Easy Blog







← Prev | 1 | 2 | 3 | 4 | Next →

さて、そのカーシヴとの共同ツアーが終了しまして、後半の単独ツアーが始まり、まずコロラド・スプリングとボウルダーで2回やったんですね。で、その次のソルトレイクシティに向かっている途中で――

吉野:ひっくり返ったわけ。

このことはもう今さらという感じもしますけど、あらためて何か思うことがありましたら。

吉野:まぁ、ちょっとびっくりしたですよね、やっぱり。死んだと思ったですよ。あと、ヤッター! 休みだぁー!とも思ったけどね(笑)。

二宮:事故もそうですけど、その後3日ぐらい足止めくらって動けない間の「やー、こんなところに取り残されてどうなっちゃうんだろう?」っちゅうのが、実はけっこう重かったですね。

吉野:なんちゅう街だっけ……フォルト・コリンズだ。ファット・タイヤのおひざもとだ。

二宮:機材とかもあるわけだし、車を、そこでレンタカーを借りなきゃダメで、それがなかなかまた田舎だから見つからなくて。

機材を細かくチェックする場所もなかったでしょうから。

吉野:うん。で、もうロスまで行こうと。機材もチェックしなきゃいけないし、やれるかどうか分かんないから。ロスまでの行程は全部キャンセルして、行ったわけですよ。それが決まるまで3日ぐらい、ああでもないこうでもないってなったから。まぁ、俺はのんびりしたもんだったけどね。暑いなぁとは思ってたけど。

二宮さんはそこがキツかったと。

二宮:キツかったですね。俺はどっちかっていうと、やりたかったのもあって。シアトルとか、好きな街ですし。2回ぐらい行ったこともあるし。

アット・ザ・ドライヴ−インとやった時と、カーシヴがキャンセルして単独でやった時ですね。

吉野:1回行ったことあるとこは、やるとさらに進むんだけどね。もったいないなと思ったな。シアトル、ポートランド、サンフランシスコ……サンフランシスコはベニューのスタッフが良い人たちで、頑張れ頑張れってやってくれてたんですけどね。アジアン・コミュニティーがあるんですよ、サンフランシスコに。そいつらは毎回、ナゾの熱狂的支持をするわけ。それに会えるのが楽しみだったんですけどね。それは残念だったなぁと思って。

なるほど。田森さんは、運転していたわけですが、事故の瞬間はどうでしたか?

田森:もう、ああ〜っつってる間に、転がったりなんだりして。止まって、その後に何かあんじゃないかなぁと思ったんですけどね。

吉野:爆発するぞ!って。

田森:一瞬まっ白になったんですよね。お、今度、天井に肘ついてんなっていうのはわかって、横見たら、後ろ向きになって、ザーっと動いてましたからね。でもう、フロントガラス割れてて、地面から火花散ってんですよ。そん時にはもう緑色の液が流れてて、オイルだとは思わなかったんですけど、これ引火したら爆発するなって。今考えたら、自分もコーヒー飲んでて、それがひっくり返って濡れてたのもあるんですよね。だからこれ……止まったはいいけど爆発するかなと思って。つい慌ててしまいましたけどね。

吉野:あれがやっぱり、ドキっとした。ヤベ! 死ぬ!と思った。

ひっくり返って、すぐに外には出られたんですか?

吉野:ガラスが割れてたから、みんなはフロントから出たみたいだけど、俺んところは一番後ろだから。で、爆発するぞって言われて、俺の方の窓は結構しっかりくっついてたわけ。だから「ヤバイ、俺と平山さん焼け死ぬな」と思ったんだけど、後ろの方の窓がちょっと歪んでるのが見えて、「ああ歪んでる! 平山さんそこちょっと割ってみない?」って言ったら、スポーンって取れて、ヒューって逃げてったから、俺も一緒に。置いてかれる!って。あれ割れなかったら焦ったかも。どうにか蹴っ飛ばしたりして割っただろうけど。それはビビったっすね。

周りには、特に車も走ってなかったんですか?

吉野:いや、……でも、ぶつかっては来んかったですね。なんか、ラッキーだったですよ。

田森:ちょっと考えられないですよね。120キロ出てたんですよ。後続車も全然なかったワケじゃないけども……

吉野:あれ普通考えたら死んでるよなぁ。

田森:ぶつかって横になってひっくり返ったのは、かえってよかったかもしれないですね。そのままストーンって行ったら、むちうちだの骨折だの絶対なってましたよ。事故だけ見たらおおげさな感じだけれども。

吉野:吹っ飛んで行かなくてよかったよな。ボーンとなって、ズー、ズルズルズルズルって……音と臭いは忘れんな、一生。……いいもん聞いた、いいもん見たっちゅう感じ。

機材はどれくらい大丈夫だったんですか?

吉野:すごい大丈夫だったよね。

二宮:アンプが1個チューブが壊れてただけで。

吉野:それも直したもんね、二宮君が自分で。電気屋行ってヒューズボックス買って来て、つくんじゃねぇかなんつってやったら、ついたんですよ。

で、以降のライヴの予定は大幅に狂ってしまったわけですが。

吉野:それ以降は2ヵ所だけだから、アナハイムとアリゾナだけやって帰って来た。

その2ヵ所は以前やったことのあるところですよね?

吉野:一応そうです。アナハイムの方はオールエイジで、子供がいっぱい来るんだけど、好きなとこでね。店の人も良くしてくれるし。アリゾナはなんか、前やってたとこと場所が移動してて微妙な感じだったけど……まぁ、どっちもよかったと思いますよ。いい勝負だったと思うな。

そんなこんなでオフもほとんどない状態で来たかと思うんですけど、とりわけ印象深かったことといったら何でしょう?

吉野:……いっぱいあるな、俺。いろんなことを考えたですよ。明け方5時ぐらいに起きてしまうんだよね。それはもう、旅に出るといっつも。家にいてもそうだし……でも、それは慣れたですね。最初のうちはちょっとキツかったですけど。なんか、ホントいろんなこと考えてたんだけど……考えてたことっていうのはとりとめもなくて、なんて言っていいか分かんないです。ただ、いろんなこと考えてたけど、ひっくり返ってズルズルっと出てきたら、全員生きてるし怪我もしてないし、天気は良いし、車はひっくり返ってるし、なんだコレと思って大爆笑しちゃったし。それで決着がついた感じはすごいする。

なるほど。二宮さんは?

二宮:やっぱり俺は後半……自分は図々しい方だっていう自覚もあって、わりとだらだら最後まで平気なタイプだと思ってたんですけど……こたえましたね。ライヴやってない方がこたえます。

すると、むしろ事故後がキツかった?

二宮:そうですね。事故後にライヴやれないのと、そのちょっと前から考え事とかも。おかしくはなってましたね。

田森さんはどうでしたか?

田森:そうですね。全体的にはよかったですけどね。ただやっぱり、自分の中では後半がメインだな、なんて思ったりもしててね。そこがやりたかったですね。残念だな。

後半は、あらためてリベンジに行きたいところですよね。

吉野:そうですね。気持ち悪いし。西はもう1回ピシっとやっておきたいなっていう。まぁ、機会があれば、やれるウチはやるのがいいかなと。俺は個人的には、定期的にヒドい目に遭った方がいいんだと思ってるから。ヒドい目に遭うといろんなこと考えるから。そういうのは大事だと思ってるし。ヒドい目イコール充実みたいに俺は捉えているので。やる時はさすがに気が重いけど、恐れずにどんどんそういうのは勢いでやっちゃわないと、固まってきちゃうと思うんでね。身体が硬くなるみたいな。だから、無理めなこともやりたいなとは、いつも思ってるんです。

今回のツアーを経て、今後の創作活動の刺激になったような部分はありますか?

吉野:少なからずあったと思うよ。やっぱりその、いい旅したわけだから。お金払ってもそういう経験は出来ないからね(笑)。それがどういう風になっていくかは……作ってみて。ひとつまた、よいもんを得たぞっちゅうのはあるんですよね。やってよかった。……ぎっちぎちだったもんなぁ。アルバム出して日本のツアーから、なんか全部が繋がってる感じするもんね。ほぼ繋がってるよね。

つまり、『其処カラ何ガ見エルカ』を作り始めたところから?

吉野:繋がってる感じがするよね。なんか、いろんなことがあってテンパってたし。それで旅に入っちゃって、波にもまれてるっていうか、んあーってなってたんだけど、最後の最後でドカーンとひっくり返って、わーって出て来て、それでもうヨシ!っていう。ヤッター俺生きてるぞーっちゅう感じがして、すごいこう……爆笑したい気持ちっていうか。力が湧くのをあんなにわかりやすく感じることは、滅多にないすよね。それはなんかね、勇気っちゅうか、力を得た感じはする。ああ、なんでもやれるんだっていうか、なんにでもなれるし。やればいいんだから。生きてるんだから、やれるんだし。……言い換えると、死ぬ時は死ぬんだから自分じゃコントロールできないって、今までもそう思ってたけど、それが実感としてはっきりした。……ここからどういうかたちで表に出せるのかは、才能との駆け引きもあるし(笑)あれだけど。でも、どうなっても、やっぱりやれるんだっていう気持ちは、あるんですよ。生きてるんだから、それをそのまま表現すればいいんだって思ってます。

← Prev | 1 | 2 | 3 | 4 | Next →

Special Issue | Interviews | Articles | Disc Reviews
Core BBS | Easy Blog | Links

© 2003 HARDLISTENING. all rights reserved.