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Tokyo, 2002.2.26
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation and translation by Kaori Yoshida

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メジャー・レーベルから傑作アルバム『クラリティ』をリリースしながら、契約を打ち切られてしまったジミー・イート・ワールド。しかし彼らは全くめげることなく、独力で新たな傑作『ブリード・アメリカン』を作り上げ、再び道を切り開いてみせた。こうした自然なタフさを身につけたバンドが現在のアメリカのロック・シーンを支え、再び面白い動きを見せてくれていることはもはや言うまでもない。彼らなら「エモ」という言葉にまとめくくられ、消費し尽くされてしまうような事態にも陥らないだろうという気が強くする。ムキ出しの闘志もヤケッパチの激情もないままにして、いやむしろ、それがないからこそ、ここまで強くいられるのだ。大きな歓声に包まれる中、待望の再来日公演を果たした4人のうち、今回はギター/ヴォーカルのトムとベースのリックにインタビューする機会を持ったが、彼らの素朴な話を聞いているだけで、その頼もしさは充分に伝わってくると思う。

「たぶん僕達のような何も問題のない平和なバンドは珍しいんだろうね。でも僕達の絆はそれほど固いものなんだ」

まず、あなた方がどうしてギターやベースを手にすることになったのか、ミュージシャンを目指す決心をしたキッカケについて、それぞれ教えてください。

Tom:僕は、ギターぐらいしか取り柄がなかったんだよね(笑)。子供の頃からスクール・バンドに所属していて、将来的にもずっと音楽と触れていきたいな、と当時から思っていたんだ。だからこそ、ギターの練習を一生懸命やって、現在に至る、という感じかな。ギターのタブ譜が付いているような雑誌を読みながら、メタリカとか、いろんなバンドのギター・プレイがどうなっているのか研究したりしてね。

Rick:僕の場合は、なんといってもロックの持つ反骨精神、アウトサイダー的なところにまず惹かれたんだ(照笑)。ま、それは半分冗談として、子供の頃から音楽が大好きで、ティーンエイジャーになってもバンドのライヴを観にいくことが一番の楽しみになって、自分でもステージに立ちたくなったんだよ。

ジミー・イート・ワールド結成時の様子を教えてください。メタリカのカバー・バンドだったという話も聞いているのですが、あなた方が最初に夢中になった音楽はやはりヘヴィ・メタルだったのですか? その後、現在のような音楽性に至ったのはどういった経緯があったのでしょう? バンドの優れたポップ・センスはいかにして開拓されていったのでしょうか?

Tom:いや、最初はザ・キュアーとか、ビッグ・ドリル・カーとか、パンク/ニュー・ウェイヴ周辺のバンドにハマって音楽にのめり込んでいったんだ。プロパガンディみたいなパンク・バンドからも凄く影響を受けたしね。

Rick:僕もザ・キュアー、それからピクシーズやニルヴァーナといった90年代のギター・バンドが大好きだった。ヘヴィ・メタルというより、ロックと呼べるバンドの方に断然ハマってたね。それに、デュラン・デュランとか、もっとポップな80年代のバンドも大好きだったよ。

ジミー・イート・ワールドが結成されたのは、アリゾナ州のメサという町ですよね。地元で、あなた達の周りにあった音楽環境はどんなものだったのでしょうか? フェニックスやトゥーソン出身のロック・バンドは日本でも紹介されていますが、やはりそういった町とは違う雰囲気だったのでしょうか?

Tom:メサは地理的に大都市とは離れた、何にもないところにポツンとあるような町なんだ。本当に小さい町だよ。結構たくさんバンドはいるんだけど、ライヴができるようなクラブなんかは本当に少ない。活動の場があんまりないから、なかなか認知される機会がないんだよね。フェニックスやトゥーソンとは、かなり大きな差があるよ。トゥーソンは比較的小さな大学の町って感じで、フェニックスよりは親近感というか、ソウルがあるような気がするね。フェニックスは今でもどんどん開発が進んでいて、高層ビルが立ち並ぶ街に発展してきた。トゥーソンの方がまだ西部劇のような雰囲気が残されているね。

Rick:そうだね、トゥーソンには古き良きアメリカの西部劇っぽい雰囲気がまだあって、僕は個人的に凄くクールな町だな、と思ってる。

出身がそういう小さな町だったおかげか、ジミー・イート・ワールドの音楽からは良い意味でスレていないという印象を受けるのですが、出身や背景ということが自分達の作る音楽に大きな影響を及ぼしていると思いますか?

Rick:その通りだと思う。もし僕達が例えばロスで育ったとしたら、ロスっぽいバンドになろうとしていたと思うよ。僕達自身が感じるままに素直に音楽表現ができなかったと思う。

Tom:バンドが始まった頃はドラムのザックのガレージに集まってただ好きなように楽器を鳴らしていたんだ。それだけで解放された気分になったし、今でもその時の気持ちだけは持っていると思う。

Rick:説明するのは難しいけど……。

Tom:だって、ロスという街は凄く変、というか不自然な街だよね。僕達の方がロスのバンドよりシビアに考えていなかったことが逆に良かったのかもしれない。

Rick:そうだね。だって、ロスではイメージが第一だから、イメージを作り上げることが先決になってしまう。アリゾナだと、自分自身に正直に生きられるし、イメージなんて関係なかったからね。だからこそ、自分達のスタイルというのを見つけることができたんだと思う。イメージ先行型ではなく、やりたいようにできたからこそ自然と独自のスタイルが確立できたんだね。

逆に、小さい町という環境で苦労したことなどはありますか?

Tom:いや、そんなにないよ。バンドとしても、すぐにレーベルと契約してプロになりたい!なんて気持ちはなかったからね。ただ楽しんでいただけで。メジャー・レーベルにデモ・テープを送ったりもしなかったし。最初の7インチを出してみたら、結構評判になって、メジャーの方からアプローチが来たんだ。単にラッキーだったのかも。

あなた達らしいなあ(笑)。さて、ジミー・イート・ワールドの楽曲はいつもバンド名でクレジットされていますが、具体的にはどんな風に曲が作られていくのでしょう? やはり4人でジャムりながら曲を錬っていくのでしょうか? 曲のテーマを決めたり作詞をする作業も全員の意見が反映されるのですか?

Tom:ジムがベーシックなアイディアを持ってきて、みんなでアレンジを考えていく、というのが基本的なプロセスだね。時々、ジムのアイディアに対して僕が自分なりに思い付いたギター・リフを加えてみたりして、また違った印象の曲になっていったり……曲によってやり方が違うけどね。たまに、最初から完璧な状態でジムが曲を持ってくることもあったりするし。

Rick:逆に、練習の時みんなで合わせてる最中にトムが適当なギター・リフを弾き始めて、「ちょっと待って、それ、いいね」みたいなことになって、そのリフを基に曲をゼロから作り上げていくこともあったりしてね。いろいろだよ。

作曲作業の中で、4人のうちの誰がポップ・センスの部分で貢献するとか、どのメンバーがパンクっぽい要素、あるいはメタルっぽい要素を出すことが強いとか、メンバーそれぞれの役割分担や傾向があるように感じたことはありますか?

Rick:僕個人は特に感じないね。みんな、それぞれにいろんな音楽スタイルを聴いてきているし、吸収してきているからね。だから、例えばジムがポップ担当、トムがパンク担当、ザックがメタル担当、というふうに明確な役割や傾向があるわけじゃないんだ。

Tom:曲の意味やイメージとなると、全員が分かり合えるような、同じ目線で考えられる関係が築かれているように思う。

作詞に関してはどうですか? 共同作業だったりするのでしょうか?

Tom:歌詞を考えてきた人が曲もつけてくる、歌詞を書いた人がその曲のメイン・ヴォーカルをとる、という感じかな。つまり、僕が歌っている曲は自分で歌詞を書いた曲だね。

他のメンバーから意見やアイディアをもらったりすることは?

Tom:そういうわけでもないよ。

Rick:歌詞は個人に任せている感じかな。

トムは昨夜のライヴでも2曲リード・ヴォーカルをとっていましたけど、ヴォーカルとギターそれぞれに関してジムとの役割分担はどのように決めていくのでしょう?

Tom:どのアルバムもそれぞれに違うね。最新作『ブリード・アメリカン』では、準備段階でジムが次から次へと曲を作ってきていたんだ。ジムの中からたくさんのアイディアが一気にあふれ出てきた、という感じだったね。だから、最新作はジムの歌詞や曲のアイディアが中心になっている。ジムはプライベートでいろいろあったみたいで……(笑)。基本的にジムの作曲ペースって物凄く早いんだ。例えば、ツアーから戻ってきた翌日にはもう2曲ぐらいできたりとかしてね。僕はジムのペースには全然追いつけない感じだよ。

今回の来日公演には、元ザット・ドッグのレイチェル・ヘイデンがキーボードとコーラスで参加していますが、彼女をサポート・メンバーに加えようと決めた経緯を教えてください。

Tom:レイチェルとは、5年前ぐらいからの知り合いなんだ。彼女はザット・ドッグにいた頃から、僕達のライヴによく足を運んでくれていて、それで友達になったんだよ。ジムは以前から彼女の声がとても気に入っていたから声をかけてみたんだ。お互いのバンドのファン、というところから始まったね。

Rick:最新作を作っていた時、僕達では出せないような声域のコーラスが必要だと思えるところが多くて、レイチェルのことをすぐに思いついたんだ。彼女とは友達だから連絡も取りやすいし、ステキな声を持っていることも当然わかっていたからね。そこで連絡を取ってレコーディングに呼んで、いくつかの曲でコーラスを入れてもらった。で、ライヴでもレコードをできるだけ忠実に再現したいと思ったし、せっかくだから、ツアーにもついて来てもらうことにしたんだよ。

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