The Band / Music From Big Pink <1968>

おすすめ度★★★★★☆


Ronnie HowkinsのバックバンドとしてそのキャリアをスタートさせたThe Hawksはその後、今度はBob Dylanのバックバンドとなりヨーロッパツアーに出発。

帰国後はバイク事故によりリハビリ生活を余儀なくされていたDylanとともにWoodstockにこもり、ヒットチャートや当時のRock界の動向に左右されない普遍的な音楽を奏でていた。

傷の癒えたDylanがニューアルバムの製作のためにナッシュビルに去ると、彼らにも単独デビューのチャンスが舞い込んでくる。The Hawksはデビューに際してThe Bandと名を変更してそのままWoodstockにて製作に望む事となる。

そして発表された本作こそ、模索を続けていたRock界に衝撃を与えた1968年の大傑作だ。

カントリー、ブルース、ジャズ....元々カナダの出身者がほとんどを占める彼らが、古き良きアメリカに羨望に近い感情を込めて捧げた生粋のアメリカンミュージックが終始鳴り響く。

特にそのキャリアの中でワイルドなブルースギターを連発していたRobbie Robertsonの、ホワイトブルースを完全に消化してしまった様なギターワークは素晴らしいの一言。

どんどんワイルドな方向へと向かっていた当時のギターヒーロー達に、ブルースの奥に潜むカントリーやトラッドといった要素まで吸収された彼の音色はどんな色に響いてきたのだろう....

また内容的には、カウンターカルチャームービーの代名詞の様な「Easy Rider」にが挿入された他、Basement TapesセッションでDylanと共作した10やDylan作の11、さらに素晴らしいオリジナル曲の数々が収録されている。

当時、セールス的にはそれ程成功したとは言い難い本作であったが、評論家の絶賛を浴びた他、ミュージシャンに与えた影響は計り知れない程大きく、本国アメリカに留まる事無くイギリスのミュージシャンにも大きな衝撃を与えた。

なかでもEric Claptonは「このアルバムが僕の人生を変えた」「The Bandに入りたくてCreamを解散させた」等々、思い付く限りの賛辞を今なお送り続けている。

 

〜特にお気に入りな曲達〜
(っていっぱいあってすんません^^;)

まずはRichard Manuelが切々と歌うTears Of Rageでアルバムは幕を開ける。アルバムの1曲目、しかもデビューアルバムでこんなにスローで味わい深い曲を持って来るところに彼らの方向性が伺える。

「親父なんか殺してしまえ!」っといった風潮のあったRock界に、逆に親の立場からの悲しみを歌ったこの曲がもたらした影響はとても大きかっただろう。

ここではRichardの歌いっぷりに圧巻で、Claptonも特にRichardの声が好きだった様だ。さらに元ByrdsのGene Clarkも名作「White Light」でカヴァーしている。

珍しくRobbie Robertsonがリードヴォーカルを取るTo Kingdom Comeも大好きなナンバーだ。エンディング近くになって入ってくるRobbieの、ブルースを消化した様なギターが素晴らしい!

In A StationはRichardがWoodstockの美しい山々に捧げた名曲。ここでも染みきった様な最高のアレンジの中で響く彼の声が、僕らをWoodstockに連れていってくれる。

Curtis Mayfieldにインスピレイションを受けたというRobbieのギターで始まるThe Weightは永遠の名曲だ。LevonとRick、そしてRichardがその個性を生かして分け合うヴォーカルからゴスペル風のアレンジまで、その味わいは最高の境地だ

再び3人の掛け合いヴォーカルが楽しいWe Can Talkも最高。終始鳴り響くGarthのオルガンがとても美しく、転調したサビでキメてくるRobbieのギターが最高です。改めて聴くと、当時のClaptonが追い求めたサウンドっていうのが理解できますね。

イントロのGarithによるオルガンソロでぶっ飛びそうになるChest Feverは、結構Rockっぽい曲。Dylanとの活動が生きているようなクレイジーなアレンジになっている。もうここではGarthの演奏力に全面降伏だ。

その派手な曲の後に、悲しみに満ちたRichardの声が響いてくる。 Lonesome Suzieだ。ここでは、味わい深いを通り越して悲しみを持ってしまった様な彼の声に涙が出てきそうだ。さらにそれを引き立てるRobbieの絶妙のギター.......名曲です。

そしてラストもDylan作のI Shall Be ReleasedをRichardがファルセットで祈るように歌い上げる。Dylan自身も現在まで演奏し続けている名曲で、自由の身になる事を夢見る心境を歌っている。

やはり本作における主役は、間違いなくRichardだ。決定的な名曲こそLevonがヴォーカルを取っているものの、提供した楽曲、ヴォーカルセンス、どれを取っても彼の活躍は出色だ。

The BandのリードヴォーカルはやっぱりRichardだよな....っと今更ながら彼に敬意を評します。


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1 . Tears Of Rage
2 . To Kingdom Come
3 . In A Station
4 . Caledonia Mission
5 . The Weight
6 . We Can Talk
7 . Long Black Veil
8 . Chest Fever
9 . Lonesome Suzie
10 . This Wheel's On Fire
11 . I Shall Be Released 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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デビュー直後....
このアイドル性「0」ってのも
革命的!だったんでしょうねぇ..

(2001.6.3 再更新)

 

 

 

 

〜関連アルバムの簡単な紹介〜
The Band / Music From Big Pink

The Bandの数々のオリジナルアルバムが
全カタログに渡ってリマスター&ボーナストラック付きで再発された。

本作ももちろん実に9曲ものボーナストラック付きで
発売された!万歳!!

っと半分くらいボーナストラック目当てで購入したものの
ボーナストラックに行き着く前に、そのリマスターの素晴らしさに感動!

正直、ボーナストラックに構ってられない程の素晴らしいリマスタリングが
施されており、そのオリジナルの楽曲の魅力に改めてため息を漏らす毎日である。

注目のボーナストラックの方はBasement Tapes時代の音源も取り混ぜている為
どうしても中途半端な印象がぬぐえないが、それでも
Tears Of RageとLonesome Suzieの別テイクは流石に魅力的だ。

特にLonesome Suzieのアレンジはオフィシャルのものとは全くの別物で
生々しいRichardの歌声と共に最高に楽しめる今回のボーナストラックの
ハイライトとなっている。

またファズギターを用いたユニークなアレンジで演奏される
Key To The Highwayも非常に興味深いテイクだ。

ジャケも新に新装完了で、こりゃ決定盤ですな。

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順路はこちら
The Band / The Band へ!

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〜関連アーティスト/アルバムへのリンク〜

Bob Dylan / Royal Albert Hall Concert
BandがHawksの名義でバックを務めた伝説的ツアー!

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Blind Faith / Blind Faith
Claptonが本作を夢見て結成したスーパーバンド

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Gene Clark / White Light
元ByrdsのGece Clarkの最高傑作!Tears Of Rageをカヴァー

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