Bob Dylan / John Wesley Harding <1968>

おすすめ度★★★★


Dylanがバイク事故・療養後に発表した復活アルバムで、録音はナッシュビルで行われている。

66年にHawksを引き連れて、時代を先取りするような革命的Blues Rockを展開していたDylanがサイケデリックの余韻が吹き荒れるRock界に送った新作は、意外にもシンプルの極みの様な作品だった。

エレクトリックギターは一切用いず、自身のアコースティックギター、ハーモニカにベースとドラムという極めてシンプルな構成から叩き出されるグルーヴが不思議な魅力を放つルーツアルバムである。

特に手作り的な趣を満点に放つドラムとベースの何とも頼りない響きが本作の魅力のひとつとなっている所も見逃せない。

歌詞の方は音楽シーンからしばらく距離を置いていた彼の心境を映し出すかの様にシンプルなものに変化しており、より童話的な歌が見事にサウンドに溶け込む結果となっている。

またラストの2曲にはスティールギターが用いられ、次作のカントリーミュージックへの急接近を予感させている。

このアルバムが同じようにルーツ回帰を目指していたミュージシャンに与えた勇気はとても大きく、この直後にByrdsSweatheart Of The RodeoRolling StonesBeggars Banquet等のルーツアルバムが次々に発表される事になる。

 

〜特にお気に入りな曲達〜
(っていっぱいあってすんません^^;)

アルバムは実在の無法者を題材にしたJohn Wesley Hardingで静かに幕を開ける。シンプルな物語が淡々と展開され、すっかり丸くなっちゃった感のあるDylanのヴォーカルも静かに響き渡る。スっと本作の世界に誘ってくれる最高のオープニングナンバーだ。

単調な曲調から次々と展開される物語とDylanの歌いまわしが心地良いAs I Went Out One Morningも好きなナンバーだ。何でも無い曲調から匂う「グルーヴ」としか言いようの無いノリが伝わってくるナンバーである。浮き沈みを繰り返す頼りないベースラインもイイ感じですぜ。

All Along The Watchtowerは、Jimi Hendrixのカヴァーも生まれたアコースティックロック。それまでのフォークロックとは一味違うサウンドが、Dylanが再び示した新たなアメリカンロックの可能性だったハズ。

現在でも度々Liveで取り上げられ、時代ごとにそれぞれの響きと趣を提供してくれるDylanクラシックのひとつだ。

Dear Landlordでは、自身の奏でるピアノをバックに朗々と歌い上げる。相変わらずの渋い声だが、それを引き立てるバックのシンプルな演奏に改めて聴き入るナンバーです。

ワイルドな演奏をバックにテンション高く歌うDylanもカッチョ良かったけど、こういう雰囲気の中で歌うDylanもまたイイ。最高のシンガーですね、彼は。

I Pity The Poor Immigrantは、アルバム中最も美しいメロディーを持ったナンバー。しかし内容の方は非常にシビアな物になっている。ここらの開拓時代のアメリカ人の悲しみを歌う味わいは、The Bandにも通じる所である。

アルバム中最も奇妙なノリを出しているのがThe Wicked Messengerだ。いくらアレンジがシンプルになっても、この辺の革命的サウンドアレンジは流石である。

この曲に関しては、イギリスのRockバンドFacesがカヴァーしている。当時のRod Stewartの趣味の良さが伝わってくる選曲だ。

ラストの I'll Be Your Baby Tonightは、いきなりのドカントリーソングだ。ここまで素直なサウンドや歌詞を持ったナンバーを歌うのはココらから。控え目に響くスティールギターが美しい。素晴らしいナンバーですね!

 


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1 . John Wesley Harding
2 . As I Went Out One Morning
3 . I Dreamed I Saw ST. Augustine
4 . All Along The Watchtower
5 . The Ballad Of Frankie Lee    
    And Judas Priest
6 . Drifter's Escape
7 . Dear Landlord
8 . I Am Lonesome Hobo
9 . I Pity The Poor Immigrant
10 . The Wicked Messenger
11 . Down Along The Cove
12 . I'll Be Your Baby Tonight

 

 

 

 

 

 

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Woodstock時代のDylan
彼の第2幕はここから始まる..

(2002.2.13 再監修)

 

 

 

 

〜関連アルバムの簡単な紹介〜
The Rolling Stones / Beggars Banquet

「Bob Dylan’s Dream」を感じてStonesが作り上げた回帰アルバム。
残念ながらトイレの落書きジャケットは当時、デッカの了解がとれずに
真っ白のジャケに摩り替えられてしまったというから残念。

内容はブルースやカントリーなどのエキスを吸収したエネルギッシュな
モノに仕上がっており、Brian Jonesのスライドが粘っこく響く「No Expectaions」や
この泥臭さはこの時のStonesにしか出せねえ!っと叫びたくなる
「Stray Cats Blues」等が最高の状態でパックされている。

また「Thanks Nicky」の落書きが示す通りゲストのNicky Hopkinsの
活躍が出色で、ほとんどのトラックで彼の華麗なピアノが光りまくっている。
個人的には「Salt Of The Earth」でのプレイがお気に入り。

しかしココで最も注目すべきは「Bob Dylan's Dream」の書き込み。

彼らは当時アーティストの間のみで出回っていたBasement Tapesや
本作を聴いて、そのルーツ回帰の大きな勇気を得たハズである。
その感謝と羨望の気持ちが密かに刻まれているのである。

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順路はこちら
Bob Dylan / Nashville Skyline へ!

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〜関連アーティスト/アルバムへのリンク〜

The Rolling Stones / Let It Bleed
ルーツ回帰を果たしたStonesの新たなる挑戦!

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The Byrds / Sweetheart Of The Rodeo
同じくナッシュビルで録音したカントリーロックの幕開的アルバム

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Faces / Faces First Step
RodがThe Wicked MessengerをヘビーなR&Bでカヴァーしている

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