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今日はケヴィンはいませんが、ブレンダンも創立メンバーの1人ですよね。ブロークン・ソーシャル・シーンを始めるにあたって、それまでのバンドとは違うものをやろうという意識はありましたか?

Brendan:始まった時は「バンド」じゃなかったんで、それほど意識してなかったな。大まかな方向性としては、伝統的な、つまり過去30年間で作られたバンドのイメージ──ガレージで練習したり、ツアーずくめの生活だったり──そういうのからはかけ離れていたと思うよ。それに何より、多くのバンドのように光り輝く夢を追い求めていたわけでもなかった。単純に、絆の強い友人同士で集まって、明確なコンセプトやルール抜きに音楽をやれればよかったんだよね。メンバー構成も、入りたい人間が入るっていう開放された状態がポリシーで、とにかく自分達が楽しければいいと思ってた。そういうオープンなところ、決まりがないところが結果としてバンドの成功に結びついたのかもしれない。

そうした形態でバンドが成り立ってきた背景には、地元にミュージシャン仲間のコミュニティーがあるからだと思うのですが、現地のシーンの様子を教えてもらえますか?

Brendan:トロントにはミュージシャンの密度が高くて、クラブやバーやレストランが集中しているエリアがあるんだ。だいたい48ブロックx20ブロックぐらいの中に密集してるんだけど、それに加えて、僕は色んなバンドで何年もプレイしてきた経歴があるから、だったら今までに関わった人達を集めて流動的なメンバーでバンドをやるのもいいかなって思うようになったんだよ。「ジェイムズとエイミーが帰ってきてるみたいだから今夜のライヴに出てもらおう」みたいなノリって、あのシーンが存在するからこそ出来ることだと思う。それに僕はミュージシャンとして山あり谷ありの人生を歩んできた。もう少しで頂上に手が届きそうな時もあったけれど、ふと我に返ったら「それが結局、何なんだ?」と思ったり。だから今こうして気軽な形で活動出来るのは僕にとってすごく快適なことなんだよね。あと、今話したエリアには、Rotate Thisとジョンが働いてたSoundscapesって有名なレコード屋が2店あって、シーンへの影響力が強いんだ。現地出身のミュージシャンが国際的な成功を収めていく中で、地元でももっと彼らをサポートしなくちゃという気持ちが強いんだよ。もちろんレコード店だけじゃなく、プロモーターやクラブ関係者とか、名前を数え上げたらきりがない。もちろんそれも一夜にして始まったことではなく、長い月日をかけて築き上げられたことなんだけどね。

昨年「カナダ・ウェット」というイベントが成功したこともあって、日本のメディアでは「カナダ・シーン」という言葉を使うのですが、カナダといっても広大な国ですし、アヴリル・ラヴィーンからニッケルバックまでいるわけで、「カナダ・シーン」と呼ばれることに違和感は感じませんか?

Brendan:僕らは別のシーンだと思うけど……(笑)。

John:ニッケルバック、ブライアン・アダムス、アヴリル・ラヴィーン、サム41、ベアネイキッド・レイディース、セリーヌ・ディオンはみんなカナダ人アーティストなんだけど、彼らと一緒にするのは、何と言うか、Modest Mouseとどこかの下らないアメリカン・バンドを比べるようなもので……。

Brendan:日本で一番売れてるアーティストって誰?

ここは無難に、モーニング娘。とかにしておきましょうか。

Brendan:つまり、その人達とボアダムスを並べているようなものだよ。国籍が同じだからといって同じファミリーとして括るのはどうかなあ(笑)。

じゃあ、もっと相応しい表現はありませんかね?

John:こういうのって今に始まったことじゃないよね。今はカナダが注目されてるだけで、これまでもシアトルやボストン、アセンズ、それにマンチェスターとか。

Brendan:とりあえず、僕らが他のビッグなカナダ人アーティストと違うのは、インディー・レーベルが基本になってるところじゃないかな。他にもザ・ディアーズやザ・コンスタンティンズ、アーケード・ファイアーといったバンドがいるけど、みんなインディー所属でたまに外部からの資金援助があるぐらいなんだ。だからスーツを着た奴らに「このレコードは売れないな」なんて文句を言われることもない。最近は、本当に色んな音楽があって、みんなどれが良いのかわからなくなってきちゃって「じゃあもうニッケルバックでいいや」みたいな感じだよね。料理に例えれば、シェフが大勢いすぎて「あれも入れよう、これも入れよう」ってな具合でスープの味もどんどん変わっていって、最終的にはマクドナルドみたいな不味い代物になってる状態。

John:それが世界的なブランドになってると。

Brendan:あんなにクソ不味いってのに何故かみんなマックが大好きだろ? これからもそういう音楽や食べ物を消費し続けていくんだろうね。だから僕らは、せめて違いの分かる人達のための音楽を作ってるってことなんだ。

インディペンデント・コミュニティーの一員としての自分達の活動が、メジャーで定型な音楽業界へ向けて、他の代わるべきものを示していこうという使命感のようなものはありますか?

Brendan:もちろん! ああいった類の音楽をずっと聴き続けていたら、自分がどんな音楽が好きでどんな音楽に心を動かされるのか分からなくなってしまうんじゃないかな。僕は、音楽にはメッセージ性があって、訴えかけてくるものがあるとみんなに分かってもらいたい。大袈裟かもしれないけど、僕達は音楽をめぐる聖戦を続けていかなくちゃならないんだ。それに、聴いてくれる人達がいるからには、何らかの刺激を与えたいという気持ちもあるんだ。僕が子どもの頃は自分の心に訴えかける音楽を聴いてたよ。音楽だけに限らず、映画や書籍もそうだけど、エンターテイメントばかりで他に芸術的な小説や映画がなかったら退屈だし、今僕達が存在しているこの文明はそうやって築かれてきたものなんだからね。

John:ミュージシャンとして思うのは、過去の音楽史の中にもカウンター・カルチャー的なものは存在してきたと思うんだ。だから僕達もその伝統を継承していきたい。昔からあったものを自分なりに解釈し、これから先に繋げていきたいと強く感じてる。そのためには、自分の心に正直なサウンドを作っていかないと誰にも伝わらないだろうから、そこはすごく意識してるよ。

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