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例えば、そういう消費社会っていうものに対して反体制的な姿勢を強く打ち出したアーティストと言えば、最近ではレイジ・アゲインスト・マシーンなんかがいますけど、彼らほどのエネルギーがあっても、やはり今の世の中で、ああいう生真面目なアプローチで活動を続けていくのは難しいんだな、って実感せざるを得ません。その点、リガージテーターの表現スタイルは、ユーモアのセンスと、サウンドそのものの楽しさでもって、政治的な姿勢につきものとも言える気詰まりな要素を上手に解消していると思うのですが、どうでしょう?

Quan:……僕らのやり方が、いいのか悪いのかは分からないけど……。

Ben:たぶん俺達にとってはベストだよね。

Quan:そうだな。つまり……人間とは何ぞやって考えた時、かなり滑稽な存在だっていう答えに辿り着くんだ。だいたい、この地球上には星の数ほど人がいて、それぞれが必死になって生きてるけど……でも、恐竜の長い長い歴史に対して、人間の文明なんてたかが4〜5千年でしかない。だから僕らが抱えてる問題っていうのは、より大きい存在と照らし合わせてみれば、すごく些細なことなんだ。そうやって大きく考えると、自然とユーモアが生まれてくる。つまり、我々の存在自体がユーモアそのものである、と。まあ、実際には難しいこともいろいろあるけど。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなんかは、反体制を掲げて真正面から取り組んでたから、驚きだったよね。さらに理想を追求してるバンドと言えば、フガジみたいなやり方は本物だと思う。だってあの人達は、大手のレーベルと全く関係なくやってて、ライブから何から自分達で仕切って……その厳しい姿勢って、かなりの強い意志が必要だろうね。それこそ真剣に取り組まないと出来ないし、実生活だってストイックになるしね。僕らはヘタレだから、そんなのとっても無理(笑)。

(笑)そういう自分達のスタイルは21世紀の新しい闘争方法論だと思ったりします?

Quan:人それぞれに合った方法論があるだろうだから、それは一概には言えないなー。僕らにしても、レーベルと契約して、ある程度のパワーは手に入れたけど、それなりに妥協もしてきてるし。曲作りに関しての妥協はしないけど、私生活なり理念なりの面でね。だから、そういう妥協が出来ない人には、僕らのやり方はつらいだろうし……。だいたい、オーストラリアっていう比較的裕福で自然も豊かな国に住んでて、深刻な問題も少なくてっていう環境があってこそ、こんなのん気なこと言ってられるんだろうしさ。特に僕らみたいなのは、何だかんだ言って恵まれてるからね。

わかりました。ところで曲を作る時には、今はギターで作るよりもプログラミングで作る比重の方が高くなっていますか?

Ben:ほとんどの場合、ひとつのアイディア、例えば、サビの部分やメロディーの一節が最初にある。ほとんどヴォーカルのアイディアから発展していくんだ。先に歌のアイディアがあった方が作り易いね。サビの部分の歌詞とメロディーさえできていれば、そこにどんどん肉付けしていく感じでできるからね。まずテーマがあればいいんだ。それについて歌いたいと思う何かがあれば、曲はどんどん広がっていく。逆に音楽が先にできてしまうと、歌が限られてしまうんだよね。

さっきも「タイトルが先」という話をしましたが、一番最初の出発点はやはり言葉の方になるということなんですかね?

Quan:やっぱり最初にコンセプトが定まっていないと、歌詞も音楽もついてこない、と思うよ。コンセプトさえ決まっていれば、僕はすぐにプログラミングをしたり、ギターを弾いたりしてるけどね。曲によりけりだったりもするけど。

Ben:ただ、ほとんどの曲はコンセプチュアルだね。「Fat Cop」、「Superstraight」、「Fuck The Goddam World」、「Famous」、「Nothin' Ever Happens」、「The Man Part 1」、「The Man Part 2」あたりは、コンセプトや歌詞が最初にしっかりとあった曲だったね。

Quan:で、次に言葉をためておいたループとかにはめたりして、いろいろ試しながら曲を作っていく感じなんだ。

じゃあ何よりもまずコンセプトが最初にあって、こんな音を使おう、とか、こんなムードのアレンジにしよう、というのはそれに合わせて後からくる感じですか?

Quan:だいたいそうだね。でも、時々、ループを何時間もボーッと聴いているうちにメロディーが閃くこともあるけど。ただ、しっかりとした曲を作ろう、と思った時はまずコンセプトが必要だね。

最近のミュージシャンを見ていると、音楽が先にあって、コンセプトや歌詞が後にくるような音楽の作り方をしているミュージシャンがほとんどなんじゃないか?と思うくらい、音楽中心主義の風潮を感じてるんですよ。だから、先にコンセプトがある、リガージテーターのような在り方というのは今すごく珍しいんじゃないですかね? そのへんの自覚ってありますか?

Quan:そうだね。ほとんどのバンドは最初に市場やマーケティングのことが頭にあって、次にマーケットに沿うような曲を考える、というプロセスを踏んでいるんじゃないかな(笑)。もちろん他にもコンセプチュアルに曲作りをしているバンドもたくさんいると思うけど、ただメインストリームにはほとんどいないだろうね。

Ben:コンセプトが先にあれば、歌詞と音楽が一体になるような曲ができると思う。ただ単に歌詞を音楽に充てていくのよりはね。

少し前の時代には、コンセプトが先にあって音楽と言葉が一体化していた音楽は今より数多く存在してたような気がするのですが、最近は本当にマーケティング第一主義のせいだけじゃなくて、音楽が優れていれば、歌詞なんてどうでもいい、という風潮が強いような感じがしてるんですよ。「自分には言いたいことなんてない。ただ芸術として音楽そのものを追求したいんだ」なんていって。あなた達自身は、かつてのロックのやり方とかに惹かれたりしますか? そういう意味において、過去のアーティストからの影響とか、尊敬する気持ちだとかが強かったりとか?

Ben:確かに、俺は新しいバンドより昔のバンドの方に好きなバンドが多いかもね。

Quan:あとは、聴く側の問題でもあるから。例えば、多くの人はリラックスするためだとか、頭のスイッチを切る時に音楽を聴いたりするよね。もしかしたら、理想的な音楽というのは、考えることをしなくても、聴いているだけでエネルギーをもらえるような音楽かもしれない。音楽の聴き方も何層にも分かれているよね。

とにかく、そんな中で、どうして自分達はどちらかといえば少数派の、コンセプト先行型のアーティストになってしまったのだと思いますか?

Quan:単に人格、性格の問題だと思う。僕だって、内容が全くないような音楽を作ることもできるし、たまにはそういうのいいかなとも思うけど、結局、自分の中の一部分がそうはさせてくれないんだ。もともと、いろいろ考えるのが好きなんだよね。それが自然と反映されているってだけなんだよ。

Ben:コンセプトがあった方が、多面性も生まれると思うし。ま、たまには脳を働かせるのもいいじゃないか、ってね(笑)。

(笑)。こういうふうに話が流れてくると、なんだかリガージテーターというユニットがやたら頭でっかちな感じに思えてきてしまうので、ちょっとここでサウンドについても話をしておきましょう。アルバムを作るにあたって、クアンがダンス系の音、ベンがロック色が強い部分を担当、というふうに特にキッパリと分かれているわけではなさそうですけど、実際のところ2人の役割分担みたいなものはあるでしょうか?

Ben:それぞれが曲を持ち寄ってくるんだけど、特に決まったスタイルというのはないよね。ただ、クアンはダンス寄り、俺はロック寄り、という感じは確かにあるかな。そういう意味ではそれぞれにしっくりくるようなスタイルというのは違ってくるね。無意識のうちだけど。

Quan:基本的には、アイディアを互いに出し合いながら曲作りを進めていくんだ。曲のメインのアイディアは1人が作ってきたとしても、そこからは2人の共同作業になる。たくさんのアイディアをテープに録っておいて、後で聴き返したりして曲をどんどん組み立てていくんだよ。

Ben:お互いをプロデュースしあってるような、相互に共同プロデュース、という感じで作業しているんだ。

なるほど。今作は、録音場所がHome Studiosとクレジットされていますが、これは要するにおふたりの自宅ということですね?

Quan:そうだよ。

前作は海辺のスタジオで録ったそうですが、完全に自宅で作ったのは今回が初めてですか?

Quan:うん。外部の人間を全く入れないで作ったのは、アルバムとしては初めてだね。外部のエンジニアさえもいなかったよ。

Ben:クアンと俺の2人だけで作ったセルフ・プロデュース作品ということだね。

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