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artist : LEWIS FUREY
title : 『 LEWIS FUREY 』
release : 1975年
label : A & M RECORDS
tracks ( cd ) : (1)HUSTLER'S TANGO (2)LAST NIGHT (3)THE WALTZ (4)CLEANUP TIME (5)LOUISE (6)KINDA SHY (7)LEWIS IS CRAZY (8)CLOSING THE DOOR (9)CAUGHT YOU (10)LOVE COMES
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(5) / side B...(6)〜(10)
members : LEWIS FUREY,vocal,piano ; BARRY LAZAROWITZ,drums ; JEFFREY LAYTON,banjo,mandolin ; JON MILLER,bass ; ESTELLE STE.CRIOX,vocals ; CAT STEVENS,TIM CURRY,english firefly thugs.
producer : JOHN LISSAUER & BARRY KROST (executive producer)
orchestrations by JOHN LISSAUER.
related website : 『 lewis furey 』 (ルイス・フューレイのサイト。公式かどうかは不明。フランス語)




 僕がルイス・フューレイを知ったのは確か'94年の4月頃。友人に「気に入るはずだよ」と言われ、ブリジット・フォンテーヌの 『 COMME À LA RADIO 【ラジオのように】』 と一緒に (両方共アナログ盤) 借りたのがきっかけ。当然の如く両方気に入ったのでテープには録ったものの、“手軽に、そしていつまでも”聴きたかったので早速CDを買いに行ったのだけど、ルイス・フューレイだけがどこにもない。アルバイトしていたレコード店のレコード・コレクターズのバックナンバーにかろうじて記事が載っていたものの、再発CDのリリースは'90年。品番もその時期 ('94年) の規格とは違う品番だった。当然廃盤。それからというもの、中古レコード店を覗くたびに“洋楽CDのL”のコーナーを必ずチェックする習性が身に付いてしまった。どうにかレコードは手に入れたものの、“手軽に、そしていつまでも”が捨て切れずに“洋楽CDのL”のコーナー・チェックの日々は続き...。

 2001年12月ついに!再発決定!しかし予約が面倒な僕は、「発売前日の夕方に行けば手に入るだろう」と高を括って、2軒あるHMVの1軒目でヒヤリ。「ウチでは取ってません」の一言。「ヤバイ...。これは手に入らないかもしれないゾ」という不安を抱きつつ2軒目のHMVへ。“洋楽CDのL”を見たらやはり置いてないので、店員に尋ねると「有りますよ」と言って奥から本作とセカンド・アルバムを持ってきた。その時「あ、この人、取り置きして買うつもりだったんだ。危ない、危ない」と、つい良からぬ疑いを持ってしまった。しかし、これでやっと7年8ヶ月の悲願が叶えられたのだった。そして、その足で参考のために覗いたタワー・レコードにも置いてなかったので、「ホント、買えてヨカッタ、ヨカッタ」と胸をなでおろす思いで家路についたのだった。皆さんも廃盤になる前にぜひ買っておいた方がいいんではないでしょうか。


(1)HUSTLER'S TANGO  ▲tracks
 そんなこんなで手に入れた本作、やはり名盤。その本作を名盤たらしめているのは、ルイス・フューレイのファンなら誰もが名曲と推すタンゴの(1)のインパクトがあまりにも鮮烈だからだろう。ミュートをつけたラッパ類やバンジョー (途中から遠くで微かに鳴っている) で奏でられる奇妙なユーモラスさに対して、シリアスなピアノの低音やエレガントなヴァイオリンのピチカット。この歪なロマンティシズムは、その歌詞に由来するものだとも思うのだが、歌詞を知らなくても十分衝撃的だ。むしろ歌詞は知らない方が良いかもしれない。この曲に限らず、この人の書く歌詞は欧米では放送できなさそうなものが多いからだ。歌詞/サウンドの両面でちょっと似た資質を持つカナダのシンガー/ソングライター〜ルーファス・ウェインライトがいるけど、(1)の次にそのルーファスの「MATINEE IDOL」 (『 RUFUS WAINWRIGHT 』 に収録) という曲を繋ぐと、何ともピッタリの雰囲気。(1)が鮮烈なのは確かだけど、以下の曲も名曲ばかり。


(2)LAST NIGHT  ▲tracks
 (1)の鮮烈さからすると凪のような(2)。真っ暗な中にぼんやりと灯る電灯のようなエレクトリック・ピアノ。呟くように始まる歌。コロコロ控えめに鳴る木琴。「LAST NIGHT」という2語だけのサビを優しく歌うコーラスと、その時静かに、しかし高らかに鳴る鐘の音。そしてサーカスのようにユーモラスで哀愁のあるエンディング。ちょっと他では聴かれない奇妙なサウンドだが、絶妙なバランスでうまく同居している。音の鳴る空間と、そこで鳴る楽器の距離感や質感が、ルー・リードの「ワイルド・サイドを歩け」 (『 TRANSFORMER 』 に収録) と共通する感じだ。


(3)THE WALTZ  ▲tracks
 悲しげなピアノで始まるワルツの(3)。かなりシリアスな出だしから、だんだんとラッパ類が鳴り始めてサーカスっぽくなっていく。最後は狂おしいルイスのねじれたようなシャウトで幕。後にルイスも所属することになるサラヴァ・レーベル主宰者〜ピエール・バルーの作品 『 ÇA VA, ÇA VIENT 』 や 『 AU KABARET DE LA DERNIÈRE CHANCE 【ラスト・チャンス・キャバレー】』 (こちらは数人による共作) が好きな人なら、気に入ること間違いなしだと思う。


(4)CLEANUP TIME  ▲tracks
 バンジョーをフィーチャーした(4)。曲が始まってからしばらくは、リズム・トリックがあることに気が付かなかった。そして聴き慣れないリズムだと思っていると、部分的にタンゴのようなアクセントになったり、やたらリズミカルなバンジョーが現れたり、中国のシンバルの様な楽器が左右に飛んだりと、「一体どこの国の音楽なんだ?」と思わせる。ルイスのヴォーカルがいつになくダーティーだ。


(5)LOUISE  ▲tracks
 後に(1)と共に傑作ライヴ盤 『 ENREGISTREMENT PUBLIC 』 で取り上げられる(5)。沈鬱で重厚なストリングスやコーラスが響く中で、Bメロの爽やかなピアノや2番で出てくるラッパのユーモラスさが救いだ。絶望の中に妙な“おかしみ”があるところが、彼の音楽のユニークなところだと思う。そこがサーカスやピエロを想起させるポイントなのだろう。


(6)KINDA SHY  ▲tracks
 軽快なピアノとドラム。チロチロと鳴るマンドリン。そして不気味な躍動感を聴かせるストリングス。何やら東欧の村人がダンスに興じているかのような雰囲気の(6)。ストリングスが速くなるにしたがって半音ずつ上がっていった挙句、フリーな演奏になるエンディングは、ビートルズの「A DAY IN THE LIFE」 (『 SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND 』 に収録) とキング・クリムゾンの「21ST CENTURY SCHIZOID MAN」 (『 IN THE COURT OF THE CRIMSON KING 【クリムゾン・キングの宮殿】』 に収録) のそれを合わせたかのよう (あれほど大袈裟ではないが) 。“へろへろ”と浮かんでくるリプライズが不気味。


(7)LEWIS IS CRAZY  ▲tracks
 バンドネオン〜アコーディオン系の楽器によるタンゴ的なアクセント、フラメンコ的なカスタネット、“ビュワ〜”“ビニョ〜”っとねじれたウッド・ベースの和音、そこに加わるバンジョー。“またもや”というか“いつものように”無国籍なサウンドでありながらどこかヨーロッパ的な(7)。


(8)CLOSING THE DOOR  ▲tracks
 一人ぼっちの静かな夜に、心の疲れを癒すようなピアノ。優しく包むような金管群や弦楽器。歌詞の意味するところは違うが、何かのエンディングやレコード店の閉店時にかけるのにピッタリな曲(8)。確かクラシックのピアノ曲にこんなのが有ったような気がする。


(9)CAUGHT YOU
(10)LOVE COMES  ▲tracks
 悲しげなバレエ音楽のような(9)に続いて、後のルイス流レゲエのプロトタイプと思しき(10)。クラシックのようなメロディーを持ちつつも、サビでちょっとだけオルガンがレゲエ的に。エンディングに向けてのファゴットか何か (オーボエ?) のソロもとてもいい。


 (1)の印象が強いあまりに、“悲しい”“暗い”といったイメージが先行しがちの彼だけど、本作を全体的に聴けば暗い曲と明るい曲が交互に出てくることに気付くはず。レコード評で“ヨーロッパ的”と言われると西欧的で暗く、そしてクラシック的なものばかりだが、彼の場合東欧的な音楽も含んだ上での“ヨーロッパ的”なものなので、そこにはクラシック的なものばかりではなく踊りや歌を通した“生きたヨーロッパ”も多分に含んでいるのだと思う。


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