|
田森:だから、何日かの少ないオフも、ぜんぶ車の方に費やしちゃってさ。 吉野:エアコン入んないぐらいは故障の内に入んなかったもんね。 なるほど。では、やがて起きる決定的な事故の話はまた後ほどおうかがいするとして、まずはライヴについて聞かせてください。例えば、国外の観客に向けてやるということで、選曲やセットリストの部分を考えたりとかはありましたか? 吉野:スプリットから2曲くらいは入れていこうとか、まあ、そんなもんですよ。 『其処カラ何ガ見エルカ』も向こうで出てますよね。 吉野:そうですね。でも、その中の曲はあんまりやんなかったです。ギターが何本もなかったから。新しい曲はチューニングの複雑なものもけっこう多いので。アメリカだからどうっちゅうのはあんまり。まぁやりながら、ちょっとずつ反応を見て、この曲はあんまりウケんぞっていうので変えてったりはしましたけど。 スプリットの曲は聴いてて知ってるから、特にワーっと反応があったりとか? 吉野:……あんま、そうでもなかったですねぇ。いいと思えばいいと言われるだろうし、そういうのは。 二宮:カーシヴの客が多いし、なんでもムリヤリ盛り上がったりするタイプも必ず何人かいたりして。だから、分かんないんですよね。 ちなみに、アメリカのカレッジな客層が食いつきのよい曲は例えばどれでした? 吉野:なんだったっけ。何がよかったっけなぁ。 二宮:“黒い太陽”とかじゃない?。 吉野:だったと思う。 で、問題のバッファローで憑き物を落としたように、ボストンあたりからは観客とコミュニケーションできはじめたんですよね。 吉野:そうそうそう。それまではね、悲しいぐらい冷たいもんでしたよ、客も。プレイがぎくしゃくしてたせいもあんのかもしんないけど。会場もデカいし、ひっこめとまでは言われないけど、なんちゅうか……ひっかかりがないっちゅうか。ムムムムと思ったもんですよ。バッファローは、雰囲気はよかったんだけど、機材のトラブルでシラけちゃったし。 それが、ボストン、ニューヨークのあたりからだんだん、見てくれてるぞっていう感触が? 吉野:うん。なんか、ちょっとだけ。それ以前よりは手応えある雰囲気になってきたというか……慣れてきて、プレイもよくなってきたのかもしれないし。なんかフッ切れたのかもしれない。雰囲気に少しずつノッてったような気もするんですね。ニューヨークあたりから下の方に行くと、ちょっとずつ……人の反応が良かったっちゅうか、明らかにシカゴとかよりはフレンドリー?(笑)、なんかそういう感じだったですよ。 土地柄も若干あるんでしょうかね。シカゴ、デトロイト……けっこうロックな場所のはずなんですけど(笑)。 吉野:まぁ、やっぱり大都会だから、すごいクールなとこもあるんじゃないですか。 ニューヨークも都会ですけど、アメリカの中でもあそこだけちょっと違うって言いますよね。 吉野:まぁ東京に近いんじゃないですか。ふーんって様子見てる雰囲気も、東京な感じに近いですよ。いろんな人いるし。意外とジョージア州とかがよかったよね。 二宮:すごかったよねぇ。 吉野:なんかね、なんかよかったような印象があるね。「ジョージアかぁ、魅惑のアメリカだな」とか思ったんだけど。よかったですよね。 田森:どんなとこだったっけ。 二宮:一見危ない場所で、物販が一番はじっこのとこなんだけど…… 吉野:ああ、マニアみたいな人がいっぱいいたね。オタクみたいな人が。 もう、イースタンのファンが来ているっていう? 吉野:すごいオタクみたいな、大学生の女の子が何人かで来てたんですよ。サウンドチェックの時からいるわけ。で、なんか、よく知ってるんですよ曲を。で、あの曲やんねぇのかとか、シングルの2曲目に入ってる曲やれとか言って。おお、やるやるっつってリハでやったりしたら、オオ〜って喜んでました。 へえ〜、すごいですね。南部で突発的にイースタンが人気なんでしょうか? 吉野:わからんですねぇ(笑)。なんか変な人がたまにいるんですよね。 田森:オタクがなんか、インターネットのやりとりとかで、こうちょっと、知ってたんじゃないですかね。 じゃあむしろ、北の方のハードコアな地域よりは、アトランティック・ソウルな土地に響いたってわけですね。 吉野:(笑)そういうことはないと思いますよ。なんかたまたま…… 二宮:カレッジ・カルチャーじゃないけど、そういうのは、全国的に。 吉野:ネットもあるし。 地域性とかはもうあまり関係ないんですね。 吉野:ニュースが近いからね。 でも、全体を通じてもう明らかにイースタン目当てで来てるな、とか―― 吉野:いやぁ、全然……なんだこれ?っちゅう顔してる人の方が多かったですよ。ただ、前情報を持ってる人もいないわけではなかったっちゅうことですよね。前に行った場所は……今回あんまり行けてないんだな。 あ、そうか、過去に行ったことのある場所は今回はキャンセルになっちゃったんですもんね。 田森:西から全部、ダメになっちゃったから。 吉野:そのわりには、よかったと思うよ。まぁ、カーシヴとやったっていうのもよかったんだと思うし。真面目に音楽を好きな…… 良質なリスナー層が会場に集まっていたという。 吉野:そうそう。音楽を聴いてくれるっちゅうか。 それで、日本に戻って来てからも、未だに公式サイトのBBSに「見たぞ!」という英語の書き込みがあるじゃないですか。 吉野:そうそうそう。レスポンスしたいけど、なんか自信がなくてできないんだけど。なんか、不思議ですよね。あれ、彼らが見たら絶対記号に見えるはず。文字化けしてるはずだしね、フォントがねえから。 トップページには特に英語表記がないし。まあ、中に入ればバンドのプロフィール部分は英語版もありますけど。そうではないBBSにまで入ってきて、日本語の書き込みばかり並んでるところにわざわざメッセージを残していくわけですから。 吉野:ナゾっすよね(笑)。 それが、あれだけの件数あるというのは、もう、そこまではしないけれど初めて見て「おお!」と思った人の数っていうのは、もっともっとたくさんいるはずですよ。 吉野:やっぱり向こうはそういう層がしっかり確立されているっていうか。インディペンデント・シーンみたいな、そこにこう、参加してる意識がしっかりあるんじゃないですか、みんな。だから、すぐ書き込んだり、他の人に「よかったぞ」って言ったりするっちゅうのもできあがってるんじゃねぇのかなと、俺は推測してるんすけど。 とにかく、そういう風に反応があればやっぱり―― 吉野:嬉しいですよね。嬉しいなと思う。変な国の人が書き込んでたりすることもあるし。変な国っちゅうか……行ったこともないし、どうして俺たちのこと知ってんのか?っちゅうような国の人が「こっちの国には来ないのか?」みたいな。へぇ〜、って感じですよ。行けるもんならとは思うんですけどね。 なるほど、アメリカはもう結構やりましたし、他の場所にも行ってみたい気持ちが? 吉野:どこでも行ってみたいですね。どんな街でも、行けるもんなら行ってみたいですよ。
|