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UK, 2004.9
text & illustration by Mantique

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SUMMERSONIC 02
 わたしが初めてモリッシーを見た時のこと


2002年、MUMを見る為行ったサマーソニックで、わたしは初めて偶然モリッシーを見ました。それまで名前は知っていたしスミスのCDを一枚持ってはいたものの、別にそんなにピンときたわけではなかったし、だからこの日モリッシーを見る予定もなかったのですが、海外に行ってた友達に「モリッシー見てきてやー」と言われたりもあって、何故かふらっと足が向いてたまたまモリッシーを見たのでした。
でも、この日の夕方、本当はそれも見ないで帰るつもりだったのです。ここで過ごしたその日一日、なんだかもううんざりしてしまい(バンドやアーティストのパフォーマンスは別です)、人混みにあてられたのか、一人で見るにはやたら寂しくなってこれ以上こんな人ばかりの場所に居たくない!と思い夜行バスキャンセルして新幹線で早めに帰ろうかと、しかし、何故かふとみたタイムテーブルの「MORRISSEY」という文字面に惹かれ(?)インドア・ステージに足が向いてしまったのです。

さて、その時のモリッシー、別ステージのトリのオフスプリングに客を取られ、インドアのトリだったにも関わらず、客入りもあまり良くなかったし、客の反応も盛り上がっているとは言いづらく、モリッシー・ファンでもなんでもないわたしでさえ、なんだか7年ぶりに日本に来てこれじゃあモリッシーがかわいそうなんじゃ?みたいな感じでしたが、当の本人は「静かだね」、「変な客」、とか寿司にブーイングなどととてつもなく失礼な事を言い相変わらずの変な踊りで元気に歌っていました。
そしてそれはわたしが以前ビデオで見たことのあったスミス時代の痩せた青年ではなく、体格の良いおじさんが重そうな体でマイクを振り回し床をピシャピシャひっぱたき、身悶えたり、ねっ転がったり、そんな目の前に映る光景が、なんともちぐはぐなようで、なんだか信じられないものを見ている気さえしました。
最初は「この人……笑える……なんだよこの動き」とか思ってたのですが、でも次第に「あれ、でも、なんか良いんじゃ……もっと見たいかも……」と……そして、歌声。
なんだか途轍もなく、途轍もなく、気持ちの良い声でした。
“なんて優しい声で歌う人なんだろう”と思いました。
この時はまだ、歌っている詩の内容の辛辣さも知らなかったのですが、不覚にも、わたしはそれを見て、聞いて、いつの間にか目に涙がいっぱいになってしまいました。
「サヨナラ、アイラブユー」と、モリッシーが去っていった後、散らばる花の残骸を見ながらわたしは呆然とモリッシーって、一体どういう人なんだろう……と考えていました。家に帰る間中、あのモリッシーという人のことが気になって仕方無かったのです。

あれから2年、わたしは急速にモリッシーとスミスにのめり込み、まるで10代の頃の一種の危うさにも似た敏感な感性が戻ったかのように夢中になりました。
思い返してみれば、10代の頃、ここまで自分が何か例えようもないくらいのエネルギーを感じ、それに対して真剣に回答しようなどと思ったことはなかったかもしれません。
同時に10代の頃何をしてきたのだ、と思いつつ、モリッシーを見ていると失った時間は戻ってこなくてもそれを埋めることはできるのかもしれないとも思ったりしました。
そしてその後わたしはモリッシーをイギリスに見にいきました。
日本とは違って、あっちには若いファンもいっぱいいて、死人がでそうなくらいの勢いの激しいオーディエンスが居て、警備員と格闘しながらステージに登っていく人たちがいっぱいいて、わたしもその中に居て、モリッシーの手に……。

それではこれから、昨年9月のエディンバラ、パース、ブラックプール、ブリドリントンのギグについて書きます。少々長いですが、お付き合いください。







8月31日 Edinburgh, Scotland - Corn Exchange

わたしがモリッシーを11回見た中で自分的ベストギグと言えるのがエディンバラです。モリッシーが手を触ってくれたという私情を挟めばベストギグはパースなんですが、とりあえずエディンバラはモリッシー絶好調、セットリストも最高。そしてとにかくオーディエンスが凄かったです。わたしの居た最前列や前の方は若者が多い感じ、キャパは約2000人くらい、多過ぎず、少な過ぎず、やっぱモリッシーは2000〜4000人くらいが合ってると思いました。
ジョブライアスが流れオープニング・アクトのDEAD 60's(なかなかかっこよかった)が終わり再びジョブライアスが何周もかかり、どこからともなくモリッシー・コールが起こりました。
“モリッシーモリッシーモリッシーーーーいいーー
モリッシーモリッシーモリッシーーーー
モリセイーーーー
モーーーレィッッセィーー”
ってお馴染みのあれです。
何度繰り返したでしょうか、するとMORRISSEYの電飾が灯って、モリッシー登場。会場が一斉に異様な歓声に包まれます。緊張が一気に解放され、なんだかぐわーーーっと体中が熱くなって逆流する感じ。この瞬間、何にも変え難い。日常じゃこんなに気持ちを揺さぶられること、まずない。

さてギグの内容です。
初っ端は"HOW SOON IS NOW?"、まさかこの曲をソロでやるとは思わなかったです。今までこの曲をやらないのは技術的な問題かなと思ってたけど(スミスのブートで聴いてもクレイグが居ない時はCDとはかなり違うし)、なんだかCDに近い音でした。
続いて"FIRST OF THE GANG TO DIE"、この曲でオーディエンスは一気に爆発し跳ね捲り……(ていうか、この先、4回も見ているとボズがギターを持ち帰る度に次は何の曲やるか予想がついてしまうようになるのでした。)ちょっと恐い。
"November Spawned a Monster"!! この曲はかなり好きなのですが、サマソニんときは若干演奏がショボかった気がいたしたりしました。でも今回はタイコまで出ててパーカッションも入っててすっごい良かったです。中盤ギャリーが前にでてくるお決まりのアレもカクイーー。うーーううーーう、と身悶えてるモリッシー……わたしは45のおじさまが芋虫のように身悶えるところを見て、すっかり見とれてしまいました。

"I like You"では"I LIKE YOU!"の"YOU"ってとこで、モリッシーがオーディエンスを指すと大盛り上がり、そのたんびに強く押されて、腕が圧迫されて破壊されるのではないかと恐怖でした。そんなに押さんでもっ! つーかよ最前列でないと押したって届かねーよ! でも……ま、気持ちはわかる。
高い声もよく出てました。
会場の構造が悪いのかやたら暑苦しいのと、狂ったモリッシー・ファンのお熱で酸欠や圧迫で気分が悪くなった人がどんどん運び出されて行きました。そしてなりやまないモリッシー・コール。モリッシーもちょっと照れくさそう。

"Subway Train (into) Every day is like Sunday"、アップテンポな曲でもないのに異様な盛り上がりをします。始まったとたん覚悟はしてたけど、会場がどうにかなるくらいの大合唱、お願いだから人の頭を床にして歩いたり首の骨だけは折らないでくださいね……。ま、わたしも負けませんけど。
"Shakespeare's Sister"、ステージが暗転してこの曲が始まりました。"NO----MAMMA LET ME GO---!!!"って言うのがやけに楽しかったです。モリッシーも元気すぎ。
"Such a Little Thing Makes Such a Difference"。バンドの中盤の盛り上がりからモリッシーの歌が入るところがすごく気持ち良くてライブで聞くと俄然良いです。で、家に帰って『ベートーベン・ワズ・デフ』を聞き直したんだけど、中盤からのあの!感じがなかったんですね、ってのはすなわち今のバンドの状態が良いって事だな。
"The World is Full of Crashing Bores"。この曲は、ソラで歌えるしYATQで一番お気に入りの曲、いつの間にかイントロにマイキーのピアノが入ってた。それがとってもよかったです。
"Now My Heart is Full"。この曲が聞けるとは……ブラックプールで詳しく書きます。

"Let Me Kiss You"。モリッシーのエロ踊り(?)炸裂!! モリッシーがシャツをめくって乳首を見せると会場中で「うぎゃゃーーーーっ!!」っと異様な歓声が。むかしもよく見せてたけど、あんなに嫌らしかったかなぁ? オッサンになったからかしら、などと思ってしまいました。
この反応にモリッシーもびっくりして、「そんなに嬉しい?」って首を傾げていました。喜ばせるためにやってるんと違うのかしら、というか自分が喜んでいるとか。
でも確かにセクシーだ、セクシー・ダンディー・ミドル・モリッシー、マニア受けする体なのかもしれません。何のマニアかはわかりませんけど。

"I'm Not Sorry"。あ! ピンクの靄がかかってきた!(妄想) この曲ってなんだかエロティックなムードがただよってきませんか? きます。モリッシーの曲はほとんどモリッシーの歌と詩とメロディセンスばかり気に入るのですが、この曲はベースラインも好きです。CDと違ってタイコが妙にポコポコしてて気持ち良さ倍増。
後半、シャツを脱ぐモリッシー、見事な脱ぎっぷりに会場は大喝采。
モリッシーはシャツにぺっぺ、とツバをはき(汚ねーーっ!!)、でも欲しいーー(本音)! 変態かーーーーーー(るっせーーーええんじゃい!)、そして客席に投げ入れました。

終了後は見知らぬ青痣、赤痣だらけで翌日体中が痛かったです。あんな分厚いN3Bがビショビショ。ていうかこれは周りの人の汗、うわ、きたねー……。
客に圧倒され、最前列をとるべく意気込んでいたわたしも、途中怖じ気づく程の殺気、、いや、熱気、いやいや、狂気か……に満ちていたような、キャパが小さかったからってのもあると思います。20数年生きてきてこのように身に迫る死の恐怖を感じたのは初めてでした、いや、マジで恐いんですって。わたしもそれなりに野郎どもばかりの色んなライブに赴いていたので、一応身を守るサバイバルには長けていると思っていたのですが、スローテンポな曲ですら殺気だってますから……ありえねーーー……。油断していると上を泳ぐ人の足で首の骨が折れそうですよ、あそこ。


パースに続きます。


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