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ナイン・インチ・ネイルズ脱退後、自らのバンドであるモッドウィールムードや、ソロ・プロジェクトのブラインドオールドフリークなどでアクティヴな音楽活動を展開しているアレッサンドロ・コルティーニにインタビューしました。作品についてだけでなく、バンド運営に関する考え方から、NINを辞める決意をするに至った心の動きまで、たくさんのことを語ってくれています。初のアルバム作品『Pearls to Pigs』も公式サイトやiTunes Music Storeで発売されていますので、ぜひ聴いてみてください。そして、応援よろしくお願いします。 「ピーター・マーフィーが、『君が自分自身の音楽をやっていこうとしているのは正しい選択だと思う』って言ってくれたんだ。『モッドウィールムードの大ファンだから』ともね。本当に嬉しかったな」 お久しぶりです。今日は忙しいところインタビューに時間をとってくれてどうもありがとう。西海岸ツアーが一段落しましたが、とりあえずの感想を聞かせてください。 Alessandro:6公演しかやってないからツアーって呼べるほどのものじゃないんだけど、すごく楽しかった。まずは、お客さんが来てくれたことにすごく驚いたよ(笑)。僕らの音楽に興味を持ってくれる人達がいるのかどうかすら、わからない状況でやったからさ。 リハーサル時に「自分はギターを弾きたいから、ベーシストを探している」と発言してましたけど、最新ツアーにおけるチャレンジとか、これまでのところ達成できたのはどんなことですか? Alessandro:今回初めて、トリオでフルセットをプレイするショウがやれたんだ。それで、以前まではコンピューターやシンセサイザーで出していた音を、かなり生楽器でプレイすることができた。当然、ただプレイボタンを押してテープを再生するのよりも面白くて、エキサイティングなショウがやれたよ。実際、モッドウィールムードは少なくとも4人でライヴをやるのが理想形なんだよね。ベースもそうだし、キーボードやギターも含めて、僕が以前NINでやっていたようなことをやれる人間が必要なんだ。ただ、それができる人を探す時間と機会がまだとれなくてさ。だから“If I Was You”とか、明らかに3人以上のプレイヤーが必要な曲は、ライヴから外すしかなかった。それでも今のところは、トリオで上手くいってると思うよ。見に来てくれた人達に感想を聞いても、テープなしで音はちゃんと埋まってたって言ってもらえたしね。ペレは放っておくとエフェクトをどんどん加えちゃうから時々とめなきゃいけないぐらいで。僕も同じようにベースにエフェクトをかけるようにしてて、そのエフェクトをベースとは別のアンプで出したりっていう工夫をしていたんだ。そういうことをやるのは楽しかったよ。コンピューターじゃなくて、僕達が実際にプレイしているから、曲の長さも好きなように変えられたし、繰り返し演奏したりすることもできたしね。 以前のライヴよりロック・バンドらしさを強調しようという意識はありますか? Alessandro:うん。もちろん、今でもコンピューターは大好きだよ。でも、NINで3年間やって学んだのは、コンピューターはダウンしちゃうことがあるから、ケアをするスタッフが必要だってこと。コンピューターに任せる部分が多ければ多いほど、ダウンした時に失うものが大きくなる。NINの時はダウンしちゃっても技術担当者がちゃんといたけど、僕達みたいにクラブでやってる時それが起こったらってことを考えると……誰かがビールをこぼしちゃったりとか、普通に起こりうることだからね。今でもコンピューターを使う曲をやってるけど、あくまで楽器のひとつとして使ってる。こういう形なら、コンピューターが死んでも全部が駄目になるんじゃなくて、その曲だけ飛ばしてプレイを続けることができるからね。そういう理由もあって、今はコンピューターにあまりり頼りすぎないようにしてるんだ。 なるほど。今回のツアーでドラムをサポートしているジェスパーについて紹介してください。 Alessandro:ジェスパーとはMI(ミュージシャンズ・インスティテュート)で知り会ったんだ。彼は、僕とペレが卒業するのと同時に入学したんだけど、ずっと連絡は取り合っていてね。初めて一緒にプレイしたのは2004年で、僕と彼と、ライフハウスのベーシストのブライス・ソダーバーグ−−彼はモッドウィールムードの曲でもベースをプレイしてくれてるんだけど、その3人でバンドを始めたんだよ。僕がギターを弾いて歌って、ジェスパーがドラム、ブライスがベースでね。僕がNINに加入する数ヵ月前のことで、プレイしたのは結局それが最後だったんだ。それで、僕達が今回ドラマーを加えることにした時、ちょうどジェスパーがこの街にいることを思い出してね。ジェスパーは以前からモッドウィールムードの音楽に興味を持ってくれてたし、すごく気に入ってくれてもいたからさ。僕の方も長いつきあいで彼の人柄が好きだったし、素晴らしいドラマーなのも知ってたから、彼こそパーフェクトだと思ったんだ。結果とてもうまくいってるよ。彼も楽しんでプレイしてくれてるし、何か新しいことをやろうって話になっても積極的だしね。すごくつき合いやすいんだ。 さて、『Pearls to Pigs』EP3部作をまとめたアルバムが作られましたね。実体版は、CDとアナログともに500枚ずつの限定盤みたいですが、売れ行きも好調な様子がうかがえます。この先「通常盤」が改めて追加発売されたりはしないのでしょうか? Alessandro:ゆくゆくはしたいと思ってるけど、アナログに関しては限定っていうところが気に入ってるから、これで終了。ヴァイナルは完成させるのにかなり手間をかけたんだ。カバー上のタイトルが浮き彫り加工になってるから、コストも結構かかったしね。2枚組だし、ペレと僕のサイン入りで、番号も手書きでつけたんだよ。ダウンロード・カードもついてるから、デジタル・ヴァージョンもダウンロードできる。こういうことをやりたかったのは、お金をかけたことが見えやすいからなんだ。少なくとも僕にとっては、CDに20ドル払うより、このアナログに30ドル出した方が満足できるっていうか。デジタルのデータも手に入るし、これだけの大きさのものを手にすることになるわけで、買った実感が持てると思うんだよね。ただ、作るのにお金も時間もすごくかかるから、この枚数以上はムリだった。僕が自分で組み立てて、1枚1枚サインしなきゃならなかったからさ。でも本当に好調に売れていて、嬉しいよ。一方、CDの方は限定盤としてデモ音源をつけたものを作ったんだ。すでにEPを買ってくれていた人達のためにね。だからこれが完売したら、将来的には『Pearls to Pigs』本編だけのCDを発売することになると思う。 その、21曲ものデモ音源を収録したボーナス・ディスク『Betas』ですが、単なるデモ集ではなく、非常に聴きごたえのある、きちんとしたアルバムになっていて驚きました。当初から、これだけのものを組み立てられる自信があったのでしょうか? Alessandro:そうだね、僕も殆どアルバムとして聴こえるのには驚いたよ。でも、これを作るのはとても簡単だったんだ。僕は日頃から作曲したものを全て保存してあるからね。『Betas』の1曲目は“steering wheel”って曲で、これが“crumble”になったわけだけど、こっちのヴァージョンは、ペレが最初に僕にMP3で送ってくれたもので、それを僕がマスタリングして完成。“Lie 2000”は“Lie”の最初のヴァージョンで、2000年に僕とペレとでレコーディングしたテイクだよ。とにかく、そんなふうに僕はHDに全てを保存していて、そもそもデモだから組み立てるのも簡単だった。今『Pearls to Pigs』をデジタルで購入すると、9ドル99セントで、アルバムと一緒に『Betas』もついてくるから、本編が以前に買ったEPと殆ど同じ内容でも、21曲のデモのために買ってくれると思う。こういうデモのリリースのは、これからもやって行きたいと考えてるよ。僕が直接アクセスできるデジタル・リリースのプラットフォームを見つけ次第ね。『?』とか『Enemies & Immigrants』とか、昔のEPのデモも出して行きたいんだ。
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