20 May
New York, NY

アメリカン・イーグル?

JFKに向かうシャトルにピックアップしてもらう。私の泊まったPennsylvenia Hotelが最初のピックアップ場所だったようで、この後ダウンタウンの各所を巡回してJFKへ向かう客を拾っていくことになる。シャトルにピックアップしてもらってダウンタウンからJFKに行こうという人は、市内の交通事情の悪さ、特にマンハッタンから出るトンネルが片側一車線であることや、ダウンタウン各所に寄り道して行くことを計算に入れて便をアレンジしないと、飛行機に間に合わなかったり、空港で慌ただしい思いをすることになりかねないので要注意。

一本早めのシャトルにして正解だった私は余裕でゲートへ。空港の職員に案内されて乗り口に行ったそこで待っていたものは、"DC10"だったか、とにかくアメリカン・イーグルの小型機だったわけである。アメリカン航空の周遊で行っていた私は、正直、アメリカン・イーグルへの搭乗は予想もしていなかった。近距離でしかも乗客の少ない路線については、アメリカン航空傘下のアメリカン・イーグルを利用することになっていたとは。"こんなちっぽけな飛行機に乗るのか..."、と不安がつい口を突いて出てしまう。これが風や気圧の影響をまともに受ける、例えて言えば大河を流れる木の葉のような飛行機で、しかも乗客は30人弱くらいであろうか、とにかく道連れが少ないことがさらに不安をかき立てる。エンジン音はやけにうるさいしプロペラの回る振動がダイレクトに足許に伝わってくる。"Oh, my budda!"、そう呟き無事を祈る。



Frederick, Meryland

Montgomery Shuttle

そのちっぽけな飛行機は、最後まで期待を裏切らなかった。ダレス空港に着陸の寸前、横風を受けたのか、グラグラっと揺れたのにはほとほと参った。

ダレス空港に着後、ディーラーのBuckに電話を入れる。彼とは私の出発前に色々メールで打ち合わせをしていたが、最後の詰めの段階で彼からのメールが届かず、とりあえずダレスに着いて連絡すれば何とかなるだろう位に考えて来たので、若干の不安がよぎる。案の定、私の出立と入れ違いにメールを送っていたようで、シャトルのアレンジをしておいたから、乗り場に行って行き先を言えばO.K.ということだった。ダレスからの道のりは、うわっ、また田舎に来てしまった、という様な光景が広がっていたが、緑と水の美しさがなかなかのものであったため気分的に安らぐナイス・ライドであった。

シャトルの運転手も不案内で途中のコンビニで道を訊ねていたが、何とかBuckの店の前に辿り着く。運ちゃんに荷物を下ろしてもらい、出迎えにやって来たBuckと挨拶を交わしながら彼の店へ。

ここに来たのは、私が地元に開くビンテージ・ショップの買い付けのためである。さっそく店内を徘徊し在庫を物色。とは言っても、今日のところは閉店まで間が無いし旅の疲れもあるので、商談は明日、すっきりした頭でと彼に伝える。目ぼしいアイテムの値段のチェックをし、ホテルで作戦を練る材料を揃えることは、忘れなかった。店を閉めた後、Buckにイタリア料理屋でご馳走になる。色々話をするうちに、共通の知人がいることが判明。世間というのはつくづく狭いものである。腹も膨らんだ後、彼のコンバーティブルで軽くドライブしながら、彼が予約を入れておいてくれたホテルに向かう。私はコンバーティブルに乗るのが初めてだったため比べようもないが、美しい街並み、遠くに広がる緑、抜けるような青い空の元、広い道路を駆け抜ける爽快感は日本ではまず味わえないものではないだろうか。途中地元マイナーリーグのホームグランド脇を擦り抜ける。この数日はホームゲームが行われているので、地元ファンが結構詰め掛けている。"私の親父は野球が好きで、ここで試合のある日は必ず見に来ている。今も恐らくスタンドのどこかで見ているはずだ。"とBuck。Buck自身野球をやっていたこともあって、ゲームを見るのは好きだそうだ。私も小学校の頃親父と屋根の付いていない頃の後楽園に巨人を応援に行った良い思い出がある。ここら辺は、日米の親と子の付き合いの共通項だと思う。

コンバーティブルは郊外のHoliday Innのドライブウエイにするすると入っていく。ショッピングモールにほぼ隣接する、小高い丘に建てられたこのホテルが今日の宿だ。

チェックインや帰りのシャトルの手配も全てBuckが整えてくれる。感謝。再び車に乗って、私の部屋に近い入り口へと向かう。このホテルは所謂モータリスト・ホテルというやつで、大きなロの字を描いて建てられていて、正面玄関と私の部屋への入り口は丁度正反対の位置に当たる。車を止め、荷物を持ってもらって部屋へ。Buckに、"プールに入りたければすぐそこにあるぞ。"、といわれ見ると、なるほどロの字の真ん中の部分がパティオというか、プールとかジャグジー、フィットネスルーム等を備えた空間となっている。これでツイン一泊84ドル也。ニューヨークの高い、狭い、古いと三拍子揃ったホテルの次だったこともあり一発で気に入る。困ったときのためにと言ってBuckが自宅の電話番号を教えてくれ、翌日迎えの段取りを打ち合わせて別れる。

風呂に入り、冷たい飲み物を飲みながら翌日何を発注するか算段する。ある程度骨組みを固めたところで中庭から嬌声が。気になりだしたら止まらない。窓から見ると大学生くらいであろうか、女の子が3、4人、私の部屋の真下にあるジャグジーで楽しんでいる。私も一瞬臨戦態勢に移ろうと考えたが、日本人の中ですらマッチョとは言えない私の身体で飛び出して行くのは無謀というもの。小僧扱いされる前に大人しく寝ることを考える。

いや実を言うとColieの所の地下室のソファ、あそこでダニ喰われたようで、痒くてどうにもたまらなくなってきていた。風呂上りに鏡に映してみると右脇腹ちょっと後ろ辺りが悲惨な状態に。こんな身体でジャグジーやプールに飛び込んでいこうものなら、入ってた人皆、一斉に飛び出すって。


21 May

商談、成立!

快適なホテルでの目覚めは、すこぶる爽かだった。ホテル内のレストランで朝食を済ませて、迎えを待つ。今日はBuckが店を開ける前にじっくりと商談をすることになっている。程なく迎えに来た彼のコンバーティブルに乗って、街へ。車を駐車場に入れ、軽く街中を案内してもらう。途中、彼の奥さん、Bethの働く所謂幼稚園みたいな所に立ち寄る。この日は、末っ子のNikkieもお母さんを手伝って子供たちの面倒を見てやっている。因みにここでも私の名は発音しにくいということで、"Hidie"と呼ばれることに落ち着いた。

店に辿り着く。品定めの開始である。日本での相場とプレイヤー向けの店にしていこうという自分の方針とを軸に、目ぼしい物全てを手に取り、一本一本音を出させてもらう。高価なオールド・ストラトが何本もあったが、弾かせてもらうと今一つで、今回はリストから除外する。ギターの品定めがほぼ落ち着いたところで、ツイードのデラックス・アンプが目に入る。音を出させてもらうと、気合の入った実に良い鳴りをしてくれる。値段を聞くと、持って帰って売り物にするにはちょっと高すぎる。が、諦めるにはもったいないほどの良い音。小っちゃな店でのライブならこのデラックスを充分に鳴らせて、相当気持ち良い音で演奏できるのでは、と自分用に購入することを真剣に考える。Buckにそう話すと、"Hidieの顔色を見ていたら、きっとそう言いだすと思っっていたよ。良かったらHidieの為にツイードのリバーブ・タンクも見つけてあげるよ。"、とすっかりお見通しであった。結局、この三年間生活のためにくだらない仕事に耐えてきた自分に対するご褒美、とこじつけて購入を決意する。

一通り品定めも済んだところで、Buckの売り込み及び私の値切りタイムが始まる。今回は、ギター6本、ベース2本そしてデラックス・アンプを1台ということに落ち着き、配送の手配と支払いを済ませる。これで本日の商売はO.K.、ということであろうか、サンドイッチを食いに行こうと誘われる。その為この日は彼の店、開店が午後2時となってしまう。

彼の店の真ん前にあるレストランへ。落ち着いた、とても良い雰囲気の店構えである。ここではBuckお薦めの、パストラミ・サンドとブルーリッジ・マウンテンといったと思うがここの地ビールを試してみる。地ビールはダーク・タイプでコクのあるしっかりとした味。パストラミも美味く、満足、満腹。カプチーノを飲もう、とコーヒーショップに向かう道すがら、再び簡単に街を案内してもらう。"Hidie、この街は全く安全なところだから、ゆっくりと見て回っておいで。戻ってきたらホテルへの足を手配してあげるから。"、と言う彼の勧めに従い、しばし観光モードに入る。

ここフレデリックは、南北戦争中は北部と南部の中間地点ということで、中立を保っていたという。その為古い建造物が焼失することなく現在に至っており、美しい街並みが築かれることに至ったようだ。こうした歴史ある街ということを反映してか街にはアンティーク・ショップが数多く、相当どさくさな店もなくはないが、ちょっと覗いてみた何軒かでは安くて趣味の良いものを見つけることが出来た。一方、南北戦争の資料館というものもしっかりあり、入ってみるとアメリカ人の家族が一つ一つの展示物や資料VTRを真剣に眺めている姿が印象的であった。個人的にはそれ程南北戦争に興味がある訳ではなかったので軽く流しながら見ていったが、こうした小さな資料館は予算的にも厳しいようで、保存と運営のために小額の寄付だけは自主的にさせていただいた。資料館のエントランス脇にはスーバニア・ショップもあり、こういったショップにお馴染みのバッジやトレーナー・Tシャツ類から南北戦争関連・フレデリックの歴史関連の写真集・書物が揃っていた。

街をぐるっと一巡りし、インディアン工芸の店などに立ち寄りながらBuckの所に戻る。タクシーを呼んでもらい、閉店後、奥さんのBethを伴って夕食に行く約束をして別れる。

ホテルに戻り、Buckが行ってみろと言っていたホテル脇のショッピング・モールに行くことにする。アメリカの郊外に良くあるいくつかのデパート、スーパー、多くのショップがくっついた複合商業施設である。旅の前半で小っちゃなスーツケースしか持たない私は、ここで買い物に励むわけもいかずウインドウ・ショッピングに留めたが、こういったところで売られている家庭用品は実に魅力的。ワッフルを焼く器具、BBQの道具、バスルーム関連の品々、寝具等々いずれも安い。モールでの買い物で大事なのは、時間を有効に使うことと自分の居る位置の確認。これを怠ると余計に歩き回ったり時間が足りなくなったりと散々な目に合う。さて、小一時間ほど歩き回りながら購買意欲を諌めた私はホテルへ。

BuckとBethが今度はランドクルーザーで迎えに来る。食事にはちょっと早いので、フレデリックの街が見渡せるところに買った、彼らの地所までドライブしようと言う。途中で彼らの友人の家に立ち寄る。フレデリックの街に建つ家々は煉瓦造りのものが多く、故に街並みがとてもきれいで魅力溢れるものとなっている。この友人宅近辺は前庭の緑も美しく、落ち着いた佇まいを見せている。この写真にあるような家は、確か"Bi-flex"と言ったと思うが、左右対称の二世帯住宅となっていて違う家族同士でシェアしていたりもするらしい。話を聞くと彼の友人の家賃は、日本でワンルームを借りる程度だそう。これで二階建てのゆったりした家を借りられるなんて、実に羨ましい限り。さあ、いよいよ車は街中を離れ山へと分け入っていく。道中に空軍基地があったので、X-Filesファン同士ということで意気投合したBethに、"ここではUFOを隠していたり、飛行実験をやったりはしないの?"と聞いてみる。すると"UFOは隠してないみたいだけど、アウトブレイクという映画は知ってる? そのロケーションでこの基地が使われていて、映画の中では西海岸ということになっているけど、実はこの街が舞台だったのよ。ここが病原菌に汚染されていないことを祈るわ。"というお答え。へー。

彼らの地所は、新たに山を切り開いて開発を進めている地域の一角にあった。これが彼らの言う様にとっても素敵な場所である。Bethはここからの景色が大好きだそうだが、確かにフレデリックの展望を独り占め、といった感じ。"今日はディアは出てこないな。"、と二人が言っていたが、本当に鹿が遊びに来ちゃうらしい。しばしその絶景と森の薫りを楽しむ。"次に来る時は彼らの新しい家が出来て、ここに泊まれたら良いなー。"と、これは独り言。

その後この一角を走りながら新興の住宅街に建つ家々を品評して行く。やはりこちらの人は家造りに対する考えをしっかりと持っている。Bethは、特にこうしたい、という意見を強く持っている様子。Buckはこの所日本庭園をホームページで見歩くことが好きということで、友人の薦めも手伝って、新しい家には日本庭園を造るんだ、と息巻いていた。

夕食は、今晩もイタリアン・レストランへ。これは、得体の知れないアメリカの飯屋の中でも比較的日本人が親しんでいる料理ということで、彼らが気を使ってくれたからに他ならない。色々と話をする中で、この二日間の礼と今後も付き合いを深めていこうということを話す。また、冗舌ではない私の英会話に付き合わせてしまったことを詫びる。Buckは、"日本に行ったらHidie以上に困ることになるんだから、それをフォローするのは当然、お互い様だよ。"と、極めて大人である。アメリカ人も捨てたもんじゃない。ビジネスマンはさすが違う、と感心しきり。料理もビールもワインも昨晩より格段に美味しく、楽しい晩餐。料理ではこちらに来て初めて口にしたのだが、トマトにモッツァレラ・チーズを乗っけた奴とホワイト・ピザというものが最高であった。私がイタリア料理屋など行かないから知らないだけだったようだがトマトにモッツァレラ・チーズというのは、結構スタンダードではあったみたいだ。ホワイト・ピザというのは、言ってみればチーズを乗せただけ、具もソースも無いピザである。それだけにピザの本質が問われるようで、ピザの王様も勉強させてもらいました。

楽しい食事の時間も終わり、Buckのコンバーチブルを取りに街中の駐車場へ。ここで乗り換えてBethは一足先に帰宅、Buckはもうしばらく私に付き合ってドライブをしてくれることに。と、駐車場の料金所で前を行くお嬢さん方の車が1ドル札が機械に入らずに立ち往生。困っている様子にすかさずBuck、車を出て彼女達のところへ。彼女達のために1ドルを出してあげ、無事車を出せるようにしてあげる。紳士である。我々はすっかり暗くなったフレデリックの街をあちこち見て歩く。犯罪件数も少なく、古き良きアメリカの街であり続けるフレデリック。最初はColieのとこに続きまたもや田舎町であったことに落胆すらしていたが、今やお気に入りの街として君臨している。彼や彼の家族の親切に感謝、そして再びこの街を訪れることを約束して、Holiday Innの駐車場で彼と別れる。


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