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結局ケイヴ・インはメジャーの水と合わず、インディー・シーンへ戻ってきた。最初に『エピセンター』を聴いた時には「このバンドが21世紀のロックを動かす!」と力こぶを作ったものの、その予想はすっかり外れたわけだ。しかし今はその方がよかったと思っている。もはや意識的なリスナーにとって、メジャーとインディーに大して差はない。解散の危機を乗り越え、アルバム『パーフェクト・ピッチ・ブラック』を完成させた彼らは、直後にドラマーのJRが怪我で離脱を余儀無くされる事態に見舞われるも、盟友コンヴァージのベン・コラーを迎え入れてツアーを開始、2006年3月に再来日を果たす。そこで目撃できたタフなたたずまいは、これからもコンヴァージやアイシスらとともに、アンダーグラウンドのロック・シーンを面白くしていってくれるだろうと確信させてくれた。その後、ベンがコンヴァージとしての活動に忙しくなったことを受けて、他の3人はそれぞれ別プロジェクトに勤しんでいるが(スティーヴンは新たなソロ・アルバム『オクターヴ・ミュージアム』をリリース)、ケイヴ・インとしては、2007年の春に再集結する予定だという。彼らから新たな音が届けられる日を楽しみに待とう。 「僕たち全員、自分たちが買ったり聴いたりするレコードに、とても敏感なことは確かだよ。特に前作を作って以降、それまで聴いたことがなかったような新しいジャンルにハマッてる。それこそブラック・フラッグからボブ・ディランまでね。そういうのが全部、新曲に影響を与えるはずさ」 05年に新作『パーフェクト・ピッチ・ブラック』を出して、その後は北米〜ヨーロッパ、そして日本と今日まで長いツアーを続けてきたわけですが、まずはひとりずつ感想を聞かせてください。 Caleb:調子はいいと思う。少なくとも俺はいいよ! ただ正直、今夜の公演を最後にツアーが終わって、やっと家に帰れるのは嬉しいな(笑)。それでも、このアルバムのツアーはずっと本当に調子が良くて、ツアーしててこんなに楽しかったのってホント久し振りだから、その点助かってるよ。 Ben:俺は……えーと、めちゃくちゃ楽しかったけど、そろそろ家に帰ってしばらくゆっくりするのも全然やぶさかじゃないっていうか。これで去年の9月から数えて、もう5度目のツアーなんだよ。俺はコンヴァージとケイヴ・インの両方でツアーをやってるからさ。だからもう、地元でしばらくのんびりする心の準備は、すっかりできてるよ(笑)。 Adam:僕も、家に帰れるのは嬉しくてしょうがないね。ここのところずっとツアーの連続だったけど、いったんツアーのことを頭から追い払ってた時期があったりしたせいで、骨の折れることも多かったんだ。だから地元でゆっくりできるのは本当に嬉しいし、それ以上に楽しみなのが新しいアルバムのレコーディングだね。メンバー全員『パーフェクト・ピッチ・ブラック』からさらに進化してると思うし、次の段階に早く進みたいんだ。 Stephen:もう少しだけショッピングしたら、あとはもう帰るだけだよ。キディランドに行きたいな。 (笑)。今回のツアーで、新しいドラマーとしてベンが加わったことと、ケイラブが以前よりリード・ヴォーカルをとるようになったこと以外に、以前までのツアーと特に変わったことはありますか? あるとしたら、それはどんな点? Caleb:んー……"PMA"になった、かな……いや、やっぱわかんないや。 Adam:ハハハハ! なんですって? PMA? 全員:"Positive Mental Attitude"(前向きな心構え)!(笑) Adam:もうひとつの変化が、このバンドの存在のありがたさを前よりも意識するようになったってことだね。だから前回に日本に来た時とは、俺たちの考え方も違っているかもしれない。今の俺たちは、みんなこのバンドを楽しんでるし、自分の時間をこのバンドにつぎ込んでるからね。 Caleb:そう、バンドの中の労働観が変わったっていうのかな。ツアーに関して言えば、ものごとをとても慎重に判断するようになったね。ツアーってヘタすると、すごい負担になりかねないし、結局ネガティヴな影響しか残らない、なんてことにもなりかねないんだ。だから、必要なことだけをきっちりやるようにしてるっていうか、ツアーが面白くなくなってきたり必要性が低くなってきたら、その時点で1度ストップしてひと休みして、レコードを作ったり曲を作ったりするようにしたんだよ。ずっとむやみやたらに走り続けるんじゃなくてね。 メジャー在籍時は本当に延々ツアーさせられてましたもんね。さて、今回の来日記念として、日本では過去のアルバムが再発売されたわけなんですが、それを購入すると、ベンが加入してから作られた新曲が2曲もらえるようになってますよね。この"Shapeshifter"と"Dead already"は大体いつぐらいにできて、どんな感じでレコーディングされたのですか? Ben:去年の夏だね。 Adam:今回のツアーでプレイしてる曲をベンに覚えてもらうために2週間ほどみんなで集まった時に、勢いで2曲作ったんだ。ニューヨークで1週間、その後ボストンで1週間ほど練習したんだけど、2週目のボストンのリハーサル・スペースで4トラックを使ってレコーディングして、それで出来上がりさ。レコードに入ってるのもその時のトラックなんだ(笑)。 じゃあ、もうアッという間にできあがったんですね。 Adam:そうでないと困るしね。これまでに作ったレコードの多くが−−『パーフェクト・ピッチ・ブラック』も含めて−−レコーディングにせよソングライティングにせよ、えらく時間がかかってたんだ。でも今回は、何事もきちっと遂行するのが目標で、さっさと作ってさっさと出そうって決めてたんだよ。ああでもないこうでもないと、のらくら話をしてたら2年も経ってたなんてことはもうやめようぜ、って(笑)。 その、早く仕上げるというスタイルも、過去のあなたたちとの大きな違いのひとつだと言えますね。 Caleb:ああ、その通りだよ。今はもう何かを苦心して作るという感覚がないんだ。特に俺たちはクリエイティヴでスポンテニアスな音楽を作ろうとしてるから、手をかけすぎて作品を作るという行為は、長い目で見るとその作品の価値を損なうことにもなりかねない。だったらその時その時の瞬間をきちっと捕らえて、前に進み続けた方がずっといいんだよね。
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