小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第八章 星の少女

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第八章 〜星の少女〜
P.4 

髪の毛が灰色。

白髪と黒い髪が入り混じっているんだけど、教室の一番後ろの僕からは灰色に見えた。そして全体的な髪の毛は短いのに、前髪だけ長く、顔が見えなかった。顔が隠されていた。こっちを見ているのか、下を向いているのか分からない。まるで雲がかかったように、曇り空のように、表情が分からなかった。しばらくの沈黙のあとお爺ちゃんが優しく言った。

「磯野さん、君の席は一番後ろの窓際だ。じゃぁ席について。」

小さくお辞儀をしたあと、ゆっくりと磯野さんは歩き出した。制服はもう変わって、この高校のものに変わっていた、でも皆半そでシャツなのに長袖シャツ。そしてゆっくりと後ろの方へ歩いてくる。全員が何も言わず、席に着く磯野かんなを見ている。前の方の席は振り返って見ている。

僕もジッと見ていた。席へ座る磯野かんな。座る時に少しだけ、かがんだせいで唇が見えた。下唇を噛んでいるのが一瞬見えて僕は急いで目をそらした。まるで今の空のように灰色の髪の毛が揺れた。

第八章 音源 /「シータ」を聴く


『 シータ 』

「ワタシ空ヲ飛ベルヨ」笑いながら君ひとり言
肘をついて教室の窓から見える空アメ色

「サヨウナラ ヒトリボッチ」君は誰と話していたの
肘をついて教室の窓から見える空へ消えた

ああ君を想うとあの日のまま笑っているよ

さまよい続けるの僕等そんな夢を見たのは春
桜の花ビラが舞う教室を君もまう



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