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artist : CHRISTOPHER RAINBOW
title : 『 HOME OF THE BRAVE 』
release : 1975年
label : POLYDOR
tracks ( cd ) : (1)TARZANA RESEDA (2)FUNKY PARROT (3)ON MY WAY (4)GLASGOW BOY (5)MR. MAN (6)IN MEMORY (7)IS SUMMER REALLY OVER (8)A WOMAN ON MY MIND (9)HOME OF THE BRAVE
tracks ( analog ) : 未確認
members : CHRISTOPHER RAINBOW,vocals,guitars,keyboards,synthesizer ; MALCOLM CECIL,synthesizer ; SEYMOUR DUNCAN,guitar ; DON GRUSIN,keyboards ; REGGIE McBRIDE,bass ; OLLIE BROWN,drums ; MAXINE,JULIA,OREN,harmonies.
producer : MALCOLM CECIL & ROBERT MARGOULEFF
related website : 未確認




 彼は自身のアルバムを3枚リリースしているが、その1枚目である本作には他の2枚とはちょっと違うことがある。それはスティーヴィー・ワンダーの黄金期 ('72〜'74年) のシンセサイザーのマニピュレイションをしていたマルコム・セシルとロバート・マーゴレフがプロデュースをしていることだ。'75年リリースということもあるが、セシルとマーゴレフがプロデュースしていることによって、シンセサイザーの音色やフレーズに、翌年発表されたスティーヴィー・ワンダーの 『 SONGS IN THE KEY OF LIFE 』 と共通するセンスがあるのだ。 『 〜KEY OF LIFE 』 制作の前に彼らがスティーヴィーと決別したにもかかわらずだ。

 他の2作も楽曲の良さや演奏の手堅さは重々分かるし、実際よく聴いてはいるのだが、ヴォーカルやシンセ他の楽器群の音の肌触りが、本作は格別に良いのだ。フランスのマチュー・ボガートが好きな人なら、このソフトなシンセ使いを気に入るんじゃないだろうかと思う。他の2作は、クリスが持つ折角のソフトな声を生かさずに、変にガナったり (ま、本人がプロデュースしてるからそうしたかっただけなんだろうけど) 、シンセやギターの音色がたまらなくダサかったり出しゃばったりで、楽曲に中々のめりこめないのだ。後にリリースされたクリス本人選曲のベスト盤に、本作の楽曲が(1)しか収録されなかったのはとても残念だったが、いつの時代も作り手と受け手のすれ違いはつきものなので、僕は一向に気にせず本作を楽しんでいる。


(1)TARZANA RESEDA  ▲tracks
 そのベスト盤に唯一収録された(1)。僕も大好きな曲。“ホァ〜”っとした非常にソフトなシンセで心地良くスタート。クリスのヴォーカルも限りなくソフト。この曲の後にシン・リジーの「MY SARAH」 (『 BLACK ROSE:ROCK LEGEND 』 に収録)なんかを聴くと、暑い夏も涼しく過ごせそうな気になる。


(2)FUNKY PARROT  ▲tracks
 スティーヴィー・ワンダーっぽさが顕著な(2)。何がスティーヴィーっぽいかと言うと、シンセ・ベースのフレーズだ。スティーヴィーの 『 〜KEY OF LIFE 』 に収録の「BLACK MAN」のそれとかなり似ているのだ。「BLACK MAN」はスティーヴィーには珍しく“怒れるスティーヴィー”全開の攻撃的でグルーヴィーな曲なのだが、(2)ではそのグルーヴィーな部分だけをうまく抽出した仕上がりになっている。本作をスティーヴィーが聴いていたのか、あるいはセシル/マーゴレフ組がスティーヴィーへの“置き土産”として 『 〜KEY OF LIFE 』 準備中に録音していったものなのか、それともその準備中の音をセシル/マーゴレフ組がこちらの録音に持ち出したものなのか、はたまたセシル/マーゴレフ組のセンスをスティーヴィーが完全に吸収していて偶然似た仕上がりになったのか真相は定かではないが、様々な憶測を巡らせずにはおかない程、よく似ている。曲中に会話がある点も類似点と言えば言えなくもない。


(3)ON MY WAY  ▲tracks
 グルーヴィーな(2)とはうって変わって、心が洗われるような瑞々しいピアノで始まるワルツの(3)。カーペンターズのレパートリーになってもよさそうな曲で、売れない方がおかしいくらいだ。


(4)GLASGOW BOY  ▲tracks
 冒頭に雨の中を誰か(おそらく少年か)が駆けて行くS.E.が挿入された、ちょっと10ccっぽくもある美しいピアノの弾き語り(4)。その名も「GLASGOW BOY」。ギター・ポップ・ファンが放ってはおかないタイトルだ。グラスゴウはアズテック・カメラやオレンジ・ジュースを輩出したポストカード・レーベルが生まれた土地。クリス本人もグラスゴウ出身で、同じくグラスゴウ出身のリヴァー・ディテクティヴスというデュオのプロデュースを本名“クリス (トファー) ・ハーレイ”で手掛けているそうだ。因みに本作のライナーを書いているのは、ギター・ポップ関連ではその名の知れ渡った伊藤英嗣氏。


(5)MR. MAN  ▲tracks
 「ワ・ワ・ワァ〜」というイントロがユーモラスなスカの(5)。ビートルズの「OB-LA-DI, OB-LA-DA」 (『 THE BEATLES 』 に収録) のシンセ版といった感じ。


(6)IN MEMORY  ▲tracks
 バックは爽やかだけど、歌声がゴドリー&クリームみたいな(6)。この曲だけじゃなく本作を通して感じることだけど、この人の声ってハーモニーを重ねても(かなり重ねているらしい)ヴィブラートのかかり方が規則的というか周期的で、どこか機械的な響きがあるように思う。録った声をまとめて、それにエフェクトをかけてるのだろうか。そういうところがゴドリー&クリームに似てるのかな。曲自体はスティーヴン・ビショップが歌ってもおかしくないような、凄くジェントルな曲。


(7)IS SUMMER REALLY OVER  ▲tracks
 12弦ギターで切なく始まって、間もなくリズム・ボックスっぽいパーカッション (かなりリズム・ボックスっぽいのだが) が入ってくるので、これまたシン・リジーの「MY SARAH」と繋げたくなってしまう(7)。意外とグルーヴィーなベースもいい。


(8)A WOMAN ON MY MIND  ▲tracks
 「THERE'S A SHADY SUMMER ON MY MIND(瞼に映るおぼろげな夏)」と歌われる1番の歌詞にピッタリなイメージの(8)。ホント“ユラユラァ〜”っとした感じがよく出てて、夏に涼むにはもってこいの1曲。どことなく映画 『 UN HOMME ET UNE FEMME 【男と女】』 のテーマを思わせる。シンセの感じから、この後にYMOの「SIMOON」(『 YELLOW MAGIC ORCHESTRA 』 に収録) を続けて聴きたくなる。


(9)HOME OF THE BRAVE  ▲tracks
 ラストの(9)はいきなりピンク・フロイドっぽい雰囲気 (S.E.、アコースティック・ギター、キーボード、歌メロ) から始まる。ロジャー・ウォーターズに歌わせてみたくなる。後半、ちょっとマクドナルド&ジャイルズっぽくなる、プログレッシヴ・ロックのソフトな面だけを掬い取ったような1曲。


 “AOR”という言葉をキーにして聴いた場合は確かに2、3作目の方が上かもしれないが、純粋に“ポップス”という言葉をキーにして聴いた場合は、こちらに軍配が上がるのではないだろうか。要は、悪い意味での“フュージョン”の匂いがなるべくしないものの方が、僕の好みなのだ。

 蛇足だけど、裏ジャケのデザインがヒプノシスっぽい。


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