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artist : MAX ROACH, HIS CHORUS AND ORCHESTRA
title : 『 IT'S TIME 』
recorded date : 1962年2月15、26、27日
label : IMPULSE RECORDS
tracks ( cd ) : (1)IT'S TIME (2)ANOTHER VALLEY (3)SUNDAY AFTERNOON (4)LIVING ROOM (5)THE PROFIT (6)LONESOME LOVER
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(3) / side B...(4)〜(6)
members : RICHARD WILLIAMS,trumpet ; CLIFFORD JORDAN,tenor saxophone ; JULIAN PRIESTER,trombone ; MAL WALDRON,piano ; ART DAVIS,bass ; MAX ROACH,drums ; ABBEY LINCOLN,vocal.
producer : BOB THIELE
composed and orchestrated by MAX ROACH.
vocal choir conducted by COLERIDGE PERKINSON.
related website : 未確認




 マックス・ローチはチャールス・ミンガスと並んで黒人運動に積極的なミュージシャン。その彼が本作に冠したタイトル 『 IT'S TIME 』 とは、「今こそ我々黒人達が立ち上がる時だ!」という決意表明であると同時に、音楽家(リズム楽器奏者)としての立場を忘れずに「様々なタイム=リズムが詰まったアルバムなのだ」というメッセイジも込められており、実際、本作収録の曲の殆どが変拍子 (この場合非4ビート) で占められている。


(1)IT'S TIME  ▲tracks
 最も複雑なのがタイトル曲(1)。(3拍子+4拍子+6拍子+7拍子)×2+1拍子+(4拍子×6)+3拍子+4拍子+6拍子+7拍子。これがテーマ部分のリズム (色々な分け方もあるけど分かり易くするためこのように。かえって面倒だったりして) 。かなり面倒くさそうな展開なのに、圧倒的な演奏に飲み込まれ全く気にならない。のっけからいきなり阿鼻叫喚地獄に堕とされた罪人が、地獄の官吏に追われる中をただただ逃げ惑うような感じ。日本人だからこう感じるのかも。しかし当時の黒人達からすれば、自分達を差別する白人達に抗議して立ち上がる様をイメージしたのだろう。タイトル曲だけあって、最も強いメッセージ性を感じる。ところが、テーマ部分だけでもこれだけ攻撃的なのに、更に凄い箇所がある。追い立てるようなコーラス隊を抜けた直後 (2分30秒を過ぎたあたり) の、ローチの大砲のようなバス・ドラムの連打!それをバックに咆哮するクリフォード・ジョーダンのテナー・サックス!ここにきて一気に聴き手の怒りが解放される。その後もジョーダンのソロが続き、ローチのドラム・ソロを挟んで様々な展開を見せた後テーマに戻り、息を呑み手に汗握るような6分半強が終わる。


(2)ANOTHER VALLEY  ▲tracks
 続いて7/8拍子の(2)。ジャズとしてはかなり変な演奏。ピアノ、ベース、ドラムによるシンプルなバックに、少しマヌケなトロンボーンが絡んだかと思うと、異教的なコーラス隊が登場。そのコーラス隊が引っ込み再びトロンボーン・ソロ。ソロが進むにつれてマル・ウォルドロンのピアノが様々なアプローチ (低音をゴインゴインいわせたり、高音をパラパラと弾いてみたりetc) を仕掛けてくる。かなり重めの曲。


(3)SUNDAY AFTERNOON  ▲tracks
 イクセントリックなコーラス隊 (合唱の練習場にいるみたいな) に導かれて始まる2/4拍子の(3)。この曲が一番日本人に好かれそう。コード進行が竹内まりやの「シングル・アゲイン」 (『 QUIET LIFE 』 に収録) のサビとほぼ同じで (キーは違うけど) II_V+クリシェという、ポップスではかなり手堅くキャッチーなものだから。おまけにマイナー・キーときた日には、日本人が好きにならないわけがない!更に駄目押しとばかりに朗々と歌い上げる哀愁のトランペット。いわゆる“ポピュラー音楽”好きの年配の方々が涙しそうな曲。


(4)LIVING ROOM   ▲tracks
 一転して明るくなる5/4拍子の(4)。再びトロンボーンをフィーチャー。コードがどんどん下がっていくのに明るい、という変わった曲。しかし、次に控える曲のイントロが凄いので、ちょっと霞んでしまう。


(5)THE PROFIT   ▲tracks
 出だしで圧倒的なコーラスに包まれる(5)。この曲のみ通常の4ビート。再びトランペットをフィーチャーしながら、随所にコーラス隊が入り曲を盛り上げる。ベース・ソロもあり。


(6)LONESOME LOVER  ▲tracks
 6曲中唯一歌詞のある(6)。歌うのは当時のローチの夫人or恋人 (両説あり) アビー・リンカーン。ビートは普通のワルツ。シンプルで覚え易い、マイナー調のブルーズ (というか黒人のルーツ的なメロディー) 。この曲も凄く日本人好みの曲なのでは。


 録音年月日を見るとドナルド・バードの 『 A NEW PERSPECTIVE 』 の1年近く前となっている。おまけにコーラス隊を操るのは 『 A NEW PERSPECTIVE 』 と同じくコールリッジ・パーキンソン。オリジナルな発想に基づいて作られたと思っていた 『 A NEW PERSPECTIVE 』 だけど、意外にも着想のヒントは本作だったりして。


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