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Tokyo, 2005.9.28
text by Yoshiyuki Suzuki

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ナンバーガール解散後、現在はブラッドサースティ・ブッチャーズに加入して活躍中の田渕ひさ子さんが結成した自らのバンド=トドルが05年にデビュー・アルバム『I dedicate D chord』をリリースした時のインタビューです。彼女たちのライヴを見たことがある人は、独特のフワフワした掛け合いMCを知っているかと思いますが、是非あれを思い浮かべながら読んでみてください。

「なんか、漠然と曲を作るということがなかなかできないんです。メンバーが決まってて、その人その人を思い浮かべながら、ああこんな曲、って出来てくる場合が多い。だから、いつか何かのために、みたいな、そういうふうには作れないですね」

記念すべきデビュー・アルバムが完成して、ついに世に出たわけですが、反響とかはいかがですか?

田渕:周りの人とかだったら、出る前に渡してるし。(一般の人の反応は)見るすべがあんまりないかも、私は。

小林:私はネットで発売日近辺にはチェックをしました。おおむねいい感じです。面白いのも幾つかあった(笑)。

どんなものが?

小林:“轟音アイドル・ソング”とか?

田渕:ああ、そうそう。

(笑)お店にポップってあるじゃないですか。僕が買った時に書いてあったのは、ノリ的に「ひさ子ちゃん可愛い! 可愛いひさ子ちゃん全開!」みたいな感じだったですよ。やっぱりこう「愛らしい」というのをとっかかりに持ってくる人も多いと思うんですけど。そういうのは心外だったりします?

田渕:いや、言うても、もう30歳ですからね(笑)。それインタビューでも何回か言われたんですよ。「ホントは女の子らしい人だったんですね」じゃないけど、なんかそういうことを。まあ、あんまりピンとは来ないですね。そんな男らしくしてきたわけでもないし(笑)。

(笑)。

田渕:喜んでいいのか何なのか。まあ、恥ずかしい(笑)。

小林:いいじゃない、言われとけば(笑)。かっわいい☆

田渕:やっだぁ☆

☆☆☆。さて、このアルバムの収録曲は全部、ナンバーガールが終わってから後に書かれたものなんですか?

田渕:そうですね。そんな用意周到に作りためてはなかったです。

これ以前に、自分のバンドを結成して、自分で曲を作って自分で唄うという野望はありました?

田渕:ないない。ナンバーガールの前にやってた女の子バンドで、2曲ぐらい作った覚えはありますけど、でもそれは「ちょっといい思い出」という感じで(笑)。そんなちゃんと曲を作ったこととかはないです。全然ない。

自分自身の表現と意識して曲を書いたのは、本当に今回が初めてなんですね。

田渕:そう。なんか、漠然と曲を作るということがなかなかできないんです。メンバーが決まってて、その人その人を思い浮かべながら、ああこんな曲、って出来てくる場合がトドルでは多い。江崎君のベースとあいこんのギター、秀樹君のドラムをなんとなく頭で想像しながら作るみたいな感じで。だから、なかなかこう「いつか何かのために」みたいな、そういうふうには作れないですね。

なるほど。ナンバーガール時代に「これは自分の曲よ」って、ごそごそ書き貯めるとかいうことはなかったと。

田渕:それはない、全然ないです(笑)。

では、それを今回やってみようと思ったのは?

田渕:思いたったっていうか、うん……ナンバーガールが解散して「何しようかなあ」みたいな感じで。その後ブッチャーズには入るんですけど。ギタリストとしてギター弾いて、っていうのとは別に、自分のバンドを始めようって思ったんですよね。

そこで、曲もちゃんと作らねばっていう感じで書いていって。

田渕:そうですね。まず誰を誘おうかって考えて。で、曲をなんとなく作り出したみたいな。

曲はギターで作ると思うんですが、リフから出来るとか、最初に歌メロを思いつくとか、アレンジから浮かんじゃうとか、いろんなパターンがあると思うんですけど、どんな感じでしょう?

田渕:何個かパターンはあると思うんですけど……鼻歌みたいのからなんとなく出来るとか、バンド・アレンジから出来るとか。ドラムがこういうリズムで、ベースがこういう感じで、ギターがこういうふうに絡んで、っていうような曲を作りたいなぁとか。

それは、バンドでスタジオに入る前に、1人でいる時から?

田渕:そうそうそう。

じゃあ、後で会った時に「こういう感じなんだけど」って説明するんですね。

田渕:頭の中で、例えばAメロだけとか、サビだけ、前奏だけ出来たら、それをバンドで合わせながら「ギターはこんな感じだけど」って。で、「ドラムはこんなのがいい」とか大まかなことを言って、やってみてもらって。それから「ああ、いい感じだなぁ」と思ったら、ぽぽぽんって1曲ふくらんで出来る、みたいな。

そこからはバンド全員の力で。

田渕:うん、「アレンジは、ここまで考えてあるけど、終わり方は考えてない」とか言うと、誰かが考えてくれたり。そういう感じです。

なるほど。では、歌詞はどれくらいの段階で書くのですか?

田渕:歌詞は、だいたいライヴ前に曲を作って、「今度のライヴではこの曲やろうか」って話になったら、それまでに書くみたいな感じで(笑)。

じゃあ、曲が先に出来ていて。

田渕:サビだけメロディがあるとかいうこともあるんですけど、だいたいライヴ前の最終練習までに、なんとなく作ってくるっていう感じですね。

曲を書いてる時から、この歌はこんなイメージだからって言葉が浮かんでたりっていうことはないんですか?

田渕:メロディ考える時に、なんかこう……ハマる言葉が浮かんでたら、あるかもしれません。タンタンタン!だったら「とんがった〜」じゃないけど、なんかそういう感じで(笑)。意味的にというよりは、耳触りとでもいうか、言葉の音的にこのメロディにのるみたいのがなんとなくあったりもするかもしれないです。

でも、響き重視のわりには、読んでみると意外に抽象的にはならずに、きちんと情景描写的な歌詞になってますよね。自分でその情景を見て、それを歌詞に落とし込んだよっていう説明でも通ってしまいそうな詞も多いじゃないですか。

田渕:そういう感じですね。

やっぱり、具体的に見たり体験したりしたことが引っ張り出されてきてるんじゃないでしょうか。

田渕:そうですね。全部そうです。

ちなみに、他のメンバーに歌詞の内容を説明したりとかはしますか?

田渕:あんまりないですね。(歌詞を)知らないんじゃないですか。あいこんはコーラスするから知ってるけど、あとの2人って、知らないと思いますよ(笑)。

意味として捉えてない、発されてる音声としてしか認識していないということですか。

田渕:男の子って、あんまり歌詞の意味とか知りたがらないような印象があるんですけど。「別にどうでもいい」みたいな。

あの2人だけがそうなんじゃないですか?(笑)知りたい人は知りたいでしょう。

田渕:なんか今まで一緒に組んだ男性はみんなそうだった気がする(笑)。

九州男児はそういう傾向が強いのかな(笑)。

田渕:わりとそういう感じじゃない?(笑)。

小林:そうだよね(笑)。

田渕:あ、こういう歌詞だったんだ、ってレコーディングの時に初めてわかるみたいな。その前に「これはどういう歌詞なの?」とか「どういう意味なの?」とか聞かれて、それでドラムの演奏が変わるとか、そいういうことはない(笑)。

小林:ないねぇ(笑)。

田渕:ないね(笑)。

小林:私はでも何回か聞いた事はあるけど。

田渕:呑んだ時とか言ってる、あいこんにだけ。「歌詞はさぁ〜」とか(笑)。

小林:でも全然わかんない(笑)。

田渕:ははは!

小林:なんとなくはわかるんですけど、そんなに具体的に歌詞になってないから、こういうことを唄ってるんだよって聞くと「ええっ!」って(笑)。

どんなことを唄ってるんですか?

小林:それは内緒にしといた方がいいんじゃ。

具体的な内容にまでは踏み込まなくてもいいですよ(笑)。

田渕:"Mur Mur"とかは……言ってしまうと、いろんなバンド、福岡では見れないようなバンドが、東京に来て見れたりするじゃないですか。それで、「俺のテーマソング」みたいな感じだった曲とかがあっても、それをやってる本人に会って話しちゃったら、「なんかイメージが違う」みたいな感じで(笑)。「ああ、俺のテーマソング、今まで間違ってたかも〜」「あれ〜おかしいな」「せっかく好きな歌だったのに」って、しょんぼりしちゃうみたいな(笑)。

それは、切ない歌詞ですね。

田渕:そうなんですよ。

それで「なくした歌たちにさようなら」なんだ。

田渕:そのまんまでしょ。本人に会って「こんなイヤなやつだったなんて」とか、そういうことではないんですけどね。まあ「その人がどういう気持ちでその歌を唄ってるか」っていうことは知らなくてもいい、っていう歌詞です。もう、自分の歌として受け取ったところでいいんじゃないかと。

ただ、切ないだけじゃなくて最後には「また出会うメロディとともに」って、ポジティヴな感じですよね。

田渕:そうですね。またいい歌に出会えるだろう。ちゅーか、もう自分で作れよう、って感じ(笑)。

小林:(笑)。

田渕:せっかく好きだった歌がなんかこうイヤな思い出の曲になっちゃったとか、そういう悲しい歌なんですね(笑)。

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