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もう全て自分達だけでやるぞ、という決断はどういうところから来たのでしょう? Quan:とにかく、時間の余裕が欲しかったんだ。レンタル・スタジオでいつも時計を気にしながらやりたくなかった。もっとリラックスした雰囲気の中でレコーディングしたくてね。 Ben:それにもう外部の人間を入れたくなかったんだよね。2人だけでレコーディングしている方がストレスが少なく済むからね。 結果は大満足、という感じですか? Ben:もちろん、満足しているよ。今までの最高傑作だと思っている。 Quan:まあ、やろうと思えば、さらに6〜7年間、ずっと何だかんだ言いながらとことん突き詰めることもできたけど(笑)。どこかでケリをつけないと、永遠に終わらないからね。 それから、自宅スタジオで録り終わったものをイギリスに持っていって、アンディ・ギルにミックスさせてますが、この人を選んだ理由は? Quan:彼が一体、どんな人なのかさっぱり知らなかったからさ(笑)。海外に飛んで違う空間に自分達を置く、ということもしたかったしね。リスクもあってスリルがあったし。 なぬ? ちょっと待って。アンディ・ギルのことを本当に知らなかったの? Quan:まったくね。 Ben:彼が手がけた作品は数枚しか聴いたことがなかった。 Quan:僕なんか、Bisしか聴いていなかったよ。それに、Bisのレコードはミックスじゃなくて、プロデュースだったから、彼が実際にミックスした作品は1つも聴いたことがなかったんだ。 Ben:とにかく、今回は過去の作品とはあらゆる点で完全に違うことをやりたかったんだ。今までは、同じプロデューサーばかり使っていたのを今回はセルフ・プロデュースにして、タイトルにしても今までは短いものばかりだったけど今回は長くしてみたり、とね。サウンド的にも違ったものにしたくて、過去の作品とは一味違うものを目指したんだ。これまでの作品の中で一際目立つアルバムにしたかったんだよ。 ちなみに、(ギルが手がけた)マイケル・ハッチェンスの遺作も聴いていないんですか? Quan:聴いてないね。 ジーザス・リザードのアルバムは? Quan:聴いてないね。 ギャング・オブ・フォーさえも聴いていなかったと? Quan:イギリスに渡ってからやっと聴いた感じだったね。他に挙げたようなアルバムも。聴いてみて「僕達は大変なことをしでかしてしまった」って内心思ったよ(笑)。いや、それは冗談。イギリスに行ったのは、単に今までのマンネリ化を解消するためだけさ。 では実際に、アンディ・ギルと仕事をしてみていかがでしたか? 満足しましたか? Ben:大部分においては満足だったね。ただ、オーストラリアに戻ってから僕達で3〜4曲ほど改めてミックスし直したんだ。 Quan:4曲だね。 Ben:その4曲だけに関して、思い描いていた感じとは違ったから、自宅スタジオで自分達でミックスし直したんだ。他はまったく問題なかったね。いい経験をしたよ。いい休暇にもなったしね。 うーん、本当はロンドンに遊びに行きたかっただけ? Quan:そう。ロンドンの天気は素晴らしいし(笑) Ben:ヨーロッパの休日を過ごしたかったんだ(笑) Quan:僕は日焼けをしに行ったんだけどね。 はいはい(笑)。とにかく、知らない人に任せたのに、良いものができてよかったですね。 Quan:リスクもあったけど、結果的によかったからね。終わり良ければすべて良しさ。 オーケー。では最近あなた達が気に入っているアーティストやバンドを教えてください。 Quan:Kitty-Yoというドイツのレーベルを最近、気に入っているんだ。ピーチズというバンドとかね。 Ben:あと、ゴンザレスという人。俺はバスタ・ライムズはずっと好きで聴いているね。 Quan:デスティニーズ・チャイルド(笑) Ben:ザ・ハイヴスも好きだね。サモア人のヒップホップ・アーティストでキンカ・ピーシーというアーティストとかも。 やっぱりロックやポップスよりも、今はヒップホップやテクノの方に惹かれます? Quan:そうかもしれない。まあ、ザ・ハイヴスは結構、伝統的なロック、というかパンクっぽいバンドだけど。 Ben:最近のギター・バンドで好きなバンドはそれぐらいかな。あまりいないね。ギター・ミュージックで好きなバンドはほとんど70年代後期のパンクあたりだね。例えば、ミスフィッツ、バッド・ブレインズ、フィアーとかね。 特にオーストラリアのシーンで最近気に入っているバンドなどは? Ben:アヴァランチーズとか、Pnauとか。 Quan:アヴァランチーズはサンプリングを主体としたラウンジ系のダンスものだよ。Pnauはもっとフレンチ・ハウス、ラテン・ハウスに近いかな。 やっぱりロックやパンクじゃないんですね? Ben:そっち系なら、Six Foot Pickというバンドがいるな。サイコビリー/カントリー・パンクみたいな感じで、メキシカン・プロレスのイベントでライヴをやったりしているんだ。結構面白いよ。 自分達がオーストラリアのシーンをさらに面白くしてやろう、という気持ちはありますか? Quan:僕らはそんなに傲慢な人間じゃないよ(笑)。他にも若いエレクトロニック・アーティストもたくさん登場してきているからね。別に僕達じゃなくても……(笑) Ben:オーストラリアの音楽シーンはジャンルごとにハッキリと分かれているところがあって、パンクならパンクだけ、という感じなんだ。俺達はその中で、何でも好き勝手にやっている、特異な存在なんだろうね。 Quan:でも本心では音楽シーンを消滅させてやろうと企んでいたりして(笑) (苦笑)。アウトサイダー的なところも、自分達のもともとの性質である、と。 Quan:そうだね。ドラッグやパーティーといったイメージのある業界に身を置きながらも、僕達自身はまったくそういうロックスター的な世界にはあてはまらない人達だし。というか、まったく外に出ない方だね(笑)。社交性に欠けているんだ。 Ben:そういうところを、少し批判的な目で見られることはある。他のバンドのように社交的じゃなくて、社会に適応できないところがね。 シーンの中での孤立感というのは、かえって自分達にとって居心地のいい感じなんでしょうか。 Quan:そういう形でしか僕らは存在し得ないと思う。前作では、少しシーンを意識して合わせてしまったところがあったかもしれない。だから、あまりいい作品ではないと自分で思っているんだ。まわりを意識すると必ず失敗してしまう。だから、僕らはシーンの外にいた方がいいものが作れるんだ。言ってみれば……肺魚のような感じ? では最後に、『ジェネリック・シティ』というリミックス・アルバムがリリースされていて、そこでは日本人のアーティストも何組かリミックスを手がけていますが、今回もそういうアルバムを作るとしたら、誰かリミックスを頼みたいと思っているような人はいますか? Ben:『ジェネリック・シティ』でリミックスをしてくれた人達はみんな素晴らしいリミックスをしてくれたと思う。これだけ才能のある人達にやってもらえたのはラッキーだと思っているよ。オーディオ・アクティヴのリミックスは特に気に入ってる。で、次は俺達の母親にリミックスしてほしいと思ってるんだ(笑) Quan:今度のリミックス盤は、全員80才以上の人にリミックスをしてもらいたい(笑) (苦笑)はいはい。では最後に、この夏のフジロック参加に向けて、抱負を聞かせてください。 Quan:会場に来た人みんなに楽しんでもらいたいね。もちろん僕ら自身も楽しむつもりだよ。 Ben:機材とコンピュータがちゃんと動いて、あとは僕らがトチらなければいいね(笑) Quan:じゃ、今から神様にお供えでもするか。 Ben:夏まで頑張ってお祈りしてよう(笑)
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