Sleeper, 60ft Dolls, The Wannadies @ Shepherds Bush Empire


13 October 1995

 もちろん Sleeper のライヴは最高だった訳なんだけれど、前座がこれまたナイスだったのですよ。Sleeper の所属する indolent レーベルのアクトの大集合大会になっちゃって、まず初っ端はスウェーデン出身の The Wannadies

 このバンド、すごく気になってはいたのだけれど、大ヒットに恵まれずなかなか音を聴く機会がなかったのです。だから最初の出会いがライヴになってとてもラッキー。そして曲はと言えば超キャッチーな歌メロ! すぐにでも歌い出せそうな曲たちと、ステージ向かって左側に位置するキーボードの女の子が可愛くて、思わず身を乗り出して引き込まれてしまう演奏でした。シングル "You and Me Song" では合唱が起こります。アルバム "BE A GIRL" も好調ですし、10月30日には2枚セットで未発表曲6曲を含むニューシングル "Might Be Stars" も出るということで絶好調の The Wannadies、北欧ブームの真打ち登場って感じのライヴでした。

 こっちのライヴの魅力のひとつはオープニングアクトです。日本だと洋楽のライヴに前座がつくことは稀ですが、こちらだとただでさえ安いチケット代で、一晩に2つも3つもバンドを観られてしまうので何かとお得。しかも、決して自分たちを観に来ている訳じゃないお客さんを前に、与えられた短い時間で思いきりアピールしなくちゃいけないのが前座の宿命。お約束のように盛り上がるメインアクトよりもむしろ濃密で良いライヴを見せてくれることもしばしばです。そんな意味で、続く2番手の 60ft Dolls もまた要注目の新人バンド。

 ギター/ベース/ドラムスのシンプルなトリオ編成ですが、ブチ切れたような怒涛のスピードでかっ飛ばした1曲目にはマジ身体が反応しました。こりゃすげえ。曲によってハードロックぽかったりブルース入ってたりするのですが、みずみずしい演奏と随分苦労してそうな風体がアンマッチで面白い。ギターとベースが曲によってほぼ半々ずつリードヴォーカルを分け合うのですが、これもちょっと珍しいパターンかも。とりあえず10月23日発売のシングル "Pig Valentine" はコレクターには狙い目。ピンク色のカラーヴァイナル7インチはわずか限定150枚プレスの予定だよ。

***

 …ふう。
 という訳でようやく indolent の稼ぎ頭、Sleeper の登場です。既に来日公演も済ませているので日本のファンにもお馴染みになったことでしょうが、とにかくルイーズ・ウェナーは今一番可愛い!のです。膝上何センチあるのか分からないくらい短いミニスカから、思いっきり健康な脚をたっぷり見せてぴょんぴょんジャンプしまくり。もう「フトモモ・オブ・ザ・イヤー」は彼女に決定だよ(笑)。黒のタンクトップに包まれた胸は明らかにノーブラ、何から何まで「狙った」演出でロンドンっ子を煽ります。

 こうした明らかに意図的な演出や、ちっとも破綻せず「適度に巧い」演奏は、真面目なギターロック好きにとってはいちいちムカつくポイントかもしれませんが、まあそこは抑えて抑えて。アルバムで聴く限りではどうも勢いが死んでいた、良く言えばお上品に化粧されていた楽曲たちが、ライヴでは実に活き活きと再現されます。最新シングルの "What Do I Do Now?" のB面にも "Disco Duncan""Vegas""Amuse" のライヴヴァージョンが収録されていますが、どれもライヴならではの勢いがそれなりに捉えられていますのでファンなら要チェック。

 バリライトまで駆使して、結構豪華で動きのある照明。こういうプチゴージャスっぽい演出もギターロックファンから嫌われそう(笑)。でも実はほとんどルイーズの脚ばかり観ていたので、その他のバンドの様子は良く分からないという説も… その意味ではヴィジュアルなしでは面白さを伝えにくいライヴなのですが、オープニングナンバーの "Twisted""Pyrotechnician" での観客の合唱には凄いものがあったし、ヒット曲の "Inbetweener""Delicious" の盛り上がりは言わずもがな。あとは上に書いたニューシングル "What Do I Do Now?" にも収録されていた新曲 "Paint Me" の出来が非常に良かったのを強調しておきますね。

 曲数こそ少ないけれど、ステージ運びだけ観てると何だかベテランみたいに手慣れた構成で、これってやっぱルイーズがいろいろ研究してるからなんだろうね。ドキッとさせる発言でマスコミを騒がせるのが得意な彼女ですが、各種のコメントなんかも相当狙ってしゃべってる気がする。案外、デーモン・アルバーンのインタビュー記事とか蛍光ペン塗りながら読んで勉強してるんじゃないかと(笑)。

 …でも、それでいいじゃん?というのが僕のスタンスだったりして。こういう女の子たち、こういうバンドたちを今観て、今聴くことほど面白いことはないんです。こんなもんつまんねーぞ、とか文句言ってるのよりずっと面白い。大切なのは「今」聴くことで、これを明日聴いても駄目だし、来年聴くのでは完全にアウト。リアルタイムの重要性を嫌というほど感じさせるライヴなのでした。実は普通の女の子なんだ、っていう当たり前の事実が彼女の全身から溢れてて、しかもそれをちっとも隠そうとしなくって、そのこと自体がとても好印象のライヴでした。以上。


August 2003 追記
 リンクを張ろうとしてみると、現在オフィシャルサイトがあるのは The Wannadies だけなんですよね。60ft Dolls もこの後アルバムを出して話題になり、Sleeper に至ってはフルレンスを3枚もリリースできるほどの時代だったというのに…。「ブリットポップ」という時代の最後の徒花であったかもしれませんが、僕はそれなりに楽しんだし、同じ時代を生きた人ならきっと、「あの」感覚を今でもリアルに思い出すことができるでしょう。
 この夜は indolent レーベルがライヴ録音しており、後に発売された 60ft Dolls と The Wannadies のシングル盤のB面にライヴヴァージョンが数曲ずつ収録されています。僕はときどきそのシングルを取り出して、あの頃のことを思い出すのです。


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