(日米野球オールスターシリーズ第1戦、全日本2−7米選抜、米選抜1勝、5日、東京ドーム) 世界一をナデ斬った。全日本・上原浩治投手(29)=巨人=がメジャーの本塁打王、ワールドシリーズMVPのマニー・ラミレス外野手(32)=レッドソックス=から2奪三振。バットもへし折る快投をみせた。尊敬する328勝右腕、ロジャー・クレメンス投手(42)=アストロズ=とも堂々と渡り合う圧巻マウンド。メジャー志向を公言する日本のエースが、全米に、世界に、その名を轟かせた。〔写真右:上原は一回からエンジン全開。ラミレスを三振に仕留めた=撮影・斎藤浩一。同左:四回にはバットをへし折り、MLB軍団を驚愕させた=撮影・尾崎修二〕
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【上原の日米野球VTR】2002年の第1戦と第7戦に先発。第1戦はボンズを得意のフォークボールで3打席連続三振に仕留めるなど、6回を5安打1失点、8三振と力投し、勝利投手となった。第7戦では敗戦投手となったが、5回を7安打2失点、5三振。第1戦で無安打に抑えたイチローに3安打を許した以外は力投が光った。登板した2戦について「疲れたけど、いい思い出になった」と振り返った。
◆上原と投げ合ったクレメンス(アストロズ) 「上原は素晴らしい投手だと思う。きょうはフォークが有効に使えていたね。米国で投げたいというなら歓迎するし、夢を追い続けてほしいね」
◆上原に2打数1安打のオルティス(レッドソックス) 「上原はとてもいい球を投げていた。メジャーリーグにも挑戦できるんじゃないか。今すぐ通用する」
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(日米野球オールスターシリーズ第1戦、全日本2−7米選抜、米選抜1勝、5日、東京ドーム)“ジャパン”の4番を担うだけはある。城島(ダイエー)が剛腕クレメンスから2打数2安打。真っ向から投げ下ろしてくるストレートに力負けせず、マルチ安打だ。
「なんか、対戦してるというより、テレビで見ているような感じですよね。オールスターのような気がしますね」
第1打席はMAX140キロの外角高めを、続く第2打席も146キロのボール気味の外角球を、強引に左翼線へ運んだ。来季にもFA権を取得するとあって、早くもメジャー複数球団がマーク中。未来の“日本人初メジャー捕手”の能力をこの日の2安打で証明した。
「積極的に行ったのがよかったね」と王監督もお褒めの言葉。しかもポストシーズンの試合にもかかわらず、試合後はたった1人、ロッカーに残りウエートトレを敢行した。メジャー相手に、まだまだ暴れるつもりだ。
★“第1生還者”は井端
12年前は12イニング無得点。この日の五回に刻んだ2点は、全日本がクレメンスから初めて奪った得点だった。その“第1生還者”は井端(中日)。遊撃内野安打で出塁すると、二盗も決めて豪腕をかき回した。「打席に立って、クレメンスがすごく近く感じました。威圧感というより、本当にデカいですね」。試合後は驚きの表情を浮かべて振り返った。
★山口散々4失点
今年は断念したものの、来季以降、メジャー挑戦の意向を打ち出している山口(オリックス)が、七回に登板。しかし、打者7人に4安打1四球に暴投も絡んでの4失点と散々な内容に終わった。「勉強になりました。追い込んでから、向こうのスイングが違う…」。“メジャーの洗礼”に脱帽の表情だった。
◆全日本・王監督 「向こうが慣れないうちに何試合か勝ちたかったんだけど…。やっぱり打てないと駄目だな。メジャーのスイングスピードは速いね」
◆大リーグ移籍も視野のFA宣言も無安打の仁志(巨人) 「少し気負いがあったかな。戦っていく中でだんだん上げていきたい」
◆三回にジャイルズ(ブレーブス)の盗塁を刺した阿部(巨人) 「あれは良かった。でも、もう一つ(七回の盗塁)もアウトだよ」
◆1回無失点の三瀬(ダイエー) 「思ったより緊張しなかった。ボールが(日本のと)違ったので(変化球の)落ちが鈍かった」
★五輪水泳・北島が始球式「チョー緊張」
試合前の国歌斉唱は歌手の大黒摩季(34)が、始球式はアテネ五輪の男子平泳ぎで2つの金メダルを獲得した北島康介(22)が行った。カナダ、米国国歌に続いて登場し、アカペラで『君が代』を熱唱した大黒は「97年に初めて世に出た時より緊張した」。北島はクレメンスにちなんで背番号22のユニホームで登板。投球は大きく右にそれて「チョー気持ちよくない。チョー緊張した。久しぶりだよ」。2人とも顔を上気させていた。
(日米野球オールスターシリーズ第1戦、全日本2−7米選抜、米選抜1勝、5日、東京ドーム)メジャー最高右腕にも気後れはしなかった。今季日本人最多の44本塁打(リーグ3位)を放った岩村(ヤクルト)が、クレメンスとの初対戦で、2年前から熱望するメジャー挑戦の野望を大きくふくらませた。
「クレメンスは“すごい”っていうより、“さすが”って感じ。100%じゃなくて、80%くらいだったと思うけど、コントロールがさすがだった」
二回一死二塁で迎えた第1打席。この日、クレメンスのMAX148キロの直球に、バットを合わせファウル。フルカウントからの7球目、カットボールを見極め、四球を選んだ。「球は驚くほどは速くなかったけど、外側のシュート、内側のカットボールがすごかった」と岩村。『6番・三塁』で出場した和製大砲が、チャンスを広げた。
メッツ、ブレーブスなどのスカウトも集結し、絶好のアピール機会となる日米野球を前に、午前中にはヤクルト本社を極秘訪問。多菊球団社長らに今オフのメジャー移籍を“直訴”した。今季は球団記録に並ぶ44本塁打を放ち、打率.300、103打点をマーク。自己最高成績を片手に、ポスティングシステム(入札制度)による移籍を要望したのだ。
だが、多菊社長は「今年はありません。向こう(米国)に出すだけの実績を残してから」と、この申し出を当然却下。意を決しての直訴も実らなかったが、岩村は「社長にはもう1年、今年と同じ実績を残してからといわれた。でも思っていることを全部話せてすっきりした」。多菊社長から「来年はまた考える」との言葉ももらった。まだ25歳。日米野球残り7戦での全力プレーが、岩村を夢舞台に近づける。
〔写真:岩村は気持ちの整理をつけてクレメンスに立ち向かった=撮影・浅野直哉〕
(日米野球オールスターシリーズ、全日本2−7米選抜、米選抜1勝、5日、東京ドーム)阪神・赤星憲広外野手(28)が、アストロズのロジャー・クレメンス投手(42)を怒らせた! 左前打で出塁するや、ふだんよりも大胆なリード。けん制タッチアウトとなったが、メジャーの剛腕は怒り心頭。大リーガーを本気にさせた。〔写真:阪神・赤星がクレメンスを本気にさせた。大胆リードでけん制タッチアウトに=撮影・浅野直哉〕
視線の先で、小さなタテジマがジリジリとリードを広げる。世界の“ロケット”の顔色が、みるみる変わる。何だ、チョロチョロしやがって…。これが、日本の核弾頭を託された4年連続盗塁王の真骨頂! 赤星が、クレメンスを本気モードへと変えた。
「怒ってた? ねえ、あんなに警戒するとは思わなかったよ」
三回。先頭で打席に入ると、カウント1−2から、低めの131キロスライダーを左前へ運んだ。“剛”に対抗して“巧”で、メジャー現役最多勝右腕を攻略すると、後は自慢の足の出番。盗塁を期待し、スタンドのボルテージも上がった。
リードは両足とも人工芝の上。「いつもと同じ」というものの、その大きなリードは、クレメンスをカッカさせるのに十分だった。すかさずけん制球、さらに続けて1球。そして仁志への初球、警戒網をあざ笑うかのように、いきなりスタートを切った。
空振りを狙った仁志のスイングがファウルとなり、球場はため息。収まらないのはクレメンスだ。すかさず素早いけん制球。そして続けた計4球目に、引っかかった。
「セーフですよ」。そう振り返るのは、シーズン中と変わらぬプライド。けん制死の瞬間、クレメンスが咆え、背番号53をにらみつけたことが、メジャーの最高峰を苦しめた証拠だった。
さらに五回に四球を選ぶと、七回には、アスレチックスの左腕・レッドマンから左前打。高め134キロをとらえ、チーム5安打中、2安打を叩き出す活躍を見せた。
「(クレメンスは)本調子じゃなかったと思うんで、球は思ったよりこなかったですが…。カットボールとか、独特の球種で、打ちづらい所にキッチリ投げてきますね」。秋季キャンプでは、“一本足打法”に着手。タイミングをゆっくりとるように改造したが、その成果も右上がりだ。
「だいぶタイミングが合い始めましたけど。まだ思ったようにはね。あと1歩、待てれば」
後は亜大の先輩・井端(中日)に「お先に!」と先を越されたスチール。「とにかく打ててよかった〜。盗塁? 頑張ります」。赤星の本当の怖さは、これから本番を迎える。
これも全日本チームならでは。試合前練習で赤星は巨人・上原とキャッチボール。1つ歳上の先輩から誘われ「一番緊張しました。球すじがキレイですね。あれで思い切り投げたら、どーんと来ますよ」と、目を輝かせた。
さらにベンチでは、TVゲストのメッツ・松井稼から「頑張れよ」と肩を叩かれた。渡米前から親交のある先輩は、赤星のバットを軽く振りながら「ええやん、これ」とにっこり。メジャーの力を、試合前に注入された。
★今岡の爆発は大阪ドーム?
阪神・今岡が、八回無死、西武・和田の代打で登場した。大きな拍手で迎えられると、パドレスのセットアッパー右腕・ラインブリンクの初球142キロを積極的にスイング。低めのボールをうまく捕らえ右中間に快音を残したが、打球は右翼手のグラブに、すっぽりと収まった。
「初球じゃないと打てないから。惜しい? ノーパワー。でも徐々に体が動いてきたし。狙いは大阪ドームだからね」
連日のフリー打撃で動きを取り戻し、爆発は地元・大阪ドーム(10日)? 安打製造機のエンジンは確実に温まってきている。
(日米野球オールスターシリーズ第1戦、全日本2−7米選抜、米選抜1勝、5日、東京ドーム)惜しみない拍手に包まれ、マウンドを静かに降りた。真剣勝負そのものの、厳しい表情のままで。メジャー選抜の開幕投手クレメンスは、4回2/3を4安打2失点。それでも、誰もがこの投球の意味を分かっていた。
「五回を投げ切りたかった。きょうは初対戦の打者ばかりで計算できず、そのわりにはよかったと思う。我々としては最高のスタートだしね」
通算300勝を達成した現役メジャー投手が、日本で登板するのは史上初。それも、ただの登板ではない。「99%、今年で引退する」と22年間の現役生活の終幕の舞台に、日本を選んだのだ。
直球は最速148キロ止まりと、本調子ではなかった。前回来日した92年の日米野球では、2試合で12回4安打無失点。この日は日本初失点も喫した。が、下半身が沈み込む独特のフォームや鋭い眼光など、328勝を誇る「ロケット」の威光はそのままだった。
この日は、午前10時前に東京都北区の西ケ原小を訪問。その足で米国大使館へハシゴし、東京ドームに向かった。米国では登板前日から報道陣といっさい会話せず、集中力を高める男が、だ。
「確かに、いつもの登板とは全く違う1日だった。でも、これも自分の役割だと心得ている」
ヤンキース時代の昨年、同僚・松井秀喜の人柄に感動し「日本人はとても素晴らしい心の持ち主」と親日派に。松井秀の実家、石川・根上町の『野球の館』を訪ねることまで約束したほどだ。
「どうやら今年もヒデキは、ニューヨークで長いバカンスらしくて無理だな。でも日本にはまた来たいから、その時に」
次回先発予定は10日の第5戦(大阪ドーム)。最後の雄姿となる可能性は高い。ついに終着点を迎える、ロケットの夢飛行。その軌跡は極東の、日本で終えようとしている。
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【子どもと正座】クレメンスはウィルソン(パイレーツ)とともにこの日午前、東京都北区の西ケ原小学校を訪問し、児童と交流=写真下。同小の6年生に拍手と歓声で迎えられ、和室で地元ボランティアからお茶のもてなしを受けた。慣れない正座に足がしびれ、苦笑いしながらひざ立ちする場面も。クレメンスは「(好物の)スターバックス(のコーヒー)よりおいしかった」と日本伝統の味を堪能した。
◆大リーグ選抜・ボウチー監督 「2点リードされたが、オルティスが起爆剤になってくれた。今後の試合も勝つために戦うという姿勢は変わらない」
大塚(パドレス)が九回に登板。大声援の中、古田、赤星、福浦を3人斬りで締めた。マウンドから古田に帽子を取ってあいさつしてから対戦した大塚は「日本球界、(前所属の)近鉄のために頑張ってくれていたのでお礼です。久しぶりの日本のマウンドでしたが、声援が気持ち良かったです」と満足そうだった。
★Rソックス・オルティスがMIP…上原にアドバイス
MIP(試合ごとの最優秀選手)に選出されたのはオルティス(レッドソックス)。六回一死二、三塁で、上原の決め球フォークを右前に同点2点タイムリー。リーグ優勝決定シリーズでヤンキース相手に2試合連続サヨナラ打を放った勝負強さは健在。「どうしても安打が欲しい場面だったからね。強いゴロを心がけていた」。世界一に輝いたチームの4番の面目躍如に胸を張った。
★ネット裏にも日本人メジャーリーガーが集結
日米野球メジャー選抜のメンバーからは漏れた松井稼(メッツ)、大家(エクスポズ)が、TBSの中継でゲスト解説を行った。グラウンドで懐かしい面々にあいさつした松井稼は「きょうはじっくり野球を見ます」。また、高津(ホワイトソックス)も家族連れで観戦に訪れるなど、ネット裏にも日本人メジャーリーガーが集結した。
サンケイスポーツは日米野球期間中に特別コラムを掲載します。1、3、5、7戦は元メジャーリーガーの吉井理人投手(39)が、ベンチ内の“生情報”を中心とした「オレしか知らんで メジャーサプライズ」。2、4、6、8戦はヤクルト・岩村明憲内野手(25)が、プロの見たメジャーリーガーのすごさをリポートする「なにクソ魂 メジャーサプライズ」。本日は吉井投手の登場です。
4人の子供は「Koby」「Kory」「Kacy」「Kody」と全員、頭文字に、スコアブックで三振を意味する『K』をつけるほど、三振に固執してきたクレメンス。42歳になっても150キロを投げるすごい投手ですけど、実際、真っすぐは見せ球に使うことが多く、チェンジアップ、フォークと、あのデカい手で変化球を器用に操ります。
ただ「やっつけたる」とテキサス魂むき出しで打者に向かっていく気迫は、まさに剛球派。ヤンキース時代のサブウェイシリーズでピアザの顔面にぶつけて、NY中が大騒動になっても、本人は平然としていました。
変化球が多いのと同じぐらい、見た目の印象と異なるのが、太っててパワーピッチャーに見えるのに、実は下半身トレが大好きということ。オープン戦では投げている途中にもかかわらず、味方の攻撃時にベンチ前でペッパーゲーム(コーチが左右に球を転がし反復横跳びで捕らせる)をやる。日本では当たり前の練習メニューも、メジャーでは見たことがないですから。
同郷のノーラン・ライアンに憧れているのは有名ですが、去年のワールドシリーズで活躍したベケット(テキサス出身)など、今はクレメンスに憧れる選手が多い。伊良部もヤ軍時代「投げる瞬間、グラブは体の正面に置け。アームレスリングのとき左手でどこかをつかめば力が入るだろ」と教えてもらったそうで、師と仰いでいます。実は野茂もそう。一緒にメッツにいたとき、ウエートルームに行ったはずの野茂が「吉井さん、クッ、クレメンスが…ウエートやってますっ」。あのクールな男が、子供のように息を切らして戻ってきました。
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<日米野球:全米7−2全日本>◇第1戦◇5日◇東京ドーム
世界に「ウエハラ」をアピールした。巨人上原浩治投手(29)が3失点で敗戦投手も、6回6奪三振で328勝右腕のアストロズ・クレメンス投手(42)と互角の投手戦を演じた。日米野球は5日、東京ドームで開幕。上原は5回まで無失点に抑え、世界一レッドソックスのマニー・ラミレス外野手(32)からも2三振を奪った。メジャー移籍を夢に描く上原が大きな一歩を刻んだ。
忘れられない敗戦になった。試合後になっても、巨人上原は悔しさを静められなかった。「負けたことが腹立たしい」。本気で勝ちに行っていた。6回6安打3失点。5回までは零封も、2点のリードをもらったとたんに3点を失い、逆転を許した。マウンドを下りてベンチ裏に戻ると、鉄の扉を蹴り上げた。
02年に続く開幕投手。しかも相手はクレメンス。試合中は、打者だけに集中するのが普通だが、この日はクレメンスのできが気になって仕方がない。「大投手でも土俵は一緒。必ず勝つ」。そう言ってマウンドに立った。「相手投手が気になるのは、シーズン中はあり得ない。今までもなかったし、今後もない経験だと思う」と、特別な日だったことを明かした。
新婚旅行はクレメンス詣でだった。10月、美穂夫人とナ・リーグ優勝決定シリーズを観戦。全米チームが来日した3日、対談してサイン入りユニホームとボールをもらった際には、感激を隠し切れなかった。「ユニホームは額に入れて飾ります」とファンの笑顔をみせた。真っすぐとフォーク。シンプルなスタイルは、追い求める姿そのものだった。
オフも調整を続けた。内助の功もあった。美穂夫人の食事管理で、血中コレステロールが激減。結婚の「効果」は如実に現れた。この日、観戦した美穂夫人は「ただ料理が好きなんです」と控えめだったが、2人でこの日に備えていた。
対戦を焦がれたクレメンスに「素晴らしい投球だった」と言わせた。初回、3番ラミレスをフォークで仕留めるなど2者連続三振のスタートに、上原も「100点満点」と納得できた。さらに「もし米国にくるなら歓迎する。夢を追いかけて欲しい」とも言わせた。メジャー挑戦を公言する上原にとって、本気モードをあこがれのクレメンスの心に刻んだことが、最大の収穫だった。【金子航】
[2004/11/6/09:22 紙面から]
写真=1回表全米2死、上原はラミレスから三振を奪う
<日米野球:全米7−2全日本>◇第1戦◇5日◇東京ドーム
FAによるメジャー移籍を目指す巨人仁志が、必死のアピールを敢行した。2番二塁で先発出場。2打席目までは凡退したが、5回1死満塁の「おいしい舞台」を生かした。三ゴロの間に敵失も絡んで2者を生還させた。これまで日米野球で無失点だったクレメンスから、17イニング目となる“歴史的”初打点をマークした。「力で押すというよりスライダーが多かった」。イメージとのギャップを克服し「結果」を残した。
塁上でもアピールは続いた。直後の2死一塁で盗塁を試み、ヘッドスライディングでクレメンスから二塁を奪った。慣れない2番に戸惑う場面もあった。3回無死一塁で、走者の赤星がスタートを切ったにもかかわらず、打ちにいきファール。盗塁をアシストできず結局、赤星はけん制で刺された。「空振りしようとしたのに当たっちゃった。今日一番の心のキズ。悪いことした」と頭をかいた。だが、そのクレメンスのけん制をかいくぐって盗塁を決めただけに価値はあった。
全米関係者が見守る舞台が格好のアピールとなることは言うまでもない。試合前には日本の他球団との交渉に「筋が違うんじゃないかな」と否定的な姿勢を見せ、あらためて巨人残留かメジャー挑戦かの2者択一を強調。試合後には「気負いがあったかな。短期決戦だしオレ、本当に打てるのかな」と弱気な言葉も口をついたが、残り7戦でもさらなるアピールが続くことは間違いない。【大塚仁】
[2004/11/6/08:30 紙面から]
<日米野球:全米7−2全日本>◇第1戦◇5日◇東京ドーム
ダイエー城島が豪快なスイングでクレメンス斬(ぎ)りだ。まずは2回の第1打席。豪腕に力勝負を挑んだ。カウント0−1からの2球目。内角140キロの直球に力負けすることなく引っ張った。左翼線を転々とする打球を確認すると、スピードを緩めず二塁へ猛然とスライディング。全日本初安打は、クレメンスから放った歴史的な初長打でもあった。
この対戦を楽しみにしていた。「クレメンスはいい投手を通り越してるでしょ。直球も速いし、フォークもすごい。バットに当たれば感激するでしょうね」。試合前から気分はノリノリだった。続く第2打席も内角高めのボール球を強引に左前へ。二塁を欲張りアウトになったが、豪快なスイングはメジャー軍団に強烈なインパクトを植え付けに違いない。
順調にいけば来年FA資格を得る。第2戦以降ではマスクをかぶる予定。自慢の肩も含め、メジャーへの憧れもあるだけに最高のパフォーマンスを披露するつもりだ。
[2004/11/6/06:57 紙面から]
<日米野球:全米7−2全日本>◇第1戦◇5日◇東京ドーム
東京ドームの大観衆は息をのんで見守っていた。「前回(92年)よりお客さんが静かなんで、びっくりした」。クレメンスはマウンドに立ちながら、12年前の日米野球との違和感を抱いていた。
現役最多328勝の大投手。すでに99%引退を公言している。残る1%は日本で燃焼させるのか。東京で「ロケット」を見られるのは、おそらくこれが最後。見逃せないという思い、まばたきするのも惜しい。ファンが拍手、声援を送ることを忘れるほどその1球1球が歴史的瞬間だった。
この日の最速は2回岩村への148キロ。先月のリーグ優勝決定シリーズ最終第7戦の最速が94マイル(約151キロ)だったことを考えると、拍子抜けの印象があった。「確かに速く投げられなかったけど、しばらくボールを投げていなかったことを考えれば、そんなに悪くはなかった」。
2日前に来日。この日午前には小学校や米大使館を訪問し、疲労が重なっていたはずだ。「いい投球も大事だが、そのような役割を承知していたし楽しい1日だった」。4回2/3を4安打2失点(自責1)4三振5四球。結果に残る表面的な数字より、クレメンスが東京にいる事実こそが貴重だった。
「だんだんお客さんが乗ってきてくれたけど、日本では太鼓とか旗とか、もっと楽しみながら観戦してもいいのでは」と珍提案? まで飛び出した。現役最後は10日の第5戦(大阪ドーム)になるのか。大声援で見送ってほしい。本音はその辺にありそうだ。【柴田寛人】
[2004/11/6/06:56 紙面から]
<日米野球:全米7−2全日本>◇第1戦◇5日◇東京ドーム
全米の4番は、既に上原のフォークを見切っていた。2点を追う6回表。四球、二塁打で1死二、三塁とチャンス到来。「どうしてもヒットが欲しかった。ゴロでもいいから1点を、と思った」という4番オルティスが、上原自慢の低めフォークを拾った。
「他の打者の時も、彼のフォークを見てたんだ。低めはボールになる球が多かったんだけど、あの1球はその前より高かったんじゃないかな」。右前への同点2点適時打で、全米打線の目を覚ませた。アルーが安打で続き、6番ウェルズが勝ち越し犠飛。6回で上原をKOすると、7回にはオリックス山口、横浜加藤から5安打で一挙4点。MLBが実力を見せつけた。
所属するレッドソックスは、ヤンキースに3連敗からの4連勝で劇的なア・リーグ優勝。ワールドシリーズでは、カージナルスをスウィープ(一掃の意=4連勝)し、86年ぶりの世界一に輝いた。だからだろう。オルティスは「成田からすごい歓迎で、今日はホテルの周りを歩いていてもみんな声をかけてくれる。よくぼくらの試合を見ててくれたんだね」と、まだ勝利の余韻に浸っている状態だ。
そんな中でも先頭に立って、上原攻略の手本を示した。試合後、オルティスは「メジャーは少しストライクゾーンが小さい。投手も有利なカウントに持っていくのがうまい。上原もゾーンに適応できれば大リーグで投げられる」と余裕のアドバイスを送った。この日は2番ブラロック、5番アルーも3安打。世界一の4番の一打が、全米ナインにこれ以上ない勢いをもたらした。【千葉修宏】
[2004/11/6/06:54 紙面から]
<日米野球:全米7−2全日本>◇第1戦◇5日◇東京ドーム
パドレス大塚晶則投手(32)が9回に登板。3者凡退に抑え「ちょっと緊張したけど、楽しく投げることができた」と顔をほころばせた。
先頭の古田には「選手会長として、以前プレーした近鉄を残そうとしてくれていたから」と、対戦前に帽子を取って敬意を表した。フェンスぎりぎりの左飛に「(スタンドまで)行くかなと思ったけど、大リーグの球が少し重くて失速しましたね」とほっとした表情だった。
[2004/11/5/23:57]
写真=9回を打者3人で抑え、オルティスに笑顔で迎えられる大塚(共同)
<全日本−全米>1回を三者凡退に取った上原(右)はベンチ前で松坂の出迎えを受ける |
【全日本2−7全米】全日本のエースにふさわしい熱投だった。02年の日米野球に続き巨人・上原浩治投手(29)が開幕投手を務めた。6回3失点で敗戦投手となったものの、ワールドシリーズMVPのラミレスに対しては2奪三振とバットをへし折っての三ゴロと完ぺきに抑え込んだ。
メジャーの強打者たちが目をみはる堂々としたピッチング。全日本のエースでもある上原にとって原動力となったのがクレメンスの存在だった。
「打者ではなく、相手ピッチャーを意識して投げたのはプロ野球人生で初めてのこと。もうこの先もないでしょう。何といっても彼は僕のあこがれで、フォームをまねしたぐらいですから」
グラブを顔の前に置き、口元を隠して捕手のサインをのぞき込むのはクレメンスをまねて4年前から取り入れたもの。そして心に抱く崇拝の念が、今オフ海を渡らせた。10月16日、アストロズの本拠地ミニッツメイド・パークには美穂夫人(30)を伴った上原の姿があった。ナ・リーグ優勝決定シリーズ第3戦。先発はクレメンス。「生で見ると勉強できる部分が多いから。それにこっちで投げたい気持ちがなければ、わざわざアメリカまで行きません」。将来的なメジャー移籍を公言し、クレメンスの雄姿に数年後の自分の姿をダブらせた上原。そのクレメンスから3日にプレゼントされたサイン入りのユニホームを入れる額を近日中に購入する。
「クレメンスが先にマウンドを降りて、気が抜けちゃった」。苦笑した上原だが、ブレーブスの大屋国際スカウトは「タイプ的にカブスのマダックスに似ている」と絶賛した。次回登板は12日の第7戦(ナゴヤドーム)。「きょうは面白かったけど、負けたことに対してはメチャむかついてる。30点やったね。今度は恥ずかしくない投球でピシッといきます」。今度は1点もやらない。
▼全米クレメンス 上原の投球はビューティフルだった。この間話した時にフォークとスプリットと2種類の握り方があるようだったが、この試合でも有効だった。彼がメジャーで投げたいなら歓迎するし、夢を追い続けてほしい。
▼全日本王監督 向こうが慣れないうちに何試合か勝ちたかったんだけど…。やっぱり打てないと駄目だな。メジャーのスイングスピードは速いね。
≪赤星満足2安打≫阪神・赤星の足がクレメンスを“本気”にさせた。左前打で出塁した3回。次打者・仁志の初球に、いきなり二盗を試みたが、ファウルで“不発”。「空振りしてくれようとしたのが当たったみたい」。仕切り直し後にけん制で刺された。「あんなに警戒してくるとは思わなかった。(盗塁で)井端さんに先を越されちゃった」と言いながら、2安打をマークして満足そうだった。
<全日本−全米>4回まで4奪三振と力投したクレメンス(共同) |
【全米7−2全日本】ロケットで開幕!「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」は5日、東京ドームで幕を開けた。92年以来、12年ぶりに日米野球に出場したクレメンスがメジャーの貫録を見せつけた。現役最多の通算328勝を誇る42歳の鉄腕は5回に失策絡みで、日米野球では通算17イニング目で失点を喫したが、4回まで4三振を奪う力投で東京ドームのファンを魅了した。全米は打線が13安打で7点を挙げ、逆転勝ち。今季限りでの引退が濃厚なクレメンスは10日の第5戦(大阪ドーム)で再び先発する。
体調は万全ではない。しかし、マウンドに上がればいつもの闘争心が自然とわき上がる。「初めての打者ばかりで計算ができないから自分のボールだけを信じて投げた」。メジャー21年間で通算328勝を挙げた投球スタイル。「生涯パワーピッチャー」を宣言する42歳の剛腕は全日本打線に真っ向勝負を挑んだ。
最速は2回の岩村に投じた148キロ。とてもシーズン終了後に「今季限りで99%引退」と宣言した投手とは思えない。この回、2死満塁のピンチを招くも、9番・阿部を143キロの直球で3球三振。3回は1死から仁志、小笠原を同じく直球で連続三振に仕留めた。今季のセ・リーグ首位打者・嶋には得意のスプリットで三振を奪い、格の違いを見せつけた。
92年以来、12年ぶりの日米野球。今回は「できるだけ多くの人に会いたい」と、グラウンド以外での活動にも積極的だ。この日は登板日にもかかわらず、午前10時に北区立西ケ原小学校をウィルソンとともに訪問。茶道や書道などの日本文化と触れ合い、約1時間、子供たちとの交流を楽しんだ。「子供たちといい時間を過ごせた。でも朝のお茶はきつかった」。茶道体験では約10分間の正座に耐え切れず「足を崩してもいいか?」とギブアップし、関係者が慌てる一幕もあった。
その後も米国大使公邸で行われたレセプションに出席。「シーズン中の登板日とは明らかに違う1日だった。でも私はこのような役割を承知で参加した」。現役引退のときが近づいた今、クレメンスはできる限り多くの人と接し、交流を図りたいと考えている。
5回に味方の失策が絡んで2失点(自責1)。日米野球では92年と合わせて17イニング目で初めて得点を許したが、3回には巧みなけん制で一塁走者の赤星を刺すなど随所にメジャー最高レベルの技術を見せた。「5回を投げきりたかったけど、感覚としては悪くない」と納得顔。マウンドを降りる際にはスタンドから送られた温かい声援に手を振って応えた。
次回は10日の第5戦(大阪ドーム)。当日はナ・リーグのサイ・ヤング賞が発表される。史上最多7度目の受賞を有終の美としてユニホームを脱ぐのか。「ロケット伝説」は最終章を迎えようとしている。
<全日本−全米>6回に同点打を放つ活躍で第1戦のMIPに輝いたオルティス |
【全米7−2全日本】完全に見切っていた。オルティスの狙いは上原の決め球。その軌道は完全に頭の中に入っていた。2点を追う6回1死二、三塁。131キロのフォークをバットの先端に乗せる。打球は右前へ。MIP賞を獲得するのにふさわしい、値千金の同点打だった。
「どうしてもヒットが欲しい場面だったからね。素晴らしいフォークだった。でも、前の打席よりはちょっと高かったんじゃないかな」
これがレッドソックスを86年ぶりの世界一に導いた男の真の実力だ。伏線は2回の第1打席。オルティスはカウント1―2からフォークを空振り。しかしその後、2―2から低めに落ちる同じボールを2球続けて見逃して四球を選んだ。02年の日米野球で上原はボンズ(ジャイアンツ)から3三振。決め球はすべてフォークだったが、オルティスには通用しない。「最初の打席で僕のことがすべて分かったみたいで…」と全日本のエースも白旗だ。
「もちろん自分の打席でもそうだけど、ベンチからも観察していたんだ。見逃せば低めのボールになる。そう思ったのさ」。その圧倒的な存在感は際立っている。3番ラミレスとの世界一コンビ。合わせて84本塁打、269打点の大砲は、まずは技で全日本の、そしてスタンドのファンの度肝を抜いた。「あの同点打が起爆剤になって、われわれに運が向いてきたよ」とボウチー監督。ラミレスは3打数無安打2三振と不発だったが、この2人がいるからこそメジャー軍団は光り輝くのだ。
「ウエハラはいい投手だった。有利なカウントに持っていく技術、そしてゾーンにアジャストすれば問題なくメジャーでプレーできるよ」。笑顔で会見を締めたオルティスだが、余裕たっぷりの口調が憎い。次は一発。豪快なアーチをファンの誰もが待っている。
≪アルー猛打賞≫野手最年長38歳のアルー(カブス)がフル出場で3安打をマークした。上原からは2回に右前打、6回には中前打。「彼の投球に合う打ち方を見つけるには少し時間がかかったけど、結果的に打ててよかった。上原はカットボールが印象的だった」。一緒に来日したオーストリア夫人も「彼は疲れている時の方がよく打つのよ」と夫の活躍を喜んでいた。
▼全米ボウチー監督 2点リードされたが、オルティスが起爆剤になってくれた。今後の試合も勝つために戦うという姿勢は変わらない。
【全米7−2全日本】9回にマウンドに上がった大塚(パドレス)が3者凡退で凱旋登板を飾った。最後は135キロのスライダーで福浦を空振り三振に仕留め、小さく恒例の“ヨッシャー”ポーズ。「久しぶりのマウンドだったので気持ち良かった。緊張したけど楽しく投げられた」と笑顔で話した。
感慨深い登板となった。自身が97年に入団した近鉄は合併で今季限りで消滅。元近鉄選手としてファンに恩返しがしたかった。また、先頭・古田との対戦ではマウンドから帽子を取って敬意を表した。「(選手会長として)古田さんが頑張っているのをインターネットで見てました。近鉄を残そうとしてくれていたし」とした。それでも古田のフェンスぎりぎりの左飛に「(スタンドまで)行くかなと思ったけど、大リーグの球が少し重くて失速しましたね」とホッとした表情だった。
≪高津も熱視線≫ホワイトソックスの守護神・高津がネット裏で観戦。全米の先発クレメンスの投球には「技術はもちろん、体の強さを感じる」と印象を語った。今季、クレメンスが所属するアストロズとは交流試合でも対戦がなかっただけに「特にコントロールがいいね」と感心していた。きょう6日の第2戦はテレビのゲスト解説を務める。
始球式で豪快なフォームを披露した北島康介(共同) |
始球式をしたのは2年前の日本シリーズ以来でした。緊張しましたね、思いっ切り。アテネ五輪の競泳会場でもあんなにお客さんはいませんでしたから。しかも、みんなが自分を見ている。競泳じゃないから自信も持てないですしね。ヤクルトの五十嵐さんにフォームを教えていただいたんですけど、駄目でした。とにかくストライクをと思って投げたけど、外角に外れてしまいました。
小さいころから東京ドームにはよく来ていました。父が野球好きで、よく連れてきてもらいました。小学校の時は自分もクラブでやっていましたし、都市対抗野球も見に行っていたんですよ。野球場は雰囲気がいいですね。うまく言えないけど、ザワザワしている感じが刺激的で好きです。
そのころは父の影響で巨人ファンでした。1番覚えているのは、松井選手が特大ホームランを看板に当てたこと。3階席まで飛んだ打球がファウルになって、次のボールをホームランにしたんです。感動しました。ファウルを打ち直してホームランにした、その気持ちの強さに感動しました。
最近は練習が忙しかったので、生で見たのは2年ぶりぐらいです。野球を見る気持ちは子供のころのままで、あのワクワクする感じを思い出しました。しかも、日本を代表する選手がいて、世界一のレッドソックスの3、4番もいる。松坂選手や和田選手らアテネに来ていた選手もいました。やはり「この人たち、凄くない?」って感じで見ました。ラミレス選手に注目していたんですが、本塁打を打ってくれたら最高でしたね。
競泳と野球を比較はできないけど、見ることができてよかった。今の目標は来年の世界選手権ですが、やはり、ギブソン選手に奪われた世界新記録を奪い返したい。あの松井選手のホームランのように。まだ練習も始めていませんが、今はとにかく、1歩1歩前を向いて頑張りたいという気持ちです。日米野球観戦は、そのためのいい息抜きと、来年への刺激になりました。
(アテネ五輪男子百メートル、二百メートル平泳ぎ金メダリスト)
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
全米 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 4 | 0 | 0 | 7 |
全日本 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
[米]クレメンス、○カレーロ、レドマン、ラインブリンク、大塚 [日]●上原、山口、加藤、三瀬 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
米選抜 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 4 | 0 | 0 | 7 |
全日本 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
[米]クレメンス、○カレーロ、レドマン、ラインブリンク、大塚 [日]●上原、山口、加藤、三瀬 |
◆始球式外した〜北島「超悔しい」 |
◆大塚 凱旋登板締めた 9回、全日本打線を3者凡退に仕留め凱旋登板を飾った。「古田さんの打球(左飛)はヒヤりとしたけれど、アメリカの重いボールでラッキーでした」と胸をなでおろしていた。 |
◆茶道クレメンス「スタバより美味」小学校を訪問 クレメンスは5日午前、ウィルソン内野手(パイレーツ)と東京・北区の西ケ原小学校を訪問した。出迎えを受けた両選手は、茶道と書道に挑戦し日本文化に触れ「今回はこういう交流をすることも来日の目的であった」と喜んだ。 前回の日米野球ではホテルと球場の往復で、日本の人たちとの触れ合いがなかったことが不満だった。この日の茶道では足がしびれて苦笑いを浮かべる場面もあったが「お茶はスターバックスよりおいしかった。だけどちょっと濃すぎた」と笑わせた。 「今季で引退する決意はほとんど固まっているが、現役を終えたらこういう活動をしたい」と引退後“野球大使”に就任するプランを披露。「米国だけでなく日本などにも野球を通じて交流する役割を果たせれば、と思っている」と“野球大使”としての初仕事に充実した笑顔を見せた。 |
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「日米野球・第1戦」本気だったからこそ、悔しかった。逆転を許し降板した上原が、ベンチ裏のドアを思い切り、けり上げた。最高の腕試しの場面が訪れたのは六回だった。四球に右線二塁打で二、三塁のピンチを招き、対戦を心待ちにしていた世界一軍団レッドソックスの4番オルティスを迎えた。
そこまでの2打席は四球と左飛だったが、勝負どころで、宝刀フォークをとらえられた。右前へ同点2点打。「参りました。もうちょっと空振りしてくれるんじゃないかと思ったが、レベルが高かった」と脱帽した。
だが落胆することはない。自ら「スタートは100点満点で、最後は30点やったね」と分析するように、先頭のクロフォードのバットをへし折ったのを皮切りにメジャー軍団を5回まで歯ぎしりさせたのは大きな収穫。あこがれのクレメンスが五回途中で降板しても、なおマウンドに踏みとどまり、意地も見せた。
「こんなに相手投手を意識することはなかった」。特別な存在と同じ舞台で投げ合った経験は、メジャー挑戦を心に誓う上原にとって、本人からプレゼントされたユニホーム以上に、宝となった。
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米大リーグ選抜と全日本が対戦する「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」が5日、東京ドームで開幕し、大リーグ選抜が7―2で先勝した。現役最多、通算328勝の先発クレメンス(アストロズ)は五回途中2失点だったが、“最後の雄姿”を日本ファンの目に焼き付けた。全日本は赤星(阪神)がクレメンスから鮮やかな左前打を放つなど2安打で、新打法の成果を示した。
メジャーの現役通算最多勝右腕を、日本の盗塁王が本気にさせた。赤星が、クレメンスから価値ある一打を放った。
「調子が良くなかったんじゃないでしょうか。思っていたよりは、良くなかったですね。でもカットボールやシュートなど、独特の球を投げる、いいピッチャーだと思います」
先頭で打席に立った初回は一ゴロに倒れたが、すぐに修正。三回、4球目の変化球を鮮やかに左前へとはじき返した。すぐさま盗塁を試みると、タイミングはセーフだったが、仁志のファウルで仕切り直しに。その後、4度目のけん制球で刺されたものの、マウンド上で雄叫びを上げた右腕の表情が、いかに「いやらしい」選手だったかを物語っていた。
「(打ったのは)手元で曲がる、何でしょうか。独特の球で、本当に素晴らしかったです」
練習では、先発・上原とキャッチボール。「やっぱりボールの回転がすごい。あれで強く投げられたら、いいボールがきますよ」。さらに、解説で訪れたメッツ・松井稼とも再会した。「以前から親交があって、食事にも行ったことがあるんです」。赤星が使用するバットを手に持ち、軽く素振りをした松井稼から「これ、良いよ。がんばれよ」とエールをもらった。あちこちに転がる刺激を、力に代えていた。
秋季キャンプから、タイミングの取り方を修正するために一本足気味に、右足を上げる新打法に改造している。その最中に、世界の大投手に刻んだ自信。さらに七回には、左腕のレッドマンからも左前打を放ち、この日2安打。タテじまを世界にアピールした。
「だいぶタイミングが良くなってきました。思った通りの感じになりそうですけど、もう1本打てればね。でも、打てて良かったです」
体で得た収穫は必ず来季へとつながる。残り7試合、充実の旅は始まったばかりだ。
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米大リーグ選抜と全日本が対戦する「イオンオールスターシリーズ2004 日米野球」が5日、東京ドームで開幕し、大リーグ選抜が7―2で先勝した。
2点を追う大リーグ選抜は六回に上原(巨人)をとらえ、4番オルティス(レッドソックス)の右前打で同点とし、ウェルズ(ブルージェイズ)の犠飛で勝ち越し。七回にも5安打を集めて4点を追加した。現役最多、通算328勝の先発クレメンス(アストロズ)は五回途中2失点だった。
全日本は五回に2点を先制したが、投手陣が踏ん張りきれなかった。
第2戦は6日に東京ドームで行われる。
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「日米野球・第1戦」どこまでも本気だった。五回、制球が乱れ始めたクレメンスのもとへ、ボウチー監督が歩み寄った。「どうする?」。そう聞かれると、すかさず「五回は投げ切りたい」と答えた。先発投手の意地。そして12年ぶりの日本のファンへ精いっぱいのサービスだった。
だが五回一死満塁から、仁志の打球が二塁・ジャイルズの失策を誘い、狙ったはずの併殺プランが崩れてしまった。「ここで切り抜けるはずだったけど、うまくいかなくて…」。結局小笠原にも四球を与え交代。92年来日時は12回を無失点。来日17イニング目で初めて許した得点となったが、日本のファンは総立ちで剛腕の奮闘に拍手を送った。
この日は午前中から東京・北区の西ヶ原小学校を訪問。和室でお茶が振る舞われた。慣れない正座に悪戦苦闘しながらも「(好物の)スターバックスよりもおいしかったよ」と笑顔を振りまいた。その後にはベーカー駐米大使主催の歓迎レセプションにも参加するなど多忙を極めた。
登板前にこれだけのスケジュールをこなしただけに、投球に影響がなかったとは言い切れない。それでも「ぼくの役割は野球以外にもあると承知してやってきたんだから」と言い訳はしなかった。
引退をほのめかしているロケットの次戦は10日の第5戦の大阪ドーム。“最後”のマウンドはこの日以上の投球を見せるはずだ。
「日米野球・第1戦」この夜、一番の大歓声が温かく迎えてくれた。「ピッチャー大塚、サンディエゴ・パドレス」―。5点リードの九回裏、場内アナウンスがMLBの5番手投手を紹介した時だった。
「久しぶりの日本のマウンドだったので、声援が気持ちよかったです」。メジャー移籍1年目から73試合に登板、34ホールドでリーグのホールド王にも輝いた。堂々の日本凱旋マウンドとなった。
先頭の古田を打席に迎えて一礼した。今季、球界再編騒動の中で、自身の古巣である近鉄バファローズ消滅阻止に奔走していた選手会長の活躍は、米国にいながらもネット情報で知っていた。合併阻止はかなわなかったが、古田への感謝の気持ちの表れでもあった。
古田を左飛、赤星を二ゴロ、最後は代打の福浦を空振り三振。きっちり3人で仕事を終えた。「少し緊張していましたから」。最後にようやく飛び出したお得意の「よっしゃあー!!」のパフォーマンスはやや控えめだった。「今日は楽しく投げることができました」。夢をかなえて凱旋した大塚の表情は晴れ晴れとしていた。
9回裏、クローザーで登場、打者3人をぴしゃりと抑えた大塚 |
スタンドに詰め掛けたファン、そして日本球界に向けた「ヨッシャー!!」の雄たけびだった。9回2死、福浦(ロッテ)を空振り三振に仕留めると、控えめながらも十八番の決まり文句。
「久しぶりのマウンドだったので、言うタイミングが分からなくなっちゃったんです。それで、ちょっと戸惑って」
中日からメジャーに移籍して1年。大塚は満面の笑みで、凱旋(がいせん)登板の喜びを語った。9回のマウンドに向かうときは、東京ドームが大歓声で揺れた。最初の打者は古田(ヤクルト)。自然にお互い、会釈をしていた。
「(労組選手会長の)古田さんは、僕がプレーしていた近鉄を残してくれようと頑張ってくれた。その意味を込めて」
大塚は万感の思いを込めて古田に感謝を示した。だが、勝負は別。古田との真っ向勝負は、0−1から左翼フェンスぎりぎりの大飛球に。「日本より少し重い大リーグ公式球だから、助かった。ヒヤリとした」
続く赤星(阪神)は二ゴロ、そして福浦を三振。今季73試合に登板し、リーグトップの34ホールドを挙げた疲れも見せず、日本の打者をなで切った。
近鉄、中日に在籍した日本より、何よりも成長したのは、世界トップクラスの選手が集まるメジャーリーグで1シーズンを投げ抜いたこと。2段モーションを指摘され、食事に悩み…。数々のハードルを越えて、ここまでやってきた。全日本の一員として出場した98年は「メジャーの選手たちは、日本の選手より早くグラウンドに来て練習している」と感動。それからというもの、夢にまで見た「日米野球でメジャーの一員として投げる」を、ついに実現させた。
(鈴木遍理)
3回表無死一塁、打者ヤングのとき一走ジャイルズ(右)が盗塁タッチアウト、左は井端=東京ドームで(梅津忠之撮影) |
中日・井端が魅せた。「イオン オールスターシリーズ2004 日米野球」は5日、東京ドームで開幕し、井端弘和内野手(29)が5回、内野安打で出塁、すかさず、盗塁を決め、先発クレメンス降板のきっかけをつくった。パドレスの大塚晶則投手(32)は大リーグ選抜が5点をリードした9回に凱旋(がいせん)登板し、三者凡退に抑え、1年間のメジャー生活で大きく成長した姿を披露。渡米中にかつて在籍した近鉄球団が消滅し、悲しみもにじんだ帰国。それでも最後は「ヨッシャー!!」を東京ドームにこだまさせた。
◇ドラゴンズ野球魅せた!
1点への欲望が、執念が、クレメンスの無失点記録を止めた。竜のチームリーダー、井端だ。「(クレメンスが)1点も取られていないと知っていたので、1点ぐらい取りたいと思っていた」。この思いが、体を突き動かす。5回1死、全力疾走の内野安打で出塁すると、続く阿部の2球目にすかさず盗塁。これが効いた。
マウンド上の大ベテランは動揺したのか、阿部、赤星と連続で四球を与え、2番・仁志の三ゴロで、井端が先制のホームインをした直後に降板。通算3試合、17イニング目で、ついに日本選抜がクレメンスから1点を奪ってKO、井端がその名を日米野球史に刻んだ。
初めての日米野球。クレメンスとの対戦は、それこそ“未知との遭遇”。「威圧感というか、マウンドからすごく近く感じるんですよ。たぶん50%の力だと思うけど、シュート回転とか、ボールがすごい。日本では体験したことがない。150キロだったら、お手上げでしょうねえ」。野球少年のように目を輝かせた。
セ・リーグ優勝チームからは、ただ一人の出場。意地やプライドを捨てるはずがない。必死に走って出塁し、次の塁をうかがう姿勢は、今年のドラゴンズ野球の象徴。1年間の戦いが、その体にしっかりとたたき込まれていた証しだ。「クレメンスから点を取れてよかった。これからも、楽しみたい」。04年を締めくくる今大会。井端はドラの代表として来季につながる何かを見つけて、チームに持ち帰るはずだ。
(関陽一郎)
前日 前日(ダルビーと一場&イーグルス情報&ノリとクソ井口とクソダイエー ほか) |
同日 同日(遂に開幕!日米野球:上原×ロケット!&磯部選手イーグルスへ!ヽ(゚▽゚*)ノ&一場獲りに西武参戦!ヽ(゚▽゚*)ノ&ドラフト情報 ほか) |
翌日 翌日(西武身売り!?&イーグルス&ドラフト情報 ほか) ・ |