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えー、次、いきますね。音楽的な変化、豊富なキャリア、いっしょにプレイする相手などが変わっても、それでもあなた方が音楽を鳴らす時に根本的な部分で燃え上がっているエネルギーの種類は、砂漠でパーティしていた頃から変わっていないと思いますか? Josh:ああ、根本的に同じアイディアのベスト・バージョンの状態だと思う。俺達自身よりも、音楽的アイディアの方がデカいんだ。そのアイディアを、一番いい方法で表現したくてやってるんだからね。 Nick:このバンドなら、普段ちょっと躊躇してしまうようなアイディアでも恐れずに試すことが出来るんだ。それだけリアルだから。親友にも打ち明けられないことを、オープンに話せてしまう雰囲気がある。だから俺にとってもベストだよ。俺もジョシュもセッションをやったり、マークはソロで活躍したりしてて、それぞれに他の活動があるだけに、このバンドのよさが余計に分かるって感じなんだ。サイド・プロジェクトでも年に1回ぐらいショウをやるけど、その時に「ああ、やっぱり……うちの奥さんの方がいいや」っていうような感じかな。 Josh:愛人がいるようなもんだな。 Nick:悪いと思いながら不倫に走って、その度に「本当に愛してるのは妻なんだ。家に帰らなくちゃ」って思っちゃうような。 Josh:妻も愛人もいるけど、愛人とファックした後は、妻とのファックにはかなわないって改めて感じる、というような関係。 Nick:結局、自分の奥さんとヤルのが一番(笑)! Josh:そんな感じで、一緒に成長できるのがいいんだよね。サイドでやることによって一つ賢くなって。成功も失敗も経験すれば、失敗を生かしてより高度な成功を得られるだろうし。リスクを負ってみようって気にもなれるし。 Nick:クイーンズは実験的なこと、思いも寄らなかった方法を試してみるのに最適なんだ。どんなことにもオープンで、何でもトライしてみるバンドだね。 Josh:それは嘘だろ。 (笑)。 Nick:たとえ最初は不自然に思えてもね。週末だけ女装に挑戦してたけど、それが今じゃ毎日さ。なにっ!……ごめん、今、頭の中にあったことを口に出して言っちゃった。 Josh:信じねえぞ。 Nick:自白剤飲まされちゃってさ! なにっ! Josh:それでも信じねえ。 …………えー、日本では、どうしてもあなた方やフー・マンチュー、ネビュラなどについて紹介する時に「ストーナー・ロック」という形容句が使われてしまうんですが―― Josh:そのオリジナル・シーンのバンド、ほとんどが否認してるよ。俺達の哲学はこうだ。シーンに入ったと思った時には遅すぎる。シーンは自分で作ってブチ壊すものだ。シーンの創造と破壊が俺達の仕事だと思ってるよ。 Nick:一番の目標は、どのシーンにも属さずに自分達だけのバンドでいることだと思うどね。イギー・ポップみたいにさ。彼は例えばガービッジや俺達と一緒にフェスティバルに出たって違和感が無い。彼は彼以外の何者でもなくて、誰もイギー・ポップにはなれない。パンクでもロックでもニューウェイヴでもなく、そのすべてでもあるイギーはすごいね。 Josh:さっき言ったようなストーナー・ロックのバンドの音は聴いてると思うけど、俺達の音に似てると思う? いや、違うと思います。 Josh:うん。だから、俺達のサウンドを紹介するのにそういうバンドの名前を出されると、いつも……まぁ、勝手にしてくれよ、って思うんだ。別にそれによってどうこう、俺達が影響を受けることもないし。俺達は自分達がプレイしたい音楽をプレイしたいようにやってるだけで、何と呼ばれようが変わらないよ。 Nick:カイアスとフー・マンチュー、その他何だっけ、一緒にされてるのを聞いて思うのは、カイアスをやってた当時はそんな呼び方はなかったなぁ、ってことなんだけど。 Josh:俺は会議に出たことあるよ。まさに「ストーナー・ロック」っていう言葉を決めようとしてた会議にね。 Nick:えっ。それで否決されたんだろう? Josh:いや。ロードランナー・レコーズっていう、俺の嫌いなレーベルの会議だったんだけど(笑)、意見を訊かれたんだ。今度リリースされるコンピレーションのタイトル、『Music For Stoners, Stoner Rock』っていうんだけど、どう?ってね。俺ははっきり「そんなのクソだ」って言ってやったよ。つまり俺はその言い方が作られたものであるってことを直接知ってる。だから受け入れてこなかった。どうでもいいけどね。まぁ、文字通り会議で決まった、マーケティング戦略に過ぎないんだよ。 では、自分達の表現の核にアルコールやドラッグは実は関係ない、と思ってたりします? Nick:でも俺達はイエスともノーとも言ってないぜ。「ドラッグやるな」と言ってる潔癖なバンドでもないけど、特に勧めてもいない。 Josh:マリファナ推進フェスティバルとかで演奏したりしないし。 Nick:うん。リスナーにどうしろこうしろというメッセージは込めてない。単に自分達のやりたいようにやってるだけでね。 あの「ニコチン、ヴァリウム、ヴァイコディン、マリワナ、エクスタシー、アルコホール、コカイン」と連呼する歌は、冗談みたいなものにも思えます。 Nick:そう、単なるショッピング・リストだよ。 Josh:あれも俺達のいつもの煽り癖の一環でね。あの歌詞は、ストーナー・ロックっていうタームそのものを皮肉ったものなんだ。「俺達がストーナー・ロックだって? それじゃ見せてやろうじゃないか、そのストーナー・ロックとやらを! ニコチン、ヴァリウム、ヴァイコディン……」っと(笑)。それと、他人を不快にする言葉で、罵り言葉以外にどんなのがあるかというと、会話の中で脈略無く「コカイン!」って叫ぶ のが効果的なんだよね(笑)。誰でもギョッとするだろう。それと似てるかな。さらに言えば、stonedというのはダウナー系のドラッグがキマった状態のことだけど、逆にアッパー系のドラッグの名前を叫んでるってところもミソなんだ(笑)。人が乗ってきやすい挑発をあえてするのが好きなんだよ。 Nick:でも、よく聴くと「コカイン!」と叫ぶ所、そのすぐ後で「NO!」とも言ってるんだよね。まあ、だから反対してるとかそういうことじゃないけど。 Josh:この曲、アメリカのラジオでは放送禁止だけど、笑っちゃうのは、警察による麻薬と飲酒の害を子供に教えるキャンペーン広告に使われたんだよね。 Nick:そうそう、飲酒運転とかの。 Josh:当局が曲の使用許可を取りにきた時、イエスって即答したよ。 Nick:当然だね。 Josh:そんなアイロニーが生まれると、こっちの作戦は大成功だった、と思えるんだ。「警察のおかげです、ありがとう」って言いたいね。 Nick:あのテープ、ウェブにのっける許可は下りないかなぁ。最後に「なんという皮肉」とか書いて公開したいじゃん(笑)。 (笑)じゃあ、時間がないので最後の質問です。最新作を1曲目から巻き戻すと“リアル・ソング・フォー・ザ・デフ”という曲が隠しトラックとして入っていますよね。 Nick:日本盤はそうなってる? Josh:ああ、なってないのはヨーロッパだけだって。 これは誰のアイディアだったんですか? Nick:自分達のアイディアだけど、ヨーロッパ盤で試したら入ってなかったんで、すごくムカついたんだよね。最高のアイディアじゃん。あの曲はアルバムの他の部分とうまく繋がらなくて、隠しトラックとしてなら合うと思ったんだ。1曲目の“〜Millionare”がカウンターの2:20頃から始まるのを見つけた人じゃないと分からないよね。トラック1なのにその前がある!なんて。 Josh:俺達の音楽にはいくつものレベルがあって、一番上の表層の部分だけを楽しんでもらっても構わないけど、もっとディープなところでも楽しめるはずだよ。何度も聴くうちに新しい発見があると思う。50回目に「ん? カウンターがヘンだぞ」って気づいたり。そういうトリックとか罠とかおまけとかがあった方が、長く楽しめるアルバムになると思うしね。 Nick:パーフェクト・サークルのこないだのアルバム、たしか日本盤だったと思うけど、42曲目とかに入ってる曲があるんだよね。実際は12曲目なのに、表示では42まで行ってる、っていう。そこまでは空白が入ってて、放っておくと静寂が何分も続いた後、いきなり曲が始まる。そういうのってちょっとクールだよね。聴きながら寝たりしたら、突然起こされたり。 Josh:俺達はそういう迷惑行為を常に開発してるってわけ。次はどうやって人々を混乱させてやろうか、ってね。
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