MEMORIES OF PARADISE / V.A.60 
 side A  title / artisttime
 (1)LAST SUMMER THEME
         【「ラスト・サマー」のテーマ】 / JOHN SIMON
2:00
 (2)HOW CAN YOU LIVE WITHOUT LOVE?
                   【愛なしでは生きられない】
/ THE BERNIE LEADON・MICHAEL GEORGIADES BAND
3:45
 (3)IS THE SUMMER REALLY OVER?
                   / CHRISTOPHER RAINBOW
3:35
 (4)THE ISLAND 【島】 / THE MILLENNIUM3:18
 (5)PARADISE / CYRUS FARYAR4:05
 (6)LJUBA LJUBA / SHANGO2:54
 (7)SINGER MAN / THE ESSO TRINIDAD STEEL BAND3:03
 (8)HONEY BABE / TAJ MAHAL4:09
 (9)YOUR OWN COMES FIRST / VAN DYKE PARKS3:22
 total time...30:11+(頭約10秒,曲間約4秒,後約20秒) 
 side B  title / artisttime
 (1)CHINESE LOVE AFFAIR / THE MIGHTY SPARROW
2:38
 (2)SAMBA DO AMOR / PAULINHO DA VIOLA
2:48
 (3)BANHO-MARIA / JOYCE
4:12
 (4)JUST TO SAY I LOVE YOU / LOKUA KANZA
3:17
 (5)THE INVISIBLE LADDER / KEZIAH JONES
2:52
 (6)LET ME IN YOUR LIFE / BILL WITHERS
2:40
 (7)SAUDADE (UN MANQUE HABITÉ)
         / PIERRE BAROUH AVEC BADEN POWELL
5:14
 (8)GUESS WHO I SAW IN PARIS / CLAUDINE LANGET
2:46
 (9)SUNFLOWER / MASON WILLIAMS3:43
 total time...30:10+(頭約10秒,曲間約5秒,後約7秒) 



 side A

(1)LAST SUMMER THEME 【「ラスト・サマー」のテーマ】 / JOHN SIMON
taken from : 『 LAST SUMMER 』  ▲title / artist
 脳ミソの記憶を司る辺りを儚げな波動で揺さぶってくるようなロクシコードと、カナカナと切ないトレモロのマンドリン、そして聴き手の心を優しく撫でるようなヴァイオリンによるインストゥルメンタル曲A(1)。このサウンドを聴いていると良い思い出ばかりが脳裡に浮かんでくる。
 アメリカン・ロック東の奇才〜ジョン・サイモンが作ったモンドなサウンドトラックから。


(2)HOW CAN YOU LIVE WITHOUT LOVE ?【愛なしでは生きられない】 / THE BERNIE LEADON・MICHAEL GEORGIADES BAND
taken from : 『 NATURAL PROGRESSIONS 』  ▲title / artist
 この曲にもマンドリンが登場。アコギと共に涼しげに奏でられる。常にハモる歌メロもサウンドに負けずにイイ。なんだかA(1)やこの曲を聴いていて思うのだが、マンドリンのトレモロには、“思い出”というものを刺激してくる作用が備わっているのではないだろうか?
 ところでお気付きの方もおられるかもしれないが、一応、当サイトでは“AUTUMN”に割り振っているアルバムからの曲。しかし、コメントで“晩夏から秋にかけての昼間から夕暮れ時に聴いたら最高”と書いているように、夏の終わり頃にもO.K.のアルバムなので採用。
 で、彼らは、元イーグルズのオリジナル・メンバー〜バーニー・リードンがイーグルズ脱退後に組んだユニット。


(3)IS THE SUMMER REALLY OVER? / CHRISTOPHER RAINBOW
taken from : 『 HOME OF THE BRAVE 』  ▲title / artist
 「夏は終わってしまったのかい?せめて歌の中にだけでも夏の思い出を…」という歌詞が、このカセットのコンセプトにピッタリのA(3)。
 涼しげで切ない12弦ギターと、全盛期のスティーヴィー・ワンダーの作品で聴かれるようなユッタリとしてグルーヴィーなベースが、暑い夏に心地良い。
 クリスの多重コーラスも耳あたりが柔らかく、サウンドにとてもマッチしている。ビーチ・ボーイズ・フリークでありながらも、10ccのような感触も持ち合わせているシンガー/ソングライターなので、爽やかながらもどこか人工的な響きのするコーラスだ。


(4)THE ISLAND 【島】 / THE MILLENNIUM
taken from : 『 BEGIN 』  ▲title / artist
 極彩色の鳥の鳴き声や、ハワイアンなスティール・ギター、それと金属的でエキゾチックなパーカッションが、南国気分をユッタリと盛り上げるA(4)。ソフト・ロックの代名詞的なグループだけあって、そのハーモニーは優しい風のように限りなくソフト。
 この曲、サウンドは快適この上ないのに、歌詞は宗教的というか哲学的。まぁ、この際その辺りはあまり気にせずに聴いていたいところ。
 因みに、ブラーの「BEST DAYS」(『 THE GREAT ESCAPE 』 に収録)のサビは、この曲のイントロのギターのフレイズにそっくりだ。


(5)PARADISE / CYRUS FARYAR
taken from : 『 ISLANDS 』  ▲title / artist
 前曲のタイトル「THE ISLAND」を受けて登場のアルバム 『 ISLANDS 』 からの、文字通り“楽園”気分のA(5)。鈴木カツさんのライナーによればハリー・ニルソンのカヴァーとのことだが、ニルソン名義では歌っていないようなので、他人への提供曲なのかもしれない。
 水平線からの日の出を想わせるベース・ライン、コロコロと乾いたスティール・パン、柔らかなホーン・セクションと女声コーラス。そして何よりも、コクのある声で地球を見守るように歌うサイラス・ファーヤーの歌がいい。まるで椰子の木の間を潮風が通り抜けていく様が瞼に浮かんでくるようで、心の底から安らいでしまう。
 サイラスはモダーン・フォーク・クァルテットのメンバーで、前述のジョン・サイモンのアルバム 『 LAST SUMMER 』 にも参加、この曲とはまた違った声でガナったりしていて、それはそれでまたカッコいい。そして、この曲が収録された 『 ISLANDS 』 のプロデュースをしているのもジョン・サイモン。ジョンはここでピアノ、オルガン、ドラムの演奏もしている。


(6)LJUBA LJUBA / SHANGO
taken from : 『 SHANGO 』  ▲title / artist
 トーキング・ドラムやバスのハーモニカといった、コミカルな響きの楽器の間からカラコロと漏れ聴こえてくるような、控えめなスティール・パンの音色が木漏れ日のように奏でられるA(6)。スロウなルンバ調のリズムとフニャモラな歌・コーラスも、涼しい木陰のようで心地いい。
 こんなモンドな音楽を作った彼らは、ソフト・ロック・グループ〜パレードのメンバーだったジェリー・リオペルが手掛けたラテン・ロック・グループ。この曲が収録されたアルバム 『 SHANGO 』 には、ビートルズの「OB LA DI, OB LA DA」や「HEY JUDE」、ドノヴァンの「SUNSHINE SUPERMAN」、メイジャー・ランスの「UM UM UM UM UM UM 」などの素朴にグルーヴィーなカヴァーも収録されていて、とりわけスタンダード「TASTE OF HONEY 【蜜の味】」での、クールなジャズからトライバルなアフロ・ビートへ変貌振りは「お見事!」の一言。


(7)SINGER MAN / THE ESSO TRINIDAD STEEL BAND
taken from : 『 THE ESSO TRINIDAD STEEL BAND 』  ▲title / artist
 前2曲とは音の潤いや厚みが格段に違う(だからといって前2曲が良くないという訳ではない)スティール・パンの響きがこたえられないA(7)。イントロだけでも癒されてしまう。彼らのユニゾンによる朴訥な歌もいい。この曲は元々レゲエのグループのレパートリーらしく、ボブ・マーリーも取り上げている模様。
 この曲が収録された 『 THE ESSO TRINIDAD STEEL BAND 』 (ヴァン・ダイク・パークスのプロデュース)は、もはや“スティール・パンのアルバムが聴きたいならコレ!”と言えるほど、スティール・パン音楽を代表する作品として知られるようになっている。
 それにしてもファン心理とは欲張りなもので、“この年代前後にもう数枚、彼らの作品が発表されていて欲しかったなぁ”などとついつい思ってしまう。まぁ、これだけの作品がたった1枚残されていただけでも幸せと思うべきだとは思うのだけど(ひょっとしてもう数枚あったりして)。


(8)HONEY BABE / TAJ MAHAL
taken from : 『 MUSIC FUH YA' (MUSICA PARA TU) 』  ▲title / artist
 引き続きスティール・パンがフィーチャーされた曲A(8)。ユッタリとしたレゲエ・ビートに、スティール・パンとカリンバというカラカラコロリンと心癒される音色の楽器。正に“天上の音楽”といった伴奏に、“ひょっとして彼は若い頃、青果市場の競りを仕切っていたのではないだろうか?”と思わされてしまうような、生粋の、生え抜きのタジのダミ声。このミス・マッチがかえってユーモラスでホノボノとしてしまう。“きっと神様が黒人の姿をしていたらこんな声なのだろう”と思ってしまうのは僕だけだろうか?
 元々ブルーズ・マンなのに、これだけの広い視点で音楽を作れる彼のことを、もはや“音楽の神様”と呼んでもよいのではないだろうか。


(9)YOUR OWN COMES FIRST / VAN DYKE PARKS
taken from : 『 DISCOVER AMERICA 』  ▲title / artist
 前述の 『 THE ESSO TRINIDAD STEEL BAND 』 と後述の 『 HOT AND SWEET 』 をプロデュースした、アメリカン・ロック西の奇才〜ヴァン・ダイク・パークスのA(9)。
 脱力感を催させる、ジェントルなヴァン・ダイクのヴォーカルと、リラックスした雰囲気の女声コーラス。聴く者の郷愁を誘わずには置かないブラス・セクションとストリングス。このスロウなカリプソ・ナンバーでA面は終わり。そして、A面はアメリカの東西を代表する奇才のサンドウィッチになっている。
 この曲が収録された 『 DISCOVER AMERICA 』 は、後述のマイティー・スパロウが歌うトラックや、エッソ・トリニダード・スティール・バンドが参加したトラックも収録されているカリプソ・アルバム。



 side B

(1)CHINESE LOVE AFFAIR / THE MIGHTY SPARROW
taken from : 『 HOT AND SWEET 』  ▲title / artist
 前述のヴァン・ダイク・パークスがプロデュースした、チャイニーズ・カリプソのB(1)。基本的にはカリプソなれど、イントロやサビや間奏は中華風味でちょっと異国気分。スパロウはというと、“ニョホニョホ”とふざけ気味に、ヴェトナムで出会った中国娘に一目惚れした様子を歌っている。
 ところで、細かいことだが、マイティー・スパロウに“THE”が付いているということは、“コーネリアス”とかと同様に、個人的なユニット名というか芸名扱いということか。因みにマイティー・スパロウの本名は「SLINGER FRANCISCO」(コレだってカッコいい名前)。アルバム 『 HOT AND SWEET 』 の全曲の作曲と、いくつかの曲のアレンジは彼によるもの。


(2)SAMBA DO AMOR / PAULINHO DA VIOLA
taken from : 『 PAULINHO DA VIOLA 』  ▲title / artist
 前曲からちょっと南に下ったブラジルの、スロウでメロウな歌ものサンバ(?)B(2)。オブリガードやコードを刻む弦楽器達が切なく響く。優しげなパウリーニョ・ダ・ヴィオーラの歌や、柔らかなトロンボーンもイイ。
 僕がピエール・バルーのブラジル旅行ドキュメンタリー・ヴィデオ 『 SARAVAH 』 を観てパウリーニョの音楽に興味を持った'95年頃はあまり情報もなく(あったのかもしれないが見つける術が見当たらなかった)、国内盤も店頭には見当たらなかったと思うけど、最近、段々と彼の音楽が静かに盛り上がりつつあり情報も多くあるようなので、気になる方は要チェック。なお本作は'68年の作品。


(3)BANHO-MARIA / JOYCE
taken from : 『 ÁGUA E LUZ 【水と光】』  ▲title / artist
 再びブラジルから、神秘的で幻想的なスキャットと瑞々しいギターの音色がとても印象的なB(3)。なんだか細胞単位でシャワーを浴びているような“シュワ〜〜〜ッ”と爽快な曲。彼女ジョイスの持ち味はなんと言っても溌剌として弾けまくるギターだけど、こんなしっとりと落ち着いた曲もありなんだなぁと感心。僕はよく知らないリジー・ブラヴォーという女性とのデュエット。


(4)JUST TO SAY I LOVE YOU / LOKUA KANZA
taken from : 『 WAPI YO 』  ▲title / artist
 アフリカン・ビートとレゲエが同居したようなB(4)。前曲に続けとばかりに“シュワ〜ッ”としたコーラスが登場。アコギとピアノによる軽快で爽やかな伴奏や、冒頭の楽しげな笑い声と相俟って、とてもリラックスした雰囲気。よく聴くと薄っすらとフルートなんかも聴こえてくる。
 アフリカン・ビートというともの凄く民族的な印象を持ってしまうけど、パリで磨かれたザイール出身アーティスト〜ロクア・カンザの音楽はかなり洗練されていて、今時の普通のポップスに馴染んだ耳にもすんなり聴けてしまうほど。


(5)THE INVISIBLE LADDER / KEZIAH JONES
taken from : 『 BLUFUNK IS A FACT ! 』  ▲title / artist
 出身国はナイジェリアと、お国は違えど同じアフリカ大陸出身のアーティスト、今は記憶の彼方に追いやられてしまった感のあるキザイア・ジョーンズのB(5)。
 時に軒下に吹き込んでくるちょっと強めの風の様な色合いで、時に小鳥の足音の様にリズミカルに奏でられるガット・ギター。目の前にいたかと思うと、どこか遠くへと伸びていってしまうような歌声。この曲には、空気や世界がどこまでも遠くへ広がって続いているような、透き通った開放感が満ち溢れている。
 この曲が収録された 『 BLUFUNK IS A FACT ! 』 は今でも、そしてこれからも僕の愛聴盤。


(6)LET ME IN YOUR LIFE / BILL WITHERS
taken from : 『 STILL BILL 』  ▲title / artist
 木漏れ日のようなアコースティック・ギターと、彼方に揺らめく陽炎のようなエレクトリック・ピアノ。木の香りが遠くから漂ってくるようなストリングス。この曲が収録された 『 STILL BILL 』 のジャケットからそんな景色がずぅ〜っと続いているかのような錯覚さえ覚えるB(6)。
 この曲辺りになってくると、南の島から段々と現実の風景に近付いてくるような感じがしてくる。「今まで見ていたのは、うたた寝中の夢だったのか?」という感じ。
 冒頭ほかで出てくる「ラ〜〜ララ〜〜〜ララ〜〜〜〜」というフレイズ。なんだかいつも普段着でそして寡作の、ノンビリとしたビルのスタンスにピッタリだ。こういうソウルもありなんだなぁ。


(7)SAUDADE (UN MANQUE HABITÉ)/ PIERRE BAROUH AVEC BADEN POWELL
taken from : 『 SAUDADE (UN MANQUE HABITÉ)』  ▲title / artist
 うたた寝から目を覚まし、よく目をこすってみたらピエール・バルーのヴィデオ 『 SARAVAH 』 のワン・シーンが目の前で起きていた様なB(7)。孤高のブラジリアン・ギタリスト〜バーデン・パウエルが爪弾くギターに合わせてバーデンとピエールが決してうまくはないリフレインを口ずさむ。
 途中からピエールは、他の言語では翻訳するのが難しいブラジルの言葉“サウダージ”について、'60年の録音当時、彼なりに感じ取った“サウダージ”観を語り始め、最後は初めよりもちょっとだけ大きな声でリフレインを歌って締めくくる。ポエトリー・リーディングや“詩のボクシング”が基本的に苦手な僕でも、この曲ならず〜っとループして聴いていたくなってしまう。彼には全く“衒い”が感じられないのだ。


(8)GUESS WHO I SAW IN PARIS / CLAUDINE LANGET
taken from : 『 SUGAR ME 』  ▲title / artist
 ピエールからフランス繋がりでB(8)。しかし、サウンドそのものはモロに A & M レーベル系(“バーナビー”というレーベルから出ているのだが)。木漏れ日系の柔らかなギター、ソフトで控えめなトランペット、ちょっと寂しげなアコーディオンの高音。そして、クロディーヌのウィスパリング・ヴォイスよりも印象的な「ラン〜ランランラランラ〜〜〜」という女声コーラスによるリフレイン。各楽器がお互いの間を埋めるようにオブリガードのアレンジも練られている。
 B(6)(7)(8)と聴いてきて気付いたこと。僕はウィスパリング・ヴォイスそのものにはあまり興味はないのだが、こういった“まどろみサウンドに印象的なリフレイン”というパターンには結構弱いのかもしれない。


(9)SUNFLOWER / MASON WILLIAMS
taken from : 『 THE MASON WILLIAMS PHONOGRAPH RECORD 』  ▲title / artist
 最後は単に“夏”というキー・ワードとサウンドで選んだつもりが、世間では“ひまわり畑”といえば“フランスの夏”、“ツール・ド・フランス(自転車レース)”という連想も多いらしく、うまく繋がったB(9)。
 ホントに目の前に一面ひまわりだらけの広大な畑が続いているかのような曲。まず冒頭の口笛にヤられてしまう。徐々に鳴り出すギターやアコーディオンの漂い方や色合いもたまらなくイイ。ラストのドアーを閉める音も、締めくくりにピッタリ。バーバンク・サウンド陰の奇才の心憎い演出。
 因みにこの曲が収録された 『 THE MASON WILLIAMS PHONOGRAPH RECORDS 』 には、彼がクロディーヌ・ロンジェに提供した「WANDERLOVE」という曲も収録されている。



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