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artist : CHARLIE MINGUS
title : 『 TIJUANA MOODS 【メキシコの想い出】』
recorded date : 1957年7月18日、8月6日
label : RCA RECORDS
tracks ( cd ) : (1)DIZZY MOODS (2)YSABEL'S TABLE DANCE (3)TIJUANA GIFT SHOP (4)LOS MARIACHIS 【街の楽師たち】 (5)FLAMINGO
tracks ( analog ) : side A...(1),(2) / side B...(3)〜(5)
members : CHARLIE MINGUS,leader,bass ; JIMMY KNEPPER,trombone ; CURTIS PORTER (SHAFI HADI),alto sax ; CLARENCE SHAW,trumpet ; BILL TRIGLIA,piano ; DANNY RICHMOND,drums ; FRANKIE DUNLOP,percussion ; YSABEL MOREL,castinets ; LONNIE ELDER,voices.
producer : BOB ROLONTZ
related website : 『 Charles Mingus: The Official Site 』(公式サイト)




 “THIS IS THE BEST RECORDS I EVER MADE (コイツはオレが今まで作ったレコードの中で最高のものだ)”。作者であるチャーリー・ミンガス本人をしてこう言わしめた作品がこの作品。

 ま、ミュージシャン自身が「最高傑作だ」と言ったからといって、必ずしも聴き手もそのように感じるかといえば、答はNOなのだが、本作がかなり風変わりで面白い作品であることは、多くの人が感じていただけることと思う。

 マックス・ローチと並んでジャズ界屈指の闘士として知られるミンガス。本作では政治的な姿勢は影を潜め、彼が妻を失って(離婚か死別かは定かではない)傷ついた心を癒すために訪れたメキシコでの思い出を音楽で表現しているのだが、そこは個性的な彼のこと、ただの雰囲気モノに終わるはずもなく、時に奇妙な軽快さを見せたり、時に圧倒的な大迫力で迫ってきたりと、聴き手を飽きさせない。


(1)DIZZY MOODS  ▲tracks
 奇妙なホーンのアンサンブル、一瞬「バットマン」のテーマを思わせるベース、そしてブルージーなピアノが立て続けに登場するイントロで始まる(1)。テーマ部分は途中、突然ワルツになる展開を挿みながら進行していくが、基本的にはリラックスしたテンポ&ムード。
 ワン・コーラス目は、ミンガスのウォーキン・ベースに合わせて、それぞれの楽器が銘々にオブリガード的な短いソロを展開していく。それ以降はホノボノとしたトロンボーン、晴れやかなサックス、軽快なトランペットと、順番にソロを取っていく。


(2)YSABEL'S TABLE DANCE  ▲tracks
 本作の目玉となる、10分強に及ぶ大作(2)。カスタネットの連打とエキゾチックな掛け声、忍び寄るように始まるフラメンコ的なベース・ラインで、一気に闘牛場へとワープしたような気分になる。次第にベース・ラインに他の楽器がドンドン重なってきて、聴き手への圧迫感が頂点に達した頃、突如リズムが途切れ、短くはあるが華麗なピアノ・ソロになる。この種の圧迫感は、キング・クリムゾンの 『 LARKS TONGUES IN ASPIC 【太陽と戦慄】』 が好きな人ならおそらく容易に気に入ってくれることと思う。
 その後もダークな展開、華やかな展開、スリリングな展開などと、曲はとても目まぐるしく変化し、再び圧殺されるかの如き展開が数度訪れる中、掛け声も激しさを増し「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!」と連呼する(というか日本人にはそう聴こえる)。
 この曲、展開の激しさと比例するように、テープの切り貼りも激しく、テープの切れ目がバレバレ。特にシンバルの音などではそれが顕著なのだが、それでも演奏から放たれる「気」に圧倒され、それ程気にならなくなってくる。
 しかし、これまでの迫力ある演奏からおよそ想像もつかないような終わり方は、あまりにズッコケな、コントのオチの効果音のよう。


(3)TIJUANA GIFT SHOP  ▲tracks
 コミカルで可愛く、ファンキーでエキゾチックなショート・チューンの(3)。「チン、チン、ンチンチン、ンチチンチン」と軽快なライド・シンバルが印象的だ。タイトルにあるように、メキシコのお土産屋で、女性が好奇心の赴くままにあちこち歩き回ってはあれこれ手にとって、忙しく品定めをしている姿が目に浮かぶような曲。
 (2)のような大迫力の曲の後にこういう曲を持ってくるミンガスのバランス感覚は、僕は嫌いではない。CDでは続けざまにこの曲へと突入してしまうが、アナログ盤ではB面の1曲目。こういった軽快な曲は、気分を一新するのにもってこいだ。


(4)LOS MARIACHIS 【街の楽師たち】  ▲tracks
 本作第2の目玉、こちらも10分強に及ぶ大作(4)。エレガントな雰囲気で聴き手をウットリさせてくれたのも束の間、ダークなベースに導かれてうらぶれたブルーズが始まると、トランペット、サックス、トロンボーンはそれぞれダーティーなソロを展開し、ミンガスと思しき者がシャウトする。
 再びエレガントな展開になった後、今度はルンバ調のリズムが飛び出し、陽気で朗らかな雰囲気に包まれる。トランペットとトロンボーンがかわり番こに主旋律を奏で、それ以外の手の空いたものが銘々にソロを取っていく。
 (2)と同様、幾度か似たような展開を繰り返す中、少々エキゾチックなトロンボーン・ソロ(ブリッジ部分)、泣きのサックス・ソロ(ブルーズ)、陽気なピアノ・ソロ(ルンバ)などが展開されていく。タイトル通り、まるでメキシコの街の中で演奏を繰り広げる様々なミュージシャン達を描いているかのような曲だ。


(5)FLAMINGO  ▲tracks
 最後は本作で唯一の他人の曲で、とても心休まるスロウなバラードの(5)。ミュートしたトランペット、トロンボーン、ピアノが代わる代わるメロディーを奏でていく。ただその中に、フラミンゴが敏捷かつ優雅に踊る様を描いたような躍動的なリズムが挿入されている。
 空一面の夕焼けの中、フラミンゴがユッタリと空を舞っていたり、仲間とたわむれている様が目に浮かぶようだ。決して派手ではないがちょっとした名曲だと思う。


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