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artist : THE DOORS |
title : 『 STRANGE DAYS 【まぼろしの世界】』 |
release : 1967年10月(同年12月という説もあり) |
label : ELEKTRA |
tracks ( cd ) : (1)STRANGE DAYS (2)YOU'RE LOST LITTLE GIRL 【迷子の少女】 (3)LOVE ME TWO TIMES (4)UNHAPPY GIRL (5)HORSE LATITUDES 【放牧地帯】 (6)MOONLIGHT DRIVE 【月光のドライヴ】 (7)PEOPLE ARE STRANGE 【まぼろしの世界】 (8)MY EYES HAVE SEEN YOU (9)I CAN'T SEE YOUR FACE IN MY MIND 【おぼろな顔】 (10)WHEN THE MUSIC'S OVER 【音楽が終ったら】 |
tracks ( analog ) : side A... (1)〜(6) / side B...(7)〜(10) |
members
: JIM MORRISON ; vocals,ROBBY KRIEGER ; guitar,RAY MANZAREK ; keyboards,marimba,JOHN
DENSMORE ; drums. guest member : DOUGLAS LUBAHN ; bass. |
producer : PAUL A. ROTHCHILD |
related website : 『 The Doors Official Web Site 』(公式サイト) |
ドアーズの最高傑作と言えば、よく目にするのは1stの方だし僕も1stは大好きだが、ここではあえてこの2ndを推したい。その決め手は、何と言っても深いリヴァーブの中でユルく幻覚的なフレイズを繰り出してくるロビー・クリーガーのギター・プレイに尽きる。時折スライドも混ぜながら展開するそのフレイズは、とてもシュールで個性的。本作ではそんなプレイが相当にフィーチャーされている。 |
そのギターと、ジョン・デンズモアの比較的ライド・シンバルを多用するラテン・ジャズ的な感覚のドラミング、そして1stでも“顔”というか“売り”だったレイ・マンザレクのキーボード。この3人(ゲストのベース・プレイヤーを入れれば4人だが)が生み出すサウンドと、時にはシャウターとなり、時にはクルーナーともなるジム・モリスンの歌が合わさった時、「“これぞドアーズ”だなぁ」とつくづく思ってしまう。 |
野沢収氏のライナーにある通り本作は当時流行のサイケデリック・ロックではないが、僕は彼らのことをサイケデリック・ロックだと思って疑わない。それは僕が当時の括りで判断しているのではなく、あくまで“幻覚的なロック”であればそれは“サイケデリック・ロック”であると判断しているからだ。これは、“プログレ”でもよく言われていることで、いわゆる“プレグレッシヴ・ロック”というジャンルの中に名を連ねないからといってプログレッシヴではないとは限らない。真に“進んだ試みをしているロック”は“プログレッシヴ・ロック”である。そのことと同様なのだ。 |
(1)STRANGE DAYS ▲tracks |
ヒラヒラと桜の花びらが舞い落ちるようなオルガンの後、ベースとドラムが和風なズンドコ・ビートを叩き出すので、聴きようによってはほんのちょっとの間、日本的なムードを醸し出している(1)。右チャンネルから聴こえるトレモロをかけたギターが儚くも幻覚的。ジムの声にも幻覚的なエフェクトが掛けられていて、そのディレイされて遅れてくる声が、まるでメガホンを通した音のように聴こえる。 そうやって非現実的な世界を創造/想像的に描く中で、「ジャッッジャジャッッッ」という、当時の流行ビート〜擬似サンバをスクウェアにして重くしたようなフレイズなども繰り出してしまうあたりに、バックの連中の“ポップ・ミュージックを作る上での手堅さ”が表れている。1stアルバムの1曲目「BREAK ON THROUGH」がボッサ・ビートだった──しかもおそらくヒントは A & M レーベル──というのもそれを裏付けていると思う。 なお、ジム・モリスンが「YEAH!」とシャウトした後の「タカタタッタ」というドラムのフレイズはジョン・デンズモアの手クセと思しきモノで、本作中に何度も登場する。 |
(2)YOU'RE LOST LITTLE GIRL 【迷子の少女】 ▲tracks |
虚ろで朧なメロディーがクセになる、本作中、僕が最も好きなナンバー(2)。沈み込むようなベース・ラインの後の、ユラリと、そしてヒンヤリとしながらも心に染み込んでくるようなギターのアルペジオが印象的。このユラリ・ヒンヤリの浸透感はギター・ソロになると更に顕著で、“幽体離脱”したかのような──僕は一度もしたことはないが──、それと同時に海の底にいるかのような、心地良くも摩訶不思議な感覚にとらわれる。 しかし、サビの後半になると再び「ジャッッジャジャッッッ」が登場し、少し明るくなって活気を帯びてくる。そしてエンディングはジムの声と共に海の底へと戻っていく。 |
(3)LOVE ME TWO TIMES ▲tracks |
奇妙な感覚のエレクトリック・ブルーズ(3)。そんなビートに乗って繰り出される、バロック音楽とブルーズを掛け合わせたようなレイ・マンザレクのキーボード(チェンバロ)・ソロが面白い。また、曲中に幾度か出てくる2拍3連のジミ・ヘン・コードが強烈だ。 この曲のみ作詞はギターのロビー・クリーガー。 |
(4)UNHAPPY GIRL ▲tracks |
遠く黄泉の国から──もちろん行ったことはないが──聴こえてくるかのようなイントロのバロック音楽的なオルガンと、曲中の「ヒュ〜〜〜ン、トゥルリトゥルリ」というギターのリフレインにヤられる(4)。右チャンネルからはキーボード類の何かの音のテープを逆回転したビートが聴こえてきて、ただでさえ幻覚的なサウンドを更に幻覚的にする。しかしポップだ。 |
(5)HORSE LATITUDES 【放牧地帯】 ▲tracks |
嵐の音をバックにジムが詩の朗読をする(5)。その最中鳴り響くフラッシュ・バックのようなピアノのサウンドに眩暈がしそう。その他、群集がうめく声や悲鳴、そして鞭打つ音などが聴こえてくる。どうやら群集を家畜──この場合“馬”か──に例えているようだ。 |
(6)MOONLIGHT DRIVE 【月光のドライヴ】 ▲tracks |
アクセントの効いたビートの上を浮遊感タップリのスライド・ギターが漂う、“サイケデリック・タンゴ”な(6)。全体的には終始タンゴというわけではなく、彼らお得意のパターン「ジャッッジャジャッッッ」が登場したり、ライド・シンバルを使ったファンキーな8ビートになるなど、いくつかの展開がある。ついでに「タカタタッタ」というドラミングもあり。また、まるで何かをしゃべっているようなギター・ソロがとてもユニーク。 この(6)、意外にもジムとキーボードのレイ・マンザレクがバンドを結成するきっかけになった曲で、ジム、レイとその兄、そしてドラマーのジョン・デンズモアらでバンドを始めたばかりのごく初期の頃に録音したことがある。 |
(7)PEOPLE ARE STRANGE 【まぼろしの世界】 ▲tracks |
ミゼラブルなギターの伴奏でジムが優しく歌い始める、シャッフルの(7)。しかし初めのミゼラブルさは、次第にドリーミーでシュールな感覚へと変化していく。奇妙でブルージーなソロを聴かせるロビーとは対照的に、レイはウットリするような幻想的ピアノ・ソロを聴かせてくれる。 歌詞を読みながらこの曲を聴くと、“整形手術をして患者の顔は整った顔つきになったにもかかわらず、執刀した医師達が「失敗だ」と言いながら振り向くと、その医師達は皆、ブタのような顔だった”、という 『 トワイライト・ゾーン 』 の話をついつい思い出してしまう。特にエンディングのギターが“グニャオ〜ン”と捻じ曲がっていくようなサウンドは、そのイメージにピッタリな感じがする。 |
(8)MY EYES HAVE SEEN YOU ▲tracks |
暗闇で密かに動いては止まるようなベースと、ライド・シンバルを使って張り詰めた感じの静か目なラテン・ジャズ・ビートを演出するドラム──「タカタタッタ」もあり!──が、徐々にグルグルと回る激しい・ロック・ビートに変化していく(8)。この激しい部分は当時のサイケデリック・ロックな感じがする。 |
(9)I CAN'T SEE YOUR FACE IN MY MIND 【おぼろな顔】 ▲tracks |
ボトル・ネックでユラユラするギター、トレモロのかかったキーボード、そしてシンバルの音のテープ逆回転処理で、ちょっと“夢幻の彼方”あるいは“海の底”系幻覚サウンドを演出した(9)。途中からはスロウなラテン・ジャズ・ビートとオルガンに乗せて、マリンバまでが登場する。そして、ここでは(1)とそっくりなベース・ラインも登場する。 “此処は何処? 私は誰?”感満載のトラックなのだが、実際の歌詞は「心の中に君の顔が浮かばない カーニバルの犬が輪郭を食べてしまったんだ」(訳:ビジネス日本語協会 [BNA] )というシュールなもの。 この曲や1stアルバムに収録の「THE CRYSTAL SHIP 【水晶の船】」、「END OF THE NIGHT」が好きな人なら、ジャックスの「からっぽの世界」「遠い海へ旅に出た私の恋人」(共に 『 ジャックスの世界 』 に収録)も好きなはずと信じたい。そして、ジャックスがよく“日本のヴェルヴェット・アンダーグラウンド”と例えられるけれども、むしろ“日本のドアーズ”と言った方が適切だということにも同意していただけると思う。これは単にサウンド志向のみならず、強烈な個性のヴォーカリストとサウンド・メイカー達──ジャックスの場合、“日本のイアン・マクドナルド(キング・クリムゾンの最重要人物)”とも言うべきマルチ・プレイヤー〜木田高介がその殆どを担っているが──というバンドのあり方もそうあるように思える。 |
(10)WHEN THE MUSIC'S OVER 【音楽が終ったら】 ▲tracks |
カクカクとしたオルガンに導かれて幕を開ける長尺のサイケデリック・チューン(10)。基本的にはスロウで静かなラテン・ジャズのリズムだが、要所要所でガツンとくる場面があったり、また、段々と曲が進むに連れて様々なヴァリエイションを展開していく。「END
OF THE NIGHT」と同じメロディー(「♪TURN OUT THE LIGHTS」というところ)や、お得意の2拍3連、そして「タカタタッタ」というドラムのクセも登場する。 僕が特にイイなと思うところは、3分ちょっと手前辺りから始まるファズ・ギターが暴力的に漂うソロ。ただでさえ空間を広くとったようなサウンド・メイクがさらにグ〜ンと広がり、その空間に何かエレクトリックな生物がいるかのような存在感でギターが暴れまわる。そしてもう1箇所はやはりこの曲のクライマックス、8分ちょっと過ぎにジムが「NOW!」と絶叫する場面とその前後。ホント、「ドッカ〜〜〜〜ン!」いう感じ。 しかし、ここまできて言うのもなんだけど、僕はこの曲が本作中で一番好きだというわけではない。かなり多くの人が「この曲が最高」みたいなことを言っているが。あしからず。 |
本作を聴いていてつくづく思うのは、「ジャズ・ヴァイビストのデイヴ・パイク率いるデイヴ・パイク・セットとドアーズが共演したら、さぞ面白かっただろうなぁ」ということ。別にそっくりというわけでもないけど、クールなビート感覚とホワ〜ンとしたドリーミーな感覚に何か共通するセンスが感じられる。それと、全くの偶然だとは思うがデイヴ・パイク・セットのギタリスト〜フォルカー・クリーゲルと、ドアーズのギタリスト〜ロビー・クリーガーの苗字が似ている。おそらくロビー・クリーガーのそう遠くない先祖はドイツ系のはず。 |
ついでに言えば、デイヴ・パイク・セット、ドアーズのセッションにジャックスの木田高介──既に故人ではあるが──が加わったところも見てみたい。 |
因みに、僕はドアーズのロゴのコーヒー豆のような“O(オー)”が好きだ。 |
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