The Tea Party... LIVE again!


12 October 1995

 春先にリリースされたアルバム "THE EDGES OF TWILIGHT" に大騒ぎし、5月末に見ることができた The Marquee でのライヴに驚愕したカナダ出身のトリオ、The Tea Party ですが、北米ツアーを経て再びロンドンに帰ってきました。

 以前は Yes や Dream Theater や Ratt など思い入れの深いバンドについて、ひとつのツアーで複数の公演を追いかけて見ることもありましたが、最近の自分はなかなかそういうことをしなくなりました。たまたま見た日の出来が良くなかったとしても、それもバンドの実力のうちだと思って割り切り、あまりこだわらなくなっちゃったんですね。ラットの "DETONATOR" ツアーなんて、関東公演を5回くらい追いかけて、終盤ではかなり落ち込んだこともあったりして(笑)。そんな僕がどうしてももう一度見たい!と思った The Tea Party、一言でいえばとても「逞しい」バンドに成長していました。

 会場の Astoria 2 は、お隣にある渋谷公会堂クラスの本館よりはずっと小さいクラブ。ロンドンっ子でぎっしり埋まったステージに、前回と同じく白い布が縦横に垂れ下がっています。暗転して中央アジア系の民族音楽が流れてくると、分かってはいても緊張感が頂点に達してしまいます。暗い中出てきたメンバーが楽器を構えるとところまでは前回と全く同じ。しかし、オープニングと同時にライトアップしてみると、ヴォーカル/ギターの Jeff Martin が長い黒髪をばっさりショートに切ってしまっていました。あちゃー。ルックスはジム・モリソンというよりかなりゲイリー・ムーア系になっちゃいましたけど、それは置いといてと。

 曲順は前回のライヴから大きく変更されています。1曲目は "THE EDGES OF TWILIGHT" アルバムの2曲目に収録されている "The Bazzar"。思いきり東洋系のフレーズが炸裂する曲ですが、ドラマーは腕も折れよとばかりに叩きまくるし、左利きのベーシストは細い身体を反らせて弾きまくり、Jeff はより太くなった声をマイクにぶつけます。前回と比較して、何かに憑かれたようなその荒々しいヴォーカルは、もはやジム・モリソンのフォロワーの域を完全に超えていました。続く "Fire In The Head" のオープニングはすごくスローなギター弾き語りで導入し、2番の歌詞から演奏が爆発!

 5月の公演では比較的アルバムに忠実なテイクで聴かせてくれたわけですが、ツアーの終盤ということで各曲にアレンジの変化が見られます。特に間奏部分から3人が揃ってかなり自由な展開に突入するのには驚かされました。インプロヴィゼーション風に引っ張り、突如として元の楽曲に回帰する様子には、トリオならではの身軽さと、3人のコミュニケーションの良さを感じずにいられません。

 印象的だったのは1stアルバムからの大曲 "Save Me" の途中でインプロに入り、ひと通りピークを越えたところで Jeff が何気なく歌いだしたフレーズが Nine Inch Nails の "Hurt" のコーラスだったこと。あまりに唐突で自分も周りもあっけにとられましたが、すぐに反応するところがさすがロンドン。自分も好きな曲ですが、このバンドの趣味の広さと選曲の確かさにちょっと誇らしい気持ちになりました。この曲の後半では Jimmy Page ばりの弓奏法を見せてくれますが、これまた見世物の域を完全に脱した素晴らしいソロブレイクでした。

 笑えたのは、椅子に座ってアコースティック曲の "Inanna" を歌い始めようとした時に、フロア前の子たちから一斉に Jeff に向かって差し出されるものがあったこと。何かと思ったら、前回の公演時のこの曲の前に「ジョイントあるかい?」と尋ねた Jeff が客からもらったマリファナを吸って咳き込んだのを覚えていたファンたちが、またしても用意していたのです。「よく覚えてるなぁ」と Jeff 自身も苦笑しながら1本受け取り、深々と吸い込んでゆっくり煙を吐き出します。「今夜のは最高だね」というやり取りに、何だかとっても親近感を覚えてしまったのでした。

 それこそゲイリー・ムーア風のどブルース・ジャム曲を挿入したりもしながら、あっという間に本編ラストの "Turn The Lamp Down Low" に至ります。この曲の見せ場はラスト。ギター、ベース、ドラムスのパートを演奏し終わった3人がステージ前に出てきて、それぞれパーカッションを抱えてトリオで激しく叩きまくるところ。ぴったりと息の合ったアンサンブルを聴かせてばっちり決め、さっと消えていきました。

 アンコールの3曲を含めても全12曲。家に帰った後で今日の演奏曲順にアルバムからテープに録音してみたのですが、ちょうど60分テープに収まるくらいでした。実際のライヴは1時間30分は超えていますから、如何にインプロヴィゼーションが増えているかが分かります。ちっとも飽きさせずに見せ、聞かせてくれましたし、あるいはこれが今後の The Tea Party の方向性を占う上で重要なヒントになるかもしれません…

 "THE EDGES OF TWILIGHT" アルバムは結局のところ世界的にブレイクしたとは言えませんでしたが、まだまだ素晴らしい可能性を秘めている若手バンドです。今後とも応援し続けたいと思っています。

***

セットリスト
1. The Bazzar
2. Fire In The Head
3. Sister Awake
4. Walk With Me
5. The River
6. Inanna
7. Save Me
8. (instrumental jam)
9. Turn The Lamp Down Low

<Encore>
10. (Secret track from "THE EDGES OF TWILIGHT")
11. Correspondence
12. A Certain Slant of Light



July 2003 追記
 まさか2回もライヴを観られるなんて。これまでの33年の人生を振り返っても、またとない貴重な経験であったと言わねばなりません。本国カナダではもちろん大人気ですが、日本にいては到底観ることのできないバンドのひとつ。ライヴでこそ実力を発揮するタイプだけに、非常に惜しいことです。皆さんが海外を訪れた時に、もし彼らが偶然その街にツアーで訪れていたとしたならば、その晩の予定をすべてキャンセルしてぜひライヴを観に行っていただきたい。それくらい自信を持ってお勧めできるバンドです。


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