4 November 1995
前日観た The WiLDHEARTS から打って変わって今夜は同じ会場で
Radiohead。まずはこの夜のセットリストから見ていただきましょう。
1. Street Spirit (Fade Out)
2. Bones
3. Just
4. Bullet Proof... I Wish I Was
5. High & Dry
6. Black Star
7. Stop Whispering
8. Creep
9. Man-O-War
10. Planet Telex
11. Prove Yourself
12. My Iron Lung
13. Anyone Can Play Guitar
14. Blow Out
-Encore-
15. Subterranean Homesick Alien
16. Lucky
17. Nice Dream
18. You
19. The Bends
-2nd Encore-
Nobody Does It Better
さて、曲も演奏も好きなバンドなので、今後とも家でアルバムやシングルを何度も聴くだろうとは思いますが、一方で僕は多分このバンドには今後行かないだ
ろうと、いや、行けないだろうとも思います。残念ながらライヴの雰囲気にどうしても馴染むことができず、奇妙な居心地の悪さだけが残ってしまったのでし
た。
音が悪かったのでも演奏が下手だったのでもありません。むしろその逆で、とても良いライヴ演奏だったと思います。そういうことではなくて、トム・ヨーク
のローファイな感情の吐露のレベル、例えば肘を脇に付けて手首や頭を痙攣させるように震えながら歌うアクションや、それに対して過剰に反応する熱心なファ
ンたちのあり様に、どうしても今一歩入り込めなかったのです。それは僕が気持ちいいと思えるコンサートのレベルを超えた、一種の宗教的な雰囲気すら醸し出
していたのでした。
きっとトムのような男は女性の母性本能をくすぐるんだろうな。アンコールで Carly Simon の『007
私を愛したスパイ』のテーマ曲をカバーしたセンスも抜群だったと思います。
June 2004 追記
当時はこんなこと書きましたが、何だかんだ言いつつ僕は結局その後2回も Radiohead のライヴを見ています。"OK COMPUTER"
のツアー@国際フォーラムと、つい先日、2004年4月の "HAIL TO THE THIEF" のツアー@幕張メッセ。ちなみに自分では "OK
COMPUTER" はほとんどプログレだと思っていて、次の "KID A" に至っては King Crimson の "ISLANDS"
あたりと比較されてもいいくらいの位置付けの作品なんじゃないかと。
上記セットリストをご覧になればお分かりのとおり、この夜は名作 "THE BENDS"
の曲やりまくりです。そりゃそうだ、同作のツアーだったんだから。でも今春の "HAIL TO THE THIEF" ツアーでもこれら "THE
BENDS" の曲が日替わりで結構演奏されたのでした。それってどういうことなんだ? 彼ら自身、実はこの辺の曲が好きなんじゃないのか?
少なくとも、ギターロックという意味ではほとんど完成品だと考えているんじゃないのか? ロンドンの夜、"Street Spirit (Fade
Out)"
でライヴの幕を開けるという演出は相当に確信犯的でした。普通オープニング用の曲じゃないだろ。どっちかといえばアンコール前あるいはアンコールで観客を
持って行っちゃう曲だろ。それをいきなり頭に置いた、そのあまりの確信犯ぶりに、僕はブリクストン・アカデミーのフロアで成すすべもなく立ち尽くす他な
かったのです。
"THE BENDS" は良いアルバムだったと思います。誤解を恐れずにいえば、UKギターロックとしては彼らの最高傑作と言っていい。しかし
Radiohead
は同じ作風を決して繰り返しません。次から次へと新しい音楽に挑戦していきます。その前衛的な美学を評価する声がある一方で、僕なんかは「本当にみんなコ
レいい音楽だと思って聴いてるのかな??」と思う瞬間があるのも事実です。特に最近の曲に合わせて野郎どもがライヴで「トム〜!」とか絶叫しながらフロア
で暴れ、一字一句覚えた歌詞を歌いまくっている様子なんかには、正直ちょっと引く。
実際、2004年6月現在の世間のロックファンにとって、合コンの自己紹介で無防備に「えーと、Radiohead
とか割と好きです」などと表明することが果たしてクールなことかといえば、微妙な状況になりつつあると思います。(2000年くらいまでは間違いなくクー
ルだったと思うのだが。)
それよりはむしろ「ABBAとか割と好きです」とか言ってるほうがカコイイのではないか。この手の「バンド株価」は音楽の良し悪しとは無関係なところで勝
手に世間が決めるものですからどうでもいいっちゃあどうでもいいことだし、Radiohead
を巡ってついこんな話で熱くなる自分もどうかと思うけど。実は俺やっぱりこのバンドかなり好きなんじゃないか?
初期 Radiohead
にそこそこの思い入れがある者の戯言として聴き流してくださって結構ですが、いや純粋にまったく大したライヴだったと思うのです。この95年の
"THE BENDS"
ツアー、ロンドン公演は。だからこそ僕の胸の奥にこれだけの驚きと賞賛と嫌悪感と陶酔感が入り混じった、如何ともし難い感情の塊を残していったのではない
かと思うのです。今にして思えば。
…あとがきがこんなに長くなった London Calling は初めてだな。
もし可能なら95年に戻ってもう一度じっくり観たいライヴ。真面目に。
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