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ブラーのようなUKバンドのどういったところに魅力を感じているのでしょう? Aaron:なんだろうな、どう思う、エヴァン? Evan:俺の好きなUKバンドは、いわゆるブリット・ポップじゃないんだ。オアシスは、まあまあいいと思うけどね。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインとかジョイ・ディヴィジョンはすごく好きだよ。ポスト・パンクの風変わりなブリティッシュ・バンドが好きなんだ。アメリカのバンドには絶対に無いようなサウンドのね。パブリック・イメージ・リミテッドとかさ。なぜか理由は分からないけど、俺が好きなのはそういうバンドなんだ。ザ・ダムドもそうだな。ただ、俺にとって本当に最高のブリティッシュ・ミュージックといったらローリング・ストーンズの『メインストリートのならず者』だよ。ストーンズが、いちばん好きなロック・バンドなんだ。 Aaron:だから、オアシスとかブラー以前にまず、ビートルズ、ストーンズ、ピンク・フロイド、ザ・フーなんかの、ブリット・ポップよりずっと昔のバンドだね。 Evan:俺がUKバンドのどこを好きかっていうと、たぶん同じ英語で違う風に話してるっていう以上に、もっと何かミステリアスな感じがするところなんだよね。それは俺がアメリカ人だから、そう感じるんじゃないかと思うんだけど。 Michael:俺はオアシスとブラーが好きだし、この2つのバンドに関しては全員が好きだと思うよ。イギリスって全てがダークで憂鬱なんだけど、音楽は他のものよりポジティヴって印象があるね。 Jeff:ピンク・フロイドのファーストって、すごく鮮やかでカラフルだろ。なのに彼らの国はグレイなんだよな。特に俺達はカリフォルニア出身だから、ああいう環境からあんな音楽が生まれてきたのかと思うとマジで驚いちゃうよ。 じゃあ、これまでにも少し話に出ましたけど、それぞれの音楽的背景についてもう少し詳しく教えて下さい。子供の頃どんな環境に育ち、どんなことがきっかけで自分もギターを持とうと思ったのでしょう? Aaron:俺は今この部屋で、こいつ(エヴァン)を除けば、いちばんヘタクソなギタリストなんだ。ジョークじゃないよ。 Michael:ジョークじゃない。 Evan:コンテストしたからね。 Aaron:つまり、学校でギターを弾くクラスをとれる時とか、その他ギター・レッスンの機会があっても、意図的にやらなかったんだ。パンク・ロック出身だったから、俺はパワー・コードが弾ければいい、パンク・ロックしかやりたくない、ってね。でも、自分のギター・プレイに限界があったからこそ可能だった面もある。ひとつの音を最大限に生かすことができたっていうか……。 ともかく、パンク・ロックがギターを持つきっかけだったんですね? Aaron:うん。俺は子供の頃MTVを見て育って、ガンズ&ローゼズも好きだったし、メタリカなんかも気に入ってたんだけど、その後パンク・ロックを発見したんだよ。それまでは、ギターを弾きたくても、例えばスラッシュのソロなんか見てると、あんなことできるわけないって思えてさ。それがパンク・ロックに出会って、ブラック・フラッグを見て、突然「俺にもできる、俺もそれならプレイできるよ」って思ったんだ。それはすごく、すごく、すごく大きなことで、俺の人生を完全に変えてしまった。 ブラック・フラッグは最も影響を受けたバンドのひとつなんですね? Aaron:間違いなく。ジュビリーや俺達全員にとってではないけれど、俺個人がギターを始めることになったのは彼らのおかげだよ。それと、彼らの労働観には全員が影響を受けてると思うな。 Jeff:俺の場合はサイケデリック・ミュージックだね。幼い頃ピンク・フロイドを聴いて、サウンドがクールなのが気に入ってさ。『狂気』を初めて聴いた時は本当に怖くなって、一度は消しちゃったんだ。でもクールだと思ったよ。 Aaron:そうそう、俺は『ホワイト・アルバム』の"レボリューション9"が子供の時すごく怖かったな。 Michael:俺は主にビートルズを聴いて育ったんだ。ずっとビートルズだった。最初にギターを手にした時も、ビートルズの楽譜を買って、全曲練習してたよ。今は全部忘れちゃったけどね。 あなたはピアノも弾いていたんですか? Michael:ああ、ピアノから始めたんだよ。5歳の頃からね。で、ずっとビートルズを聴いてきたんだけど、そのうちにメインストリームに登場してきたニルヴァーナやグリーン・デイを知って、それで「自分もあんな風になりたい、ピアノじゃダメだ、ギターをやろう」って思ったんだ。今じゃピアノ・プレイヤーにならなかったことをちょっと後悔してるけど(笑)、そうやってギターを始めたのさ。 エヴァンは? Evan:1994年頃、4年生だったかな、何がきっかけかは覚えてないけど、そういう年頃だったんだろうね、とにかくMTVやラジオに目覚めてさ。当時かかってたのは、ニルヴァーナ、グリーン・デイ、スマッシング・パンプキンズ、サウンドガーデン、メタリカとかだった。当時の俺にとっては、特にどれがいいってことじゃなくて全部が良いロック・ミュージックに聴こえたんだ。それで、ただギターが弾きたくなって、すぐにバンドも始めた。同じ頃に、スケボーもやるようになってね。スケボーがポップ・カルチャーとして取り沙汰されるようになる前のことで、まだアンダーグラウンドの、カウンター・カルチャーのムーヴメントだった頃の話だよ。だからスケボーやりつつ、ロック・ミュージックも一緒に聴いてて、それからパンクを発見した、と。 Aaron:F.Y.Pだろ。 Evan:そう、南カリフォルニア出身のF.Y.Pとか、カリフォルニアの90年代のパンク・ミュージックにすごくのめりこんでた。ただし、パンクに夢中だったけど、ロック・ミュージックでギターを始めたから、パンクを知る前はジミ・ヘンドリックスとか好きだったし、子供にしては上手いギタリストだったと思う。実際、パンクをやり出した時は簡単に感じたよ。どのバンドもワーワーワー!ワーワーワー!って感じだったからさ。で、それから数年後、アーロンに出会ったんだ。 Aaron:そう。 Evan:そしたらアーロンも、ワーワーワー! ワーワーワーワー!って(笑)。 Aaron:当時、俺のバンドがプレイしてた時、会場の中でいちばん若いのは紛れもなくエヴァンで、みんな「おい、あの子大丈夫かい? 家出じゃないの?」とか心配してるぐらいだったんだよ。だけど他のショウでも見かけて「またあいつだよ!」ってね。すごくクールだと思ったな。すぐ話をするようになって、そしたら彼が最初にやってたウォー・ワゴンってバンドのデモ・テープをくれたんだ。メルローズのヘッドライン・レコーズでウォー・ワゴンの演奏を見たこともある。その後エヴァンはマイケルとバンドを始めて、それがワイアーズ・オン・ファイアーの前身バンド=ザ・フォンだった。彼にはその前のバンドの時から注目してたけどね。キッズがこんなバッドなパンク・ロックをやってるなんてすごいじゃないかと思ってさ。当時ロサンゼルスのパンク・ロック・バンドって、数えるほどしかいなくて……400ブロウズ、ブルー・バード、イカルス・ラインぐらいかな。他のバンドはみんな21歳以上だったし。それで俺とトラヴィスは、バディヘッドでこのキッズと契約するべきだって話してたぐらいなんだ。 わかりました。ところで、ジュビリーの初めてのツアー先をイギリスにしたのには何か戦略的な理由があるのでしょうか? Aaron:いやいやいや。俺達はまだ本格的にライヴをしたことがなかったし、そんな状態で最初にロサンゼルスでショウをやったら、何かしら傷を負うことになるなって感じてたんだ。「元イカルス・ラインとワイアーズ・オン・ファイアーのバンドだってさ、それにクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジやナイン・インチ・ネイルズのメンバーらしいじゃないか、どれだけのもんか見せてもらおうぜ」みたいな感じになるのは目に見えてた。だから、ここから可能な限り遠く離れたところに行って、家族や友人をゲストリストに入れる心配もしなくて済む場所で、バンドとしてまとまる方法を見つけようっていう気持ちだったんだ。L.A.のくだらないあれこれにわずらわされないようにね。L.A.は特に新しいバンドに対しては「証明してみろ」的な部分があるからさ。特に俺達のファースト・ショウはそうなることが分かってたから。 Jeff:ファースト・ショウがグラスゴーになったのはすごく良かったと思う。 じゃあ、初のツアーを終えた感想を教えてください。 Jeff:リアクションは素晴らしかったよ。 Michael:うん。 Aaron:ああ、ものすごく良かった。予想を遥かに越えてたよ。遠く離れた場所でやるから誰も来れないんじゃないかと思ってたけど、ベルギーやドイツやイタリア、ヨーロッパ中から人が来てくれた。日本から飛行機で来た人達もいたしね。 Jeff:アメリカから来てくれた人達もいたよな。 Aaron:失敗してもそんなに多くの人の前で恥をかかずに済むから、誰もいないところに行ってやろうというのが当初の目的だったのに(笑)世界中から人が集まっちゃって、俺達の動きを全部映像に収めてたり……それが翌日YouTubeに出ちゃったりしてね。でも同時に嬉しかったよ。 Jeff:楽しかったしな。 Evan:いい時間を過ごせた。 Aaron:特に小さい街でのショウは、普段は誰も来ないようなところだから、まず「何故あなた達がここでプレイするの?」とか聞かれてさ。そんな場所でプレイできて、とても楽しかったよ。 Michael:ものすごく歓迎してくれたし、とにかくクールだった。 Aaron:ああ、楽しかったね。寒かったけど。あとポーク・ファゴット(Pork Faggot)を一杯食べたよ。 NINで3年みっちり世界中をツアーしてまわった経験は、現在の自分にどう活かされていると考えていますか? Evan:その質問には俺が答えようか。 Jeff:(笑)。 Aaron:ここでインタビュアーは俺にナイン・インチ・ネイルズの話をさせて、俺が何を言ってもそれがそのまま記事になっちゃうんだよなあ。 Michael:ノーって言えば? Jeff:ノーって言えばいいよ。 Evan:俺は助けようとしてたんだけどな(笑)。 Aaron:えっと、冬にクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジと長期の共同ツアーをやって、俺はその前からジョシュ・オムとはダチだったし、イーグルズ・オブ・デス・メタルともツアーしたことはあったんだけど、そこで彼ともっと仲良くなれたし、それからオートラックスとか友人も増えたし、色々な人達とプレイしたことでミュージシャンとして成長できたと思うよ。 NINでは、エフェクトを多用しながら単音のソロを弾かされることも多かったと思います。プレイ・スタイルの切り替えに苦労したりとかはありませんでしたか? Aaron:いや、イカルス・ラインとナイン・インチ・ネイルズでの俺のプレイ・スタイルは似通ってて、同じギターを使って、同じようにリフをプレイしていたから、俺自身にとっては同じように簡単だったね。一方で、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジで演奏した時は、ギターに巨大な弦を張って、電話のコードみたいなのを押さえなきゃいけなくてさ、そっちのがNINの時よりも挑戦だったよ。テクニック面で言えば、NINはイカルス・ラインと同じ感じで、そんなに難しくなかったんだ。
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