26 May

失速

美人妻柴田が、明け方、日本へ旅立った。当初、私の直接の友人である美人妻柴田がここに居る間だけ泊めてもらう予定であったが、夫妻、特に旦那柴田のご好意により、彼がヨーロッパでのサマー・スクールに向け旅立つ28日早朝まで置いてもらうことにした。

しかし私のアメリカ滞在は、前半戦の興奮と緊張感そして解放から来た蓄積疲労によって急速に失速していくことになる。

昨夜遅く帰還した清水とともに、朝食後フレンチ・クオーターへ。私は不機嫌極まりなく、あまり奴と行動を伴にしたくなかった。幸いなことにヴードゥー博物館に入ろうとしたところ彼は入らないと言い出したので、集合時間を決めてしばらくの間お互いに単独行動をとることにする。このヴードゥー博物館、正規の入場料は分からない。というのも、入口で"Are you a student?"と聞かれたので反射的に"Yes!"と答えたところ、学生割引で5ドルで入場出来てしまった。しかしラッキーと思ったのもつかの間。このヴードゥー博物館、博物館と称してもたったの2部屋しか展示スペースが無い。それも8畳位の広さの部屋が二つだ。表から見たときに相当胡散臭いとは思ったが、ここまでどさくさとは思わなかった。5ドルでも高い位だから、正規入場料を払って入った人達はというと、少しでも元を取ろうと、血の涙を流しながら展示物の一つ一つを見て歩いている。どうしてもここに行きたいという人は、入口入ってすぐのスペースがスーバニア・ショップを兼ねていてそこまでは無料なので、とりあえず雰囲気だけでも味わってみては。


再びミシシッピーへ、そしてフェイド・アウェイ

ルイ・アームストロング公園に行っていたという清水とミシシッピー川ほとりのムーン・ウォークで落ち合い、Riverwalk Market Placeに向かってそぞろ歩く。私の気持ちとは裏腹に、この日の天気はここに来てからで最高に良い。抜けるような青空の元、ミシシッピ・デルタの風情で一枚。

涼を求めてRiverwalk Market Placeに入り、しばしウインドウ・ショッピング。しかし全く盛り上がらず、フード・コートでNBAプレイオフの中継をやっていることに気づいた私は、以前食べて気に入ったケイジャン・ラップというメキシコ料理をテイク・アウトし、もう少し見て回るという清水と別れ家に戻る。ケイジャン・ラップ with NBAプレイオフによる至福の時を過ごし多少落ち着きを取り戻した私は、崇高な気分のまま夕暮時を、一人静かにパティオで絵葉書を書いて過ごすのでした。


ヤッピー好みの店?

さあ、夕食である。清水主催で旦那柴田を招待しての夕食会開催に何とかこぎつける。清水のため、リーズナブルなお店のチョイスにかかる。チューレーンの学生の間でも美味くて安いと評判の店Camellia Grillの名が旦那柴田から挙がる。私のガイドブックにもその店は紹介されていたが、"いかにもヤッピー好みのレストラン"とか訳の分からんコメントがついている。大体この辺にヤッピーなんぞ居るわきゃない、と旦那柴田と話しながらも、この店に行くことにする。持ち合わせが心もとない清水にとりあえず20ドルばかり貸して、出発。

このCamellia Grill、なるほど店構えは南部のおしゃれな屋敷風。しかし一歩店に入ると、そこはアメリカ版吉野屋と行った風情で、カウンター席のみ。メニューもハンバーガーを中心にメキシコ風オムレツ等所謂古き良きアメリカのダイナーといった感じ。お値段もめっきりリーズナブル。しかしお味の方はというとこれがなかなかのもの。カウンターの中で給仕する若者たちも思いの外しっかりした対応で、店の雰囲気も悪くない。まあ、カウンター席だけの店だけあって長居は出来ないが、この値段でこの味は、はっきり言ってお薦めである。なお支払いは、アメリカでは珍しく入口のところにあるレジにて行う。で、結論。私の持っているブルーガイド・ワールド"アメリカ南部"を書いた人は外観のみで店を判断し、店内には一歩たりとも入ってないと見た。

速攻で飯を食ったので、すぐ脇の茶店で一服。注文の品を受け取り、表のテーブルにつく。ようやく日が落ちて暗くなりかけたニューオーリンズの街道脇で、男3人問わず語り。


Carmit、再び

今日のクラビングは、Carmit RaffinがDonna's Bar & Grillに出るというので、清水と見に行くことにする。まだやるべきことが残っているという旦那柴田が、それでも店まで車で送って行ってくれると言う。店の側で車を止めふと脇を見ると、Camitが今まさに自分の車に寄って行くところであった。どんな車に乗っているのかと見てみると、なぜか荷台にタンクのようなものを載せたピックアップ。他に何か仕事でもしてるんだろうか。

店には旦那柴田も来てビールを驕ってもらう。本当に柴田家には足を向けては寝られない。この夜、Donna's Bar & Grill"のカウンターでは日本人の女の子が働いており、ニューオーリンズで活躍中のジュン山岸氏の話等が出る。今夜、山岸氏もここに来るらしい。さて、この夜もCarmitの演奏はご機嫌。ただ初めての感動もあったからか、Vanguardでの演奏の方が全体に乗りが良かった様に感じられる。Vanguardの時の選曲の方がダンス向きに構成されていたのが大きな要因か。さらにこの夜は、ステージに一番近い位置に陣取った人達が座り込んでしまったこともあり、客のノリをスポイルしたことも挙げられる。Carmitも"ここは、ダンスフロアだっ。"、とMCの際に一番前の客に向かって言っていた。1部と2部の間の休憩時間、前回私がピアノの脇で聴いていたこともあって覚えていたのか、ピアノのおじさんに話し掛けられる。その後、トイレに行こうとステージの方に行くとそこにCarmitもいたので話し掛けてみる。だが、先週木曜の晩にVanguardのステージを見に行った、と話してもなぜか"そんなことあったっけな?"といった反応。もうそろそろ帰らないといけない時間なので、適当に話を切り上げ退散。そう言えばNew Birthの例のふてくされたトランペッター君も来ていて、Carmitのバンドのボーヤよろしくビールを運んだり、何だかんだと動き回っていた。

さー、遅くならないうちに帰るぞ、と清水を探すと新しいビールを頼んでいる。前夜も遅くなって心配をかけているんだからと、強引に店から出るよう仕向ける。当初この前からタクシーで帰還、の予定だったが清水が金が無いと言いだすので、しぶしぶ危険な横丁の道を通ってバーボン・ストリートに出る。奴は"大丈夫、大丈夫。"とか言ってるが、無事だったのはたまたまラッキーだっただけと思うべき。バーボン・ストリートの店に銃を持って押し入る奴が居るくらいなんだから。無知は、とても危険なもの。ということでストリートカーをナポレオン通りとの交差点で降りてからコンドミニアムの扉を開けるまで、余計な緊張を強いられたのでした。

27 May

そして墜落

清水が一足先に次の逗留地、ニューヨークへ向かう。私は大仕事を終え、すっかり放心状態。といりあえず溜まったものを、洗濯。ランドリーで乾燥機から洗濯物を取りだしていると、第三の若い女性、これまたルックス良しっ!が。挨拶を交わし彼女が乾燥機に洗濯物を移す際手を貸してあげる。このコンドミニアムの住人は一人暮しの老婦人ばかり、というのが柴田夫妻の話であったが、意外やここで出会った若い女性は皆一様に美しかったのでした。昼も大分過ぎてからギャラリーや土産物屋を中心としたぶらぶら歩きをし、ほぼ打止め状態に。夕刻、せっかくニューオーリンズまで来たんだからということで、Cafe du Mondeに入る。お約束のベニエとアイス・カフェオレでゆったり一息入れる。あまり上手くないサックスとホルンのデュオが店先で演奏していたが、うざったいだけ。足許をベニエのかけらを求め歩き回る鳩が、これまたうざったかったが、それでも飽和状態の私には心和むひと時であった。

帰宅後、日課と化したパティオでの絵葉書書きに勤しむ。丁度このコンドミニアムのマネージャーが、中庭掃除にやって来て"ちょっとの間、お邪魔するわね。"と声を掛けられる。このマネージャー女史、超がつくほどの働き者で、その揚げ句最近までしばらくの間身体を壊して入院していたそうである。そう聞いていたので、"あなたは、本当に働き者ですね。"と答えると、"私は父に働き者であることを恥ずることはない、と言われていたの。"という答えが返ってきたので、"しまった、そんなつもりで言ったんじゃないのに、誤解されてしまったか。"と後悔してしまった。しかし彼女も同様に感じたらしく、"あなたは、あなたの頭を働かせて頑張って手紙を書いてね。"ともう一度話し掛けてきたので、私の方からも"あなたも身体にはくれぐれも気をつけて下さい。"と言うことが出来た。一件落着。

明朝、ここを出る準備も完了。同じくヨーロッパのサマー・スクールに向かうための準備を終えた旦那柴田と、しばしビール片手に歓談。柴田さん、本当にお世話になりました。私の滞在のため、ベッドまで用意していただいて。この場をお借りして、改めてお礼申し上げます。

27 May

フレンチ・クオーターのホテル、初体験

早朝、空港へ向かう旦那柴田が私の分もタクシーを呼んでくれ、二人でコンドミニアムを出る。私は目星を付けていたフレンチ・クオーターのHotel Monteleoneに向かう。部屋の空き、チェックインの時間を確認していなかったので、午前6時を過ぎたばかりのこんな早くにいきなりフロントに行ってどうかという不安もあったが、無事チェックイン。ダブルベッドかキングベッドか、と聞かれたので、ダブルで結構と答えると不思議そうな顔をされてしまった。部屋に行ってみると、ダブルサイズではなく、所謂ツインの部屋であることが発覚。しまった、と思ったが、ドアのロックがひとつ壊れているのを理由に、まんまとキングサイズ・ベッドの部屋に変えてもらう。ここはロイヤル・ストリートにあって、とても品のある、由緒正しいホテルである。料金は、120ドル程度だったか、セント・チャールズ・インに3泊することを考えればお釣りの来る値段だったので、疲れ切った自分にちょっと贅沢させてあげることに。

ホテルのレストランも、とっても快適。新聞片手にゆったりと朝食。給仕も皆しっかりしている。人心地つきっぱなしの私。


リプレイ

と言う訳で優雅なホテル・ライフを送ることに決めた私は、部屋でのんびりしたり、近所のギャラリーに出掛けたり、その辺をぶらついたりして一日を過ごす。屋上にプールがあるというので日光浴でもしようと上がっていくと、間が悪いことに夕立の始まり、始まり。空がみるみる暗くなり、雷が鳴りだす。最上階の展望台から見渡すと、そこここに雷がぶっとい青筋を立てている。こりゃいかんてんで再び部屋でリラクシング。

ニューオーリンズ最後の食事を何処でとろう、と考える余力もあまりなく、気がつくとGumboという店のパティオに腰を落ち着けていた。本当はOld Papa Joe'sで毎回食べるお気に入りのジャンバラヤを食べようと思ったのだが、この日は残念ながら定休日であったため断念。で前述の通り、ここのガンボはGumbo Shopのモノより洗練されていない分だけ今回は美味しく感じた。さらにまだ今回は口にしていないジャンバラヤを試してみる。ここのもOld Papa Joe'sのように炒めた御飯にソースをかけてサーブされたが、Old Papa Joe'sのそれが洗練されてマイルドな口当たりであるのに比べ、野卑な、辛みの利いたソースでこってり味のここのジャンバラヤ、これはこれで美味いのかもしれないが、今の私の胃袋にはちょっとトゥーマッチであった。

食後、バーボン・ストリートを軽く流し、結局馴染みのTricou House~711 Bourbon St.に入ってしまう。この日は先週とは違うバンドがブッキングされていたが、週末のバンドに比べると大分落ちる。客も乗りが悪い。それでも歌モノのバッキングは、こっちのギタリストは上手い。そろそろNBAプレイオフが始まるという頃、席を立ちホテルへ。ホテルに向かってバーボン・ストリートを歩いていると、案の定、Andyに出会う。"他の仲間はどうしたい。"と聞いてくるので、"それぞれにここを発って今残っているのは、俺だけだ。その俺も明日ここを出る。"と答える。すると"いつここに戻って来るんだい。"と奴。そればっかりは分かりません、今のところ。

まあ、せっかくの良いホテルなのだからこれ位ホテル内で過ごしてもバチは当たるまい。NBAプレイオフを見ながら、日曜日に買った葉巻<銘柄は勿論、Mocanudo>を楽しむ。良い気分でふかしていると、突然警報が鳴り響いた。なんだ、誰かドアでもこじ開けたか、とうろたえ警報の元を探す。ふと見上げると壁に煙探知器のようなものが。もしや、これが、と訝っていると突然警報が鳴り止む。と、今度は備え付けの電話が突然鳴りだして泡を食う。"煙草、吸ってるか。"と声の主。"吸ってる、吸ってる。"と馬鹿みたいに答えると、警報が鳴った理由が分かって安心したのか"O.K."とひと言。いやー、古いホテルなんで燃えやすいのか、相当敏感に警報器をセットしてあったみたいで、私の優雅なホテル・ライフも一気に吹っ飛ばされてしまったのであります。


[ Index ] | Prologue | New York, NY | Crunbury, NJ | New York, again | Frederik, MD | New Orleans, LA<Part1> | New Orleans, LA<Part2> | New Orleans, LA<Part3> | Houston, TX<Part1> | Houston, TX<Part2> |