Easy Blog







← Prev | 1 | 2 | 3 | 4 | Next →

なるほど。『BALL-HOG OR TUGBOAT?』には、あなたが切り開いたアメリカン・オルタナティヴ・ムーヴメントを担った、言うなれば「あなたの子供達」にあたるミュージシャンが数多く参加していました(※J・マスキスの他、クリスト・ノヴォゼリッチ、デイヴ・グロール、エディ・ヴェダー、イヴァン・ダンドゥ、デイヴ・パーナー、フリーなど)。あんな豪華なゲスト陣を参加させたアルバムを作れるのは、あなただけだと思いますが、実際に彼らとやってみてどうでしたか。

Mike:リスペクトは双方向だよ。彼らは確かにあのムーヴメントの中心にいたけど、ほとんどがそんな状況が好きではなかった。オルタナティヴというもの自体を嫌っていた。彼らは子供の頃にオレたちの音楽を聴いて、そういうものを求めて集まってきた。オレはオルタナティヴ・ミュージックなんていう胡散臭いものを作る気はなかったからね。彼らも……業界がやったことを最低だと思ってた。あのアルバムはレーベルを驚かせたよ。でも簡単だったんだ。マネージャーも使わず、自分で直接電話していった。業界に何か新しいものを発明してもらうことを望んでは駄目だと思う。連中にできるのはレコード屋にCDを置くことくらいさ。業界に依存し始めたら問題が起こるのは当然だ。あのアルバムも、オレは完成したテープを届けただけだ。レーベル側は何もやっていない。SST時代とまったく同じやり方だよ。

ところで、レッド・ホット・チリ・ペッパーズが、『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』というアルバムを、あなたに捧げていますよね。

Mike:うん、そうだね。古くからの友達なんだ。彼らの初めてのギグがミニットメンとの対バンだったんだよね。その前にファッション・ショーをやったとかいう話だから、厳密に言えばセカンド・ギグだけど。だから、本当に長い付き合いだね。あのアルバムを見たのはヨーロッパ・ツアー中だった。びっくりしたよ。何と言えばいいんだろう(笑)。でもオレもいろんな偉大な人物に影響されてるからね。ジョン・フォガティー、リチャード・ヘル、さっき挙げたベーシスト達。尊敬する人達は今もたくさんいる。J.マスキスとか。ジョン・コルトレーンはこう言った。「音楽は貯水池みたいなものだ」。オレたちは皆、その巨大な溜池から水を汲んで飲む。あるいはその中へ小便をしてるのかもしれないけど。

(笑)。あなたは、ポルノ・フォー・パイロスに一時的に参加し、その時にペリー・ファレルと仕事した経験から、「リーダー・アルバム」を作ろうという意識を高めることができて、それで先の『Contemplating The Engine Room』を作ることにした、というような発言をしていますが、ペリー・ファレルというクセのある人物といっしょに仕事をした時の感想を教えてください。

Mike:他人のプロジェクトに参加する仕事はあれが初めてで、今回のJ・マスキスで2回目なんだ。実に面白い経験だった。ペリーは楽器をやらないシンガーだから、曲の説明をする場合、コードの説明はしない。曲のストーリーを教えてくれる。それで閃いたんだ。オレも自分のストーリーを語るべきなのかもしれない、ってね。それが『CONTEMPLATING THE ENGINE ROOM』になった。ペリーはそうやって人を鼓舞する。スティーヴン・パーキンズとは、バニヨンという彼のバンドで今でもよく一緒にプレイするんだ。ロサンゼルスには大きなシーンがあってラッキーだと思う。純粋なバンドが多い。嘘っぽいバンドも多いけどね。いろんな機会に恵まれる幸運に感謝してるよ。ポルノ・フォー・パイロスでは仮装する機会も与えられた(笑)。これも周りに不思議がられたな。『なんでコスチュームを着せられて黙ってるんだ?』ってね。いいじゃないか、なあ? マイク・ワットのイメージは凍結されてて、ピックは使わない、コスチュームは着ないことになってるけど、たまにはアッと言わせることをやるのも楽しいもんだ。

オルタナ終焉後、現在のアメリカのロック界は、アイドル・ポップと、スポーツ感覚のラップ・メタルに支配されていますが、最近の若手の中で注目してるようなアーティスト/バンドはいますか?

Mike:それはあるさ。覚えておくといいことを教えてあげよう。農作物をよく実らせたいなら肥やしをたくさん使うことだ。

……肥やし、ですか?

Mike:実りは肥溜めのおかげで育つ、ってことさ。

あ、今は肥溜めの状態だと(笑)。

Mike:同じようなサイクルは何度も何度も巡ってるんだ。これで全てが終わるなんてことは絶対ない。いいバンドだってちゃんと存在してる。メルト・バナナっていう日本のバンドだっていいし。フロリダで一緒にプレイして知ったんだよ。アメリカでも面白い若い奴はいっぱいいて、いいレーベルも生まれてる。パンクロッカーがクリエイティヴになるにはむしろ好ましい状況だと思う。果敢に挑戦してる奴等は確かにいる。オレらの頃のパンクに興味を持つ奴も出てきたしね。MTVを見てたんじゃ分からない部分だよ。業界側は、バンドが自分たちの手でコントロールすることを恐がっている。でも、それをやらなきゃだめなんだ。自分たちで書いた物語、自分たちで描いた絵じゃないとね。で、気に入ってる新しいバンドの名前は……思い出せないのが恥ずかしい……。

あなたの地元のバンドですか?

Mike:いや、あっちこっちだよ。LAにもいるし。名前が出てこない。インタビューでは緊張し過ぎるからな。

(笑)。

Mike:でも信じて欲しい。ちゃんと存在してるから。マイク・ワットに教えられなくても、ライヴへ行く機会があったら行くのが一番だけどね。日本のバンドもね。一緒に演ったばかりのナンバーガールの名前は思い出せる(笑)……自信満々に見えるかも知れないけど、実はインタビューが恐くてね。

そうは見えませんよ。

Mike:長年やってるからね。でも……本当に思い出せなくてもどかしいな。

いやいや、大丈夫ですよ。どうか気にしないでください。

Mike:OK。ドーモ。ああ、レ・ティグラを東京で観たばかりなんだけど、あのバンドはいいね。キャスリーン・ハンナの。彼女は『BALL-HOG OR TUGBOAT?』にも参加してるから新人とは言えないか。

Jとのツアーが終わった後の予定はどうなっていますか?

Mike:Jとはこの後オーストラリアへ行ってからアメリカのツアーがある。夏にはレコーディングして、秋には自分のツアー。ツアーは春と秋にするのがいいね。気候が厳しくないから。うだる暑さもないし雪もないから(笑)。今回のツアーはオレにとって通算42回目なんだ。あと42回はいけるかな(笑)。まだやれることを幸運に思う。できなくなるまでやり続けたい。今年だけで4枚のレコードを作る予定なんだ。ブラック・フラッグのキラと、ベース2人だけのDosっていうユニットを組んでてね。スペイン語で数字の2っていう意味だよ。それでアルバムを3枚出してて、今年は4枚目を作る予定だ。夏に作るソロアルバムは、ベースとオルガンとドラムっていう編成でやるものが1枚と、ギターを入れたパワートリオでやるものが2枚。パワートリオっていうのはアメリカでギターとベースとドラムだけのバンドのことを言うんだ。クリームみたいにね。

なんか、ややこしいですね。夏にマイク・ワット名義で1枚、そして――

Mike:そして冬にもマイク・ワット名義で2枚。それぞれラインナップが違うんだ。fIREHOSEが解散してからはこうやって活動してきたんだ。固定のバンドじゃなくて、いろんなメンツでプロジェクトを組んでやってきた。その中で一番古くからやってるのがDosなんだ。ベース2人だけだから、綺麗な音楽だよ(笑)。ドラムもギターも入ってない。夏にやる、ギターの代わりにオルガンっていうのは初体験だ。成長のためには、常に自分を試す必要があると思うんだ。実験し続けなければね。ソニー・コロンビアから、秋にリリースされると思うよ。

わかりました。では、そのニュー・アルバムの完成と、自分自身のプロジェクトでまた来日してくれることを願っています。

Mike:こういういろんなプロジェクトや曲のアイディアは、死ぬかと思いながら病に伏せてる時に考えついたんだ。だからこそどんどんレコーディングしてしまいたいんだ。その気持ちを、どうか察して欲しい。いつ全てがお終いになるか分からないんだからね……。でも、もちろん日本へはまた来たいと思ってるよ。とてもいい経験だった。そして、とてもいい質問をしてくれてありがとう。アメリカで受けるインタビューよりずっとベターだったよ。

それは……どうも、ありがとうございます!

Mike:ドーモ!。

◎この時の取材について、マイク・ワットが自分自身のHPで書いています! 2月19日付の日記をチェック!

← Prev | 1 | 2 | 3 | 4 | Next →

Special Issue | Interviews | Articles | Disc Reviews
Core BBS | Easy Blog | Links

© 2003 HARDLISTENING. all rights reserved.