やソナタなどの1楽章として組み込まれることもある。
古い変奏曲は,ただ闇雲に変奏をするものが多かったが,古典派以降では変奏に秩序付けを行う傾向が目立っている。
ハイドンは,主題→快活な変奏→悲愴な変奏→華麗な変奏という順番の変奏の様式を確定したし,ベートーヴェンは幾つかの変奏を1グループにした変奏の様式を確定した。他に,ブラームスもハイドンの主題による変奏曲などの優れた変奏曲を作曲している。
A→B→A(A')といった構造をしている形式のこと。舞踊系の曲の場合,Bの部分はAとは強い対照をもった形とすることが多く,このことを「トリオ」と呼ぶ。
以下に,主として三部形式を採る曲の種類を挙げておこう。
主として3拍子の,古典的な舞曲。はっきりとした3拍子のリズムを刻む。速度は中庸のものから速い物までさまざまである。ふつうはトリオを伴って三部形式になる。
メヌエットの発展形で,主として3拍子,速度はきわめて高速。1小節を1拍に数えるものが少なくない。シンコペーションや転調が多く,落ち着きがない。ふつうはトリオを伴って三部形式になる。
メヌエットの発展形で,基本的に3拍子だが,もっと流暢な曲である。1拍+2拍のリズムが目立つ。ふつうはトリオを伴って三部形式になる。
いわゆる行進に使用する曲である。基本的に2拍子で,6拍子の場合も少なくない。歯切れの良いリズムが特色。ふつうはトリオを伴って三部形式になる。
ロンドとは「回る」という意味である。主としてABACABAの形を採り,Aの部分がぐるぐる回るように何度も現れることからこの名前がついている。BあるいはCの部分からAに戻る際には,Aの出現をあらかじめ示唆するような音形が流れるのも特徴の一つである。
古いロンドは,Aが同じ調で現れる以外に調性は特に意識されていないが,古典派以降のロンドでは,ソナタ形式などの影響を受け,
A(主調)→B(属調/平行調)→A(主調)→C(関係調)→A(主調)→B(主調)→A(主調)
の順番で流れることが多くなった。
フーガは,単一の主題を対位法を駆使して重ねてゆく曲である。
まずフーガ主題の提示が主調と属調で行われ,そのフーガ主題を色々と調を変えて展開した後,また主調と属調にまとめて終わるという形式が一般的である。
ソナタ形式は,交響曲などで用いられる三部形式の応用形式のことを指す。
まずは提示部があり,第一主題と第二主題の2つの主題を提示する。ふつう,第一主題は主調,第二主題は属調か平行調で提示され,その間には転調のための経過部が置かれる。また,第二主題の提示後は提示部を閉じるための小結尾がある。提示部は繰り返し記号によって繰り返される。
次に展開部があり,第一主題と第二主題が自由な形で展開される。展開の手法についてはそれぞれの作曲家の特色になるので,一概には言えない。その後で再現部が来て,第一主題,第二主題共に主調,あるいは同主調で再現される。古いソナタ形式では,展開部と再現部がまとめて繰り返されることもある。
以上は基本型であり,このほかにも様々な発展形が存在する。