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Tokyo, 2003.1
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Stanley George Bodman
translation by Ikuko Ono

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アメリカ西海岸でもメキシコ国境に近いパーム・スプリングという、周囲が砂漠だらけの町で誕生したバンド=カイアス。その圧倒的にヘヴィなサウンドをいつしか人はストーナー・ロックと呼ぶようになった。カイアスの中心メンバーであったジョシュ・オムとニック・オリヴェリは、その呼び名が広まる頃には既にバンドを解散し、様々な音楽活動を通じて自らの音楽を新たなエネルギーを持ったものへと押し進めはじめていたのだが。やがて、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジとして2人は邂逅する。彼らはそこで自由な発想と根っからのヒネクレ者(というか、いたずらっ子?)体質を存分に発揮しながら、多くの仲間から協力を得て、新世紀に鳴り響く最高のロック・ミュージックを作り出してみせた。02年にリリースされた『ソングス・フォー・ザ・デフ』は、フー・ファイターズのデイヴ・グロールがドラマーとして全面的に参加したことで話題を集め、アルバム発売直前にはフジロック・フェスに登場したことでも一気に注目を浴びた。そして明けた03年の正月に単独再来日を果たした時に行なったのが、このインタビューだ。インテリやくざっぷりが大いに発揮された発言を楽しんでほしい。

「俺達は迷惑行為を常に開発してる。次はどうやって人々を混乱させてやろうか、ってね」

フジ・ロックでの演奏もよかったですが、昨夜の単独公演もとてもよかったです。

Josh:こっちもやってて楽しめた。フェスと違って、自分達のペースで出来るからね。フェスではさわりを見せただけで終わってしまう感じなんだ。やっぱり自分達を出し切れた方が嬉しいよ。

そうですよね。さて、今日は、ルーツ的な話から訊いていきたいのですが、あなたが最初に音楽を始めた頃は、地元パームスプリングの町から付近にある砂漠のド真ん中に繰り出して大音量でギターを鳴らしながら楽しくキメていたというエピソードが有名ですよね。

Josh:そう、音楽を楽しめるクラブ自体が存在しない町だったんでね。必然的にそうなったんだよ。自分達で発電機を外に持ち出してプレイするしかなかったんだ。誰もパーティーを企画してくれないなら、自分達で作ってしまえ、ってことだよ。

そこにキッズが続々集まって来たんですね。

Josh:そう。誰もがイベントを待ち望んでたんだ。それだけは世界中、どこでも同じだと思う。何かワクワク出来ることを、みんな欲してるんだよね。

Nick:脱出法だったんだよな。砂漠のど真ん中で同世代の奴らとバンドをやってると、いろんなインスピレーションが沸き上がってきてさ……。

Josh:そのビール、一本もらっていいかい?

Nick:ああ。……つまり、物理的に移動することなく、砂漠の中の小さな町に住んでる俺達の現実から抜け出す方法として、デザート・パーティーは機能してたんだよ。

Josh:特によかったと思うのは、無料だったってことだね。金のためじゃなかったんだ。女の子にモテるとも限らなかったから、それも動機じゃなかった。みんな純粋に音楽のためにやってたんだ。原動力は音楽だけ。俺達がそういうやり方でスタートできて、本当によかったと思ってるよ。今でも同じ気持ちを保っていられてるしね。音楽に対する愛情に基づいてやってる。未だに文無しだから、金のためってことはありえないけどね(笑)。

ちなみに、その当時はどんな音楽を愛好していたのですか? クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの音を聴いていると、ただのブラック・サバス好きメタル・ファンではないだろうという音楽性の豊かさを感じるのですが。ポップなエッセンスもありますよね。

Josh:うん、ダークなパンクとか。

実際、どんなバンドから影響を受けているのでしょう?

Nick:まぁ言ってみれば、チープ・トリック・ミーツ・ブラック・フラッグ、ジョニー・キャッシュ、ウィーン、バットホール・サーファーズ……

Josh:バナナ・スプリッツ、ソーシャル・ディストーション、GBH……。昔から、自分が好きで聴いてたパンクにはフックがあると自分では思ってたんだよね。でも、カイアスの頃はキャッチーなフックが見えてきたら意図的にぼかしてた。自己検閲してたんだ。当時は若くてふてくされてたから、巧くなるのを避けてて(笑)。今の俺達はそんな心境にはなくて、逆に自分達を検閲しないようにしてるよ。感じた通りにプレ イするようにしてる。いいフックが出来たならわざとはずすようなことはしない。前は「これサビらしいサビになっちまったから崩そうぜ」って言ってたのが、今では「いいサビが出来たからこのままで行こう」って言ってるんだ。

Nick:このステッカー盗んでいい?

どうぞ。あなた方の表現の端々にはスペイン語が登場しますが、メキシコの文化圏が自分達に重大な影響を及ぼしていると思いますか?

Josh:メキシコ人が多い環境で育ったからね。地理的にもメキシコに近い町なんだ。生活の一部だったんだよ。音楽もメキシコ人達と一緒にプレイしてきたし。

Nick:ティファナまで車で一時間ぐらいの距離でさ。道が空いてて飛ばせればだけど。

Josh:ニックも俺も、母国語はもちろん英語だけどスペイン語もかなり喋るよ。上手くはないけど、国境を越えて酔っぱらって倒れる分には十分なくらいに(笑)。メキシコ文化には親しんで育ったんだ。

それでスペイン語バージョンがあったりするんですね。

Josh:うん。それに、俺達には周囲を混乱させて楽しむクセがあってさ。後で「なんであんなことをしたんだ?」って訊かれるようなことをするのが好きなんだよ。だったらまず慣れ親しんだスペイン語で煙に巻くのが筋だろうと(笑)。

(笑)では、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジを、メンバーが出入り自由な形態のバンドにしようと決めた理由は何ですか? そうしたことで得たメリットとデメリットは?

Josh:間違いなく意図的に取った形態だよ。いろんなミュージシャンのやり方を経験できるし、相互作用で学ぶこともあるし。ミュージシャンとして常に成長していかなければならないと思ってる。おかげでスランプに陥ることもなくやってこれてるんだ。

Nick:自分達と本当に相性がいいのはどんなミュージシャンなのかを見極めたい気持ちもあった。それで広くアイディアを募集したんだよ。時間をかけたかった。「よし、キミを採用しよう!」って結論を急がない方がいいと思ったんだ。いろんな人とジャムってるうちに、違った曲を書くインスピレーションが受けられるしね。そうすればどのアルバムも同じサウンドになるということもない。アルバムごとに違ったサウンドを作ることができたのは、メンバー不定のやり方をしてるからだろうね。

Josh:例えば“Hanging Tree”のような曲はとても奇妙な拍子が聴けると思うんだけど、それはアラン・ヨハネス(Alain Johannes:かつては初期レッド・ホット・チリ・ペッパーズとも関連があるホワット・イズ・ディス、その後はイレヴンとして活動)の貢献だよ。俺自身、4分の5拍子で書かないとは限らないけど、あの曲がなければ俺達がそういう拍子で演奏するのはもっとずっと先になってたかも知れない。バンドのレベルアップを早めてくれた感じなんだ。俺達は全部自分達で曲を書く必要はない。レコード制作中によく言ってるのは、「エゴと感情は出すな」ってことなんだ。フフフ。例えば、ある曲を5つの違ったテンポでやってみてもうまくいかなかったとして、「えーっ、どうして……」なんて文句を言う者はいない。「今日の所はうまくいかなかったな。OK、次へ行こう」っていう感じなんだ。だから自由でいられる。俺達は音楽に忠誠を誓ってるんだ。個人にではなくてね。友達に対しては忠実だよ。でも、友人に忠実であることと、音楽に忠誠を持つことは違うからね。それをミックスさせることはない。そして、今やっと全部しっくりくるようなバンドになったところだよ。俺達は今、バンドになったと感じてるんだ。マーク(ラネガン)とトロイ(ヴァン・リューベン)とジョーイ(カスティロ)とでね。みんなと一緒だとギャングの一味になったような気がするんだよ。それぞれ全然違うキャラなのにさ。服装の違いがよく表してるよ。トロイはスーツ着てコロンがぷんぷんしてる洗練されたイメージで、スクラッチは――マークのことを俺達はスクラッチって呼んでるんだけど――あいつは豪快なヘヴィースモーカーだ。いつも「何だ、文句あるか!?」って感じでね。キャラクターが違いすぎてて面白いよ。

(笑)それで現場が混乱したりはしないんでしょうか?

Josh:同じやつが二人いても仕方ないしさ。

Nick:ああ、個性的な人間を求めてたんだよ。バンドを特別なものにしてくれるような。セカンド・ギタリストに、言われた通り弾くだけのやつを雇う、とかそういう考えじゃなかったからね。

Josh:「言われたとおりにしろ」なんてね。

Nick:言われたとおりに弾ける神のような技術を持ったやつよりも、自分のスタイルを持ったやつを探してたんだ。例えばドラムには、デイヴ(グロール)が作った基礎を元に、デイヴとは違う叩き方ができるドラマーがよかったんだよね。デイヴそっくりに叩けるドラマーは必要なかったんだ。自分の色を付け加えられるやつじゃなければね。自分のやり方ができるミュージシャンと一緒に仕事がしたかったんだよ。

Josh:ジョーイとトロイに決まるまでは正直言って大変だったよ。俺達はすごいミュージシャンとプレイしてきたけど、それぞれにみんな自分のことで忙しい人達だから……。

Nick:その人達がなかなかレベルの高いことをやってくれたからね。その代わりを探すとなると、他の人のパートを自分なりに演奏できる人というのを捜さなければならなくて。まずレコード通りに演奏できて、その上で自分のスタイルを持っている、というミュージシャンを捜すのは簡単なことじゃないんだ。

Josh:長年やってきて学んだのは、ジャムれるっていうのはその場で演奏できればいいってことじゃなくて、しっかり身に付けた上で解体できる、そして付け加えることができる、ってことなんだ。

Nick:メンバー全員が納得できる形でね。

Josh:これにはスキルが必要で、時には控えることもできるやつでないと務まらない。なかなか難しいことなんだ。やり過ぎてしまうやつは、大抵、緊張してるからなんだよね。「見て見て、約束した通りだろ? 上手いだろ?」っていうような演奏になってしまう。そういうのは聴いてる方が恥ずかしくて、すぐさま却下だね。だから、本当に苦労したよ。最近になって、やっとまともに演奏できるようになったところまできた、っていうのが現状なんだ。なんとかね。

Nick:少しはね。

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