第三章 〜「主」〜
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頭の中がグニャグニャとゆがみそうになっていると監視カメラの映像がいくつかのテレビに映っている。一台のテレビに目が行く。全身白い作業服を着た人たちが流れてくる何かの部品を一生懸命作ってる。あぁ、父さんもここで働いているんだ。今見ているこの人も、もしかしたらクラスメイトの父さんかも知れないんだ。白い色しか無い世界で頭はおかしくならないんだろうか。
自分が目的を忘れて監視カメラを見ていることに気付いたのはしばらくしてからだった。
数秒なのか数分なのか分からない。数日間ずっと見ていたような不思議な感覚。そうだ、いつきの体育着を取りに来たんだった。警備員室を四つんばいになりながら通過して、数十メートル先にたたずむいつきの家を目指す。目指すは二階にあるという、いつきの部屋だ。
家の前につくとようやく落ち着いてきた。見た目は昔ながらの瓦屋根の家だった。
青い屋根に肌色の壁、そして二階建ての大きな家。周りには生垣もある。植物の名前はよく知らないけど、ひいらぎだった。たしかトゲトゲが災いを防ぐとかそんなようだった気がする。