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artist : FUKAMACHI jun 【深町 純】
title : 『 ある若者の肖像 』
release : 1971年11月
label : POLYDOR RECORDS
tracks ( cd ) : (1)ひいらぎ (2)何故 (3)彼女の姿にピッタリ同じピーターパンの地下のほら穴あるいは「洋服屋」 (4)お前 (5)散歩 (6)愛が故郷に帰って行った時 (7)お前と夕陽 (8)新しい唄 (9)NOERSIAH (ノルシア) (10)薔薇
tracks ( analog ) : side A... (1)〜(5) / side B...(6)〜(10)
members : 深町純 FUKAMACHI jun,vocals,piano,hammond organ ; 神谷重徳 KAMIYA shigenori,electric guitar(2,3,4,5,8,9) ; 寺川正興 TERAKAWA masaoki,electric bass ; 日野元彦 HINO motohiko,drums.
director : 三坂洋 MISAKA hiroshi
arranger : 深町純 FUKAMACHI jun
conductor : 深町純 FUKAMACHI jun
related website : 『 CISUM 』(公式サイト)




(1)ひいらぎ  ▲tracks
 素朴で誠実そうでありながら、とてもドリーミーな雰囲気を持った、スロウ・バラード(1)。ストリングスとピアノがとても美しく切なく、そして優雅。この時代でなければ生まれ得ない、独特の感触。まるで1人で小説を読んでいる時のような、周囲からは隔絶されているのに、頭の中にはとてつもなく広い世界が展開しているような感覚。加山雄三を意識したわけでもないだろうが、途中には“語り”の部分もある。


(2)何故  ▲tracks
 幾分哲学的な雰囲気のあるバラードの(2)。深刻な出だしのピアノに五輪真弓が歌い出しそうな感触を一瞬覚えるが、徐々にドラムやベースやエレキ・ギター、更にはもう1台ピアノが加わって、メジャーでスケールの大きな展開へと変化していく様がとてもいい。
 ジャズ系のドラマーがこういったポピュラー・ソング的な曲を演奏すると、決まって合間合間のオカズがオイシイので、そういった面でもちょっとニンマリしてしまう曲。
 因みに、口を開ききらずに歌っているような所がスガ シカオに似ている(声はあまり似ていない)ような気がする深町純。彼は頭脳警察のPANTAと同じく、“お前”を「おまえ」ではなく「おまうぇ」と発音するので、初めのうちは若干違和感を感じる人もいると思うが、僕はもう慣れてしまった。


(3)彼女の姿にピッタリ同じピーターパンの地下のほら穴あるいは「洋服屋」  ▲tracks
 前の2曲からすると唐突にポップな印象を受ける(3)。基本的には8ビートだが、途中、変拍子がありながらも、結構スムーズに進行していく。なんだか子供向け番組の1コーナーで、“お兄さん”とキャラクターの人形が“テレビの前のチビッコ達”に向って歌っていてもおかしくなさそうな雰囲気の曲だ。バブルガム・ポップの一歩手前といった感じ。


(4)お前  ▲tracks
 太く蠢くベースがとてもグルーヴィーな(4)。晴れやかなトランペットや、カッコいいオカズ満載のプレイをカマしてくるドラムもいい。部分的にフェイザーかフランジャーか何かのエフェクトがかかってきたりもする、ちょっと不思議な感じのソフトなブラス・ロック・チューン。
 僕は聴いたことはないが、『 SOFTROCK DRIVIN' SNOW DOLPHIN SAMBA 』 という和製ソフト・ロック・チューンを集めたコンピレイション盤にも収録されている。スパイダース、森山良子、ピコ(樋口康雄)、テンプターズ、そしてアストラッド・ジルベルトが日本語で歌う曲まである模様。


(5)散歩  ▲tracks
 優雅でボンヤリした感じが、とても小粋な(5)。爽やかなピアノと、結構グルーヴィーなベース、軽快なドラム、そしてあまり目立たないギターという編成で、ユッタリとスウィングするワルツからボッサ・ノヴァへとリズム・チェンジ、というのを幾度か繰り返す。
 「朝のもやのかげに 映る君の夢   夜の星の中に 似合う君の夢」という歌詞にピッタリの雰囲気で、朝、静かに目覚めたい時、そして夜、ユッタリと癒されたい時、両方に最適な曲。


(6)愛が故郷に帰って行った時  ▲tracks
 派手な都会暮らしに疲れた女性の気持ちを、優雅で優しいピアノとストリングスで綴った、静かでドリーミーなバラード(6)。(1)に似た雰囲気だが、なんだかこちらの方が切ないというか、遣る瀬無いというか、とにかく胸に何かを渦巻かせてくれる。
 僕はこの曲を聴いていると(特にAメロ)、小学生時代の夕方4時ぐらいのオレンジ色に焼け始めた夕陽を見て、「早くうちに帰ろう」などと漠然と考えながら自転車で家路を急いでいる光景を思い出してしまう。


(7)お前と夕陽  ▲tracks
 人生の船出をイメージした、明るく大らかで希望に満ち溢れた曲調の(7)。ピアノ1本の弾き語りの中に、“当時の若者”っぽい雰囲気がプンプンと漂っている。現代の若者には失われた、懐かしい感覚。


(8)新しい唄  ▲tracks
 (7)とはリズムこそ違うものの、こちらも希望に満ち溢れた曲調の(8)。大らかなリズムの中でダイナミックに転がるピアノに乗せて、希望に満ちたメロディーが展開していく。進水式のロープを断ち切るかのようなギターや、美味しいフレイズ満載のオカズを繰り出してくるドラムもいい。
 この際、この曲や前曲(7)、そしてテレビ漫画 『 宝島 』 のオープニング・テーマ(羽田健太郎作曲)やソウル・フラワー・ユニオンの「向日葵(ひまわり)の夢」(『 ワタツミ・ヤマツミ 【WATATUMI YAMATUMI】』 に収録)、サイモン・デュプリー&ザ・ビッグ・サウンドの「BROKEN HEARTED PIRATES」(編集盤 『 KITES 』 に収録)などをひっくるめて“船出系”と名付けてしまおう。


(9)NOERSIAH (ノルシア)  ▲tracks
 妖しく悲しげなピアノの響きでスタートする(9)。しかし、サビではジャズ経由の手数の多い8ビートのドラムやゴインゴインとドライヴ感のあるベースも加わって、希望に満ちた展開になる。ホルンぽい管楽器もオブリガードを入れてきて、更に希望感が増してくる。
 もしこの曲をガット・ギターをメインにして演奏していたら、長谷川きよしっぽくなったことだろう。


(10)薔薇  ▲tracks
 クロージング・チューンは静かなピアノの弾き語りの(10)。「ランタナ色の赤い想い出〜」という歌詞の部分へと流れる時のコード感は日本の歌謡曲にはない、新鮮な感じがする。
 本作全体にも言えることだが、彼はそれまでの日本的なベッタリとした曲想とは違う語法で曲を作っていると見えて、なにかこう“サラッ”とした印象を受ける。しかしそこには良い意味で、ある時代の日本の風景が横たわっていて、とても懐かしく、優しく、柔らかく誠実な感触がある。


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