(日米野球オールスターシリーズ第2戦、米選抜5−3全日本、米選抜2勝、6日、東京ドーム)全日本では赤星憲広外野手(28)=阪神=が好打&快足をアピール。2安打2打点1盗塁で、全得点に絡む活躍を見せた。試合は大リーグ選抜が5−3で連勝した。〔写真:レッドスターが東京ドームでキラリ。赤星が好打&快足をみせつけた=撮影・浅野直哉〕
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1メートル70の小さな体が、ダイヤモンドを駆け抜けた。日を追うごとに、メジャーリーガーの頭の中に『赤星』の名前が刻まれていく。
「スピードに関しては、そこそこやれるんじゃないかな。三塁打にしても、いいところを見せられたかなと。やっと盗塁も出来ましたしね」
遠慮気味に、胸を張った。前日5日、クレメンスを怒らせた日本の1番打者が、2戦連続のマルチ(複数)安打。2安打2打点1盗塁で、全得点に絡む活躍を見せた。
まずは二回二死一、二塁。ツインズ・ローシュの内角143キロを右翼線へ。快足で三塁まで奪う逆転2点適時打を放った。五回には投前セーフティーバントを決め、同点のホームイン。そして、七回には四球を選ぶと、警戒を弱めるため「1歩くらい小さくした」リードで初盗塁もマーク。送球ミスで一気に三塁まで到達した。
「エキサイティングな選手。クロフォード同様、足とバットで貢献できる。印象深いよ」。敵将ボウチー監督は絶賛だ。マスクをかぶったインディアンス・マルチネスも「クレイジーな活躍だ。ああいう走者がいるとこっちも気持ちが高ぶる」と脱帽。
さらには、2年連続盗塁王のデビルレイズ・クロフォードまでが「彼のせいで投手が集中力を欠いている。やるべきことをやっているね」。ライバルの言葉に赤星は「向こうが上過ぎて、比べられても困る」と謙そんしながら「自分のできることをすれば持ち味が出せる」と力強く話した。
「(三塁打は)自然と反応して、右へ強い打球が打てた。キャンプでタイミングを早く取ったことで、うまく出来始めています。日米といういい舞台も、結果につながっているのかも」。秋季キャンプから挑戦している一本足打法も驚異的なスピードで修得中。日米野球の主役に躍り出た。
無名のプロ入りから、足と努力でトップ選手となった男。すでに“永久トラ宣言”済みだが、その名を世界に知らしめてみせる。
(堀 啓介)
◆赤星について、テレビのゲスト解説で訪れた阪神・星野SD 「あんなリトルリーグみたいな体で、チョロチョロチョロチョロ走り回って…。ガツンと打ったし。あれだけやったら、いいわな。春(メジャーとのOP戦)でもヤンキースのトーリ監督が『いい選手や』とほめていたやろ」
◆全日本・王監督 「きょうも勝機はあったんだけど…。向こうも必死だからね。でも、一方的な試合にはなっていないので、あした以降の投手に頑張ってもらいたい」
★ロッテ・渡辺俊がオルティス特大弾に脱帽
オルティス(レッドソックス)に特大弾を浴びたサブマリンの渡辺俊(ロッテ)は「球場2つ分、飛ばされたような気分。気持ちいいくらいの世界一の本塁打を見せてもらった」と仰天。先頭打者本塁打を許したクロフォード(デビルレイズ)には「イメージと違い高めが通じなかった。メジャーはやっぱりすごい」と脱帽していた。
3番手でマウンドに上がった石井(ヤクルト)は、この日MVPのクロフォードを3球三振にしとめるなど、1回1/3を、1安打2三振の1失点。オルティスも凡退させたが「直球を投げないから最後は怒っているように見えた。真剣勝負だし、あんな本塁打を見せられたら、ストレートは投げられない」。興奮、冷めやらず…の表情だった。
★上原"合体"クレメンス…42歳ハードメニューにビックリ
日本とメジャーを代表するエースが、ついに"合体"した。試合前、東京ドームの一塁側トレーニングルームの中に、上原(巨人)とクレメンス(アストロズ)が消えた。約1時間後、外に出てきた上原の顔は興奮で上気していた。
「すごい…。まねしてやってみたんですけど、42歳がやるようなトレーニングじゃない。ハードでしたね」
まず、上原が通常やっているメニューを見せ、それについてクレメンスがアドバイスを送る形で進んだ。特に重点的に教えてもらったのが肩付近と腹筋、背筋の鍛え方。クレメンスが登板翌日に300回の腹筋をこなしているのを聞き、目を丸くした。
「明日から早速、やってみようと思います」
メジャー最高右腕から伝授されたトレーニングの奥義。上原にとって最高の一日となった。
★村上雅則さんが始球式
日本人初のメジャーリーガー、村上雅則氏(60)=元ジャイアンツ、現野球評論家=が日米野球(東京ドーム)の始球式を務めた。
★東京ドームが来季“メジャー流"に
東京ドームは来季、内野席の一部がグラウンド側にせり出し、選手との距離が近づく"メジャー流"に改修されることが6日、わかった。米大リーグの球場は、日本と比べて選手とファンの距離が近い。今回の改修はファンサービスにもつながる。球界関係者は「ファンと選手が近づけるのは、どちらにとってもいいことです」と期待した。
(日米野球オールスターシリーズ第2戦、米選抜5−3全日本、米選抜2勝、6日、東京ドーム)これぞメジャー! これが"世界一の4番"の一撃だ! 四回、大リーグ選抜のデービッド・オルティス内野手(28)=レッドソックス=が、右翼席上部の照明付近を直撃する推定飛距離160メートルの超特大弾で5万2000観衆の度肝を抜いた。試合は大リーグ選抜が5−3で連勝した。7日の第3戦(東京ドーム)は、石井一久投手(31)=ドジャース=が凱旋先発を果たす。〔写真:これがメジャー。これがゴジラを倒した“世界一の4番”だ。オルティスは四回、右翼席後方の照明を直撃する160メートルの記録的な特大弾を放った=撮影・浅野直哉〕
東京ドームを激しく揺らした。これがメジャーのパワーだ。オルティスが規格外のパワーで日本列島の度肝を抜いた。同点の四回、カウント0−3から渡辺俊の132キロ直球をブルン。右翼席後方の看板群のさらに上、照明付近に直撃する勝ち越しソロ。5万2000人のどよめきは、しばらく消えなかった。
「打った瞬間、故郷のドミニカまで飛んでいくような手応えだったよ。カウント0−3だから、ボクが打ってくるとは思わなかったんじゃないか。すごかっただろう」。オルティスは人さし指で鼻の下をゴシゴシの"どんなもんだい"ポーズだ。
松井秀ら、特大弾には慣れているはずの東京ドームの混乱が、衝撃を物語った。直後に推定飛距離150メートルと発表。その後、主催者側が157メートルと訂正し、五回には160メートルと再訂正された。平成2年にブライアント(近鉄)が放ったスピーカー直撃の170メートル弾に次ぐ東京ドーム史上2位の驚弾だ。
球が飛ぶ東京ドームとはいえ、使用球は重く、飛距離が出ないといわれるメジャー公認球。長距離打者が並ぶ全日本は2試合で本塁打ゼロだ。
プレーオフで松井秀の世界一の夢を打ち破った男。リーグ優勝決定シリーズでヤンキースに3連敗しながら、第4、5戦と連続サヨナラ打で流れをレ軍に引き寄せた男。メジャー史上初の3連敗から4連勝という大逆転に導き、MVPに輝いた男。この日は驚弾男だった。ゴジラに続き、全日本も飲み込んだ。
「おれたちは勝つためにやってきた。疲れはあるが、まだまだいくゼ」。レ軍を86年ぶりの世界一に導き、『バンビーノの呪い』を解いた疲労も感じさせない大噴火。"ビッグ・パピー(偉大な父)"こと世界一の4番は、まだまだ手を緩めるつもりはない。
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【東京ドーム特大弾アラカルト】
★推定170メートル(平成2年6月6日) 近鉄・ブライアントが日本ハム戦で東京ドームの天井にあるスピーカーに直撃する特大本塁打。特別ルールで本塁打となった推定170メートル弾は東京ドーム最長となった
★オーロラビジョン破壊(平成16年3月29日) MLB開幕シリーズ前の阪神対ヤンキース戦で、ヤ軍クラークが推定159メートルの特大弾。ボールはスコアボード横にあるオーロラビジョンの右隅を直撃。打球で破壊された部分だけが黒くなった。修理費用は約50万円
◆オルティスの一発について通算868本塁打の全日本・王監督 「見事なホームランだ。バッティングは力だね、ハッハッハッ」
◆オルティスの一発を分析する松坂(西武) 「日本のボールを使っていたら、180メートルは飛んでいたんじゃないですか。天井に突き刺さってますよ」
◆大リーグ選抜・ボウチー監督 「両チームとも素晴らしい野球をした。互いに足を使ったアグレッシブな野球をしていたし、お客さんも喜んでくれたと思う」
◆八回に中前へ勝ち越し打のマルティネス(インディアンス) 「フォークが狙っていたところに来た。それだけを待っていた。リラックスしながら集中できた」
★ツインズ・ローズ4回2/3で3失点
ゴジラの影に脅えた? 先発ローズ(ツインズ)が4回2/3で3失点。メジャーでは松井秀(ヤンキース)のカモとされ、2年連続でホームランを浴びた。「マツイの出身の国だからね。注意していかないと」と警戒していたが、どうやら極東は鬼門。
★クロフォードがMIP賞…先頭打者弾含む3安打
クロフォード(デビルレイズ)が先頭打者アーチを含む3安打で、MIP賞(試合ごとの最優秀選手)に選ばれた。五回に中前打で出塁すると二盗を決め、2年連続盗塁王の足もアピール。「前回、日本に来たときは緊張し通しだったけど、今回はリラックスして臨めているよ」。ヤンキースとの今季開幕シリーズに続く来日で、すっかりジャパン大好き?
石井(ドジャース)が満を持して7日の第3戦の先発マウンドに上がる。この2日間、調整に終始し準備万端。メジャー3年目で初の凱旋登板に「楽しみだけど、やるからには全力だし、勝ちたい」。同じ左腕の井川(阪神)との投げ合いで、本気モードを宣言した。
多田野(インディアンス)が日米野球第2戦を訪れ、選手に挨拶まわり。石井(ドジャース)や同い年の新垣(ダイエー)らとグラウンドで談笑した。渡米2年目の今季は初のメジャー昇格を果たし、14試合で1勝1敗、防御率4.65。「来年こそしっかりメジャーに定着したい」と3年目の飛躍を誓った。
五回に一時同点の右前打。チャンスで回ってきたから、ランナーをかえすことだけ考えた。メジャーの評価も、本塁打より打点が高いのは分かってるからね。あの場面は集中したよ。
「何とか、ボールをバットに当てたい。何でもいいから出塁して、足もみせたい」。そんな思いで、クレメンス(アストロズ)との対戦を楽しみに出場した日米野球だけど、同じバッターとして印象に残ったのは、1戦目のアルー(カブス)とクロフォード(デビルレイズ)だね。
アルーはMLBチームの野手で最年長の38歳。打席で全く動かなくて、バックスイングを全然、とってないように見えた。反応だけで打ってるような気がしたけど、左にもしっかり引っ張っていたね。あんな選手は日本にはいないよね。
(2年連続盗塁王の)クロフォードは、スタートがすごかった。おれより若い23歳なんでしょ。1戦目で二塁から本塁にかえるときも、三塁まではジョグしてるように見えたけど、三塁コーチャーの手が回ってから、別人になった。トップスピードに入ったときのストライドがデカい。三塁で目の前を走り抜けられて、速ぇなぁと思ったね。これからメジャーを楽しませてくれる選手だろうね。
試合中にマウンドに集まるときも、作戦なんてないから、みんなで「あの選手はスゲーな」とかそんなことを言ってた。
第3戦(7日)の試合前は、ホームラン競争に出る。向こうはラミレス(レッドソックス)が出てくるみたい。でも、実戦で打てないと意味がないし、パフォーマンスだと思ってやりたい。メジャーの選手とはなかなか話す機会がないね。うち(ヤクルト)のラミレスからは「マニー(Rソックスのラミレス)は気さくな奴だから、話しかけてごらんよ」って言われてるんだ。三塁まで来たら、ベースの上で声をかけてみたい。
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<日米野球:全米5−3全日本>◇第2戦◇6日◇東京ドーム
バットと足で、阪神赤星が「メジャー級」を証明した。1点を追う2回だ。2死一、二塁から右翼線へ強烈なライナー。全米ローシュが投じた内角143キロ直球を見事にさばいた。「引っ張ろうと思ってないところで反応できた」。心地よい感触を手に、今度は足。2者が生還する間に、三塁へ到達した。「アピールできたかな」。観衆も、全米ベンチもうならせた。
ハイライトは続く。5回の第3打席。1死から投前にセーフティーバント。二進後、岩村の右前打で際どくホームを陥れた。7回に四球を選ぶと待望の今シリーズ1個目の盗塁に成功。「全米の選手は足の速さに関係なく走塁技術が高い。でも自分もスピードに関してはある程度やれるかな」と自信の弁も飛び出した。
全米のボウチー監督は、既に見抜いていた。前日の第1戦終了後、関係者との会食で赤星を最も印象に残った選手と称した。「あの体の小さな1番打者は、今すぐにでもアメリカに連れて帰りたい。スピードはもちろん、打席でもキッチリとらえてくる。クレメンスがロケーション(配球)に困ってたんだよ」。今春のヤンキースとの練習試合でもセーフティースクイズを決め、ヤ軍トーリ監督から「あのプッシュバントは完ぺき」と絶賛された。日本の「スピードスター」は、メジャー関係者の心を、つかんで離さない。
赤星本人は「自分はメジャーを狙うような選手じゃないですから」と謙そんするが、2戦連続マルチ安打の活躍。バットで足で、ジャパンの「スピードスター」が、まだまだメジャー軍団に衝撃を与える。【伊嶋健一郎】
[2004/11/7/08:39 紙面から]
写真=盗塁に成功した赤星
<日米野球:全米5−3全日本>◇第2戦◇6日◇東京ドーム
赤星とともに敗れた全日本で気を吐いたのが、岩村(ヤクルト)だ。この日は3番に座り5回の右前適時打など2安打。今季44本塁打を放った持ち味の長打力は発揮できなかったが、1回には振り逃げで出塁後に盗塁を決めるなど、そつのないプレーを披露した。
「本塁打の方が評価が高いのは分かっているけれど、三振でも振り逃げでチームに貢献できるのならそれでいい」と真剣勝負であることを強調する。それだけに「お祭りモードのところもあるけど、勝ちたい」と連敗を悔しがっていた。
[2004/11/6/22:44]
写真=5回2死二塁、岩村(ヤクルト)が同点の右前打を放つ(共同)
<日米野球:全米5−3全日本>◇第2戦◇6日◇東京ドーム
1回に先頭打者本塁打を放ったカル・クロフォード外野手(23=デビルレイズ)は「先制点が取れてよかった」と1番打者として最高の役割を果たしたことに満足げだった。
2年連続盗塁王の23歳は、下手投げの渡辺俊から3安打した。「変わったモーションだから体全体を見るより、ボールの出どころだけを確認して、そこに焦点を合わせて打席に入った」と変則投手の攻略法を口にした。
[2004/11/6/21:46]
<日米野球:全米5−3全日本>◇第2戦◇6日◇東京ドーム
これぞ世界一のパワーだ! ワールドシリーズチャンピオンに輝いたレッドソックスの主砲デービッド・オルティス内野手(28)が推定飛距離160メートルの特大弾を放った。4回、全日本の先発ロッテ渡辺俊から、右翼へ勝ち越しの1発。スタンド上部の照明まで達するド迫力の「驚弾」となった。8回に勝ち越した全米が開幕2連勝を飾った。
これが怪物の放物線だ。先頭打者で迎えた4回の第2打席。カウント0−3からの“獲物”をオルティスは逃さなかった。真ん中に甘く入る132キロ直球。バットにボールを乗せると、右腕1本を上方に送り出すようにして、アーチの軌道をつくり出した。鈍い衝撃音がドームに伝わる。打球はアッという間に右翼後方へ。2階席上方の照明付近に当たって落ちた。
推定飛距離160メートル。ドーム全体が「オ〜」というどよめきで包まれた。これぞメジャー屈指の強打者の弾道…。その場に居合わせた、すべての目撃者を驚かせた瞬間だった。「0−3だから、投手もオレが打ってくるとは思わなかったかも。いい球がきたので打った。打った瞬間(故郷の)ドミニカ共和国まで飛んでいくような手応えだった」と満足そうに振り返った。
193センチ、104キロの巨漢を生かしたパワフルなバッティングが持ち味。豪快なフルスイングが、超人的パワーを生み出している。「直球が目の前にくれば当然、起きること。1回目はやられた(三振)けど、2回目はオレがやった。そういうものだよ」。着替えを終えて報道陣に囲まれると「オレの今日の本塁打はどうだった?」と、逆取材するほどご機嫌だった。
豪快さばかりが目を引くが、本当に評価されているのは、確実にバットに当てる粘り強さだ。6回の第3打席。内外角に変化球を散らされたが、9球粘って、外角低めの球をバットの先だけで右前に運んだ。この日放った2安打に、メジャー最高の技術が凝縮されていた。
「2日間戦って、とても楽しい。ボールがよく見えているから打てるんだ」。前日の開幕戦も同点の2点右前打を放って、最優秀選手に輝いた。ワールドチャンピオンの美酒を味わってから10日。世界一レッドソックスの主砲は、バットを眠らせることを知らない。【柴田寛人】
[2004/11/7/08:39 紙面から]
写真=4回裏全米無死、右越えに特大本塁打を放つオルティス。捕手は城島
<日米野球:全米5−3全日本>◇第2戦◇6日◇東京ドーム
8回に勝ち越し打を放ったのは、インディアンスで今季108打点をたたき出したマルティネスだった。
この日は第3打席まで凡退し、捕手としても守備で2盗塁を許していた。だが、最後にめぐってきた2死一、三塁の見せ場で中前に打ち返した。「フォークボールが狙っていたところに来た。リラックスしながら集中できた」と振り返った。捕手らしく配球を読み切った一打に胸を張った。
[2004/11/6/22:35]
西武松坂大輔投手(24)は「信じるしかない」と厳しい表情を見せた。6日、日米野球第2戦の行われた東京ドームで球団売却騒動に巻き込まれた。今オフのポスティングシステム(入札制)でのメジャー移籍を封印し、来季も日本一を目指すと誓っていただけに複雑な表情を見せた。第2戦予定から第6戦(11日、札幌ドーム)に変更して日米戦全力を宣言した直後に、ショッキングな現実を突きつけられた。
午後3時すぎ、東京ドームに入ってきた松坂の表情は穏やかだった。だが報道陣から球団売却騒動の質問が出ると、真剣な表情に変わる。ロッカー室の手前で足を止め、シッカリとした口調で答えた。
松坂「まだ決まったわけではないんですよね。前にもそういう話が(報道で)出たとき、星野球団代表から『それはない』というふうに聞きましたし『ない』という言葉を信じるしかないですね」。
一選手としては答えにくい問題に、あえて「信じる」という言葉を使った。入団から6年。今季、初めて日本一に輝いた。エースとしての自覚、そしてライオンズへの強い愛情が言葉の端々ににじみ出ていた。
今オフのメジャー移籍を封印したばかりだ。今年2月、堤前オーナーからはメジャー移籍容認の発言が出ていた。もともとあった強いメジャー志向。米国へ観戦に足を運んだこともあった。実は今オフ、ポスティングシステムでメジャー挑戦の可能性はあった。
だが松坂は、日本シリーズ終了翌日の10月26日に「日本一の味を知って、もう1度、味わいたいと思った。強いライオンズにしていきたい」と語った。西武で連覇することに専念しようとした矢先にショッキングな現実を目の当たりにした。
野球に没頭したい。今オフはそんな日々のはずだった。10月のプレーオフ、シリーズで熱投を演じた。迎えた日米野球。疲労への配慮から、この日の先発予定を王監督に申し出て変更。11日の第6戦に引き延ばしてもらった。順調に回復し、シリーズ後初めて100メートル近い遠投も披露。「肩をつくるというか、締め直す感じですね。あしたブルペンに入ります」と笑顔を見せた。日本の、西武のエースとして、ぶざまな投球はできない強い自覚でマウンドに上がる。
球界再編の波に大揺れした1年は、自軍の売却問題までに発展した。グラウンド外で起こる騒動に巻き込まれ、集中できないこともあるはずだ。それでも「信じる」しかない。我慢は、オフも続く。【今井貴久】
[2004/11/7/08:39 紙面から]
写真=松坂は練習を終え大勢の報道陣に囲まれる
<全米・全日本>7回、二塁盗塁を決める赤星 |
【全日本3−5全米】「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」は6日、東京ドームで第2戦が行われ、全日本は2連敗。しかし、阪神の赤星が初戦に続き大暴れ。2回の逆転2点三塁打など、2安打で存在をアピールした。7日の第3戦には、阪神の井川が先発、初勝利を目指す。
疾風のごとく駆け抜けていった。身長公称1メートル70の赤星がメジャー軍団をほんろうした。
「僕もスピードに関してはメジャーでもそこそこいけるなという感じ」。セ・リーグ史上初の4年連続盗塁王を獲得した男が世界を相手に自信を深めた一戦だった。まずは2回、バットで魅せる。先発ローシュの内角直球を右翼線に運ぶ2点三塁打。秋季キャンプでは右方向に強い打球を打つためタイミングを早く取るよう“一本足打法”に改造中だが、早くもその成果が表れた。
5回には投前にバント安打を決めて2戦連続で2安打を記録。さらに7回には四球で出塁するとすかさず二盗を試みる。「きのうからあまりに警戒されているので、シーズン中よりリードをわざと1歩以上縮めていた」。そのなかでの盗塁成功。二塁への送球が暴投となり三進を許した捕手のマルティネスは「彼はクレージーな速さだ。ああいう走者がいると捕手は気持ちが高ぶってしまう」とお手上げポーズで、次打者・井端の浅い中飛で本塁突入を自重した際には、三塁手のブラロックに「行けよ!」と冷やかされたが、中堅ウェルズはダイレクトで本塁へ矢のような返球。赤星の足を認めればこその全力プレーだった。
テレビ解説で東京ドームを訪れていた阪神・星野SDも「あんなリトルリーグみたいな体でチョロチョロ走り回って、ガンッとやるとおもろいわな」とご満悦だ。NBAで鮮烈デビューしたサンズの田臥よりも、さらに5センチ低い男がメジャーを本気にさせた。小よく大を制す――。その言葉は決して相撲界のものだけではない。
≪城島お手上げ≫城島もオルティスの特大弾に驚きを隠せなかった。「グシャっという音がしました。カウントが0―3で球場全体が逃げられない雰囲気だった。(打たれて)納得のホームラン」とお手上げの様子。自分の打撃の方は3打数無安打だったが「全部シンではとらえていたんだけど。あすは勝ちたいですね」と切り替えていた。
【全日本3−5全米】シーズン中と同じ3番・三塁で出場した岩村が2安打1打点で1盗塁と気を吐いた。5回2死二塁で右前打して打点を記録。近い将来のメジャー挑戦を視野に入れているだけに「メジャーの評価はホームランより勝利につながる打点でしょ」と笑顔を見せた。今季球団記録を塗り替える44本塁打の実績を買われて、きょう7日の第3戦の試合前には本塁打競争に出場する岩村は「あっさり終わらないようにしないと」と楽しみにしていた。
≪横山ズタズタ≫4番手の横山が8回2死一塁から3連打を浴びるなどして炎上。横浜から移籍1年目の今季、ダイエー・三瀬とともに最優秀救援投手賞を獲得した日本ハムの守護神も「何を打たれたか覚えてないです」と試合後は肩を落とした。それでもメジャー打者相手の投球に「いい経験。必ずプラスになる」と気持ちを切り替えていた。
≪石井反省しきり≫石井が7回1死二塁で3番手として登板。コーラ、クロフォードをスライダーで連続空振り三振に仕留めた。8回2死一塁で降板後に代わった横山が打ち込まれて結局は敗戦投手とあって「甘い球は詰まってもヒットゾーンに持っていかれる」と反省しきり。それでも12月の契約更改では昨年に続いてポスティング・システムでのメジャー移籍を訴えるつもりで「凄いバッターとの対戦は楽しい」と目を輝かせた。
≪渡辺俊ガックリ≫オルティスに特大弾を食らった渡辺俊は「球場2つ分飛ばされたような気分。気持ちいいくらいの世界一のホームランを見せてもらいました」と脱帽。独特の“超”アンダースローも立ち上がりの2球目をいきなりクロフォードに右翼席へ運ばれてリズムを崩した。持ち味の緩急を使って5回6安打3失点と力投も「ごまかしは全然通用しませんね」とうなだれた。
<全米・全日本>4回、特大の本塁打を放つオルティス |
【全米5−3全日本】驚がくの157メートルアーチだ。「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」は6日、東京ドームで第2戦が行われ、全米は2―2で迎えた4回、オルティスが右翼席後方の照明付近へ特大弾。86年ぶりに世界一に輝いたレッドソックスの4番打者の真価を見せつけた。メジャーのパワーを存分に発揮した一撃とともに、クロフォードも先頭打者アーチを含む4打数3安打、1打点1盗塁。全日本を圧倒して連勝、7日の第3戦には全米はドジャース・石井が先発する。
ボールが砕けるような衝撃音が東京ドームに響いた。ピンポン球のように打球は右翼へ一直線。打席には「どうだ!」とばかりにフォロースルーの体勢のまま、1歩も動かないオルティスがいた。
2―2の同点で迎えた4回、マウンドには“変則サブマリン”渡辺俊。しかも第1打席は105キロのスローカーブに空振り三振に倒れた。これがメジャーのプライドに火をつけた。カウント0―3からの真ん中直球。独特のアッパースイングでとらえると、打球は観客席をはるかに越え、天井と壁の境にある照明と照明の間を直撃した。
「打った瞬間(故郷の)ドミニカ共和国まで飛んでいくような手応えだった。0―3だから僕が打ってくるとは思わなかったんじゃないかな。ワタナベ?ウチのBK(金炳賢=キム・ビュンヒュン)に似ているね」。これが今季41本塁打を放ち、レッドソックスを86年ぶりに世界一に導いた4番の打球。ホームベースを踏むと、両手の人さし指で天を指す、いつものポーズを格好よく決めた。
あまりの飛距離に球場側も右往左往。スコアボードの表示は「150メートル」から「160メートル」に訂正され、さらにその後の公式発表で「推定157メートル」と再び訂正された。これには一塁側ベンチで見ていた松坂も「日本のボールなら180メートルは飛んでいるんじゃないですか。天井に突き刺さっていますよ」と仰天だ。
02年まで在籍したツインズでは人間関係でうまくいかず、なかなか芽が出なかった。しかし、昨季レ軍に移籍して一気に才能が開花。「同郷のマニー(ラミレス)やペドロ(マルティネス)の助けで自分は大きく変わった」。そのラミレスは持病のひざが悪化し、第2戦を欠場したが、親友の分までチームを引っ張り勝利に導いた。
前夜は「バーで飲んだ」とナイトライフを満喫したが、この日は「疲れているからきょうはやめとくよ」と笑った。ボストンでは「ビッグ・パピー(大きなお父さん)」と呼ばれ、ファンに愛されているオルティス。その人気は太平洋を渡り、日本のファンもとりこにしようとしている。
【全米5−3全日本】クロフォードが、打って守って走った。まずは初回、いきなりバットで魅せる。先発・渡辺俊の2球目を右翼ポール際に運ぶ先頭打者弾。「変わったフォームだから、体全体じゃなく球の出どころを確認した。そこをフォーカスして打ったよ」
今季2度目の来日。3月のヤンキースとの開幕シリーズは2試合で9打数1安打。「初来日でどう過ごしたらいいか分からなかったし、ヤンキース戦で緊張した。今は楽しんでるよ」。4回には福浦のファウルゾーンの飛球をダイビングキャッチ。落下点までの速さに加え、東京ドームの人工芝は本拠トロピカーナ・フィールドと同じ「フィールド・ターフ」を使用しており、自分の庭と同じ感覚だった。
締めは盗塁。5回に猛打賞となる中前打の直後に二盗を決めた。2年連続盗塁王。高校までアメリカンフットボールとバスケットも掛け持ちした万能選手は「長くプレーできるから」と野球を選択した。MIP賞を獲得した23歳は「この場所にいるだけでうれしい」と白い歯を見せていた。
≪マルティネスゴキゲンV打≫決勝打のマルティネスは「3打席目までは気負っていた。最後はより集中して(ボールを)待ったよ」と笑顔で試合を振り返った。同点の8回2死一、二塁で勝ち越し中前打。インディアンスで4番を打つ実力を見せつけた。試合前にはシーズンでバッテリーを組んだ多田野と約1カ月ぶりの再会。日米野球では初めてコンビを組む投手ばかりだが「短い時間だけど、とにかくよく話し合うようにしている」と、こちらでもチームを引っ張っている。
≪Kロッド5球S≫今季13・18の奪三振率をマークし「Kロッド」の異名を取るロドリゲスが2点リードの9回に日本初登場。多村を遊ゴロ、嶋を中飛に打ち取り、最後は赤星を左飛に仕留め、わずか5球でセーブをマークした。約1カ月実戦から離れていたこともあり、140キロを超す高速スライダーは見られなかったが「調子はまずまず。次はもっとよくなる」と自信たっぷりに話していた。
メジャーの試合をネット裏で観戦する機会はそうないので楽しませてもらいました。今回の全米メンバーはビッグネームこそ少ないけど、今年活躍した選手ばかりで若い選手も多い。シーズン中と同じ全力プレーが随所にあって真剣勝負の雰囲気が出てましたね。シーズン終了から間があってバットは振れてないみたいでしたが、試合をこなしていけば勘も戻る。後半はもっと迫力あるプレーが見られると思います。
先発マスクをかぶったビク(マルティネス)はインディアンスのチームメートで4番。自分のチームのキャッチャーを後ろから観戦するのも妙な気分でした。彼はベネズエラ出身の明るい性格。向こうでバッテリーを組む時も、どんどんコミュニケーションをとってきてくれる。英語力も同じくらいなのでとても気の合う仲間の1人。僕が困った時はいつも助けてくれました。それだけに8回にようやく出たヒットが決勝打になり、自分が打ったみたいにホッとしました。日本にいる間に食事する約束をしているので、ごちそうしてあげないといけませんね。
同級生の松坂、新垣と懐かしい顔にも会うことができました。向こうにいる時はネットでチェックして彼らの活躍を励みにしています。メジャーでのプレーをうらやましがられましたけど、2人とも十分やっていける。近い将来、メジャーのマウンドで投げ合うなんてことになれば楽しいでしょうね。僕も今季は挑戦2年目でメジャーに初昇格。7月2日のレッズ戦では初勝利を挙げるなど自分にとっては記念に残る1年になりました。ただ、調子が上がりかけていたシーズン終盤に腰を痛めて戦列を離脱したのが悔しかった。帰国してからも順調にリハビリは進んでいるので来年は万全の状態でメジャーキャンプに乗り込めるはず。何としても結果を残して飛躍の1年にしたい。そして何年後かの日米野球で代表に選ばれて今度はユニホームを着てグラウンドでプレーしたいですね。(インディアンス投手)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
全日本 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
全米 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | X | 5 |
[日]渡部俊、小林宏、●石井、横山 [米]ローシ、シールズ、ウィリス、カレーロ、○リーツマ ロドリゲス [本]クロフォード1号(渡部俊・1回) オーティズ1号(渡部俊・4回) |
◆日本人初メジャー 村上さん始球式 第2戦の始球式を行ったのは村上雅則さん(60)。1964年、南海(現ダイエー)の留学生として渡米しジャイアンツで2年間計5勝を挙げた日本人メジャー第1号だ。この日は95年にジ軍が開催した「村上デー」の際に作ったユニホームでマウンドに立ち、見事にストライク。「今年はそれから40周年、私が還暦、そしてプロ野球70周年とキリのいい数字が並ぶね」と感慨深げだった。 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
全日本 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
全米 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | X | 5 |
[日]渡部俊、小林宏、●石井、横山 [米]ローシ、シールズ、ウィリス、カレーロ、○リーツマ ロドリゲス [本]クロフォード1号(渡部俊・1回) オーティズ1号(渡部俊・4回) |
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日米のイダテン、華麗な競演―。「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」の第2戦が6日、東京ドームで行われ、日本を代表する快速男・赤星(阪神)が2安打2打点1盗塁、メジャー最速男のクロフォード(デビルレイズ)も先頭弾含む3安打1盗塁と大活躍。試合はMLBが接戦を制して連勝を飾った。
大男が立ち並ぶ間を、面白いように駆け抜けた。ドームには、称賛の拍手とため息ばかりが充満する。バットで快音を響かせれば、自慢の快足で、視線をクギ付けにした。日本の盗塁王・赤星が、連夜の2安打で2打点、そして初の盗塁を決めるなど、縦横無尽の活躍だ。
「クロフォード選手とは、比べものにならないくらい差があります。力もあるし、僕と比べられても…。ただ、そこそこスピードに関しては、いけるかなと。やっと盗塁も決まって、アピールできたかなと思います」
二回、ローシュの直球を力強く右線沿いに運ぶと、一気に三塁へ。「引っ張るつもりじゃなかったですけど、インコースのボールに反応できた。最近左ばかりに打ってたんで」。秋季キャンプから一本足気味のフォームに改造中。発展途上の最中に吸い込んだ本場の空気を、自信に変えた。
五回には、セーフティーバントを決め、四球で出塁した七回には、巧みなリードで盗塁に成功。「それまでよりリードを縮めて、走らないように見せました。警戒されてましたから」。ひときわ輝く赤い光に、メジャーのベンチも心を奪われた。ボウチー監督は「ベリーエキサイティング!ベンチでも、アカホシの話題で持ちきりだよ」と興奮した様子で振り返った。
「まだまだですけど、とにかく、来シーズンに向けてやっていて、それが結果につながっていますね」
170センチと記された身長は、参加選手中最小のもの。だが、全力プレーで示す赤星の存在感は、誰にも負けていない。日米の意地のぶつけ合い。虎のレッドスターが、一躍主役に躍り出た。
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米大リーグ選抜と全日本の「イオン オールスターシリーズ2004日米野球」は6日、東京ドームで第2戦が行われ、大リーグ選抜が5―3で勝ち2連勝した。
全日本は二回に赤星(阪神)の2点三塁打で逆転したが、大リーグ選抜はその裏に追いつき、四回にはオルティス(レッドソックス)が右へ特大本塁打を放った。五回に岩村(ヤクルト)の適時打で同点とされたが、八回にマルティネス(インディアンス)ウィルカーソン(エクスポズ)の連続長短打で2点を奪い試合を決めた。
第3戦は7日に東京ドームで行われ、大リーグ選抜は石井(ドジャース)が先発する。
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これが世界一のホームランだ。四回、先頭の4番・オルティスが0―3から 放った打球は、鈍い衝撃音を残し、視線をくぎ付けにしたまま右翼席最上段看板のさらに上にある照明を越えた。 推定飛距離は157メートル。「I am big guy!」。自画自賛の一発だった。
ブライアント(元近鉄)が90年に東京ドームの天井のスピーカーに当てた170メートルには及ばなか ったが、インパクトはそれに負けない。「手ごたえは十分で、(故郷の)ドミニカまで飛ぶかと思った」とニン マリ。
相手側ベンチでこの一撃を見た世界の王監督も「あそこまで飛ばすとは。見事なホームランだ」とあきれ 顔で拍手を送った。
対戦した渡辺俊は、メジャーでは珍しいサブマリン。だが、難なく打ち崩すのは、ワールドシリーズから の好調を維持しているからに違いない。「(スリークオーターの)高津とは少しタイプは違うけど、渡辺のよう なピッチャーは打ちにくいのは確か。でも今は球がよく見えている。直球ど真ん中なら当然の結果だ」と胸を張 った。
日本選手のド肝を抜く一発で、MLB軍団はこれで2連勝。193センチ、104キロ。レッドソックス を世界一に導いた4番打者は、第1戦でも試合の流れを変える同点打を上原から放っている。世界一の美酒を味 わってから10日。その勢いは衰えていない。
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“先制”したのは2年連続ア・リーグ盗塁王だった。戦前から注目された赤星との日米盗塁王対決。赤星の二盗は七回。クロフォードは五回二死から中前打で出塁すると、即座に俊足で二盗を決めた。
「今日は本当に野球を楽しめた。来日してから何日かたって、クラブハウスでも皆といい関係が築けている。緊張せずにプレーできているよ」。平常心がクロフォードの力を引き出した。
赤星同様、足だけではない。一回裏に“超下手投げ”の渡辺俊から右翼席へ先頭打者本塁打。四回表の守備では福浦の左翼線の邪飛をダイビングで好捕し、場内を沸かせた。
開幕前夜の4日に“宣戦布告”された赤星は当然意識している。「たくさん出塁して、どんどん次の塁を狙っていた。MLBの投手は彼のせいでイライラして、集中力を欠いていたように思う。やるべきことをやっていた」と、ライバルへの賛辞は惜しまなかった。
MLBの連勝発進に貢献したクロフォードは堂々、第2戦のMIP賞に輝いた。残り6試合も走攻守すべてにおいて、日本のファンを魅了する。
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始球式を務めたのは、日本人メジャーリーガー第1号で現評論家の村上雅則氏。所属していたサンフランシスコ・ジャイアンツのユニホームを身にまとい、大歓声の中投げた球は見事ストライク。両軍ベンチから拍手が巻き起こった。村上氏は「このシリーズ、いい試合が見られることを期待しています」とコメントした。
“世界一の大砲”オルティスが超絶パワーを見せつけた。「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」は6日、第2戦を行い、米大リーグ選抜の指名打者、デビッド・オルティス内野手(28)が4回、東京ドームの右翼席上にある照明真下を直撃する仰天弾を放った。いったんは「150メートル」と公式発表された飛距離が、その後に「157メートル」「160メートル」と2度も訂正され、同ドーム史上2番目となる規格外れの超特大ホームランと認定された。ワールドシリーズを制したレッドソックス主砲の連日の活躍で、全米は第1戦に続き勝利チーム賞の賞金1000万円をゲットした。
米国選抜チームの4番に座るレッドソックスの主砲が、たったひと振りで満員となった東京ドームの観衆を絶句させた。
同点の4回。先頭で打席に入りカウント0−3からの132キロ直球を強振。打球は、ピンポン球のようにはじかれ、右翼スタンド上の看板さえ越え、照明灯の真下を直撃した。主催者が発表した公式飛距離は160メートル。球場全体から「オオーッ!」と、どよめきが上がる中、193センチ、104キロの巨体を揺らしてゆっくりとベースを一周。ベンチに帰ると、目を丸くしたナインたちと笑顔でハイタッチを交わした。
「アイ・アム・ア・ビッグ・ガイ(オレはすげえヤツなんだよ)。直球が目の前に来れば、当然起きること。(故郷の)ドミニカまで飛んでいくような手応えだった」と豪快に高笑い。ボウチー監督は「長いこと野球にかかわっているが、あんなに飛んだ打球は初めて見た」と目を点にした。
今季はリーグ2位の41本塁打を放ち、リーグ優勝決定シリーズでは宿敵ヤンキースを相手に0勝3敗から奇跡の4連勝を果たしMVPに輝いた。球団86年ぶりの世界一の主役のひとりは、ツインズ時代は「周囲とうまくいかなかった」が、03年にRソックスへ移籍してからは、同郷のラミレスとペドロ・マルティネスが温かく迎えてくれたおかげで、一気に開花。今回の日米野球はラミレスとおそろいのネックレスをしているが「シーズン中にペドロと3人で買ったんだ。幸運のお守りだよ」と、照れくさそうに笑った。
前日の第1戦でも、MIP賞を獲得。今年の日米野球は“怪人”オルティスの独壇場となりつつある。 (廣田学)
米選抜−全日本 4回裏無死、160メートルの本塁打を放ったオルティス(梅津忠之撮影) |
2回表全日本2死一、二塁、右翼線に逆転の2点三塁打を放つ赤星=東京ドームで(市川和宏撮影) |
イチローをほうふつとさせるではないか。鮮烈な印象を与え、メジャーリーガーに名前を覚えられたのは阪神の赤星憲広外野手(28)だ。
メジャーの目に焼き付いた。大リーグ選抜のボウチー監督(パドレス)も目を見張った。
「とてもエキサイティングなプレーヤーで、印象に強く残っている。ベンチでも、よく名前が挙がっている選手だよ」
2点をリードされて迎えた2回2死一、二塁。ローシュ(ツインズ)が投じた143キロの内角速球を、右翼線へライナーではじき返した。二塁打コースを自慢の俊足で、同点の三塁打にした。
「僕はちっちゃいですから。対等にできるなんて思ってない。チャレンジャーなんです」
屈強なメジャーに力負けしない。それは打撃改造の成果でもある。振り遅れないように始動を早める。まだ急造フォームだが、好感触を得ているのだ。
5回には投前へバント安打。二進後に岩村の右前安打で生還した。7回には四球で出塁すると、初盗塁に成功。マルティネス捕手(インディアンス)の悪送球を誘い、三塁を陥れた。これぞ日本のスピードキングの本領だった。
「あまりに警戒されていたので走れなかった。だからリードを一歩以上縮めていたんです」
走る気がないと見せかけての二盗。マルティネスも脱帽だ。「クレイジーな活躍だ。ああいう走塁をされたら気持ちが高ぶりすぎてしまい、送球がそれてしまった」
クロフォード(デビルレイズ)の能力を目の当たりにした赤星は「僕と比べられても困る。パワーもあるので」という。一方のメジャーリーガーの間では、赤星のことを「まるでイチローみたいだな」と、ささやかれている。2試合連続の2安打と快足で、170センチの小兵がビッグな存在感を示した。 (吉川学)
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