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交響曲第6番ロ短調「悲愴」作品74


概要

謎の標題

 交響曲第6番ロ短調「悲愴」は,初演後まもなく作曲者が死亡したことなど逸話が多く,それだけに肝腎の音楽の内容が置いて行かれがちである。ここではあくまで,音楽に焦点を当ててこの曲を捉えてみよう。
 チャイコフスキー自身,この曲には明確な標題があるが,それは謎としておくと言った。この言葉には色々な解釈がなされているが,私はチャイコフスキーが,標題交響曲「マンフレッド」ロ短調の失敗から標題のために音楽を犠牲にすることを嫌い,音楽を中心に標題(自分の気持ちの中にある抽象的なもの)を描こうと思ったのではないかと考えている。
 数々の序曲や,交響曲第4番へ短調や「マンフレッド」などを作曲した頃は,チャイコフスキーの音楽は標題に沿って音楽を作っていた。しかし,この曲は通常の交響曲と比べるとだいぶ形が異なっているが,音楽の内的な要因によってこの形になったのだといえる。
 また,悲愴という名前はチャイコフスキー自身によってつけられた名前であるが,初演後に付けられている名前であり,この一言で曲の内容を語るのは難しい(実際,チャイコフスキーは後に,この名前を撤回しようとした)。

 なお,近年この曲の第4楽章が,初演以来手を加えられていたことが分かり,それを除いた原典版の演奏も行われている。しかしいっこうに原典版の演奏が増えないのは,現在出回っている版があまりにロマンチックで刺激的だからだろうか。

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